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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 梅見月 梅の花 かくてもあるがね 〜


登場人物

藤田五郎、藤田時尾、藤田勉、敬一[沖田総司の息子]、美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]



「雪の寒み 咲きには咲かぬ 梅の花 よしこのころは かくてもあるがね」

「万葉集 第十巻 二三二九番」

作者:詠み人知らず



ここは、東京。



寒い日が続くが、天気の良い日は僅かに暖かさを感じるようになった。

梅の花が咲く姿を見るようになった。



ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。



縁の傍。



日差しが当たり、僅かに暖かくなっている。



美鈴は微笑んで縫い物をしている。



敬一は微笑んで来た。



美鈴は縫い物を止めると、敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。梅の花が綺麗に咲き始めたね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「東京には梅の花の名所や梅の花が綺麗に咲く所が幾つも在るよね。梅の花が綺麗に咲く間に、向島に在る庭園に行こうよ。」

美鈴は敬一を困惑した様子で見た。

敬一は美鈴に慌てて話し出す。

「お母さんは忙しいから突然に誘われても困るよね! 今の話は忘れて!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出そうとした。

敬一は美鈴が話し出す前に、美鈴に慌てて話し出す。

「斉藤さんの家に出掛けてくる!」



敬一は慌てて走り出した。



美鈴は敬一を心配して見た。



暫く後の事。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。



藤田五郎は仕事のため居ない。

時尾と勉は、居る。



玄関。



敬一が元気良く訪れた。



時尾は微笑んで現れた。

勉は笑顔で現れた。



敬一は時尾と勉に微笑んで話し出す。

「時尾さん。勉君。こんにちは。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「こんにちは。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは仕事ですよね。」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は時尾を恥ずかしく見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「外は寒いわよね。お茶を用意するわ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「勉君と一緒に遊びたいと思っています。お茶は後で頂いても良いですか?」

勉は時尾と敬一を笑顔で見た。

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「勉。敬一君にお茶を飲んで体を温めてもらいましょう。敬一君が帰る前に、お母さんと勉と敬一君でお茶を飲みましょう。敬一君には少しだけ一緒に遊んでもらいましょう。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

敬一は時尾と勉を微笑んで見た。



時尾は家の中へ微笑んで入って行った。

勉は家の中へ笑顔で入って行った。

敬一は家の中へ微笑んで入って行った。



少し後の事。



ここは、藤田五郎の家。



食卓の在る部屋。



時尾は微笑んで座っている。

勉は笑顔で座っている。

敬一は笑顔で座っている。

食卓にはお菓子が載っている。

時尾と敬一の前には、焙じ茶が置いてある。

勉の前には薄めの焙じ茶が置いてある。



敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「いただきます。」

時尾は勉と敬一に微笑んで頷いた。

敬一は焙じ茶を美味しく飲み始めた。

勉は焙じ茶を笑顔で飲み始めた。

時尾は敬一と勉を見ながら、焙じ茶を微笑んで飲み始めた。

敬一は焙じ茶を美味しく飲み干した。

時尾は焙じ茶を飲むのを止めると、敬一の湯飲みに微笑んで焙じ茶を注いだ。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

時尾は敬一を微笑んで頷いた。

敬一は焙じ茶を美味しく飲み始めた。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。藤田に言付けがあれば、私から伝えるわ。私や藤田に話し難い内容ならば、手紙を書いて。私から藤田に手紙を渡すわ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「言付けとは違いますが、時尾さんに話しても良いですか?」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「向島に梅の花が綺麗に咲く庭園が在りますよね。」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は時尾に考え込んで話し出す。

「お父さんは東京を江戸と呼んだ頃に、向島の庭園に出掛けたそうです。お母さんと僕は、長く京都に住んでいたので、向島の庭園に一度も出掛けていません。お母さんは花を見るのが大好きです。お母さんはお父さんと同じ所で梅の花を見たら、とても喜ぶと思います。お母さんに向島の庭園に出掛けようと話しました。お母さんは困った表情になりました。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君は美鈴さんと向島の庭園に出掛けたいの?」

