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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 小春日和と蜜柑の香り 後に悔ゆ 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

近藤勇、土方歳三、沖田惣次郎、

山口廣明、山口一




「橘を 宿に植ゑ生ほし 立ちて居て 後に悔ゆとも 験あらめやも」

「万葉集 第三巻 四一〇番」より

作者:坂上郎女(さかのうえのいつらめ)




今は冬。



ここは、多摩。



寒い日が始まっている。



今日は朝から暖かい。



試衛館。



沖田惣次郎を始めとする塾生達は、日々の稽古に励んでいる。



道場。



威勢の良い掛け声や竹刀の交わる音が聞こえる。



少し後の事。



ここは、多摩。



試衛館。



稽古が終わった。



塾生達は、片付けを終えると、体を拭く、休む、会話する、など、自由に過ごし始めた。



縁。



沖田惣次郎は微笑んで歩いている。



沖田惣次郎の後ろから、土方歳三の穏やかな声が聞こえた。

「惣次郎。少し時間はあるか?」



沖田惣次郎は微笑んで止まった。



沖田惣次郎は後ろを微笑んで見た。



土方歳三は沖田惣次郎の前に微笑んで来た。



沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。

「何かありましたか?」

土方歳三は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎。蜜柑にちなんだ歌がある。教える時間を作った。」

沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。

「遠慮します。」

土方歳三は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「近藤さんに蜜柑にちなんだ歌を詠んだら、惣次郎は剣の腕を磨く他に歌の勉強も励んでいると感心する。蜜柑が食べられるかも知れない。蜜柑湯に浸かれるかも知れない。素敵な可能性だと思わないか?」

沖田惣次郎は土方歳三を嬉しい様子で考えながら見た。

土方歳三は沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。

「分かりました。蜜柑にちなんだ歌を教えてください。」

土方歳三は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「“橘を 宿に植ゑ生ほし 立ちて居て 後に悔ゆとも 験あらめやも”。」

沖田惣次郎は土方歳三に苦笑して話し出す。

「土方さん。今の歌を紙に書いてください。」

土方歳三は懐から紙を取り出すと、沖田惣次郎に微笑んで渡した。

沖田惣次郎は土方歳三から紙を受け取ると、紙を確認する様子で見た。

土方歳三は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「質問のある時は、遠慮なく聞いてくれ。」

沖田惣次郎は紙を持ち、土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。

「分かりました。」

土方歳三は沖田惣次郎を微笑んで見た。



沖田惣次郎は紙を持ち、紙を見ながら、真剣な表情でゆっくりと歩き出した。



翌日の事。



ここは、多摩。



試衛館。



近藤勇の部屋。



近藤勇は普通の表情で机に向かっている。



沖田惣次郎は部屋を僅かに緊張して訪れた。



近藤勇は沖田惣次郎を不思議な様子で見た。



沖田惣次郎は近藤勇に僅かに緊張して話し出す。

「蜜柑を詠んだ歌です。“橘を 宿に植ゑ生ほし 立ちて居て 後に悔ゆとも 験あらめやも”。」

近藤勇は沖田惣次郎を不思議な様子で見ている。

沖田惣次郎は近藤勇に不安な様子で話し出す。

「蜜柑を詠んだ歌です。“橘を 宿に植ゑ生ほし 立ちて居て 後に悔ゆとも 験あらめやも”。」

近藤勇は沖田惣次郎を不思議な様子で見ている。

沖田惣次郎は近藤勇に不安な様子で話し出す。

「間違っていますか?」

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎が詠んだ歌は、万葉集に掲載された歌になる。正しく歌を詠んでいる。」

沖田惣次郎は近藤勇に安心して話し出す。

「良かった〜 黙っていたので心配になりました〜 正しいならば早く褒めてください〜」

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎が私の前で蜜柑にちなんだ歌を詠んだ。私に頼み事があると思った。いろいろと考えてしまった。」

沖田惣次郎は近藤勇を驚いた表情で見た。

近藤勇は沖田惣次郎を不思議な様子で見た。

沖田惣次郎は近藤勇を驚いた表情で見ている。

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「今は蜜柑の美味しい季節だ。惣次郎の詠んだ歌を聞いたら、蜜柑が食べたくなった。みんなで蜜柑を食べて蜜柑湯にも浸かろう。」

沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。

「ありがとうございます! 私も蜜柑を食べて蜜柑湯に浸かりたいです! 楽しみです!」

近藤勇は沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は近藤勇を嬉しく見た。



数日後の事。



ここは、多摩。



寒い日が始まっている。



今日も暖かく良い天気になっている。



試衛館。



縁。



沖田惣次郎は微笑んで歩いている。



沖田惣次郎の後ろから、土方歳三の穏やかな声が聞こえた。

「惣次郎。楽しい様子に見える。」



沖田惣次郎は微笑んで止まった。



沖田惣次郎は後ろを微笑んで見た。



土方歳三は沖田惣次郎の前に微笑んで来た。



沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。

「近藤さんに呼ばれたので、近藤さんの部屋に行くところです。」

土方歳三は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「分かった。後で話そう。」

沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。

「はい。」

土方歳三は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。



沖田惣次郎は微笑んで歩き出した。



僅かに後の事。



ここは、多摩。



試衛館。



近藤勇の部屋。



沖田惣次郎は部屋を微笑んで訪れた。



近藤勇は部屋に居ない。



沖田惣次郎は部屋の中を不思議な様子で見た。



机の上にたくさんの蜜柑が置いてある。



沖田惣次郎は机の上の蜜柑を見ながら、嬉しい様子で呟いた。

「近藤さん。みんなより先に蜜柑を食べる配慮をしてくれたんだ。嬉しいな。」



沖田惣次郎は机の前に笑顔で座った。



沖田惣次郎の元に蜜柑の香りが届いた。



沖田惣次郎は蜜柑を持つと、嬉しい様子で呟いた。

「いただきます。」



沖田惣次郎は蜜柑を笑顔で美味しく食べ始めた。



少し後の事。



ここは、多摩。



試衛館。



近藤勇の部屋。



近藤勇は僅かに慌てて部屋の中に入った。

土方歳三は苦笑した表情で部屋の中に入った。



沖田惣次郎は畳の上に横になり、気持ち良く眠っている。



机の上には、たくさんの蜜柑とたくさんの蜜柑の皮が載っている。



近藤勇は沖田惣次郎と机の上を苦笑して見た。

土方歳三も沖田惣次郎と机の上を苦笑して見た。

沖田惣次郎は畳の上に横になり、気持ち良く眠っている。

近藤勇は掛け布団を微笑んで用意した。

土方歳三は近藤勇と沖田惣次郎を苦笑して見た。

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで掛け布団を掛けた。

沖田惣次郎は畳の上に横になり、気持ち良く眠っている。

土方歳三は近藤勇に微笑んで囁いた。

「想像どおり遅かった。」

近藤勇は土方歳三に苦笑して頷いた。

土方歳三は近藤勇に微笑んで囁いた。

「蜜柑を食べて満腹になったから寝た様子だな。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。

土方歳三は沖田惣次郎を微笑んで見た。

近藤勇は沖田惣次郎を見ると、微笑んで囁いた。

「“橘を 宿に植ゑ生ほし 立ちて居て 後に悔ゆとも 験あらめやも”。」

土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇は土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで囁いた。

「惣次郎が私に嬉しい様子で詠んだ歌だ。歳が教えた歌になるのだろ。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。

近藤勇は土方歳三に微笑んで囁いた。

「惣次郎が細かい意味を理解せずに歌を詠む姿を見た。親のような気持ちになった。」

土方歳三は近藤勇を微笑んで見ている。

近藤勇は土方歳三に微笑んで囁いた。

「歳。祝言を挙げる予定はないのか? 今の歌の気持ちを更に理解できるぞ。」

土方歳三は近藤勇を苦笑して見た。

近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。

沖田惣次郎は畳の上で横になり、嬉しい様子で寝言を言った。

「蜜柑・・・ 美味しい・・・ 蜜柑湯・・・ 一番風呂・・・」

近藤勇は沖田惣次郎を微笑んで見た。

土方歳三は近藤勇と沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は畳の上で横になり、嬉しい様子で寝言を言った。

