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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 中元の頃 よしをもちてかまた一目見む 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

近藤勇、土方歳三、沖田みつ、沖田惣次郎、山口廣明、山口一




「たまさかに 我が見し人を いかならむ よしをもちてか また一目見む」

「万葉集 第十一巻 二三九六番」より

作者:柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)歌集より




今は初秋。



ここは、多摩。



暦は初秋になるが、暑い日が続いている。



ここは、試衛館。



沖田惣次郎をはじめとする門下生達は、日々の稽古に励んでいる。



今は稽古が終わり、身なりを整える者、くつろぐ者、武術を含む会話をする者など、様々に過ごしている。



近藤勇の部屋。



近藤勇は机に普通の表情で向かっている。



土方歳三は部屋の中に微笑んで入ってきた。



近藤勇は土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。

「私の頼み事のために、歳の休憩時間を中断してくれた。ありがとう。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「俺と近藤さんの仲だ。気にするな。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「中元を贈りたい人物が江戸の町に居る。私が江戸の町に行く場合は、立場的に供が必要になる。私の供を務める者は、稽古を受けられない。惣次郎は、試衛館内の立場も剣術の技術も含めて、私の代理を務められる。私が江戸の町に行く日の試衛館は、惣次郎が剣術の稽古を就ける状況になる。惣次郎は、江戸の町に一人に行かせられないから、供が必要になる。歳は冷静な判断が出来る。歳は供として適任だと考えた。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さんに褒めてもらえて嬉しいよ。」

近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さん。念のために確認する。俺は惣次郎の守役も兼ねているのか?」

近藤勇は土方歳三を苦笑して見た。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「惣次郎と一緒に江戸の町に行く。安心して待っていてくれ。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「歳。ありがとう。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。

近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さん。中元を贈る人物は、山口君に繋がる人物なのか?」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「今は山口君に繋がりが有るのか分からないが、以前は山口君と繋がりが有った。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さんが俺に惣次郎の供を頼んだ他の理由も分かった。」

近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「俺が山口君の近況を知るか尋ねる。良い内容の返事ならば、惣次郎に直ぐに伝えて、近藤さんにも伝える。悪い内容の返事ならば、惣次郎には伝えずに、近藤さんにのみ伝える。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「惣次郎には、今の話は秘密だな。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「“たまさかに 我が見し人を いかならむ よしをもちてか また一目見む”。万葉集に掲載している恋の歌だ。近藤さんが惣次郎に“また一目見む”の機会を作ろうとしていると思った時に、今の歌を思い出した。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「私は、“また一目見む”、ではなく、永く見て欲しいと考えている。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「俺も近藤さんと同じ気持ちだ。」

近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三も近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「おみつさんが惣次郎に中元を兼ねて渡したい物があるそうだ。試衛館に戻る前に、おみつさんの住む家に行ってくれ。多摩から江戸の町に行くと疲れる。試衛館では落ち着いて休めないと思う。私からおみつさんに連絡を取る。試衛館には焦らずに戻ってくれ。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さん。気遣いありがとう。」

近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三も近藤勇を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、江戸の町。



暦は初秋になるが、暑い日が続いている。



ここは、町中。



山口一の兄の山口廣明は、普通に歩いている。

山口一は包みを持ち、普通に歩いている。



山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「一は中元の品を持ち続けている。交代で中元の品を持つ。」

山口一は包みを持ち、山口廣明に普通に話し出す。

「俺は兄さんの弟だ。俺が中元の品を持つ。」

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「父さんから預かった中元の品だ。一が辛い時は、俺が中元の品を持つ。辛い時は、我慢せずに言えよ。」

山口一は包みを持ち、山口廣明に普通の表情で頷いた。

山口廣明は山口一を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、江戸の町。



一軒の家の前。



土方歳三は中元の品を持ち、普通に出てきた。

沖田惣次郎は微笑んで出てきた。



沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。

「土方さん。近藤さん宛ての中元の品です。しっかりと持ってくださいね。」

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に苦笑して話し出す。

「惣次郎。俺が辛い時は代わりに持つと話さないのか?」

沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。

「土方さんが本当に辛い時は、私に遠慮なく言います。近藤さん宛ての中元の品の安全は心配しますが、土方さんの心配はしません。」

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎を苦笑して見た。

沖田惣次郎は土方歳三を微笑んで見た。



沖田惣次郎は微笑んで歩き出した。

土方歳三は中元の品を持ち、微笑んで歩き出した。



土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎。俺達が訪れる前に、先客が訪れて中元の品を渡したそうだ。」

沖田惣次郎は土方歳三に不思議な様子で話し出す。

「今は中元の品を渡す時期です。中元を渡すための客の訪問は普通です。」

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「中元の品を渡すために訪れた先客は、山口君と山口君の兄らしい。」

沖田惣次郎は土方歳三に不機嫌に話し出す。

「土方さん! 酷いです! 何故、隠すのですか?! 何故、意地悪をするのですか?!」

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎は、山口君に関する話を聞くと、後先を考えない言動をとるからだ。」

