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~ 雪月花 新撰組異聞外伝 編 ~


~ 待雪草の花の咲く頃 降りくる雪 ~


登場人物

藤田五郎、藤田時尾、藤田勉、敬一[沖田総司の息子]、美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]




「夢のごと 君を相見て 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ」

「万葉集 第十巻 二三四二番」より

作者:詠み人知らず




暦は、冬から春に変わっている。



多くの場所で、冬のような寒さを感じる日が続く。



ここは、東京。



冬のような寒さを感じる日が続く。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。



食卓の有る部屋。



藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

時尾は微笑んで居る。

勉は笑顔で居る。



時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「五郎さん。待雪草を分けて頂ける話がありました。待雪草を受け取る返事をしました。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「待雪草を分けて頂ける量は少しになります。敬一君と美鈴さんに、お裾分けをしたいと思いましたが、無理のようです。」

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。おにいちゃん。おかあさん。おすそわけ。する。」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「勉は、敬一君と敬一君のお母さんに、待雪草を贈りたいのね。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通に話し出す。

「待雪草。異国の花だと思う。珍しい花に該当すると思う。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通に話し出す。

「時尾への感謝の印として、待雪草を分けてもらう話の可能性はあるのか?」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「五郎さんの話す可能性はあります。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通に話し出す。

「時尾の判断に任せる。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「分かりました。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通の表情で頷いた。

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。おにいちゃん。おかあさん。おすそわけ。する。」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「お父さんとお母さんで、お裾分けについてゆっくりと相談するわね。」

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「おねがい。」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「勉。寝る準備をしましょう。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。



勉は部屋から笑顔で居なくなった。

時尾は部屋から微笑んで居なくなった。



藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んだ。



数日後の事。



ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。



玄関。



敬一は微笑んで居る。

美鈴も微笑んで居る。



美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。斉藤さんとご家族に、迷惑を掛けないようにね。帰りが遅くならないようにね。気を付けて出掛けてね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「行ってきます。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。



敬一は家から微笑んで出て行った。



暫く後の事。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。



藤田五郎は、居ない。

時尾と勉は、居る。

敬一が、訪ねている。



食卓の有る部屋。



時尾は微笑んで居る。

勉は焙じ茶を笑顔で美味しく飲んでいる。

敬一は焙じ茶を笑顔で美味しく飲んでいる。



勉は焙じ茶を飲みながら、敬一に笑顔で話し出す。

「まつゆきそう。ある。」

敬一は焙じ茶を飲みながら、勉に不思議な様子で話し出す。

「まつゆきそう?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「待雪草。待ち人、の、待。降る雪、の、雪。植物の草、の、草。以上の文字を書くの。」

敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾に微笑んで話し出す。

「待雪草。雪を待つ草。素敵な名前ですね。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「待雪草。私も素敵な名前だと思うわ。」

敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾を微笑んで見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「別名には、雪の花、があるの。」

敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾に微笑んで話し出す。

「待雪草。雪の花。共に素敵な名前ですね。」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾に微笑んで話し出す。

「焙じ茶を飲み終わった後に、待雪草を見ても良いですか?」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は焙じ茶を飲みながら、時尾と勉を微笑んで見た。

勉は時尾と敬一を笑顔で見た。



少し後の事。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。



縁。



待雪草が小さな鉢に植わっている。



待雪草は綺麗な花を咲かせている。



時尾は微笑んで来た。

勉は笑顔で来た。

敬一は微笑んで来た。



敬一は待雪草を微笑んで見た。

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「まつゆきそう。かわいい。」

敬一は勉を見ると、勉に微笑んで話し出す。

「待雪草。可愛いね。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「あげる。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「時尾さん。他の待雪草は、斉藤さんの部屋などに飾ってありますか?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「家に飾ってある待雪草は、敬一君が見ているだけよ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「待雪草。初めて見ました。東の地方や北の地方などで、見られる植物ですか?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「主に異国で見られる植物になるそうよ。私達の住む場所では、見る機会が少ないと思うわ。」

敬一は時尾に申し訳なく話し出す。

「待雪草。珍しい植物になります。申し訳ないです。遠慮します。」

勉は時尾を残念な様子で見た。

時尾は勉を見ると、勉を微笑んで撫でた。

敬一は時尾と勉を申し分けなく見た。

時尾は勉を撫でるのを止めると、敬一を見て、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。大丈夫よ。」

敬一は時尾を安心して見た。

時尾は敬一と勉を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の有る部屋。



敬一は笑顔で美味しく食事をしている。

美鈴は微笑んで食事をしている。

食卓には、豪華ではないが丁寧に作られた食事が載っている。



敬一は食事をしながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。斉藤さんの家で、待雪草を見たんだ。待ち人、の、待。降る雪、の、雪。植物の草、の、草。以上の字を書くんだ。下向きの白色の花が咲くんだ。清楚で可愛い花なんだ。」

美鈴は食事をしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「待雪草。名前も花の姿も、素敵なのね。」

敬一は食事をしながら、美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は食事をしながら、敬一を微笑んで見た。

敬一は食事をしながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「待雪草の花が咲く頃は、今頃の時季なんだ。待雪草の花が雪に包まれて咲く時があるんだって。待雪草の花が雪の包まれて咲く様子を見たいと思ったんだ。」

美鈴は食事をしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんも待雪草が雪の中で咲く様子を見たいわ。」

