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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜
〜 桜湯と八重桜 我家を見れば 〜
登場人物
藤田五郎、藤田時尾、藤田勉、敬一[沖田総司の息子]、美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]
「あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕もまかず 桜皮巻き 作れる船に 真楫貫き 我が漕ぎ来れば 淡路の 野島も過ぎ 印南嬬 辛荷の島の 島の際ゆ 我家を見れば 青山の そことも見えず 白雲も 千重になり来ぬ 漕ぎ廻むる 浦のことごと 行き隠る 島の埼々 隈も置かず 思ひぞ我が来る 旅の日長み」
「万葉集 第六巻 九四二番」より
作者:山部赤人(やまべのあかひと)
今は春。
藤田五郎と沖田総司の息子の敬一が初めて逢ってから、約一年が経っている。
ここは、東京。
藤田五郎と敬一が初めて逢った時に咲いていた染井吉野は散り始めた。
今は八重桜が見頃へと向かって咲いている。
ここは、敬一と母親の美鈴の住む家。
美鈴は庭で洗濯物を微笑んで干している。
敬一は縁側を元気良く雑巾掛けしている。
ここは、縁側。
敬一は雑巾掛けを終わると、美鈴を笑顔で見た。
美鈴は庭で洗濯物を微笑んで干している。
敬一は美鈴を笑顔で見た。
それから僅かに後の事。
ここは、庭。
美鈴は洗濯物を微笑んで干している。
敬一は美鈴の傍に笑顔で来た。
美鈴は洗濯物を干すのを止めると、敬一を微笑んで見た。
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「お母さん。桜湯に浸かって気持ち良かったよね。」
美鈴は敬一に微笑んで頷いた。
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「桜が散って少し経ったら、来年の春のための桜湯の準備をしようよ。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「夏の初めに桜湯の準備をしましょう。斉藤さんにはいつもお世話になっているから、来年の春のための桜湯の準備の時は、斉藤さんとご家族の分の桜の皮も用意しましょう。桜の皮の用意を忘れていたら、お母さんに教えてね。」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「分かった。」
美鈴は敬一を微笑んで見た。
それから暫く後の事。
ここは、東京。
ゆっくりと陽が落ち始めている。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
夕飯も終わり、片付けも終わった。
ここは、食卓の有る部屋。
美鈴は繕い物を微笑んで始めた。
敬一は勉強の道具を笑顔で持ってきた。
美鈴は縫い物を止めると、敬一を微笑んで見た。
敬一は勉強道具を食卓の上に置くと、美鈴に微笑んで話し出す。
「お母さん。桜の花を詠んだ歌はたくさんあるよね。」
美鈴は敬一に微笑んで頷いた。
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「桜の木を詠んだ歌もあるよね。桜の皮を詠んだ歌は有るのかな?」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「桜の皮を詠んだとされる歌を一首だけ知っているわ。」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「教えてくれるかな。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「勉強はしなくても良いの?」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「別な時にしっかりと勉強する。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「桜の皮を詠んだとされる歌は、長歌なの。それでも良いかしら?」
敬一は美鈴に微笑んで頷いた。
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「“あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕もまかず 桜皮巻き 作れる船に 真楫貫き 我が漕ぎ来れば 淡路の 野島も過ぎ 印南嬬 辛荷の島の 島の際ゆ 我家を見れば 青山の そことも見えず 白雲も 千重になり来ぬ 漕ぎ廻むる 浦のことごと 行き隠る 島の埼々 隈も置かず 思ひぞ我が来る 旅の日長み”」
敬一は美鈴に感心しながら話し出す。
「お母さん。とても長い歌を覚えているんだ。凄いね。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「今の歌は、お父さんと斉藤さんも覚えているのよ。」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「お父さんも斉藤さんも凄いね。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「お父さんが桜の皮を詠んだとされる長歌を覚えたのは、お父さんが京都に来る前になるそうよ。お父さんは道場主の方に桜湯の一番風呂に浸かりたいと言ったそうなの。道場主の方達は、お父さんが桜の皮を詠んだとされる長歌を間違えずに詠えたら、一番風呂に浸かって良いと言ったそうなの。お父さんは真剣になって覚えたそうよ。お父さんはお母さんに今の内容の話を照れながら話した時があるの。」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「お父さんは間違えずに詠って一番風呂に浸かったんだ。」