沖田惣次郎は土方歳三を不機嫌に見た。

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に普通に話し出す。

「惣次郎は近藤さんの代理で中元の品を渡しに来た。惣次郎は山口君が先客だと知れば、慌てて居なくなるか、知り合いの家の関係者に強い調子で質問するだろ。近藤さんの大切な知り合いへの失礼な言動は、近藤さんが許したとしても、俺は許さない。」

沖田惣次郎は土方歳三を不機嫌に見た。

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎を普通の表情で見た。



沖田惣次郎は慌てて走り出した。



土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎を僅かに驚いた表情で見た。



僅かに後の事。



ここは、江戸の町。



町中。



沖田惣次郎は落ち着かずに歩いている。



土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎の傍に普通に来た。



沖田惣次郎は落ち着かずに歩いている。



土方歳三は片手で中元の品を持ち、沖田惣次郎の腕を片手で普通に掴んだ。



沖田惣次郎は不機嫌に止まった。



沖田惣次郎は土方歳三を不機嫌に見た。

土方歳三は中元の品を片手で持ち、沖田惣次郎の腕を片手で掴んで、沖田惣次郎に普通に話し出す。

「惣次郎。冷静になれ。」

沖田惣次郎は土方歳三に不機嫌に話し出す。

「土方さんが意地悪をするから冷静になれません!」

土方歳三は中元の品を片手で持ち、沖田惣次郎の腕を放すと、沖田惣次郎に普通に話し出す。

「今の惣次郎からは、殺気に近い雰囲気を感じる。山口君が今の惣次郎の姿を見たら、惣次郎に幻滅するか、惣次郎に近付けない。惣次郎が今の雰囲気で山口君に勢い良く近付けば、山口君は惣次郎に二度と逢わないかも知れない。」

沖田惣次郎は土方歳三を不機嫌に見た。

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に普通に話し出す。

「惣次郎。今回の中元の品物の届け先は、近藤さんの知り合いだ。近藤さんは知り合いに逢いたいと思っている。近藤さんが惣次郎に今回の中元の品物を代理で届ける役を頼んだのは、近藤さんの気遣いだ。近藤さんの知り合いが、惣次郎と山口君の関係を知るか分からない。近藤さんの知り合いが、惣次郎に山口君について何も話さなかったのは、惣次郎と山口君の関係を知らないか、山口君の近況を話せるほどに知らなかった、と思う。江戸の町は多くの人達が居る。惣次郎が騒いでも山口君は見付からない。」

沖田惣次郎は土方歳三を寂しく見た。

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「近藤さんから惣次郎が拗ねた時のためにお金を預かった。団子を食べて気持ちを明るくしろ。」

沖田惣次郎は土方歳三に拗ねて話し出す。

「私は子供ではありません! 私は団子を食べても許しません!」

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎。まだ子供だな。」

沖田惣次郎は土方歳三を拗ねて見た。



惣次郎のお腹から音が鳴った。



沖田惣次郎はお腹を驚いて見た。

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「近藤さんの知り合いの家で、お茶と菓子を頂いたのに、お腹が鳴った。惣次郎のお腹は素直だな。」

沖田惣次郎は土方歳三を拗ねて見た。

土方歳三は中元の品を持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎。行くぞ。」

沖田惣次郎は土方歳三に拗ねて頷いた。



土方歳三は中元の品を持ち、微笑んで歩き出した。

沖田惣次郎は拗ねて歩き出した。



同じ頃。



ここは、江戸の町。



町中。



山口廣明は普通に歩いている。

山口一も普通に歩いている。



山口一は普通に立ち止まった。

山口廣明は不思議な様子で立ち止まった。



山口廣明は山口一に不思議な様子で話し出す。

「何か遭ったのか?」

山口一は山口廣明に普通に話し出す。

「沖田惣次郎の名前の人物と同じ声が、俺の名前を叫んでいた。」

山口廣明は山口一に不思議な様子で話し出す。

「惣次郎君は多摩に居るのだろ。惣次郎君の声を江戸の町で聞いたのか?」

山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。

山口廣明は辺りを不思議な様子で見た。

山口一は山口廣明を普通の表情で見た。

山口廣明は山口一を見ると、山口一に不思議な様子で話し出す。

「一人の僅かに不機嫌な調子の声で、一の名前を呼ぶ声が聞こえる。惣次郎君が声の主だとしたら、惣次郎君は機嫌が悪い状況になるな。」

山口一は山口廣明に普通に話し出す。

「剣術の時は、周囲が驚く冷静を保つ、天才的な判断力、周囲が驚く威圧感、を発揮するそうだ。普段は、元気が良く、時折だが勢いの良い性格になるそうだ。」

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「一の話から想像すると、惣次郎君は不測の事態が起きて焦っているのかな?」

山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。

山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。

「惣次郎君は、一が近くに居ると思ったのに、一が見付からなくて焦っているのかな? 惣次郎君の声の調子からすると、対応する人物は困っているかも知れない。一は名前を幾度も呼ばれると困るだろ。惣次郎君の姿を見たら、直ぐに声を掛けよう。」