「山口君・・・ 蜜柑湯・・・」

近藤勇は土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで囁いた。

「今回は私の不注意から起きた出来事だ。不問にする。蜜柑を食べる量は少し減るが、全員で分けて食べたい。数日後に、みんなで蜜柑湯に浸かりたい。」

土方歳三は近藤勇を見ると、近藤勇に微笑んで頷いた。

近藤勇は土方歳三に微笑んで囁いた。

「歳。少しの間だけ部屋を出る。惣次郎を頼む。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。



近藤勇は部屋を微笑んで静かに出て行った。



土方歳三は沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は畳の上で横になり、気持ち良く眠り続けている。

土方歳三は沖田惣次郎を見ながら、沖田惣次郎に微笑んで囁いた。

「惣次郎。良い時に寝言を言ってくれた。感謝する。惣次郎は、鋭さも鈍さも、共に天才的だ。」

沖田惣次郎は畳の上で横になり、気持ち良く眠っている。

土方歳三は沖田惣次郎を見ながら、沖田惣次郎に微笑んで囁いた。

「惣次郎。山口君に早く逢えると良いな。」

沖田惣次郎は畳の上で横になり、嬉しい様子で寝言を言った。

「山口君・・・ 蜜柑湯・・・」

土方歳三は沖田惣次郎を微笑んで見た。



同じ頃。



ここは、江戸の町。



寒い日が始まっている。



今日は朝から暖かく良い天気になっている。



町中。



山口一の兄の山口廣明は、微笑んで歩いている。

山口一は普通に歩いている。



山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「母さんが今夜は蜜柑湯を用意すると話していた。」

山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「姉さんが橘を詠んだ歌を数首ほど教えてくれただろ。気になる歌があるんだ。」

山口一は山口廣明に普通に話し出す。

「兄さんの気になる歌。“橘を 宿に植ゑ生ほし 立ちて居て 後に悔ゆとも 験あらめやも”、で良いのかな?」

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「歌を覚えていて、察しもついたのか。さすが一だ。」

山口一は山口廣明を普通の表情で見た。

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「父さんと母さんは、今の歌のような思いをしているのかな?」

山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「姉さんも俺達も、何時かは同じ思いをするのかな?」

山口一は山口廣明に普通に話し出す。

「今の歌を詠んだ思いを焦って理解しなくて良いと思う。少し経ってから、今の歌を詠んだ思いを理解する努力を始めて良いと思う。娘が生まれたら、育つ間に今の歌を詠んだ思いが理解できると思う。」

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「一の話すとおりだ。」

山口一は山口廣明を普通の表情で見た。

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「話題を変える。時期的に、惣次郎君も蜜柑湯に浸かる可能性のある頃だ。楽しい内容を想像しながら、蜜柑湯に浸かれる。楽しみだな。」

山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。

山口廣明は山口一を微笑んで見た。



「橘を 宿に植ゑ生ほし 立ちて居て 後に悔ゆとも 験あらめやも」

親が娘を思う気持ちを理解できる日は、訪れるのか。

親が娘を思う気持ちを理解できる日は、訪れないのか。

今は蜜柑を含めて誰にも分からない。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後鍵を加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第三巻 四一〇番」

