～　雪月花　新撰組異聞　編　～


～　鈴虫花の咲く頃　秋づきにけり　～


登場人物

近藤勇、土方歳三、沖田総司、斉藤一、お雪、少女［美鈴・鈴］




「庭草に　村雨降りて　こほろぎの　鳴く声聞けば　秋づきにけり」

作者：詠み人知らず

「万葉集　第十巻　二一六〇番」より




秋になっている。



日中は暑さを感じる日が続く。



ここは、屯所。



近藤勇の部屋。



近藤勇は微笑んで居る。

土方歳三も微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さん。お雪さんは優しくて気遣いの出来る女性だ。お雪さんに、日頃の感謝を込めて、花と歌の贈り物を用意して訪ねるように。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「歳。お雪は、私よりも、歌の知識があり、植物の知識もある。贈り物の花。贈り物の歌。候補を教えてくれ。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「鈴虫花。今の暦は秋だ。鈴虫の鳴く頃に入り始めた。今の季節の贈り物に相応しい花だと思う。」

近藤勇は土方歳三に考えながら話し出す。

「鈴虫花。京の町などの西側では見られる花。以上の内容で合っているかな？」

土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。

近藤勇は土方歳三に不思議な様子で話し出す。

「私にとっては珍しい花に該当するが、お雪にとっては珍しい花に該当するのだろうか？」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さんは植物に関して疎い部分がある。近藤さんにとっては珍しい花に該当するから、お雪さんに贈る花に選んだ。以上の設定ならば、近藤さんからお雪さんに鈴虫花を贈る展開は問題ない。」

近藤勇は土方歳三に考えながら頷いた。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さん。鈴虫花に添えて贈る歌を教える。」

近藤勇は土方歳三に普通の表情で頷いた。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「“庭草に　村雨降りて　こほろぎの　鳴く声聞けば　秋づきにけり”。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「鈴虫花に添える歌に“こほろぎ”を詠んだ歌を選ぶ。さすが。歳。」

土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇も土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「鈴虫花は、鈴虫の鳴く頃に咲くところから名付けられた。鈴虫花は、朝の頃に咲いて、夕方の頃にしぼむ。今回は贈る日時を細かく決める。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さん。鈴虫花について話す間に、或る人物を思い出した。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「私も或る人物を思い出した。歳の思い出した人物を教えてくれ。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「斉藤の関係者。」

斉藤一は近藤勇と土方歳三を普通の表情で見た。

近藤勇は土方歳三と斉藤一に微笑んで話し出す。

「お雪。斉藤の関係者。鈴虫花に同じ歌を添えて贈る。お雪は喜ぶ。斉藤の関係者も喜ぶ。」

土方歳三は近藤勇と斉藤一に微笑んで頷いた。

斉藤一は近藤勇と土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

近藤勇は土方歳三と斉藤一に微笑んで話し出す。

「歳。斉藤。二人分の鈴虫花の手配を頼みたい。お雪に贈る設定は、歳に相談に乗ってもらう。斉藤の関係者に贈る設定は、歳と斉藤に、任せる。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。

斉藤一は近藤勇と土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

近藤勇は土方歳三と斉藤一に微笑んで話し出す。

「歳。斉藤。終了した後の都合の良い日に、酒を飲みながら報告を聞きたい。良いかな？」

土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。

斉藤一は近藤勇と土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

近藤勇は土方歳三と斉藤一を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。鈴虫花を分けてもらえる機会がある。美鈴さんが喜ぶ。鈴虫花を分けて欲しいと頼んだ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。気遣いありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。鈴虫花は、江戸の町を含める東の地域では咲いていない花、京の町を含める西の地域では咲いている花。合っていますか？」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんの名前の入る植物です。涼しくて透明な鳴き声の鈴虫が名前の由来の植物です。鈴ちゃんが喜びます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「以前に、斉藤さんと鈴ちゃんから、鈴虫花について教えてもらいました。鈴虫花の説明は覚えています。私への再度の鈴虫花の説明は必要ないです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。忘れずに覚えている。珍しい。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さん。私は鈴虫花の説明を忘れずに覚えています。褒めてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「覚えた説明を忘れない行為は、普通の行為だ。褒める行為に該当しない。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに更に喜んでもらうために、鈴虫花に歌を添えて贈る。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。鈴虫花に合う歌を知っているのですね。教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「“庭草に　村雨降りて　こほろぎの　鳴く声聞けば　秋づきにけり”。掲載は、“万葉集　第十巻　二一六〇番”。作者は、“詠み人知らず”。歌の意味は、“庭の草に、村雨が降って、こほろぎの鳴く声を聞くと、秋の訪れを感じます。”、となるそうだ。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さん。一度に大量の説明。覚えられません。少しずつ説明してください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「鈴虫花の見頃の関係で、鈴虫花を贈る日時が迫っている。急いで覚える必要がある。」