山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。



山口廣明は微笑んで歩き出した。

山口一は普通に歩き出した。



僅かに後の事。



ここは、江戸。



町中。



山口廣明は辺りを見ながら、微笑んで歩いている。

山口一は辺りを見ながら、普通に歩いている。



山口廣明は辺りを見ながら、山口一に不思議な様子で話し出す。

「惣次郎君の声が聞こえた場所に来たけれど、惣次郎君の姿が見えないな。」

山口一は辺りを見ながら、普通の表情で頷いた。

山口廣明は辺りを見ながら、山口一に僅かに困惑して話し出す。

「江戸の町は多くの人達が居る。江戸の町での人探しは不便だな。」

山口一は辺りを見ながら、普通の表情で頷いた。

山口廣明は辺りを僅かに困惑して見た。

山口一は山口廣明を見ると、山口廣明に普通に話し出す。

「兄さん。今の辺りの状況から考えると、見付からない可能性が高い。」

山口廣明は山口一を見ると、山口一に残念な様子で話し出す。

「一の判断は正しいと思う。仕方が無い。戻ろう。」

山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。



山口廣明は普通に歩き出した。

山口一も普通に歩き出した。



暫く後の事。



ここは、多摩。



沖田惣次郎の姉の沖田みつの住む家。



一室。



土方歳三は微笑んで居る。

沖田みつも微笑んで居る。

沖田惣次郎は横になって気持ち良く寝ている。



沖田みつは土方歳三に微笑んで囁いた。

「惣次郎は再び残念な想いを経験したのですね。」

土方歳三は沖田みつに微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田みつは土方歳三に微笑んで囁いた。

「土方さんは惣次郎を短い時間で冷静にしたのですね。さすが土方さんです。」

土方歳三は沖田みつに微笑んで囁いた。

「惣次郎が短い時間で冷静になったのは、俺の力ではなく、団子の力です。」

沖田みつは土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三も沖田みつを微笑んで見た。

沖田惣次郎は横になって気持ちよく寝ている。



「斉藤さん。今回も慌てて行動してしまいました。すいません。」

「総司は、剣術の時の時のみ、周囲が驚く冷静を保つ、天才的な判断力、周囲が驚く威圧感、を発揮する。普段の総司の言動は気にしていない。」

「本当に気にしていないのですか?」

「俺が気にしていたら、町中で俺の名前を大きな声で幾度も話す人物に、幾度も逢わない。」

「斉藤さん。今の話の意味が分かりません。」

「総司。今の話の意味が分からなくても気にするな。」

「はい。」



「たまさかに 我が見し人を いかならむ よしをもちてか また一目見む」

恋や愛を表現した歌になる。

沖田惣次郎と山口一に恋愛関係は無いが、沖田惣次郎は山口一に逢いたいと強く想い続けている。

沖田惣次郎と山口一が逢う場所は、多摩でも江戸の町でもなく、京の町になる。

今の沖田惣次郎が知らない、今の山口一も知らない、暫く先の出来事になる。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十一巻 二三九六番」

「たまさかに 我が見し人を いかならむ よしをもちてか また一目見む」

ひらがなの読み方は「たまさかに わがみしひとを いかならむ よしをもちてか またひとめみむ」

作者は「柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)歌集より」

歌の意味は「偶然にも私が見た人を、どんなきっかけをつくって、また一目見ることができるのでしょう・・・」となるそうです。

原文は「玉坂 吾見人 何有 依以 亦一目見」

「たまさか」は、偶然にであうことをいいます。

どのような偶然だったのでしょうか。

「中元(ちゅうげん)」についてです。

秋の季語です。

「お中元(おちゅうげん)」とも呼びます。

私は「お中元」と呼んでいます。

「お中元」と呼ぶ方も多いと思います。

お中元の起源は、古代の中国といわれています。

古代中国の道教に三官信仰があり、それぞれの神様を「三元」の時期に祭ったそうです。

中元(陰暦7月15日)に生まれた神様(地官:善悪を見分けて人間の罪を許す神様)をお祝いするお祭りと、同じ日に行われていた仏教のお盆の行事が結びついてお中元が始まったそうです。

お中元が日本に伝わると、親類や近所に仏様へのお供え物を贈る習慣となったそうです。

江戸時代になると、先祖へのお供え物として贈る習慣の他に、お得意先やお世話になった人へもお中元を贈るようになったそうです。

7月がお盆の地域は、現在の暦で7月1日〜7月15日までに贈る事が多いようです。

8月がお盆の地域は、現在の暦で8月1日〜8月15日までに贈る事が多いようです。

現在では、現在の暦で7月1日〜7月15日までに贈るのが一般的なようです。

お中元を贈る時期は、地域や時代によっても変わります。

現在では日付を前後して贈る方もいるそうです。

詳細は各自でご確認ください。

この物語は、旧暦の7月中旬の前半にお中元を贈った設定です。

この物語の設定時期にあてはめると、現在の暦で8月下旬頃になります。

「初秋(しょしゅう。はつあき。)」についてです。

「陰暦七月の異称。秋の初め。」をいいます。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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