「橘を 宿に植ゑ生ほし 立ちて居て 後に悔ゆとも 験あらめやも」

ひらがなの読み方は「たちばなを やどにうゑほし たちてゐて のちにくゆとも しるしあらめやも」

作者は「坂上郎女(さかのうえのいつらめ)」

歌の意味は「橘を庭に植えて、ちゃんと育つか心配してきたのに、ちょっと油断している間に取られてしまったら、どうしようもないことです。」となるそうです。

原文は「橘乎 屋前尓殖生 立而居而 後雖悔 驗将有八方」

育ててきた愛娘が、いやな男性にとられたりしないかと心配をしている歌と解釈されているそうです。

「橘(たちばな)」についてです。

ミカン科常緑小高木です。

「日本たちばな、または、ミカン科の総称」と考えられています。

「日本たちばな」は、日本産です。

現在の暦で六月頃に、小さい白い花が咲き、現在の暦の秋から冬頃に、小さい実が成るそうです。

実は熟しても酸味や苦味が強いために食用にはしていないそうです。

古事記では「橘」は「非時香果(ときじくのみ)」とされているそうです。

「非時香果」とは、いつまでも香り高い果実という意味だそうです。

「橘」の実には、尊い生命力が宿ると信じられていたようです。

「風呂」についてです。

江戸時代には銭湯をたくさんの人達が利用していました。

現在とは違い「蒸し風呂」のようになっていたそうです。

「戸棚風呂」と呼ばれる形だったそうです。

熱くなっている小石の上に水を掛けて蒸気を出していたそうです。

浴槽には膝の高さほどのお湯しかありませんでした。

下半身はお湯に浸して、上半身は小石から出る蒸気で温めていたそうです。

蒸気が逃げないようにするために、「石榴口(ざくろぐち)」が考えられたそうです。

簡単な説明ですが、天井から低く板を下げて、蒸気を逃げないようにしていました。

お風呂に入る人達はこの板をくぐって、風呂場の中へと入っていったそうです。

現在でいう「風呂」に近い、深く浸かる「風呂」も江戸時代に出来ました。

「据え風呂」というそうです。

「慶長年間の末頃」に出来たそうです。

井戸水などから沸かす風呂だったそうです。

一般の庶民の家に広まったそうです。

普及していたのは「鉄砲風呂」や「五右衛門風呂」だったそうです。

「鉄砲風呂」は、鉄の筒に燃えている薪を入れてお湯を温める風呂です。

鉄の筒でやけどをしないように、筒を遮るように柵で防護していたそうです。

この形の風呂は、江戸で主流になっていたそうです。

「五右衛門風呂」は、下の鉄釜を熱して温める風呂です。

こちらはやけどをしないように、「釜板、兼、底板」を下に敷いて風呂に入ったそうです。

この形の風呂は、関西で主流になっていたそうです。

「蜜柑湯(みかんゆ)」についてです。

日陰干しした蜜柑の皮を布袋に入れて、浴槽に浸してお風呂に入ります。

現在の一般的な浴槽だと、20個前後の皮があると良いらしいです。

血行が良くなり、保湿効果があるそうです。

蜜柑の皮の成分によって美肌効果もあるといわれているそうです。

「蜜柑(みかん)」についてです。

江戸時代の末期には、既に「蜜柑」を食べていました。

現在は、「蜜柑」と言うと「温州みかん(うんしゅうみかん)」を想像する方が多いと思います。

当時は「紀州みかん(きしゅうみかん)」の方が良く食べられていたようです。

最初は「蜜柑」というと「紀州みかん」を想像や差していたそうです。

「温州みかん」は後から作られた「蜜柑」です。

当初の「温州みかん」は余り広まらなかったようです。

「小春(こはる)」についてです。

「初冬に穏やかで暖かい春のような日和が続く事を表す言葉。陰暦十月の異称。」です。

冬の季語です。

「小春日和(こはるびより)」についてです。

「小春の頃の穏やかで暖かい気候。」をさす言葉です。

冬の季語です。

この物語の補足です。

この物語に登場する人物に、物語の時間設定に関係なく、娘がいるかについて書きます。

近藤勇さんは、近藤ツネさん(正妻)との間に、近藤タマさんがいます。

近藤勇さんは、お孝さんとの間にお勇さん(実在の人物ではない説があります)がいます。

土方歳三さんは独身で亡くなっているようですが、女性との間に女の子が生まれた説があります。

沖田惣次郎さん(後の“沖田総司さん”)は、結婚をしたかは不明ですが、女性との間に女の子が生まれた説があります。

山口一さん(後の“斉藤一さん”・“藤田五郎さん”)は、藤田時尾さんと結婚する前に別な女性と結婚していますが、子供がいたかの確認は取れませんでした。

藤田時尾さんとの間には、三人の男の子はいますが、女の子はいないようです。

山口廣明さんは、女の子がいます。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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