美鈴は敬一に微笑んで頷いた。
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「お父さんもお母さんも斉藤さんもみんな凄いね。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「凄いのは、お父さんと斉藤さんよ。」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「お母さんも凄い人だよ。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「敬一。ありがとう。」
敬一は美鈴を微笑んで見た。
美鈴も敬一を微笑んで見た。
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「お母さん。僕も同じ長歌を覚えたい。歌について詳しく教えてくれるかな?」
美鈴は敬一に微笑んで頷いた。
敬一は美鈴を微笑んで見た。
ちょうど同じ頃。
ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉が住む家。
食事と後片付けが終わり、落ち着いた雰囲気になっている。
ここは、食卓の有る部屋。
時尾は微笑んで座っている。
勉は時尾を笑顔で見ている。
藤田五郎は、時尾と勉の傍に普通に来た。
時尾は藤田五郎を微笑んで見た。
勉は藤田五郎を見ると、笑顔で話し出す。
「さくらゆ。」
藤田五郎は勉を普通の表情で見た。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「桜の皮を少し分けて頂きました。近い内に桜湯を用意したいと思います。」
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
時尾は勉を見ると、微笑んで話し出す。
「近い内に桜湯に浸かりましょうね。」
勉は時尾を見ると、笑顔で話し出す。
「おにいちゃん。さくらゆ。」
時尾は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は時尾に普通に話し出す。
「敬一の家の分の桜の皮を用意できるか?」
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「一回分程の余裕はあります。」
藤田五郎は時尾に普通に話し出す。
「一回分だけになるが用意してくれ。」
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「敬一君がいつ訪れても良いように準備をしておきます。」
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
時尾は勉に微笑んで話し出す。
「敬一君も桜湯に浸かれるわよ。勉。良かったわね。」
勉は時尾に笑顔で頷いた。
時尾は勉を微笑んで見た。
藤田五郎は時尾と勉を普通の表情で見た。
それから数日後の事。
ここは、東京の町。
八重桜が綺麗に咲いている。
ここは、藤田五郎の家。
藤田五郎、時尾、勉が居る。
ここは、玄関。
敬一は元気良く訪れた。
時尾は敬一の前に微笑んで現れた。
敬一は時尾に微笑んで話し出す。
「斉藤さんに会いに来ました。」
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「藤田は部屋に居ます。遠慮しないで部屋に行ってね。」
敬一は時尾に微笑んで話し出す。
「分かりました。」
時尾は敬一を微笑んで見た。
敬一は家の中に微笑んで入って行った。
美鈴は家の中に微笑んで入って行った。
それから少し後の事。
ここは、藤田五郎の部屋。
藤田五郎は普通に居る。
敬一は微笑んで居る。
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「先日の出来事ですが、お母さんから桜の皮を詠んだ長歌を教えてもらいました。」
藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「お母さんから、お父さんと斉藤さんが、桜の皮を詠んだ長歌を覚えていると教えてもらいました。お母さんから、お父さんが桜湯の一番風呂に浸かるために、桜の皮を詠んだ長歌を覚えた時の出来事についても教えてもらいました。」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一は桜の皮を詠んだ長歌を覚えたのか?」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「はい。」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「せっかくだから詠ってみろ。