このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 紅葉の舞 さしも知らじな燃ゆる思ひを 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

沖田総司、藤田五郎、藤田時尾、敬一[沖田総司の息子]、美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]




「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」

「小倉百人一首 五十一番」、及び、「後拾遺集」

作者:藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたのあそん)




今は、秋。



ここは、東京。



紅葉が綺麗に色付く姿を少しずつ見るようになった。



ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。



食卓の有る部屋。



敬一は微笑んでお茶を飲んでいる。

美鈴は微笑んで縫い物をしている。



敬一はお茶を飲みながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。紅葉が綺麗な紅色に染まってきたね。」

美鈴は縫い物を止めると、敬一に微笑んで頷いた。

敬一はお茶を飲みながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。紅葉を見に行こうよ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一はお茶を飲みながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「紅葉の色付き具合を見て、紅葉を見に行く日を決めようね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一はお茶を飲みながら、美鈴を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、東京。



紅葉が綺麗な紅色に色付く場所が少しずつ増えてきた。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。



藤田五郎、時尾、勉が、居る。

敬一が、訪れている。



縁。



敬一は微笑んで歩いている。



時尾が微笑んで来た。

勉が笑顔で来た。



敬一は微笑んで止まった。



敬一は時尾と勉を微笑んで見た。

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。あそぶ。」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「敬一君はお父さんと話すために来たの。時間に余裕があったら、遊んでもらいましょう。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。



藤田五郎が普通に来た。



敬一は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。こんにちは。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「勉が敬一君に一緒に遊びたいと話しました。勉には私から説明しました。勉も納得しました。ご迷惑をお掛けしました。」

藤田五郎は勉に普通の表情で頷いた。

勉は藤田五郎を笑顔で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一の都合が良ければ、俺の部屋に来る前に、勉と話してくれ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「勉。敬一君と少しだけ話しが出来るわ。お父さんと敬一君に、お礼を言いましょうね。」

勉は藤田五郎と敬一に笑顔で話し出す。

「ありがと。」

藤田五郎は勉に普通の表情で頷いた。

敬一は勉に微笑んで頷いた。

時尾は勉を微笑んで見た。

敬一は勉を微笑んで見た。

藤田五郎は勉と敬一を普通の表情で見た。



少し後の事。



ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。



時尾と勉の部屋。



時尾は微笑んで居る。

勉は笑顔で居る。

敬一は微笑んで居る。



勉は敬一に笑顔で話し出す。

「おかあさん。おとうさん。うた。てがみ。」

敬一は勉を不思議な様子で見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「勉が生れる前の出来事なの。五郎さんから、小倉百人一首の歌を一首だけ書いた手紙に、一枚の紅葉を添えて、頂いた時があるの。」

敬一は時尾に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんが時尾さんに贈った歌。何ですか?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「“小倉百人一首 五十一番”。“かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを”。」

敬一は時尾を僅かに驚いた様子で見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「意外な表情をしているわね。」

敬一は時尾を慌てて見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「普通は意外に思うわ。慌てないで。大丈夫よ。」

敬一は時尾に動揺して話し出す。

「斉藤さんはたくさん話さないけれど、とても優しいです! 時尾さんも優しいです! 斉藤さんを見るだけで、時尾さんを見るだけで、良く分かります! 勉君を見ると、更に良く分かります!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「五郎さんを褒めてくれてありがとう。」

敬一は時尾を微笑んで見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「五郎さんが私に歌を贈る場合は、激しい想いを詠んだ歌は贈らないと思うの。五郎さんの信頼する人物が、何かの内容を話したように思うの。」

敬一は時尾に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんの信頼する人物。誰でしょうか?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「今の話す出来事に関しては、私にも分からないわ。」

敬一は勉を微笑んで見た。

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「僕を信頼してくれてありがとう。時尾さんの話す出来事は、勉君の生まれる前の出来事だよね。僕は該当しないよ。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「おとうさん。おにいちゃん。しんらい。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君の話す内容の状況に該当する可能性があるとしても、先の時になるよ。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「勉の話は二つ共に当たっているかも知れないわよ。」

敬一は時尾に恥ずかしく話し出す。

「僕が斉藤さんと逢った時は、勉君が生れた後です。僕ではないです。僕は未熟です。斉藤さんの信頼できる人物になるためには、たくさんの修行が必要です。」

時尾は敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾を恥ずかしく見た。

時尾は敬一を微笑んで見た。

勉は敬一を笑顔で見た。



少し後の事。



ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。



藤田五郎の部屋。



藤田五郎は普通に居る。



敬一が部屋の中に照れながら入ってきた。



藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に照れて話し出す。

「遅くなりました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「気にするな。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。“かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを”。今の歌のみを書いた手紙に、紅葉を一枚だけ添えて、贈る。素敵な趣向ですね。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺の考えた趣向ではないが、良い趣向だと思う。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの話を聞いていたら、お父さんからお母さんに贈りたい歌と贈りたい方法に感じました。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。お願いがあります。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



玄関。



敬一が元気良く帰ってきた。



美鈴は微笑んで来た。



美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お帰りなさい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。ただいま。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「のどが渇いたわよね。お茶を用意するわ。食卓の有る部屋で待っていてね。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。ありがとう。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。