敬一は時尾に考え込んで話し出す。

「はい。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。私の考えを話しても良いかしら?」

敬一は時尾に考え込んで話し出す。

「お願いします。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「美鈴さんは、敬一君のお父さんの出掛けた所で梅の花を見たい気持ちがあると思うの。美鈴さんは、敬一君のお父さんの出掛けた所で梅の花を見たい気持ち以上に、敬一君をしっかりと守り育てる気持ちがあると思うの。」

敬一は時尾を不思議な様子で見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「幕府と政府の戦いが終わってから幾つもの月日が過ぎたけれど、幕府側の関係者に冷たい対応や厳しい対応をする人がいると思うの。美鈴さんは敬一君の身に万が一の出来事が起きないように、大切に慎重に育てていると思うの。敬一君のために、敬一君のお父さんのために、美鈴さん本人のために、たくさんの人が集まる所に出掛ける時は慎重になっていると思うの。」

敬一は時尾に不思議な様子で話し出す。

「僕とお母さんは、たくさんの人が集まるお祭りなどに幾度も出掛けています。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「美鈴さんの考えの中に一定の基準があって、安全だと判断した所には出掛けているのかも知れないわね。」

敬一は時尾を微笑んで見た。

時尾も敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「僕が向島の庭園に先に出掛けて、僕が安全を確認して、お母さんを誘う。以上の方法を思い付きました。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「良い方法だと思うわ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「僕が一人で出掛けたら、お母さんが心配します。僕にはお母さんの考える安全の基準が分かりません。今の話は忘れてください。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「藤田が一緒ならば、敬一君も美鈴さんも安心よね。私から藤田に敬一君の想いを伝えるわ。」

敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「ありがとうございます!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「藤田の都合があるから期待しないで待っていてね。」

敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「はい!」

時尾は敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾を笑顔で見た。

勉は敬一と時尾を笑顔で見た。



数日後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



敬一は出掛けているため居ない。

美鈴は居る。



玄関。



藤田五郎から美鈴に宛てた手紙が届いた。



美鈴は文を不思議な様子で受け取った。



暫く後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の有る部屋。



敬一は焙じ茶を美味しく飲んでいる。

美鈴は焙じ茶を微笑んで飲んでいる。



敬一は焙じ茶を美味しく飲み干した。

美鈴は焙じ茶を飲むのを止めると、敬一の湯飲みに微笑んでお茶を注いだ。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。ありがとう。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は焙じ茶を美味しく飲み始めた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんから手紙が届いたの。斉藤さんからの手紙には、敬一と向島に在る庭園に梅の花を見に出掛けたい、返事を教えて欲しい、などと書いてあったの。早く返事をした方が良いと思ったから、敬一に確認を取らずに了承の返事の手紙を書いたの。」

敬一は焙じ茶を飲みながら、美鈴に不思議な様子で話し出す。

「出掛けても良いの?」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんに迷惑を掛けないように、斉藤さんに感謝の気持ちを表すために、元気に楽しく出掛けなさい。」

敬一は焙じ茶を飲むのを止めると、美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! ありがとう!」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は焙じ茶を美味しく飲んだ。



数日後の事。



ここは、東京。



青空が広がっている。

僅かに暖かさを感じる。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の在る部屋。



敬一は笑顔で居る。



美鈴は包みを持ち、微笑んで来た。



敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は包みを持ち、敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんが来る時間が近付いているわね。準備は終わったの?」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は包みを持ち、敬一に微笑んで話し出す。

「おにぎりとお漬物を用意したの。多めに用意したの。食事やおやつの時に食べなさい。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! ありがとう!」

美鈴は包みを持ち、敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! 早く包みをもらっても良いかな?!」