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「“あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕もまかず 桜皮巻き 作れる船に 真楫貫き 我が漕ぎ来れば 淡路の 野島も過ぎ 印南嬬 辛荷の島の 島の際ゆ 我家を見れば 青山の そことも見えず 白雲も 千重になり来ぬ 漕ぎ廻むる 浦のことごと 行き隠る 島の埼々 隈も置かず 思ひぞ我が来る 旅の日長み”」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「総司より筋が良いな。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「褒めて頂けて嬉しいです。」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一。桜の皮が手に入った。帰る時に持っていけ。」
敬一は藤田五郎に慌てた様子で話し出す。
「僕は桜の皮を頂くために歌を詠んだ訳ではありません!」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一が長歌を詠んでも詠めなくても、桜の皮は渡すつもりだった。敬一が気にする必要はない。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「お気遣いありがとうございます。桜の皮を頂いて帰ります。」
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
敬一は藤田五郎を微笑んで見た。
それから暫く後の事。
ここは、藤田五郎の家。
玄関。
藤田五郎は普通に居る。
時尾は小さい包みを微笑んで持っている。
敬一は微笑んで居る。
時尾は敬一に小さい包みを差し出すと、微笑んで話し出す。
「桜湯に浸かって楽しんでね。」
敬一は時尾から小さい包みを受け取ると、藤田五郎と時尾に笑顔で話し出す。
「ありがとうございます!」
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
敬一は小さい包みを持ちながら、藤田五郎と時尾に笑顔で礼をした。
時尾は敬一を微笑んで見た。
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
敬一は小さい包みを持ちながら、笑顔で居なくなった。
それから暫く後の事。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
玄関。
敬一は小さい包みを持ちながら、笑顔で帰ってきた。
美鈴は敬一の前に微笑んで現れた。
敬一は小さい包みを持ちながら、美鈴に笑顔で話し出す。
「お母さん! ただいま!」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「敬一。お帰りなさい。」
敬一は美鈴に小さい包みを差し出すと、笑顔で話し出す。
「斉藤さんから桜の皮を頂いたんだ! 桜湯に浸かって楽しんで欲しいと話していたよ!」
美鈴は敬一から小さい包みを受け取ると、敬一に心配そうに話し出す。
「敬一。斉藤さんや時尾さんに、桜湯に浸かりたいと話したの?」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「斉藤さんが桜の皮を分けてらったから、僕とお母さんに少しだけお裾分けしてくれたんだって。断りの返事をしたけれど、斉藤さんが遠慮せずに桜の皮を受け取るように話したんだ。桜の皮を頂いた時は、斉藤さんと時尾さんにお礼を言ったよ。」
美鈴は小さい包みを持ちながら、敬一に微笑んで話し出す。
「八重桜が咲く間に、八重桜を浮かべて桜湯に浸かりましょう。」
敬一は美鈴に笑顔で頷いた。
美鈴は小さい包みを持ちながら、敬一に微笑んで話し出す。
「夏の初めになったら、斉藤さんの分の桜の皮をたくさん用意しましょうね。」
敬一は美鈴に笑顔で頷いた。
敬一は家の中に笑顔で入っていった。
美鈴は小さい包みを持ちながら、家の中に微笑んで入って行った。
それから数日後の事。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
敬一の明るい声が聞こえてきた。
「お母さん! 桜湯に浸かって気持ち良かったね!」
「お母さんが桜湯に八重桜を浮かべてくれたから、更に気持ち良くなったよ!」
「お母さん! ありがとう!」
「次に斉藤さんの家に出掛けた時に、斉藤さんと時尾さんに報告とお礼を言うね!」
「“あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕もまかず 桜皮巻き 作れる船に 真楫貫き 我が漕ぎ来れば 淡路の 野島も過ぎ 印南嬬 辛荷の島の 島の際ゆ 我家を見れば 青山の そことも見えず 白雲も 千重になり来ぬ 漕ぎ廻むる 浦のことごと 行き隠る 島の埼々 隈も置かず 思ひぞ我が来る 旅の日長み”」
季節は春。
桜の咲く頃。
藤田五郎、時尾、勉、敬一、美鈴にとって、和やかな時間が続いている。
* * * * * *
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ここからは後書きになります。
「お風呂」についてです。
今回の物語は、明治時代に起きた西南戦争が終わった後で、藤田五郎さんと敬一君が初めて逢ってから約一年後の設定のため、江戸時代のお風呂を基にして説明します。
江戸時代の銭湯は、現在とは違い「蒸し風呂」のようになっていて、「戸棚風呂」と呼ばれる形だったそうです。
熱くなっている小石の上に水を掛けて蒸気を出していたそうです。
浴槽には膝の高さほどのお湯しかありませんでした。
下半身はお湯に浸して、上半身は小石から出る蒸気で温めていたそうです。
蒸気が逃げないようにするために、「石榴口(ざくろぐち)」が考えられたそうです。
簡単な説明ですが、天井から低く板を下げて、蒸気を逃げないようにしていました。
お風呂に入る人達はこの板をくぐって、風呂場の中へと入っていったそうです。
現在のお風呂に近い、深く浸かるお風呂も江戸時代に出来ました。
「据え風呂」というそうです。
慶長年間の末頃に出来たそうです。
井戸水などから沸かすお風呂だったそうです。
一般の庶民の家に広まったそうです。
普及していたのは「鉄砲風呂」や「五右衛門風呂」だったそうです。
「鉄砲風呂」は、簡単に言うと、鉄の筒に燃えている薪を入れてお湯を温めるお風呂です。
鉄の筒でやけどをしないように、筒を遮るように柵で防護していたそうです。
この形のお風呂は、江戸で主流になっていたそうです。
「五右衛門風呂」は、簡単に言うと、下の鉄釜を熱して温めるお風呂です。
こちらはやけどをしないように、「釜板、兼、底板」を下に敷いてお風呂に入ったそうです。
この形のお風呂は、関西で主流になっていたそうです。
「桜湯(さくらゆ)」についてです。
「桜湯」と言うと、「塩漬けにした八重桜に熱湯を注いだ飲み物。婚礼などの祝賀などにお茶の代わりに用いる飲み物。」を想像すると思います。
今回の物語に登場する「桜湯」は、「柚子湯」や「菖蒲湯」に代表される薬用風呂の一種類です。
「桜湯」についてです。
桜の樹皮を剥ぎ、刻んで日陰干しにしておきます。
桜の木は、「染井吉野(そめいよしの)」、「大島桜(おおしまさくら)」、「山桜(やまざくら)」、のいずれでも大丈夫です。
桜の樹皮を剥ぐのは、桜の花が咲き終わった後の夏以降になります。
現在は、花屋で桜の花を販売している時があるので、その枝を使う事も出来ます。
他には、漢方を扱う薬局で、桜の樹皮が販売している事があります。
桜湯の作り方について簡単に説明します。
乾燥して樹皮を布袋に入れます。
布袋を鍋に入れて、水から15〜20分ほど煮出します。
煮出した汁と布袋ごと浴槽に入れます。
かき回してからお風呂に入ります。
桜の花びらを浮かべると、桜湯に入っているという雰囲気が出ると思います
桜の樹皮を煮出した汁には、「消炎効果」があります。
湿疹や打ち身などに効果があります。
この物語に登場する歌は、「万葉集 第六巻 九四二番」です。
長歌です。
「あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕もまかず 桜皮巻き 作れる船に 真楫貫き 我が漕ぎ来れば 淡路の 野島も過ぎ 印南嬬 辛荷の島の 島の際ゆ 我家を見れば 青山の そことも見えず 白雲も 千重になり来ぬ 漕ぎ廻むる 浦のことごと 行き隠る 島の埼々 隈も置かず 思ひぞ我が来る 旅の日長み」
ひらがなの読み方は「あぢさはふ いもがめかれて しきたへの まくらもまかず かにはまき つくれるふねに まかぢぬき わがこぎくれば あはぢの のしまもすぎ いなみつま からにのしまの しまのまゆ わぎへをみれば あおやまの そこともみえず しらくもも ちへになりきぬ こぎたむる うらのことごと ゆきかくる しまのさきざき くまもおかず おもひぞわがくる たびのけながみ」です。
作者は「山部赤人(やまべのあかひと)」です。
意味は「嫁さまの目のとどかない遠くにやってきて、手枕(てまくら)もしないで、桜皮(かには)を巻いた船に梶(かじ)を通して漕(こ)いでくると、淡路(あはぢ)の野島(のしま)も印南嬬(いなみつま)も過ぎて、辛荷(からに)の島々の間からわが家のある方を見ると、山のどこかも分からず、たくさん雲が重なってきました。
漕(こ)ぎめぐる浦(うら)ごとに見えなくなるどの島の埼でもいつでもどこでも故郷(ふるさと)のことを思います。旅が長いので。」となるそうです。
原文は「味澤相 妹目不■見而 敷細乃 枕毛不巻 櫻皮纒 作流舟貫 吾榜来者 淡路乃 野島毛過 伊奈美嬬 辛荷乃嶋之 嶋際従 吾宅乎見者 青山乃 曽許十万方不見 白雲毛 千重尓成来沼 許伎多武流 浦乃盡 往隠 嶋乃埼々 隈毛不置 憶曽吾来 客乃氣長弥」です。
「■」は文字変換が出来ない字でした。
「野島(のしま)」は、淡路町の北淡町(ほくたんちょう)の「野島」にあたります。
「印南嬬(いなみつま)」は、「加古川の河口付近」と考えられているそうです。
「辛荷(からに)」は、「兵庫県揖保郡(いぼぐん)御津町(みつちょう)室津(むろつ)」の沖にある三つの小島だということだそうです。
今回の物語には、歌の中の地名は登場しません。
万葉集には一首だけ「櫻皮(かには)」が詠まれています。
「櫻皮(かには)」は「桜の木の樹皮」だと考えられています。
「櫻皮(かには)」には「白樺の樹皮」という説もあるそうです。
今回の物語では、「櫻皮(かには)」を「桜の樹皮」として書きました。
桜、特に「山桜」や「霞桜(かすみざくら)」などの樹皮は、はがれにくい性質を持っているそうなので、弓矢家具などに巻いたり張ったりして、強く丈夫な物にする事が出来るそうです。
「桜皮(かには)巻き作れる船」と言う言葉がありますが、桜の皮を巻いて作った船と考えられているそうです。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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