沖田総司は斉藤一を緊張して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。緊張すると、覚えるまでに更に時間が掛かる。落ち着け。」

沖田総司は斉藤一を見ながら、緊張した様子で軽く息をはいた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さん。落ち着きました。お願いします。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



数日後の事。



ここは、お雪の住む家。



一室。



近藤勇は微笑んで居る。

近藤勇の傍には、包みが置いてある。

お雪も微笑んで居る。



近藤勇はお雪の前に包みを置くと、お雪に微笑んで話し出す。

「お雪。贈り物を用意した。受け取ってくれ。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

近藤勇はお雪に微笑んで頷いた。

お雪は包みを微笑んで広げた。



包みの中には、小さい鈴虫花の植わる植木鉢が入っている。



鈴虫花は、少しだけ咲き始めている。



植木鉢には、小さな木の板が挿してある。



小さな木の板には、近藤勇の筆跡の歌が書いてある。



お雪は鈴虫花と歌を微笑んで見た。

近藤勇はお雪を微笑んで見た。

お雪は近藤勇を見ると、近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤先生。鈴虫花の贈り物。歌の贈り物。ありがとうございます。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「歳が、お雪への気遣いを忘れないように話した。歳が、贈り物の相談に乗ってくれた。礼は、歳に話してくれ。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「土方さんに逢った時に、お礼を伝えます。」

近藤勇はお雪に微笑んで頷いた。

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「私から、歳と斉藤に、総司の親しい女の子に、鈴虫花と同じ歌を贈る展開を相談した。歳も斉藤も、同意した。斉藤から、総司に、鈴虫花に関する説明、歌に関する説明を頼んだ。お雪。大丈夫かな？」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「はい。」

近藤勇はお雪を微笑んで見た。

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤先生。今回の贈り物の展開の中で、私に出来る手伝いはありませんか？」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「総司の親しい女の子が贈り物を落ち着いて受け取る状況を作りたい。お雪の家を貸して欲しい。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「分かりました。贈る日時が決まったら教えてください。」

近藤勇はお雪に微笑んで頷いた。

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇はお雪を微笑んで見た。

お雪は鈴虫花と歌を微笑んで見た。



翌日の事。



ここは、お雪の住む家。



一室。



沖田総司は微笑んで居る。

沖田総司の傍には、包みが置いてある。

斉藤一は普通に居る。

お雪は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。



沖田総司は少女の前に包みを置くと、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。斉藤さんに相談しながら、贈り物を用意したんだ。」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は包みを微笑んで丁寧に広げた。



包みの中には、小さい鈴虫花の植わる植木鉢が入っている。



鈴虫花は、少しだけ咲き始めている。



植木鉢には、小さな木の板が挿してある。



小さな木の板には、沖田総司の筆跡の歌が書いてある。



少女は鈴虫花と歌を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴虫花は、鈴虫の鳴く頃に咲くところから名付けられたよね。今の季節の贈り物に合う花だと思ったんだ。」

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「鈴虫の透明で涼しい鳴き声は、美鈴さんを連想するわ。鈴虫花は綺麗な色の花が咲くわ。鈴虫花は美鈴さんに繋がるわ。」

少女はお雪に恥ずかしく話し出す。

「お世辞でも褒めて頂けると嬉しい気持ちになります。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。お雪さんは事実を話しているよ。照れないで。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“庭草に　村雨降りて　こほろぎの　鳴く声聞けば　秋づきにけり”。万葉集に詠まれている“こほろぎ”は、“秋に鳴く虫の総称”と考えられているよね。斉藤さんが、咲き始めの鈴虫花に合う歌だと教えてくれたんだ。」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴虫花とお歌を楽しみながら、秋の訪れも楽しめます。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。鈴虫花。お歌。素敵な贈り物です。ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

お雪は、沖田総司、斉藤一、少女を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は部屋を微笑んで訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんの笑顔がたくさん見られました。ありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺がたくさん関係していると話さなければ、美鈴さんの笑顔を更にたくさん見られた。良かったのか？」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは賢い女の子です。私が斉藤さんに相談した状況は気付きます。最初から説明する状況が良いです。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。



雨の強く降る音が聞こえた。



沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。村雨が降っています。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今は秋の訪れを感じる出来事の中に居る。美鈴さんに鈴虫花に添えて贈った歌を詠め。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。既に忘れたのか。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「忘れていません。思い出せないだけです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「思い出せない状況は、忘れた状況に該当する。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「思い出せない状況。忘れた状況。違う状況です。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。仕方が無い。再び歌を忘れない状況になるまで、歌を説明する。歌を覚える時間が長くなった場合は、徹夜になると思う。気合を入れて覚えろ。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さん。寝る時間は、大切な時間です。寝る時間を減らすと、覚える能力が少なくなります。無理は止めましょう。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は総司に再び説明するだけだ。俺は総司に歌の説明を終えた後は、総司の覚える時間に付き合う必要は無い。俺は必要な睡眠時間は確保できる。俺への心配は無用だ。」

沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。

「斉藤さん～　友達が苦労している時に助けないのですか～？」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は鈴虫花を用意した。俺は歌について説明した。俺は一度目の歌を覚える行為に付き合った。俺は友達以上に助けた。総司は、友達以上に助けた友達に、更なる助けを無償で頼むのか。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さんには常に感謝しています。美味しい酒を奢ります。美味しい肴を奢ります。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



雨の降る音が聞こえなくなった。



沖田総司は斉藤一を真剣な表情で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さん。歌の説明をお願いします。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を真剣な表情で見た。



「庭草に　村雨降りて　こほろぎの　鳴く声聞けば　秋づきにけり」

鈴虫花は、鈴虫の鳴き始める頃に花の咲くところから名付けられた。

鈴虫花は、秋の訪れを感じる一つになる。

お雪と少女は、鈴虫花と贈り物の歌と共に、秋の時間を和やかに過ごしている。




＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集　第十巻　二一六〇番」

「庭草に　村雨降りて　こほろぎの　鳴く声聞けば　秋づきにけり」

作者は「詠み人知らず」

ひらがなの読み方は「にはくさに　むらさめふりて　こほろぎの　なくこゑきけば　あきづきにけり」

原文は「庭草尓　村雨落而　蟋蟀之　鳴音聞者　秋付尓家里」

歌の意味は「庭の草に、村雨（むらさめ）が降って、こほろぎの鳴く声を聞くと、秋の訪れを感じます。」となるそうです。

「村雨（むらさめ）」は「ひとしきりに強く降って止む雨。にわか雨。」の事です。

万葉集に詠まれている「蟋蟀（こほろぎ）」は、秋に鳴く虫の総称と考えられています。

現在の「蟋蟀（こおろぎ）」は、「直翅目（ちょくしもく）コオロギ科」の昆虫の総称をいいます。

「鈴虫花（すずむしばな）」についてです。

キツネノマゴ科。

多年草。

分布は、本州の近畿以西、四国、九州。

幾つかの府県で、絶滅危惧種に指定されている。

絶滅の危険が高くなっている植物になる。

花は、長い花筒部があり、長い筒部は少し曲がっている。

花の上部には、柔らかい毛が生えている。

花びらには、皺がある。

花色は、淡紫色、または、白色。

花径は、３ｃｍ程度。

花は、朝に咲いて午後には散る。

花期は、秋（現在の暦で、８～９月）。

葉の形は、広卵型。

葉の長さは、４～１０ｃｍ。

葉、節、に、柔らかい毛が生えている。

茎は、四角柱。

高さは、３０～６０ｃｍ。

鈴虫の鳴き始める頃に花が咲くところ付いた名前です。

「鈴虫草（すずむしそう）」と以前は呼んでいました。

ラン科の多年草にも「スズムシバナ（鈴虫花）（別名：鈴虫蘭［スズムシラン］）」と呼ばれる植物があったため、「鈴虫花」と改めました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前 　　　　　　　　　　 目次 　　　　　　　　　　 次→