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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~
~ 文月の頃 月草のうつろふ心我が思はなくに ~
登場人物
山南敬助、沖田総司、斉藤一、明里、少女[美鈴・鈴]
「うちひさす 宮にはあれど 月草の うつろふ心 我が思はなくに」
「万葉集 第十二巻 三〇五八番」より
作者:詠み人知らず
ここは、京の町。
島原。
遊郭。
一軒の店。
一室。
山南敬助は明里の元を微笑んで訪れた。
明里は山南敬助を見ると、山南敬助に微笑んで抱き付いた。
山南敬助は明里を微笑んで抱いた。
明里は山南敬助から離れると、山南敬助に僅かに拗ねて話し出す。
「先生。直ぐに来る話を信じて待っていたのに、今日になりました。何故、直ぐに来なかったのですか?」
山南敬助は明里に困惑して話し出す。
「あの時は、本当に直ぐに来る予定だった。あの後に、任務の関係で直ぐに来られなくなってしまった。」
明里は山南敬助に抱き付くと、山南敬助に寂しく話し出す。
「私の居る場所は、嘘と誠の入り乱れる場所です。私は嘘に慣れていると思っているのですね。」
山南敬助は明里を抱くと、明里に困惑して話し出す。
「結果として、嘘をついた状況になってしまった。明里。寂しい思いをさせてしまった。悪かった。」
明里は山南敬助に寂しく抱き付いている。
山南敬助は明里を抱いて、明里を心配して見た。
明里は山南敬助から離れると、山南敬助に微笑んで話し出す。
「先生。私は本当に寂しかったんです。分かりましたか?」
山南敬助は明里に微笑んで話し出す。
「分かった。」
明里は山南敬助に微笑んで話し出す。
「先生に逢えました。今はとても嬉しいです。」
山南敬助は明里を微笑んで見た。
明里は山南敬助に微笑んで話し出す。
「分かりました。今後は寂しい気持ちにさせなでくださいね。」
山南敬助は明里に微笑んで頷いた。
明里は徳利を持つと、山南敬助に微笑んで話し出す。
「先生。今日は直ぐに帰らないでくださいね。」
山南敬助は杯を持つと、明里に微笑んで頷いた。
明里は徳利を持ち、杯に酒を注いだ。
山南敬助は杯を持ち、酒を微笑んで飲んだ。
明里は徳利を持ち、山南敬助を微笑んで見た。
或る日の事。
ここは、島原。
遊郭。
一軒の店。
一室。
山南敬助は明里の元を微笑んで訪れた。
明里は山南敬助を微笑んで見た。
山南敬助は明里に微笑んで話し出す。
「明里。今回は直ぐに来た。今回は約束を守った。」
明里は山南敬助に微笑んで話し出す。
「先生。嬉しいです。ありがとうございます。」
山南敬助は明里を微笑んで見た。
明里は山南敬助に微笑んで話し出す。
「先生。先日、大帽子花を見ました。」
山南敬助は明里を不思議な様子で見た。
明里は山南敬助に微笑んで話し出す。
「先生。大帽子花を知っていますか?」
山南敬助は明里に微笑んで話し出す。
「大帽子花。露草を大きくした姿の花が咲く。合っているかな?」
明里は山南敬助に微笑んで話し出す。
「はい。」
山南敬助は明里に微笑んで話し出す。
「今度、明里と共に、大帽子花を一緒に見たいと思った。」
明里は山南敬助に微笑んで話し出す。
「はい。楽しみに待っています。」
山南敬助は明里を微笑んで見た。
数日後の事。
ここは、屯所。
山南敬助は外出中のために居ない。
庭。
斉藤一は普通に居る。
沖田総司が微笑んで来た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。山南さんを知りませんか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「何処かに出掛けた。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。山南さんが帰ってきたら、教えてください。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺は山南さんの行動を把握している訳ではない。総司本人で確認しろ。」
沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「斉藤さんはいろいろな出来事に気付くのが早いです。斉藤さんだからお願いしました。駄目なのですか?」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。お願いします。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「山南さん。今、帰ってきた。」
沖田総司は辺りを不思議な様子で見た。
山南敬助が大帽子花を持ち、微笑んで来た。
沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。
「山南さん。こんにちは。」
山南敬助は大帽子花を持ち、沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司。何かあったのかな?」
沖田総司は大帽子花を見ると、山南敬助に微笑んで話し出す。
「山南さん。大きな露草ですね。」
山南敬助は大帽子花を持ち、沖田総司に微笑んで話し出す。
「大帽子花を見に行った。大帽子花が綺麗だったから分けてもらった。」
沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。
「大帽子花、という名前なのですね。」
山南敬助は大帽子花を持ち、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「総司。斉藤君。大帽子花を見ながら、露草を詠んだ歌を覚える気持ちはあるかな?」
沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。
「お願いします。」
斉藤一は山南敬助と沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。一緒に行きましょう。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
山南敬助は大帽子花を持ち、微笑んで居なくなった。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。早く行きますよ。」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は微笑んで居なくなった。
斉藤一は普通に居なくなった。
数日後の事。
ここは、落ち着いた雰囲気の寺。
本堂。
沖田総司は微笑んで座っている。
斉藤一は普通に座っている。
少女は微笑んで座っている。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。数日前に、大帽子花、という名前の花を見たんだ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんも大帽子花を見た時があるのですね。」
沖田総司は少女に微笑んで頷いた。
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「大帽子花。綺麗な青色の花です。好きな花です。」
沖田総司は少女に微笑んで頷いた。
