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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 春夏秋冬 冬 母とふ花の 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

藤田五郎、藤田時尾、藤田勉、藤田剛、敬一[沖田総司の息子]、

美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]




「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」

「万葉集 第二十巻 四三二三番」より

作者:丈部真麻呂(はせべのままろ)




今は冬。



ここは、東京。



寒い日が続いている。



今日は、青空が広がり、僅かに寒さを感じる日になっている。



ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。



食卓の有る部屋。



敬一は真剣な表情で勉強している。

美鈴は焙じ茶を微笑んで淹れている。

美鈴の傍には、裁縫の道具が置いてある。



美鈴は焙じ茶を微笑んで淹れ終わった。

敬一は勉強を止めると、美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一の傍に焙じ茶を置くと、敬一に微笑んで話し出す。

「勉強の邪魔をしているわね。ごめんね。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「僕が焙じ茶を淹れて欲しいと頼んだよね。お母さんが謝ると、僕も謝る状況になるよね。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一も美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。部屋で勉強しなくて大丈夫なの?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「一部屋を温める方が、節約になるし効率的だよね。お母さんは僕が勉強する時に気遣ってくれるよ。僕はお母さんが近くに居てもしっかりと勉強できるよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。気を遣わないで。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「気を遣っていないよ。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。話は変わるけれど、冬に咲く花について質問しても良いかな?」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「冬に咲く花の種類は、春、夏、秋より、少なく感じるんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一が思い出す、冬に咲く花を教えて。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「石蕗、お茶、山茶花、侘助、寒椿、蝋梅、水仙、八手、冬桜、枇杷、だよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「たくさん思い出したのね。冬に咲く花を更に知りたいの?」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は焙じ茶を美味しく飲んだ。

美鈴は焙じ茶を微笑んで飲んだ。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の有る部屋。



敬一は焙じ茶を笑顔で飲み終わった。

美鈴も焙じ茶を微笑んで飲んでいる。



敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「ごちそうさまでした。」

美鈴は焙じ茶を飲むのを止めると、敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「勉強の続きをするね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は真剣な表情で勉強を始めた。

美鈴は焙じ茶を微笑んで飲み終わった。

敬一は真剣な表情で勉強している。

美鈴は微笑んで縫い物を始めた。



数日後の事。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉、生まれて間もない剛の住む家。



時尾、勉、剛は、居る。

藤田五郎は、仕事のために居ない。

敬一が、訪ねている。



食卓の有る部屋。



時尾は焙じ茶を微笑んで飲んでいる。

勉は焙じ茶を美味しく飲んでいる。

敬一も焙じ茶を美味しく飲んでいる。



剛は部屋で眠っているので居ない。



敬一は焙じ茶を飲み終わると、時尾に笑顔で話し出す。

「ごちそうさまでした!」

時尾は焙じ茶を飲みながら、敬一に微笑んで頷いた。

勉は焙じ茶を美味しく飲んでいる。

時尾は焙じ茶を飲みながら、勉と敬一を微笑んで見た。

勉は焙じ茶を飲み終わると、時尾に笑顔で話し出す。

「ごちそうさま。」

時尾は焙じ茶を飲みながら、勉に微笑んで頷いた。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんから、万葉集に掲載している、“時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ”、を教えてもらいました。春、夏、秋に、斉藤さんがお母さんを思い出す花を質問して、僕が答えました。斉藤さんが近い内に冬の質問をすると思います。冬に咲く花は少ないので、春、夏、秋より考えてしまいました。数日前に、お母さんに冬に咲く花について質問しました。お母さんは僕が思い出した冬に咲く花を教えて欲しいと話しました。僕はお母さんに、石蕗、お茶、山茶花、侘助、寒椿、蝋梅、水仙、八手、冬桜、枇杷、と答えました。お母さんは多くの花を思い出したと褒めてくれました。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「美鈴さんの話すとおり、たくさん思い出したわ。敬一君。凄いわ。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。すごい。」

敬一は時尾と勉を照れて見た。

時尾は勉と敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾に慌てて話し出す。

「斉藤さんには今の話を秘密にしてください!」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「ひみつ。する。」

敬一は時尾と勉を微笑んで見た。

時尾も勉と敬一を微笑んで見た。

勉は時尾と敬一を笑顔で見た。



数日後の事。



ここは、東京。



空の色が橙色になっている。



寒さを感じる。



藤田五郎は普通に歩いている。

敬一は微笑んで歩いている。



敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今の季節は、空の色の変わる時間が早いですね。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。今は冬だから質問して欲しい、という表情をしている。」

