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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 春夏秋冬 夏 母とふ花の 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

藤田五郎、藤田時尾、藤田勉、敬一[沖田総司の息子]、美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]




「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」

「万葉集 第二十巻 四三二三番」より

作者:丈部真麻呂(はせべのままろ)




季節が春から夏になって間もない頃。



ここは、東京。



天気の良い日や雨の日は僅かに暑さを感じる時はあるが、陽の落ちる時間になると暑さは感じなくなる。



牡丹、芍薬、杜若、菖蒲、茨、などの花が綺麗に咲いている。



今日は青空が広がっている。



ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。



縁。



敬一は拭き掃除を笑顔でしている。



美鈴は縁に微笑んで来た。



敬一は拭き掃除を笑顔で終えた。



美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「掃除の邪魔をしてごめんね。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さんが縁に来た時に、縁の拭き掃除が終わったんだ! お母さんは邪魔をしていなよ! 安心して!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。いつも縁の掃除をありがとう。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「僕に出来る手伝いをしているだけだよ! お礼は要らないよ!」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! 僕がしっかりと縁を拭いたから、安心して縫い物をしてね!」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「縫い物の道具を取ってくるわ。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。



敬一は家の中に笑顔で入って行った。

美鈴は家の中に微笑んで入って行った。



暫く後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



敬一は外出中のため居ない。

美鈴は居る。



縁。



美鈴は微笑んで縫い物をしている。



美鈴は縫い物を止めると、空を微笑んで見た。



青空が広がっている。



美鈴は縫い物の続きを微笑んで始めた。



数日後の事。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。



藤田五郎、時尾、勉が居る。

敬一も居る。



藤田五郎の部屋。



藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は気持ち良く横になって眠っている。

敬一には掛け布団が掛けてある。



時尾が部屋の中に微笑んで静かに入ってきた。



藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

敬一は気持ち良く横になって眠っている。

時尾は敬一を見ると、藤田五郎に微笑んで静かに話し出す。

「敬一君。気持ち良く寝ていますね。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで静かに話し出す。

「勉が敬一君と遊びたいと話しています。勉には敬一君は疲れて寝ていると話します。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで静かに話し出す。

「敬一君の分の夕飯の支度をしますか?」

藤田五郎は時尾に普通の表情で静かに話し出す。

「美鈴さんが敬一のために夕飯の支度をしているはずだ。俺が敬一を適当な時間に起こす。夕食の準備は要らない。」

時尾は藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。



時尾は部屋を微笑んで静かに出て行った。



暫く後の事。



ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。



玄関。



藤田五郎は普通に居る。

時尾は微笑んで居る。

勉は笑顔で居る。

敬一は恥ずかしく居る。



敬一は、藤田五郎と時尾に恥ずかしく話し出す。

「長く寝てしまいました。ご免なさい。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君は稽古を受けるから疲れるのは仕方がないわ。くつろげる雰囲気だと分かって嬉しいわ。敬一君。遠慮せずに家に来てね。」

敬一は時尾に恥ずかしく話し出す。

「はい。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。またね。たくさん。あそぼ。」

敬一は勉に恥ずかしく話し出す。

「勉君。近い内に遊びに来るね。次は一緒に遊ぼうね。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

勉は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「いってらっしゃい。」

藤田五郎は時尾と勉に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎と勉を不思議な様子で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。行くぞ。」

敬一は藤田五郎を不思議な様子で見た。



藤田五郎は家を普通に出て行った。

敬一は家を僅かに慌てて出て行った。



少し後の事。



ここは、東京。



空の色が青色から橙色へと変わり始めている。



ここは、町中。



藤田五郎は普通に歩いている。

敬一は藤田五郎を見ながら、不思議な様子で歩いている。



敬一は藤田五郎に心配して話し出す。

「僕が斉藤さん家で寝てしまったから、家まで送るのですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一に剣道の稽古を就ける日は、敬一と話す時間が短い。敬一と逢う限られた時間は有意義に使いたい。時間が遅くなるにつれて、外に居る人が減る。敬一と歩きながら話すのも良いと思った。敬一を直ぐに起こさなかった。」

敬一は藤田五郎を申し訳なく見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺が敬一を家まで送る行為は、時尾も勉も了承している。敬一は気にするな。」