少女は沖田総司に微笑んで見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。少し待っていてね。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「はい。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。少しの間、鈴ちゃんをお願いします。」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は微笑んで立ち上がった。
沖田総司は微笑んで居なくなった。
少女は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。
僅かに後の事。
ここは、落ち着いた雰囲気の寺。
本堂。
斉藤一は普通に座っている。
少女は微笑んで座っている。
沖田総司は露草を持ち、本堂に微笑んで入ってきた。
少女は沖田総司を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は露草を持ち、微笑んで座った。
沖田総司は露草を持ち、少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。露草。受け取って。」
少女は沖田総司に、微笑んで話し出す。
「総司さん。ありがとうございます。」
沖田総司は少女に露草を微笑んで渡した。
少女は沖田総司から露草を微笑んで受け取った。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。更に贈り物を用意したんだ。」
少女は露草持ち、沖田総司を不思議な様子で見た。
沖田総司は露草に紙を微笑んで巻きつけた。
少女は露草を持ち、沖田総司と露草を不思議な様子で見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「巻きつけた紙には、歌が書いてあるんだ。気にいってもらえると嬉しいな。」
少女は露草を持ち、沖田総司に微笑んで話し出す。
「ありがとうございます。」
沖田総司は少女を微笑んで見た。
少女は露草を持ち、紙を微笑んで取った。
沖田総司は少女を微笑んで見ている。
少女は露草と紙を持ち、紙を微笑んで見た。
沖田総司は少女を微笑んで見ている。
少女は露草と紙を持ち、沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さん。今回のお歌の贈り物。私が頂いても良いのですか?」
沖田総司は少女に微笑んで頷いた。
少女は露草と紙を持ち、沖田総司に恥ずかしく話し出す。
「ありがとうございます。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「私は、宮勤めではないけれど、真剣に任務に就いている。私は、将軍を守るために、京の町を守るために、一所懸命に任務に就いている。私の思いは移ろわない。贈り物の歌と同じだと思ったんだ。鈴ちゃんは、物凄く大切な友達だから、受け取って欲しくて書いたんだ。」
少女は露草と紙を持ち、沖田総司と露草を寂しく見た。
沖田総司は少女に心配して話し出す。
「物凄く大切な友達だとしても、任務の内容を重ねて詠んだ歌を受け取ったら、嬉しくないよね。私は今回も変な内容を話してしまった。ご免ね。」
少女は露草と紙を持ち、沖田総司を不思議な様子で見た。
沖田総司は痛い表情になった。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に痛い表情で怪訝な様子で話し出す。
「斉藤さん! 痛いです! 変な行動をしましたね!」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。
沖田総司は斉藤一を痛い表情で怪訝な様子で見た。
少女は露草と紙を持ち、斉藤一を不思議な様子で見た。
沖田総司は少女に痛い表情で心配して話し出す。
「鈴ちゃん。次に逢う時までに、別な歌を贈り物として用意するね。」
少女は露草と紙を持ち、沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さん。今回のお歌。贈り物に頂きます。」
沖田総司は少女に不思議な様子で話し出す。
「鈴ちゃん。良いの?」
少女は露草と紙を持ち、沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんの選んだ今回の贈り物のお歌。良いお歌です。ありがとうございます。」
沖田総司は少女を微笑んで見た。
「うちひさす 宮にはあれど 月草の うつろふ心 我が思はなくに」
沖田総司が少女に贈った歌になる。
沖田総司は今回の歌の意味を勘違いしている様子。
山南敬助は、今回の歌を説明する時に、詳しい意味まで説明しなかった。
山南敬助は今回の歌を詳しく説明しなかった理由は何か?
沖田総司が今回の歌の意味を知る時は、何時になるのか?
答えを知るのは、露草と大帽子花のみかも知れない。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「万葉集 第十二巻 三〇五八番」
「うちひさす 宮にはあれど 月草の うつろふ心 我が思はなくに」
ひらがなの読み方は「うちひさす みやにはあれど つきくさの うつろふこころ わがおもはなくに」
作者は「詠み人知らず」
原文は「内日刺 宮庭有跡 鴨頭草之 移情 吾思名國」
歌の意味は、「宮勤め(みやつとめ)をしていますが、月草(つきくさ)のような変わりやすい心など、私は持っていませんよ。」となるそうです。
「うちひさす」は、「宮」や「都」を導く「枕詞(まくらことば)」だそうです。
でも、「うちひさす」の意味は、良くわかっていないそうです。
この歌ですが、「宮勤め(みやつとめ)は、何かと誘惑が多いようですけど、私はいつもあなたのことだけを思っていますよ。」という事を詠っているそうです。
「月草(つきくさ)」についてです。
「月草(つきくさ)」は、「露草(つゆくさ)」、などいろいろな呼び方があります。
この物語の本文と会話は「露草」しました。
花期は、現在の暦で、6月上旬~10月末です。
「露草」は、朝方に咲いて、午後にはしぼんでしまう花です。
「大帽子花(おおぼうしばな)」についてです。
「露草」を花も丈も大きくした姿をしています。
「露草」の変種になるそうです。
江戸時代に草津で盛んに栽培されていたそうです。
この物語の補足です。
この物語の時間設定は、「蛤御門の変」(元治元年七月十九日[1864年8月20日])が起きた月になります。
京の町にもいろいろな事がありました。
そのため、この物語のような出来事が起こるかといえば、微妙な部分があります。
そういう事があり、この物語は「蛤御門の変」の前後なのかも含めて、詳しい日付などを設定せずに書きました。
新撰組が屯所を構えていた壬生には、大きな被害はなかったそうなので、可能な状況も考えられるので書きました。
この物語に登場する歌を知った時に、明里さんと山南敬助さんを思い浮かべました。
そこから考えた物語です。
ご了承ください。
「文月」についてです。
「ふみづき」、「ふづき」、と呼びます。
「陰暦七月の異称」です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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