敬一は藤田五郎を微笑んで話し出す。

「さすが。斉藤さんです。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一の望みどおり質問する。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「“時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ”。今は冬だ。敬一が美鈴さんを思い出す冬に咲く花は何だ?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「石蕗、お茶、山茶花、侘助、寒椿、蝋梅、水仙、八手、冬桜、枇杷、です。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「冬に咲く花は、他の季節と比べると少ない。敬一。たくさん思い出したな。」

敬一は藤田五郎を笑顔で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「春夏秋冬の質問が全て終わりました。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で頷いた。



寒さを感じる風が吹いた。



敬一は藤田五郎を僅かに寂しく見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に僅かに寂しく話し出す。

「僕が、春、夏、秋に答えた花の他にも、お母さんを思い出す花はたくさんあります。春、夏、秋に答えた花で本当に良いのか、答えるべき花が他にもあったかも知れない、などと思います。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「花の種類はたくさんある。敬一の納得する答えは難しいと思う。」

敬一は藤田五郎に僅かに寂しく頷いた。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「次の春、夏、秋の間に、再び質問する方法が良いか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんに任せます。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



玄関。



敬一は元気良く来た。

藤田五郎は普通に来た。



美鈴は微笑んで現れた。



敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! ただいま!」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。いつもお気遣いありがとうございます。」

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「俺が敬一と話すために家まで送っている。気にするな。」

美鈴は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お帰りなさい。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。お酒と肴を用意しました。急いでいなければ、家に上がって休んでください。」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。



美鈴は家の中に微笑んで入って行った。

藤田五郎は家の中に普通に入って行った。

敬一は家の中に笑顔で入って行った。



「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」

母と言う名前の花は無いかも知れない。

敬一は冬に咲く花を見ると、美鈴の笑顔を思い出す。

藤田五郎は春、夏、秋、の間に、再び同じ質問をするのか。

冬の季節の中で答えを知るのは、冬の花のみかも知れない。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第二十巻 四三二三番」

「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」

ひらがなの読み方は「ときどの はなはさけども なにすれぞ ははとふはなの さきでこずけむ」

作者は「丈部真麻呂(はせべのままろ)」

歌の意味は「季節ごとに花は咲くのに、どうして“母”という花は咲かないのだろうか。(咲くのだったら手折っていっしょに行くのに。)」となるそうです。

原文は「等伎騰吉乃 波奈波佐家登母 奈尓須礼曽 波々登布波奈乃 佐吉泥己受祁牟」

天平勝寶(てんぴょうほうしょう)七年(755年)二月六日に、交代要員として筑紫(ちくし)に派遣された防人(さきもり)達が詠んだ歌の一首だそうです。

「防人(さきもり)」について簡単に説明します。

防人は、筑紫(つくし)・壱岐(いき)などの北九州の防衛にあたった兵士達の事です。

一説には、崎守(さきもり)の意味があるそうです。

防人には東国の人達が選ばれたそうです。

東国の人達が選ばれた理由については、よく分かってないそうです。

一説には、東国の力を弱めるためともいわれているそうです。

任期は三年で、毎年二月に兵員の三分の一が交替となっていたそうですが、実際には簡単には国に帰してもらえなかったそうです。

東国から行く時は、部領使(ぶりょうし)という役割の人が連れて行ったそうです。

北九州へは徒歩で行ったそうです。

稀な場合だと思いますが、幸運な場合は、船で行く事もあったようです。

帰りは自費だったそうです。

そのため、故郷に帰りたくても帰れない人、無理に帰ろうとして故郷まで帰れずに行き倒れとなる人がいたそうです。

防人の詳細については各自でご確認ください。

この物語に登場する花関連の季語についてです。

季語と現在の暦の開花や見頃の時期が違うと感じる方がいると思います。

開花や見頃の時期は省略して季語のみ書きます。

「山茶花(さざんか)」・「侘助(わびすけ)」・「寒椿(かんつばき)」・「蝋梅(ろうばい)」・「水仙(すいせん)」・「八手(やつで)」・「冬桜(ふゆざくら)」・「石蕗(つわぶき)の花」・「茶(ちゃ)の花」は、冬の季語です。

「枇杷(びわ)」は、実は夏の季語で、花は冬の季語です。

「椿(つばき)」は、花は春の季語で、実は秋の季語です。

「桜(さくら)」は、花は春の季語で、実は夏の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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