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今は、芍薬、菖蒲、杜若、の花の咲く姿が見られます。斉藤さんから春の季節に、“時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ”、を教えてもらいました。お母さんを想い出す夏の花を考えていました。お母さんを想い出す夏の花もたくさんありました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一が美鈴さんを思い出す夏の花は何だ?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「牡丹、杜若、菖蒲、花菖蒲、茨、撫子、芍薬、蓮、紫陽花、百合、鷺草、露草、朝顔、などです。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「確かに多い。」

敬一は藤田五郎を恥ずかしく話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一の話す夏の花を見て、敬一が美鈴さんを思い出す気持ちは分かる。恥ずかしく思うな。」

敬一は藤田五郎に恥ずかしく話し出す。

「露草と朝顔は、秋に咲く花と考えて除きます。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「夏の花に加えるか外すか。敬一に任せる。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「露草と朝顔は、夏の花に残します。お母さんを思い出す秋の花を考えた時に、再び加えたいと思ったら、加えます。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一の望みを受けて、秋にも同じ質問をする。」

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。



暫く後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の在る部屋。



藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

敬一は笑顔で美味しく食事をしている。

美鈴は微笑んで食事をしている。

食卓には、食事、酒、肴が載っている。



敬一は食事をしながら、美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! 杜若と菖蒲を見頃の間に見に行こうよ!」

美鈴は食事をしながら、敬一に微笑んで頷いた。

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、敬一と美鈴を普通の表情で見た。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



玄関。



藤田五郎は普通に居る。

敬一は微笑んで居る。

美鈴も微笑んで居る。



美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「気を付けてお帰りください。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今日もたくさん話しが出来て嬉しかったです。気を付けて帰ってください。」

藤田五郎は敬一と美鈴に普通の表情で頷いた。



藤田五郎は家を普通に出て行った。



「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」

母と言う名前の花は無いかも知れない。

敬一は夏に咲く花を見ると、美鈴の笑顔を思い出す。

藤田五郎は秋になったら、再び質問するのか。

夏の季節の中で答えを知るのは、夏の花だけかも知れない。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の後書きを加筆訂正するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第二十巻 四三二三番」

「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」

ひらがなの読み方は「ときどの はなはさけども なにすれぞ ははとふはなの さきでこずけむ」

作者は「丈部真麻呂(はせべのままろ)」

歌の意味は「季節ごとに花は咲くのに、どうして“母”という花は咲かないのだろうか。(咲くのだったら手折っていっしょに行くのに。)」となるそうです。

原文は「等伎騰吉乃 波奈波佐家登母 奈尓須礼曽 波々登布波奈乃 佐吉泥己受祁牟」

天平勝寶(てんぴょうほうしょう)七年二月六日(755年3月23日)に、交代要員として筑紫(ちくし)に派遣された防人(さきもり)達が詠んだ歌の一首だそうです。

「防人(さきもり)」について簡単に説明します。

防人は、筑紫(つくし)・壱岐(いき)などの北九州の防衛にあたった兵士達の事です。

一説には、崎守(さきもり)の意味があるそうです。

防人には東国の人達が選ばれたそうです。

東国の人達が選ばれた理由については、よく分かってないそうです。

一説には、東国の力を弱めるためともいわれているそうです。

任期は三年で、毎年二月に兵員の三分の一が交替となっていたそうですが、実際には簡単には国に帰してもらえなかったそうです。

東国から行く時は、部領使(ぶりょうし)という役割の人が連れて行ったそうです。

北九州へは徒歩で行ったそうです。

稀な場合だと思いますが、幸運な場合は、船で行く事もあったようです。

帰りは自費だったそうです。

そのため、故郷に帰りたくても帰れない人、無理に帰ろうとして故郷まで帰れずに行き倒れとなる人がいたそうです。

防人の詳細に関しては各自でご確認ください。

この物語に登場する花関連の季語についてです。

季語と現在の暦の開花や見頃の時期が違うと感じる方がいると思います。

開花や見頃の時期は省略して季語のみ書きます。

「牡丹(ぼたん)」・「芍薬(しゃくやく)」・「撫子(なでしこ)」・「紫陽花(あじさい)」・「百合(ゆり)」・「杜若(かきつばた)」・「菖蒲(しょうぶ)」・「花菖蒲(はなしょうぶ)」・「鷺草(さぎそう)」は、夏の季語です。

「蓮(はす)」・「茨(いばら)」は、花は夏の季語で、実は秋の季語です。

「朝顔(あさがお)」・「露草(つゆくさ)」は、秋の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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