敬一は食事をしながら、美鈴を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



玄関。



藤田五郎が包みを持ち、普通に訪ねてきた。



美鈴は微笑んで来た。



藤田五郎は包みを持ち、美鈴に普通に話し出す。

「時尾から、敬一と美鈴さん宛ての荷物を預かった。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「忙しい中を来て頂いてありがとうございます。玄関は寒いですよね。家の中に上がってください。」

藤田五郎は包みを持ち、美鈴に普通の表情で頷いた。



藤田五郎は包みを持ち、家の中に普通に入って行った。

美鈴は家の中に微笑んで入って行った。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



食卓の有る部屋。



藤田五郎は普通に居る。

藤田五郎の傍には包みが置いてある。

敬一は微笑んで居る。

美鈴も微笑んで居る。



藤田五郎は美鈴の前に包みを置くと、美鈴に普通に話し出す。

「待雪草。時尾からの預かり物だ。」

美鈴は藤田五郎に申し訳なく話し出す。

「敬一から、待雪草は、異国の植物で、私達の住む場所で見る機会が少ない、と聞きました。」

藤田五郎は美鈴の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎に申し訳なく話し出す。

「待雪草。受け取れません。」

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「昨日、待雪草を追加で受け取った。時尾が敬一と美鈴さんに愛でて欲しいと話した。俺は時尾の代わりに待雪草を持ってきた。美鈴さんと敬一が、待雪草を遠慮して受け取らないと、時尾が困る。勉が、敬一と美鈴さんが、待雪草を喜んで愛でる様子を笑顔で想像している。遠慮せずに受け取ってくれ。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お気遣いありがとうございます。待雪草。喜んで頂きます。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございます。」

藤田五郎は美鈴と敬一に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。包みを開けて良いですか?」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は包みを微笑んで開けた。



包みの中には、小箱が入っている。



美鈴は小箱を微笑んで開けた。



待雪草が小さな鉢に植わっている。



待雪草は小さな花を咲かせている。



美鈴は待雪草を微笑んで見た。

敬一は美鈴と待雪草を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一と美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「時尾さんに勉君に、お礼を伝えてください。」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お酒を用意しています。少しお待ちください。」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。



美鈴は微笑んで居なくなった。



敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございます。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。



数日後の事。



ここは、東京。



僅かだが雪が降っている。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



縁。



待雪草が小さい鉢に植わっている。



待雪草は花を咲かせている。



敬一は微笑んで来た。

美鈴も微笑んで来た。



敬一は待雪草を微笑んで見た。

美鈴も待雪草を微笑んで見た。



待雪草に雪は積もっていない。



敬一は美鈴を見ると、美鈴に微笑んで話し出す。

「大切な贈り物の待雪草。待雪草の花が雪に包まれて咲く様子を見て楽しみたいけれど、想像のみで楽しむね。」

美鈴は敬一を見ると、敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんも想像のみで楽しむわ。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「雪の降る様子と待雪草を見た時に、思い出した歌が有るの。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。教えて。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「“夢のごと 君を相見て 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ”。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「“君”は、待雪草、に繋げたんだ。“消ぬべく思ほゆ”は、待雪草と雪の合わさる光景を重ねたんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「待雪草が雪に包まれない場所に移動しましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は待雪草の植わる小さい鉢を微笑んで持った。



美鈴は微笑んで歩き出した。

敬一は待雪草の植わる小さい鉢を持ち、微笑んで歩き出した。



「夢のごと 君を相見て 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ」

待雪草の花の咲く頃。

雪の降る時がある。

寒さの中に、春の気配を感じ始める頃になる。

敬一は、待雪草の花を笑顔で見ながら過ごしている。

美鈴は、待雪草の花を微笑んで見ながら過ごしている。

春は、待雪草の花の咲く中でゆっくりと過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十巻 二三四二番」

「夢のごと 君を相見て 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ」

ひらがなの読み方は「いめのごと きみをあひみて あまぎらし ふりくるゆきの けぬべくおもほゆ」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は、「夢みたいにあなたに逢ってから、天を曇らせてくる雪のように、消え入りそうになる私です。」となるそうです。

原文は「如夢 君乎相見而 天霧之 落来雪之 可消所念」

「スノードロップ」についてです。

ヒガンバナ科の多年草です。

耐寒性の秋植え球根草です。

原産は、ヨーロッパ、及び、カフカス地方、です。

学名は「Galanthus nivalis」です。

属名は「Galanthus(ガランサス)」です。

英語名は「snowdrop(スノードロップ)」です。

和名は、「待雪草(まつゆきそう)」、「雪の花(ゆきのはな)」、です。

観賞用です。

球根は小型の鱗茎(りんけい)です。

現在の暦で、2月頃、鱗茎から長さ10cm程の線形の葉が数枚出ます。

現在の暦で2~3月頃、高さ約15cmの花茎が伸び、頂端に白色の花が下向きに開きます。

春の季語です。

日本で広く呼ばれる名前は、「スノードロップ」、「待雪草」、です。

日本で他によ呼ばれる名前は、「ガランサス」、「雪の花」、があります。

日本には、明治時代初期に渡来したようです。

「snow」についてです。

幾つか意味があるので、一部のみ書きます。

「雪」です。

「drop」についてです。

幾つか意味があるので、一部のみ書きます。

「砂糖に水飴をまぜて煮詰め、色素・香料などを加え、型を打ち抜いた飴菓子。」、「しずく。滴り。」、です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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