美鈴は敬一に包みを微笑んで渡した。

敬一は美鈴から笑顔で受け取った。

美鈴は敬一を微笑んで見た。



玄関から藤田五郎が訪ねる音が聞こえた。



敬一は包みを持ち、美鈴に笑顔で話し出す。

「斉藤さん来た!」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。



敬一は包みを持ち、玄関に笑顔で向かった。

美鈴は玄関に微笑んで向かった。



少し後の事。



ここは、東京。



藤田五郎は包みを持ち、普通に歩いている。

敬一は笑顔で歩いている。



藤田五郎は包みを持ち、敬一に普通に話し出す。

「敬一の家に着く少し前まで、俺と敬一は親子の設定だ。」

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はい!」

藤田五郎は包みを持ち、敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お父さん! ありがとうございます!」

藤田五郎は包みを持ち、敬一に普通に話し出す。

「礼は家に無事に着いてからにしろ。」

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はい!」

藤田五郎は包みを持ち、敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「来年は、お母さんが安心して向島の庭園に出掛けられるように、強くなりたいです! お父さんの剣道の稽古をしっかりと受けて強くなりたいです!」

藤田五郎は包みを持ち、敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「時尾さんにお礼を早く伝えたいのですが、出掛ける日が分かりません!」

藤田五郎は包みを持ち、敬一に普通に話し出す。

「俺から時尾に伝える。」

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お父さん! ありがとうございます!」

藤田五郎は包みを持ち、敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お父さん! お願いがあります! 庭園に着いてから話しても良いですか?!」

藤田五郎は包みを持ち、敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を笑顔で見た。



少し後の事。



ここは、藤田五郎の家。



時尾と勉の部屋。



時尾は微笑んで居る。

勉は笑顔で居る。



時尾は勉に微笑んで話し出す。

「今日は良い天気ね。今日は僅かだけど暖かいわね。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「お父さんと敬一君が、楽しんで出掛けられるように、お母さんと勉は、家で留守番をしましょうね。」

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「しっかり。るすばん。」

時尾は勉に微笑んで頷いた。

勉は時尾を笑顔で見た。

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「“雪の寒み 咲きには咲かぬ 梅の花 よしこのころは かくてもあるがね”。歌に合う素敵な梅が見付かると良いわね。」

勉は時尾を不思議な様子で見た。

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「“雪が冷たいので、ぱっと咲けないのですね。梅の花、まだ今の内はそうしているのが良いですよ。”という意味の歌なの。」

勉は時尾を不思議な様子で見ている。

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「今の勉には、歌を覚えて、歌の意味を理解するのは、難しいと思うの。勉も敬一君のように成長して、剣道の稽古に励んで歌に関する勉強に励みましょうね。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

時尾は勉を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



玄関。



敬一が元気良く帰ってきた。

藤田五郎は白梅の小枝を持ち、普通に来た。



白梅の小枝は、つぼみがたくさんある。



美鈴は微笑んで来た。



敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! ただいま!」

藤田五郎は白梅の小枝を持ち、美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎と敬一に微笑んで話し出す。

「お帰りなさい。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「白くて可愛いつぼみがたくさんある白梅の小枝ですね。」

藤田五郎は白梅の小枝を持ち、美鈴に普通に話し出す。

「頼んで特別に分けてもらった。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「時尾さんが喜ぶと思います。」

藤田五郎は白梅の小枝を持ち、美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お酒の用意をしています。」

藤田五郎は白梅の小枝を持ち、美鈴に普通の表情で頷いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お父さんは斉藤さんとお酒を飲んだら喜ぶよ! お父さんにもお酒の用意をしようよ!」

美鈴は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は白梅の小枝を持ち、美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「総司さんのお酒と肴を用意します。」

敬一は藤田五郎と美鈴を笑顔で見た。

藤田五郎は白梅を持ち、敬一と美鈴を普通の表情で見た。



敬一は家の中へ元気良く入って行った。

藤田五郎は白梅の小枝を持ち、家の中に普通に入って行った。

美鈴は家の中に微笑んで入って行った。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の有る部屋。



藤田五郎は普通に居る。

敬一は微笑んで居る。



僅かに後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



沖田総司の位牌の在る部屋。



美鈴はお盆に酒と肴を載せて、部屋の中に微笑んで入った。



沖田総司の位牌の前に、つぼみがたくさんある白梅の小枝を挿した花瓶が置いてある。



白梅の小枝には、紙が結んである。



美鈴は沖田総司の位牌の前にお酒と肴を不思議な様子で置いた。

美鈴は白梅の小枝から紙を不思議な表情で丁寧に取った。

美鈴は紙を不思議な様子で丁寧に広げた。



紙には一首の歌が書いてある。



美鈴は紙を持ち、沖田総司の位牌を見ると、沖田総司の位牌に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さんと奥様の時尾さんは、忙しく過ごす中で、私と敬一に優しく接してくださいます。私と敬一は、たくさんの優しい方に守られて過ごしています。総司さんに感謝します。敬一は良い子に育っています。敬一はゆっくりですが頼りになっています。来年は、総司さんの出掛けられた梅の花の咲く庭園に、敬一と出掛けられるかも知れません。敬一の成長と共に、楽しみが増えています。」



部屋の中が僅かに暖かくなった。



美鈴は紙を持ち、部屋から微笑んで出て行った。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の在る部屋。



藤田五郎は普通に居る。

敬一は微笑んで居る。

食卓には、酒や肴や食事が載っている。



藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕はお母さんと一緒に食べたいので、後で食べます。斉藤さんは家に帰らないといけないから、遠慮せずにお酒を飲んでください。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺も待つ。」

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。お母さんは喜んでいる様子に見えました。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「時尾の助けを借りたが、敬一は総司より歌の選び方と覚える早さは勝っている。さすが美鈴さんが育てる子だ。」

敬一は藤田五郎を嬉しく見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。



部屋の中が僅かに明るくなった。



敬一は部屋の中を不思議な様子で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を不思議な様子で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「美鈴さんが戻る頃だぞ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで頷いた。



美鈴が微笑んで来た。



敬一は美鈴を笑顔で見た。

藤田五郎は美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎と敬一を微笑んで見た。

敬一は藤田五郎と美鈴に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

美鈴は藤田五郎と敬一に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

藤田五郎は敬一と美鈴に普通の表情で頷いた。



「雪の寒み 咲きには咲かぬ 梅の花 よしこのころは かくてもあるがね」

藤田五郎と敬一は、雪は降っていないが、つぼみのたくさんある白梅の小枝を用意した。

つぼみのたくさんある白梅の小枝は、敬一と美鈴の想いが叶う日まで、つぼみのまま綺麗な花を咲かせる準備をして欲しいとの願いが込められている。

つぼみのたくさんある白梅の小枝は、敬一の想いを受けて、ゆっくりと咲く準備を始めた。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

今回の物語に登場する歌は「万葉集 第十巻 二三二九番」

「雪の寒み 咲きには咲かぬ 梅の花 よしこのころは かくてもあるがね」

ひらがなの読み方は「ゆきさむみ さきにはさかぬ うめのはな よしこのころは かくてもあるがね」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は、「雪が冷たいので、ぱっと咲けないのですね。梅の花、まだ今のうちはそうしているのが良いですよ。」となるそうです。

原文は「雪寒三 咲者不開 梅花 縦比来者 然而毛有金」

今回の物語に会話のみ登場する梅の花が咲く場所は、「向島百花園」を想定して書きました。

「向島百花園」の歴史を簡単ですが説明します。

「向島百花園」は、江戸時代の文化・文政期(1804年〜1830年)に造られた庭園だそうです。

文化・文政期は、江戸の町人文化が花開いた表現されます。

骨董商を営んでいた方が造られた庭園だそうです。

開園当初は360本の梅が主体の庭園だったそうです。

旗本の元屋敷跡に、花の咲く草花鑑賞を中心とした民営の花園を造って開園したそうです。

昭和十三年(1938年)まで民営の百花園だったそうです。

昭和十三年十月に、最後の所有者の方が東京市に寄付したそうです。

昭和十四年(1939年)七月に、東京市が有料で制限公開を開始したそうです。

この後の経過と出来事は省略します。

歴史や立地などの詳細は、各自でご確認ください。

今回の物語は、藤田五郎さんと敬一君が逢ってから初めて迎える梅の花の咲く頃を想定して書きました。

「梅見月(うめみづき)」は「陰暦二月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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