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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜
〜 春夏秋冬 秋 母とふ花の 〜
〜 改訂版 〜
登場人物
藤田五郎、藤田時尾、藤田勉、敬一[沖田総司の息子]、美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」
「万葉集 第二十巻 四三二三番」より
作者:丈部真麻呂(はせべのままろ)
今は秋。
ここは、東京。
暑さは和らぎ、過ごしやすい時間が増えてきた。
ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。
庭。
敬一は木刀を使い真剣な表情で素振りをしている。
縁。
美鈴は微笑んで縫い物をしている。
少し後の事。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
縁。
美鈴は微笑んで縫い物をしている。
敬一は木刀を持ち、美鈴の傍に微笑んで来た。
美鈴は縫い物を止めると、敬一に微笑んで話し出す。
「素振りの稽古。終わったの?」
敬一は木刀を持ち、美鈴に微笑んで話し出す。
「終わったよ。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「飲み物とおやつを用意するわね。」
敬一は木刀を持ち、美鈴に微笑んで話し出す。
「今日は、おやつは要らないよ。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「お腹が空いていないの?」
敬一は木刀を持ち、美鈴に微笑んで話し出す。
「お腹は空いているけれど、稽古の後に幾度もおやつを用意してくれるよね。お母さんに申し訳なく思ったんだ。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「お母さんは、敬一が美味しく食べる姿を見るのが楽しみなの。遠慮しないで。」
敬一は木刀を持ち、美鈴に微笑んで話し出す。
「遠慮していないよ。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「今日は、敬一の望みどおり、おやつの用意は止めるわ。代わりに、夕飯のおかずをたくさん用意するわね。」
敬一は木刀を持ち、美鈴に微笑んで話し出す。
「夕飯のおかずが増えるのは嬉しいけれど、無理しないでね。」
美鈴は敬一に微笑んで頷いた。
敬一は木刀を持ち、美鈴を微笑んで見た。
美鈴は縫い物の片付けを微笑んで始めた。
敬一は木刀を持ち、家の中に微笑んで入って行った。
美鈴は縫い物の片付けを微笑んで終えた。
美鈴は縫い物を微笑んで持った。
美鈴は縫い物を持ち、家の中に微笑んで入って行った。
数日後の事。
ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。
敬一が訪ねている。
食卓の有る部屋。
時尾は焙じ茶を微笑んで飲んでいる。
勉は焙じ茶を笑顔で美味しく飲んでいる。
敬一は焙じ茶を微笑んで美味しく飲んでいる。
時尾は焙じ茶を飲みながら、敬一に微笑んで話し出す。
「敬一君に剣道の稽古を就ける約束の日なのに、五郎さんの都合で遅れているわね。ご免なさい。」
敬一は時尾に微笑んで話し出す。
「斉藤さんは、忙しい時間を割いて、僕に剣道の稽古を就けています。謝らないでください。」
時尾は焙じ茶を飲みながら、敬一を微笑んで見た。
敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾を笑顔で見た。
勉は焙じ茶を飲みながら、時尾と敬一を笑顔で見ている。
敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾に微笑んで話し出す。
「お母さんは、僕が素振りなどの稽古を終えると、飲み物とおやつを用意してくれます。数日前におやつは要らないと話したら、夕飯のおかずが多くなりました。」
時尾は焙じ茶を飲みながら、敬一に微笑んで話し出す。
「敬一君がお腹を空かせて辛い思いをしないように気遣っているのね。」
敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾に心配して話し出す。
「僕は稽古の後にお腹が空いた様子に見えますか?」
勉は焙じ茶を飲みながら、敬一に笑顔で話し出す。
「おにいちゃん。たくさん。げんき。」
時尾は焙じ茶を飲みながら、敬一に微笑んで話し出す。
「私は敬一君が稽古の後にお腹を空かせた様子に見えないわ。五郎さんは稽古が終わってから敬一君と長く居るわよね。五郎さんに質問するのも良いと思うわ。」
敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾を微笑んで見た。
藤田五郎が、時尾、勉、敬一の傍に普通に来た。
時尾は焙じ茶を飲むのを止めると、藤田五郎に申し訳なく話し出す。
「直ぐに気付きませんでした。すいません。」
藤田五郎は時尾に普通に話し出す。
「気にするな。」
勉は焙じ茶を飲みながら、藤田五郎に笑顔で話し出す。
「おかえり。」
藤田五郎は勉に普通の表情で頷いた。
敬一は焙じ茶を飲むのを止めると、藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一。遅くなった。悪かった。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「大丈夫です。」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一が焙じ茶を飲み終わったら、剣道の稽古の準備を始める。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「はい。」
藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。
敬一は焙じ茶を微笑んで美味しく飲んだ。
藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。
敬一は焙じ茶を飲み終わると、藤田五郎、時尾、勉に微笑んで話し出す。
「ご馳走様でした。」
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
時尾は敬一に微笑んで頷いた。
勉は焙じ茶を飲みながら、敬一に笑顔で話し出す。
「はい。」
時尾は勉と敬一を微笑んで見た。
藤田五郎は普通に居なくなった。
敬一は微笑んで居なくなった。
暫く後の事。
ここは、東京。
空の色が僅かに橙色に染まり始めている。
藤田五郎は普通に歩いている。
敬一は微笑んで歩いている。
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「お母さんは、僕が素振りなどの稽古を終えると、飲み物とおやつを用意してくれます。数日前におやつは要らないと話したら、夕飯のおかずが多くなりました。時尾さんに以上の内容を話すと、お母さんは僕がお腹を空かせて辛い思いをしないように気遣っていると話しました。時尾さんに僕が稽古の後にお腹が空いた様子に見えるか話しました。時尾さんは、僕が稽古の後にお腹を空かせた様子に見えないと話した後に、斉藤さんに同じ質問をするように話しました。時尾さんは気配りの出来る人物です。時尾さんは本当に気付いていないのでしょうか? 斉藤さんは僕が稽古の後にお腹が空いた様子に見えますか?」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「俺の見る限りでは、敬一が稽古の後にお腹が空いた様子には見えない。時尾の返事の内容は本当だと思う。ただし、敬一が美鈴さんにだけ見せる言動や仕草があれば、美鈴さんだけ気付く可能性がある。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「お母さんが無理をしないように、少し気を引き締めて過ごします。」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一が無理をして過ごせば、美鈴さんは必ず気付く。美鈴さんを心配させないために、敬一は無理に気を引き締めず、今までどおりに過ごせ。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「はい。」
藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。
敬一は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一。今は秋だ。良い機会だから、家に着くまでに、“時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ”、で繋がる質問に答えろ。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「朝顔、露草、葛、萩、桔梗、女郎花、藤袴、芙蓉、菊、金木犀、などです。」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「今回も多いな。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「はい。」
藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。
敬一は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「冬にも同じ質問をする。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「はい。」
藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。
敬一は藤田五郎を微笑んで見た。
暫く後の事。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
食卓の有る部屋。
食卓の上には、食事と酒と肴が載っている。
藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。
敬一は笑顔で美味しく食事をしている。
美鈴は微笑んで食事をしている。
美鈴は食事を止めると、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「敬一を家まで幾度も送っています。斉藤さんや時尾さんに、迷惑を掛けないように、敬一は家に早く帰らせます。」
藤田五郎は杯の酒を飲みながら、美鈴に普通に話し出す。
「俺が敬一と外を歩きながら話すために、敬一を家まで送っている。俺と敬一が過ごす様子を、総司に報告する機会も兼ねている。心配するな。」
美鈴は藤田五郎を微笑んで見た。
敬一は食事を止めると、藤田五郎を僅かに動揺して見た。
藤田五郎は杯の酒を飲みながら、敬一に普通に話し出す。
「敬一はしっかりとしている。総司への報告の内容の心配は要らない。」
敬一は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は杯の酒を飲みながら、敬一を普通の表情で見た。
美鈴は藤田五郎と敬一を微笑んで見た。
暫く後の事。
ここは、東京。
月が綺麗に輝いている。
ここは、藤田五郎、時尾、勉の家。
藤田五郎の部屋の前に在る縁。
藤田五郎は月を普通の表情で見ている。
時尾が藤田五郎の傍に微笑んで来た。
藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「今は秋です。敬一君を家に送る間に、敬一君に春夏に続く質問をしたと思いました。」
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「敬一君が美鈴さんを喩えた花は何ですか?」
藤田五郎は時尾に普通に話し出す。
「朝顔、露草、葛、萩、桔梗、女郎花、藤袴、芙蓉、菊、金木犀。“など”、を最後に付けた。敬一は答える花の種類を絞ったと思う。」
時尾は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「冬も素敵な花はたくさん咲きます。冬の答えが楽しみですね。」
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
時尾は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は月を普通の表情で見た。
時尾は月を微笑んで見た。
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」
母と言う名前の花は無いかも知れない。
敬一は秋に咲く花を見ると、美鈴の笑顔を思い出す。
藤田五郎は冬になったら、再び質問するのか。
秋の季節の中で答えを知るのは、秋の花のみかも知れない。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の改訂版です。
改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上、ご了承願います。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
この物語に登場する歌は「万葉集 第二十巻 四三二三番」
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」
ひらがなの読み方は「ときどの はなはさけども なにすれぞ ははとふはなの さきでこずけむ」
作者は「丈部真麻呂(はせべのままろ)」
歌の意味は「季節ごとに花は咲くのに、どうして“母”という花は咲かないのだろうか。(咲くのだったら手折っていっしょに行くのに。)」となるそうです。
原文は「等伎騰吉乃 波奈波佐家登母 奈尓須礼曽 波々登布波奈乃 佐吉泥己受祁牟」
天平勝寶(てんぴょうほうしょう)七年(755年)二月六日に、交代要員として筑紫(ちくし)に派遣された防人(さきもり)達が詠んだ歌の一首だそうです。
「防人(さきもり)」について簡単に説明します。
防人は、筑紫(つくし)・壱岐(いき)などの北九州の防衛にあたった兵士達の事です。
一説には、崎守(さきもり)の意味があるそうです。
防人には東国の人達が選ばれたそうです。
東国の人達が選ばれた理由については、よく分かってないそうです。
一説には、東国の力を弱めるためといわれているそうです。
任期は三年で、毎年二月に兵員の三分の一が交替となっていたそうですが、実際には簡単には国に帰してもらえなかったそうです。
東国から行く時は、部領使(ぶりょうし)という役割の人が連れて行ったそうです。
北九州へは徒歩で行ったそうです。
稀な場合だと思いますが、幸運な場合は、船で行く事もあったようです。
帰りは自費だったそうです。
そのため、故郷に帰りたくても帰れない人、無理に帰ろうとして故郷まで帰れずに行き倒れとなる人がいたそうです。
防人の詳細は各自でご確認ください。
この物語に登場する花関連の季語についてです。
季語と現在の暦の開花や見頃の時期が違うと感じる方がいると思います。
開花や見頃の時期は省略して季語のみ書きます。
「朝顔(あさがお)」・「露草(つゆくさ)」・「葛(くず)」・「萩(はぎ)」・「桔梗(ききょう)」・「女郎花(おみなえし)」・「藤袴(ふじばかま)」・「芙蓉(ふよう)」・「菊(きく)」・「金木犀(きんもくせい)」は、秋の季語です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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