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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 秋の夜長の夢語り 温泉と尾花 秋風に ~


登場人物

沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]

夜の国の住人 夢




「高円の 尾花吹き越す 秋風に 紐解き開けな 直ならずとも」

「万葉集 第二十巻 四二九五番」より

作者:大伴池主(おおとものいけぬし)




今は秋。



ここは、京の町。



陽が落ちると暑さは感じなくなっている。

日中は暑さを感じる時間が少なくなっている。



屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は床の中で静かに寝ている。



部屋の中が不思議な空気に包まれた。



沖田総司は床の中でゆっくりと目を開けた。



少女が沖田総司を笑顔で見ている。



沖田総司は、夜の国の住人で少女と同じ顔の“夢”だと直ぐに分かった。



沖田総司は床の中で、夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。今晩は。」

夢は沖田総司の顔を覆い、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は床の中で、夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司から微笑んで離れた。

沖田総司は床の上に体を微笑んで起こした。

夢は沖田総司に微笑んで抱き付いた。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して動きを止めた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、不思議な空気に包まれた。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して、不思議な空気に包まれた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに居なくなった。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して、静かに居なくなった。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夜空には、月と満天の星が輝いている。



心地好い空気に包まれている。



夢の住む家。



一室。



心地好い空気に包まれている。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに現れた。

沖田総司は赤面して動きを止めて、静かに現れた。



夢は沖田総司から微笑んで離れた。

沖田総司は夢を赤面して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。夜の国へようこそ。」

沖田総司は夢を赤面して見ている。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「今回も、夜の国で温泉を楽しんで頂くためにご招待しました。」

沖田総司は夢に赤面して微笑んで話し出す。

「今回も夜の国の温泉が楽しめるんだ。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は夢を赤面して微笑んで見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。ご案内します。」

沖田総司は夢に赤面して苦笑して話し出す。

「夢ちゃん。夜の国に来る時と同じ行動をしないよね。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんの希望に合わせます。」

沖田総司は夢を赤面して安心して見た。

夢は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は夢を赤面して緊張して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。直ぐに案内します。緊張しないでください。」

沖田総司は夢に赤面して慌てて頷いた。

夢は沖田総司を微笑んで見た。



僅かに後の事。



ここは、夜の国。



温泉地。



山に覆われている。

山の木々は僅かに紅色の葉に染まっている。

川が絶え間なく流れている。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。



宿。



山の木々が僅かに紅色の葉に染まる様子が見える。

川が見える。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。



一室。



心地好い空気に包まれている。



夢は微笑んで、静かに現れた。

沖田総司も微笑んで、静かに現れた。



沖田総司は夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。私は戻ります。暫く後に再び逢いましょう。」

沖田総司は夢に微笑んで頷いた。



夢は微笑んで、静かに居なくなった。



沖田総司は部屋の中を微笑んで見た。



斉藤一が沖田総司を普通の表情で見ている。



沖田総司は斉藤一を驚いて見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今回も俺を見て驚いた。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「突然に斉藤さんが姿を現すからです!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は、今回も、総司より以前から居る。総司は抱き付かれる状況になって、勘が鈍っている。」

沖田総司は斉藤一を複雑な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに総司が抱き付かれた状況は、今回も話さない。安心しろ。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「鈴ちゃんも宿に居るのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは温泉に浸かっている。」

沖田総司は斉藤一を安心して見た。

斉藤一は部屋を普通の表情で見た。



床の間に花瓶に挿した尾花が飾ってある。



斉藤一は尾花を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。温泉に浸かろう。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「はい!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



少し後の事。



ここは、夜の国。



温泉地。



宿。



露天の温泉。



山の木々が僅かに紅色の葉に染まる様子が見える。

瀧が見える。

川が見える。

瀧から水が落ちる音も川の流れる音も、絶え間なく聞こえる。



沖田総司は露天の温泉に笑顔で浸かっている。

斉藤一は露天の温泉に普通の表情で浸かっている。



沖田総司は露天の温泉に浸かり、景色を見ながら、斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 絶景ですね!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、景色を見ながら、普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を見ると、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、景色を笑顔で見た。



心地好い風が吹いた。



沖田総司は露天の温泉に浸かり、景色を見ながら、斉藤一に笑顔で話し出す。

「風が吹きました! 心地好いですね!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、景色を笑顔で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。宿の部屋の床の間に尾花が飾ってあった。覚えているか?」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を見ると、斉藤一に笑顔で話し出す。

「はい!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「“秋風”と“尾花”を詠んだ歌がある。歌を詠んだ日付は、俺達の過ごす暦に当てはめると前になるが、季節は同じ秋だ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に苦笑して話し出す。

「今は温泉に浸かって気持ち良いです。歌の勉強は後でも良いですか?」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「仕方が無い。残念だ。諦める。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、景色を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に僅かに慌てて話し出す。

「斉藤さん。温泉に浸かりながら、長い時間の歌の勉強は無理です。歌の勉強は短い時間でお願いします。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を見ると、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を安心して見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「“高円の 尾花吹き越す 秋風に 紐解き開けな 直ならずとも”。作者は男性だ。酒を飲む中で詠んだ歌だそうだ。“紐解く”は、男女間の契りを連想する言葉だ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を怪訝な様子で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「俺と総司も、紐を解いて、温泉に浸かっている。温泉に浸かる人物は、俺と総司のみだ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を怪訝な様子で見ている。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。気付いていたか?」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に慌てて話し出す。