美鈴は家の中に微笑んで入って行った。

敬一も家の中に微笑んで入って行った。



僅かに後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



台所。



美鈴はお茶を微笑んで準備している。



食卓の有る部屋。



敬一は微笑んで居る。



敬一は部屋から微笑んで静かに出て行った。



美鈴はお盆に漬物とお茶を載せて、部屋の中に微笑んで入ってきた。



敬一の姿は見えない。



美鈴はお盆を食卓に不思議な様子で置いた。



敬一が部屋の中に微笑んで入ってきた。



敬一は漬物を見ると、美鈴を見て、美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。美味しい様子の分かるお漬物だね。」

美鈴は敬一を見ると、敬一に微笑んで話し出す。

「用意が早過ぎたのね。ご免なさい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。良い時間で用意したよ。さすがだよ。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さんの漬けたお漬物だよね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「美味しい様子の分かるお漬物、ではなくて、美味しいお漬物、の間違いだった。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。



敬一は食卓の前に微笑んで座った。



美鈴は部屋から微笑んで出て行った。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



台所。



美鈴は夕食の支度を微笑んで終えた。



美鈴はお盆にお漬物を微笑んで載せた。



美鈴はお盆を持ち、微笑んで居なくなった。



僅かに後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



沖田総司の位牌の在る部屋。



美鈴はお盆を持ち、部屋の中に微笑んで入った。



沖田総司の位牌の前に、手紙が置いてある。

手紙の上には、一枚の紅葉が置いてある。



美鈴はお盆を脇に不思議な様子で置いた。

美鈴は手紙と紅葉を不思議な様子で見た。

美鈴は紅葉と手紙を不思議な様子で持った。



手紙には宛名が書いていない。



美鈴は手紙と紅葉を脇に置くと、沖田総司の位牌の前にお漬物を微笑んで置いた。

美鈴は沖田総司の位牌に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。私の漬けたお漬物です。敬一が美味しいと言ってたくさん食べてくれました。総司さんにも喜んでもらえるでしょうか?」

美鈴は手紙を微笑んで見た。

美鈴は手紙を持つと、手紙を微笑んで読んだ。



かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを



手紙には、小倉百人一首の歌が一首のみ書いてある。



美鈴は手紙を持ち、沖田総司の位牌を見ると、沖田総司の位牌に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。ありがとうございます。」

美鈴は手紙を持ち、手紙と紅葉を微笑んで見た。

美鈴は手紙を持ち、沖田総司の位牌を見ると、沖田総司の位牌に微笑んで話し掛ける。

「少し経ったら、敬一と一緒に夕飯を食べます。」

美鈴は手紙を持ち、紅葉を微笑んで持った。



美鈴は手紙と紅葉を持ち、部屋の外に微笑んで出て行った。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の有る部屋。



敬一は笑顔で居る。



美鈴は部屋の中に微笑んで入ってきた。



敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴も敬一を微笑んで見た。



僅かに後の事。



ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。



藤田五郎の部屋。



藤田五郎は普通に居る。



藤田五郎は障子を普通に開けた。



部屋の外には変わった様子はない。



藤田五郎は庭を見ると、普通の表情で呟いた。

「総司。月日がかなり経ったが、美鈴さんに手紙が届いた。良かったな。」



辺りを心地良い空気が包んだ。



藤田五郎は障子を普通の表情で閉めた。



「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」

沖田総司の想いは、藤田五郎と敬一を通じて、時間は掛かったが、美鈴の元に届いた。

秋はたくさんの想いに彩られながら過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 五十一番」、及び、「後拾遺集」

「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」

作者は「藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたのあそん)」

ひせがなの読み方は「かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを」

歌の意味は「こんなにも恋い慕っていると言いたいのですが、どうしても口にする事が出来ません。伊吹山のさしも草ではありませんが、この燃えるような想いを、あなたはきっとご存知ないでしょう。」となるそうです。

作者の名前は、「藤原実方(ふじわらのさねかた)」が名前で、「朝臣(あそん)」は、時代によって変わりますが、身分か敬称です。

「藤原実方朝臣」は、若くから歌の才能を認められていた人物です。

恋愛遍歴が数多く有るらしく、「清少納言」と恋愛の歌を贈答しあった事があるそうです。

この歌は、「藤原実方朝臣」が「清少納言」に贈った歌だそうです。

ちなみに、「藤原実方朝臣」は、「紫式部」が書いていた源氏物語の主人公の光源氏のモデルの一人と言われているそうです。

「さしも草」は、「艾(もぐさ)」を差しているようです。

この歌は、後の言葉を導いている言葉や比喩などがたくさんある歌です。

全てを説明する事が出来ないので、詳細は、各自でお調べください。

この物語の補足です。

この物語を書くきっかけになったのは、「雪月花 新撰組異聞外伝 編 短編 秋の夜長と紅葉 燃ゆる思ひを」を書いた時に、沖田総司さんが藤田五郎さんに、美鈴さんに贈りたい歌を話します。

既に亡くなっている沖田総司さんが話した歌を、美鈴さんに贈る方法を考えながら、書いた物語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください