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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 山吹の咲く頃 思ひはやまず 恋こそまされ 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

藤田五郎、藤田時尾、藤田勉、

沖田総司、敬一[沖田総司の息子]、美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]




「山吹を 宿に植ゑては 見るごとに 思ひはやまず 恋こそまされ」

「万葉集 第十九巻 四一八六番」より

作者:大伴家持(おおとものやかもち)




時は明治。



今の治世は、幕府ではなく政府になる。



政府と幕府は、戦った時期がある。

戦いの結果は、政府が勝利した。

過去の経緯もあり、幕府側に最後まで味方していた者達への世間の目は冷たい。



沖田総司は新撰組一番組組長の地位にいた。

新撰組は幕府側の組織になるため、沖田総司は幕府側の人物になる。



沖田総司には、妻の美鈴、一度も逢えなかった息子の敬一、がいる。



沖田総司は、幕府と政府の戦いの結末を知らずに病で亡くなった。



美鈴と敬一は、沖田総司を想いながらも、幕府側の身内と知られないように暮らす日が続いている。



今は春。



ここは、京都。



青空が広がっている。



ここは、美鈴と幼い敬一の住む家。



庭。



敬一は笑顔で居る。

美鈴は洗濯物を微笑んで干している。



敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は洗濯物を微笑んで干し終わった。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「せんたく。おわり。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。洗濯を干す様子を見るのは楽しい?」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「おかあさん。えがお。あおぞら。おなじ。おかあさん。あおぞら。みる。たくさん。たのしい。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。褒めてくれてありがとう。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一の笑顔も青空に似ているわ。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「ありがと。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「おとうさん。えがお。あおぞら。おなじ?」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんの笑顔も青空に似ているわ。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「おとうさん。おかあさん。ぼく。えがお。あおぞら。おなじ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんの笑顔。お母さんの笑顔。敬一の笑顔。同じね。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「家の中の掃除が終わったら、薬草や料理の出来る草を探すのと散歩を兼ねて、外出しましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。



敬一は家の中に笑顔で入って行った。

美鈴は敬一を見ながら、家の中に微笑んで入って行った。



少し後の事。



ここは、京都。



青空が広がっている。



ここは、町中。



敬一は笑顔で歩いている。

美鈴は微笑んで歩いている。



敬一の近くと美鈴の近くに、山吹の花が咲いている。



敬一は笑顔で止まった。

美鈴は微笑んで止まった。



敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「きれい。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「八重山吹。綺麗ね。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「やえやまぶき。おかあさん。えがお。おなじ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。褒めてくれてありがとう。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「やえやまぶき。おかあさん。いっしょ。かえり。みる。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一を微笑んで見た。



敬一は笑顔で歩き出した。

美鈴は敬一を見ながら、微笑んで歩き出した。



幾つかの季節が過ぎた。



敬一と美鈴は、東京で暮らしている。



敬一と美鈴は、藤田五郎と名前を変えて暮らす斉藤一に東京で逢った。



藤田五郎には、妻の時尾、幼い息子の勉がいる。



敬一は、時尾と勉にも、逢った。



敬一と美鈴にとって、穏やかで楽しい日が続いている。



今は春。



ここは、東京。



青空が広がっている。



ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。



藤田五郎は、仕事のために家に居ない。

時尾と勉は、家に居る。

敬一が、訪ねている。



縁。



時尾は焙じ茶を微笑んで飲んでいる。

勉は温めの焙じ茶とお菓子を笑顔で美味しく食べている。

敬一も焙じ茶とお菓子を笑顔で美味しく食べている。

勉の前と敬一の前には、お菓子が置いてある。



敬一はお菓子を食べ終わると、時尾に笑顔で話し出す。

「ごちそうさまでした!」

勉もお菓子を食べ終わると、時尾に笑顔で話し出す。

「ごちそさま。」

時尾は勉と敬一に微笑んで頷いた。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「天気の良い中で、美味しいお茶と美味しいお菓子が味わえました。嬉しいです。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「いつも褒めてくれてありがとう。」

敬一は時尾を笑顔で見た。

勉は時尾と敬一を笑顔で見た。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの家に来る途中に、一重の山吹の花、八重山吹の花、を見ました。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「青空の下や陽の光を受けて咲く、山吹の花。山吹の花の鮮やかさが更に際立つわね。更に綺麗に見えるわね。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「はい。」

勉は時尾と敬一を笑顔で見ている。

敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「八重山吹の花を見ると、お母さんの笑顔を思い出します! お母さんと一緒に、一重の山吹の花や八重山吹の花を見る時は、とても楽しいです!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「山吹の花を摘みに行きましょうか?」

敬一は時尾を笑顔で話し出す。

「はい!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「山吹を詠んだ素敵な歌があるの。山吹を詠んだ歌を添えると、山吹が更に素敵に感じると思うの。」

敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「はい!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「私が山吹を詠んだ歌の中で良いと思った歌。“山吹を 宿に植ゑては 見るごとに 思ひはやまず、恋こそまされ”。」

敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「良い歌です!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「気に入ってくれてありがとう。」

敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「時尾さん! 八重山吹が合う歌だと思いますか?! 一重の山吹が合う歌だと思いますか?!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君のお父さんと敬一君のお母さんに合う山吹は、八重の山吹より、一重の山吹だと思うの。私の良いと思った歌も、八重の山吹より、一重の山吹だと思うの。」

敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「分かりました! 一重の山吹にします!」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「お母さん、勉、敬一君と一緒に、山吹の花を摘みに行きましょう。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

時尾は勉と敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾と勉を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



沖田総司の位牌のある部屋。



美鈴は部屋の中に微笑んで入った。



沖田総司の位牌の前に、山吹の花が活けてある。



美鈴は山吹の花を見ると、沖田総司の位牌に微笑んで話し出す。

「総司さん。綺麗な山吹ですね。」

美鈴は沖田総司の位牌を微笑んで見た。



沖田総司の位牌の前に、美鈴宛の手紙が置いてある。



美鈴は手紙を不思議な様子で取った。

美鈴は手紙を持ち、手紙を不思議な様子で読んだ。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



沖田総司の位牌のある部屋。



美鈴は手紙を持ち、手紙を不思議な様子で読んでいる。



美鈴は手紙を持ち、手紙を微笑んで読み終わった。

美鈴は手紙を持ち、沖田総司の位牌を見ると、沖田総司の位牌に微笑んで話し出す。

「“山吹を 宿に植ゑては 見るごとに 思ひはやまず 恋こそまされ”。私も総司さんと同じです。」

美鈴は手紙を持ち、山吹の花を微笑んで見た。

美鈴は手紙を持ち、沖田総司の位牌を見ると、沖田総司の位牌に微笑んで話し出す。

「総司さん。敬一はしっかりとした良い子に育っています。私と敬一は、しっかりと過ごしています。心配しないでください。」



部屋の中が心地良い空気に包まれた。



美鈴は手紙を持ち、沖田総司の位牌と八重山吹の花を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。



藤田五郎の部屋。



机の上には、山吹の花が活けてある。



障子は半分ほど開いている。



縁の傍。



藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

藤田五郎の前には、酒と肴が置いてある。



部屋の中が心地好い空気に包まれた。



藤田五郎は杯の酒を飲みながら、庭を普通の表情で見た。



庭では桜の花が満開になって咲いている。



藤田五郎は杯の酒を飲みながら、横を普通の表情で見た。



沖田総司が微笑んで、静かに現れた。



藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございます。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は山吹の花を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。部屋の中の活けてある山吹の花も綺麗に咲いていますね。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、山吹を見ると、普通の表情で呟いた。

「“山吹を 宿に植ゑては 見るごとに 思ひはやまず 恋こそまされ”。」

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司を見ると、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。敬一と美鈴さんは、総司の存在に気付かないと思うが、今夜も傍に居ろ。」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで頷いた。

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司と山吹の花を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ゆっくりと話したいです。都合の良い日に呼んでください。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。



藤田五郎は杯の酒を飲みながら、庭を普通の表情で見た。



庭は少し前の状態に戻っている。



藤田五郎は杯の酒を飲みながら、庭を見て、普通の表情で呟いた。

「“山吹を 宿に植ゑては 見るごとに 思ひはやまず 恋こそまされ”。一重の山吹の花を今の歌に添える提案をする。時尾も敬一も、さすがだ。」



部屋の中の心地良い空気は続いている。



藤田五郎は杯の酒を飲みながら、庭を見て、普通の表情で呟いた。

「部屋の中の空気の心地好さが続いている。夜の庭と山吹を酒の肴に加えて、暫く酒を楽しませてもらう。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、山吹の花を普通の表情で見た。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



敬一の部屋。



敬一は床の中で静かに寝ている。



美鈴の部屋。



美鈴は床の中で静かに寝ている。



部屋の中が心地良い空気に包まれた。



沖田総司は美鈴の傍に、微笑んで、静かに現れた。



美鈴は床の中で静かに寝ている。



沖田総司は美鈴を見ながら、微笑んで呟いた。

「“山吹を 宿に植ゑては 見るごとに 思ひはやまず 恋こそまされ”。鈴。私も同じだよ。」

美鈴は床の中で静かに寝ている。

沖田総司は美鈴を微笑んで見た。



「山吹を 宿に植ゑては 見るごとに 思ひはやまず 恋こそまされ」

沖田総司の想い。

美鈴の想い。

沖田総司と美鈴の想いは、八重山吹の花より、一重の山吹の花が似合う。

沖田総司の想いと美鈴の想いは、藤田五郎の想い、時尾の想い、敬一の想いによって、静かに重なり続けている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語の掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十九巻 四一八六番」

「山吹を 宿に植ゑては 見るごとに 思ひはやまず 恋こそまされ」

ひらがなの読み方は「やまぶきを やどにうゑては みるごとに おもひはやまず こいこそまされ」

作者は「大伴家持(おおとものやかもち)」

歌の意味は「山吹を庭に植えて、その花を見るたびに、思いが止むどころか、より恋心が増すばかりです。」となるそうです。

原文は「山吹乎 屋戸尓殖弖波 見其等尓 念者不止 戀己曽益礼」

「山吹(やまぶき)」についてです。

バラ科の落葉低木です。

一重の山吹、八重山吹、菊咲き山吹があります。

八重山吹は、一重の山吹より咲き始めが遅いです。

八重山吹は実が生りません。

葉は互生し、卵形で先がとがり、縁に二重のぎざぎざがあります。

現在の暦で、3月から5月に掛けて、鮮やかな黄色の花を咲かせます。

一重の山吹の花は、黄色の五弁花です。

一重の山吹の実は、暗褐色です。

古くから、庭木とされています。

春の季語です。

「八重山吹(やえやまぶき)」についてです。

「山吹(やまぶき)」の一品種です。

花のしべが花弁に変わり、八重咲きとなったものです。

実は、生りません。

春の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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