「私にとって、斉藤さんは物凄く信頼する物凄く大切な友達です! 私にとって、斉藤さんを物凄く信頼する物凄く大切な仕事仲間です! 私は斉藤さんの想いを受け止められません!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を緊張して見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。歌の説明を続ける。歌の意味は、“高円の尾花をなびかせて拭く秋風に、衣の紐を解いてくつろぎましょう。特に何をする、というわけではないですけど・・・”、となるそうだ。“紐解く”は、男女間の契りを連想する言葉だ。“直ならずとも”と詠んで、“男同士でどうするってことじゃなくて、ただ、くつろぎましょう”、を表現しているそうだ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を唖然とした表情で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司は、剣術関連では天才的能力を発揮するが、一部の部分には天才的な鈍さを発揮する。総司は今の会話で天才的な鈍さを発揮しない内容を話した。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を唖然とした表情で見ている。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さん! 私の勘違いの内容を鈴ちゃんが知ったら、鈴ちゃんは私を呆れて嫌いになります! 鈴ちゃんには何が何でも秘密にしてください!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司は、俺を勘違いするだけでなく、俺を信じていない。残念だ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さんの希望を叶えます! 鈴ちゃんには秘密にしてください! 鈴ちゃんには何が何でも秘密にしてください!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんへの告白。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さんは鈴ちゃんを好きなのですか?! 私は斉藤さんと鈴ちゃんの仲を応援しなければならないのですか?!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「意味も無く話した内容だ。総司は俺の希望を叶えると話した。文句は受け付けない。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を唖然とした表情で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「美味しい酒。美味しい肴。俺を楽しませる。以上が、俺の希望だ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に考えながら話し出す。

「はい。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を考えながら見た。



暫く後の事。



ここは、夜の国。



温泉地。



山に覆われている。

山の木々は僅かに紅色の葉に染まっている。

川が絶え間なく流れている。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。



宿。



山の木々が僅かに紅色の葉に染まる様子が見える。

川が見える。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。



一室。



心地好い空気に包まれている。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。



沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。酒と肴を用意しなくて良いのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司と共に温泉に浸かりたい。酒を飲むと温泉に浸かる時間が遅くなる。酒を飲むのは後になる。」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。楽しんで温泉に浸かったのですね。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女に苦笑して頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司が俺と温泉に浸かった時に、俺は総司に歌の説明をした。総司は物凄い勘違いをした。楽しかった。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さん!」

少女は沖田総司と斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。床の間に尾花を差した花瓶が飾ってある。温泉に浸かる時間に心地好い風を感じた。秋を感じるな。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に慌てて話し出す。

「鈴ちゃん! 美味しい菓子を用意したんだ! 一緒に食べよう!」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「斉藤さんがお酒を飲む時に、総司さんと私が飲食をしていないと寂しいと思います。斉藤さんがお酒を飲む時に、お菓子を食べたいです。」

沖田総司は少女を恥ずかしく見た。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「さすが。鈴ちゃん。鈴ちゃんの意見に賛成するよ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司も少女を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。



「高円の 尾花吹き越す 秋風に 紐解き開けな 直ならずとも」

尾花。

秋の風。

温泉に浸かる心地好さ。

沖田総司、斉藤一、少女は、温泉を楽しみながら、秋の風を楽しみながら、尾花を楽しみながら、夜の国の秋を感じている。

夜の国の秋の時間は、ゆっくりと穏やかに過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第二十巻 四二九五番」

「高円の 尾花吹き越す 秋風に 紐解き開けな 直ならずとも」

ひらがなの読み方は「たかまとの おばなふきこす あきかぜに ひもときあけな ただならずとも」

作者は「大伴池主(おおとものいけぬし)」

歌の意味は「高円(たかまと)の尾花をなびかせて拭く秋風に、衣の紐を解いてくつろぎましょう。特に何をする、というわけではないですけど・・・」となるそうです。

原文は「多可麻刀能 乎婆奈布伎故酒 秋風尓 比毛等伎安氣奈 多太奈良受等母」

天平勝宝五年八月十二日(753年9月13日)に官人たちがお酒を持ち寄って高円山(たかまとやま)[奈良市の山]に登りました。

そこに参加していた大伴池主(おおとものいけぬし)が詠んだ歌です。

「紐解く」のは、どうも男女間の契りをイメージするようです。

ただし、この歌では、“男同士でどうするってことじゃなくて、ただ、くつろぎましょう”、ってことを「直ならずとも」と詠んでいるようです。

「尾花」は、イネ科の多年草です。

「薄(すすき)」の名前でも知られています。

「芒(すすき)」とも書きます。

薄の別名で「茅(かや)」や「萱(かや)」が紹介される事があります。

現在では、イネ科の薄、イネ科の「茅(ちがや)」、カヤツリグサ科の「菅(すげ)」の総称としても使用する事が多いそうです。

薄の花は、花びらがないのが特徴です。

現在の暦で、9月~10月頃に花が咲きます。

秋の七草の一つです。

楽しんで頂けると嬉しいです。




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