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新撰組異聞 〜 孤高の桜 誠の姿を知る者は 〜


〜 第三版 〜


今は春の終わり。


ここは、京の町。


一重の桜も八重の桜も散ってしまった。

桜の木は緑色の葉を茂らせている。


今日は綺麗な青空が広がっている。


緑色の葉は陽の光を受けて輝いている。


ここは、落ち着いた雰囲気の寺。


境内の縁の傍には、葉桜の木が在る。


ここは、縁。


沖田総司と斉藤一が居る。


沖田総司は斉藤一と葉桜の木を笑顔で見ている。

斉藤一は横になったまま、沖田総司と葉桜の木を普通の表情で見ている。


沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「今日は良い天気ですね! 気持ちの良い日ですね!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「今日のように穏やかな日は好きです!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を苦笑しながら見た。

斉藤一は横になったまま、沖田総司を普通の表情で見た。


心地良い風が吹いた。


沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「桜は完全に散ってしまいましたね。」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「今の京の町は葉桜の時期だろ。満開の桜を見る方が不思議だ。」

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「私は葉桜になった木を見て、僅かに寂しさを感じたので、斉藤さんに話しました。」

斉藤一は横になったまま、葉桜と青空を普通の表情で見た。

沖田総司は、斉藤一、葉桜、青空を苦笑しながら見た。


葉桜の木の枝の間から、綺麗な青空とゆっくりと動く白い雲が見える。


沖田総司は葉桜と青空を見ながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。何度も話していますが、以前に試衛館で逢った男の子にどうしても逢いたいと想い続けています。一度だけでも良いから逢いたいと想い続けています。」

斉藤一は横になったまま、沖田総司を見ると、普通に話し出す。

「確かに何度も聞く内容の話だな。」

沖田総司は葉桜と青空を見ながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「その男の子に、初めて逢った時も、次に逢った時も、その次に逢った時も、なぜかその男の子の帰り間際などの時間の無い時でした。時間が無いために、一度も言葉を交わせずに男の子は居なくなりました。」

斉藤一は横になったまま、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は葉桜と青空を見ながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「その男の子と逢えたら、手合わせや二人だけでゆっくりと話して過ごしたいです。」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「それ程にそいつと逢いたいんだ。」

沖田総司は斉藤一を見ると、笑顔で話し出す。

「はい!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、笑顔で話し出す。

「その男の子はあれからどのように過ごしているのでしょうか?! その男の子は元気に過ごしているのでしょうか?! その男の子に早く逢いたいです!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。そいつの名前は何というんだ?」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「山口一君という名前だそうです!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さんは近藤さんや土方さんと以前からの知り合いですよね! 山口一君という名前の男の子について聞いた記憶は無いですか?! 山口一君という名前の男の子に逢った記憶はありませんか?!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「今の山口一君は大人になっているので、男の子と呼ぶのは失礼ですよね!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「そいつと初めて逢った時は子供だったのだろ。話の流れから考えると、男の子と呼んでも構わないと思う。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さんの話しを聞いていたら、理由は分かりませんが安心しました!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「ただし、その後に何が起きるかまでは分からない。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。

斉藤一は横になったまま、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの名前も山口君と同じ“一”ですね。」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。そいつの歳を知っているのか?」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私より僅かに年下だそうです。」

斉藤一は横になったまま、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。そいつは、江戸で旗本を斬って、江戸に居られなくなって、名前を変えて、京の町に逃げて、そのまま京の町に住み続けているかも知れないぞ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「山口君は乱暴な性格の子には見えませんでした。山口君は素直で真面目な良い子に見えました。」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「褒めてもらえて嬉しいよ。」

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「斉藤さん? 今、何と言ったのですか?」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「“褒めてもらえて嬉しいよ”と言った。」

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見た。

斉藤一は普通の表情で、ゆっくりと起き上がった。

沖田総司は斉藤一に混乱した様子で話し出す。

「斉藤さん! 今の話は冗談ですよね!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司には俺が冗談で話しているように見えるのか?」

沖田総司は斉藤一を見ながら、慌てて首を横に振った。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「確かに総司には何度も逢った。総司は俺の姿や顔を覚えていないらしく、俺が近くに居た時も俺が近くで挨拶をした時も、総司は普通に居なくなるか不思議そうに挨拶を返すだけで居なくなった。」

沖田総司は斉藤一を複雑な表情で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺と総司が逢った時間は僅かだから、俺の姿や顔を覚えていないのは仕方がないのかも知れない。」

沖田総司は斉藤一に複雑な表情で話し出す。

「斉藤さん。なぜ今まで斉藤さんと山口君が同一人物だと教えてくれなかったのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺が総司に同一人物だと話さなかった理由は、主に二つだ。一つは、総司は俺に確認や質問をしなかった。もう一つは、俺が総司に急いで伝える状況がなかった。」

沖田総司は斉藤一に複雑な表情で話し出す。

「斉藤さんは私を覚えていたんですよね。斉藤さんの話の内容は理解できますが、もっと早く教えて欲しかったです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の言い分を叶えようとすると、俺は総司に逢った時に、“俺は以前に山口一と名乗っていたが、江戸で旗本を斬ったために、斉藤一と名前を変えた。京の町に居るのは、江戸で旗本を斬ったために逃げてきたからだ。京の町ではいろいろな経験をして過ごしていた。俺が山口一と名乗っていた時に、総司と会っていたな。総司。久しぶりに会えて嬉しい。”などのように言えば良かったのか?」

沖田総司は斉藤一に困惑した様子で話し出す。

「私は斉藤さんを困らせるために話した訳ではありません。斉藤さんに失礼な話しをしてしまって申し訳ありませんでした。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を困惑した様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。悩むな。」

沖田総司は斉藤一に申し訳なさそうに話し出す。

「斉藤さんと逢った時の気持ちを忘れた日はありません。でも、私が斉藤さんの姿や顔をはっきりと覚えていなかったために、多摩や京の町で再び逢った時も気付かず、京の町では共に過ごしているのに気付きませんでした。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一ら申し訳なさそうに話し出す。

「私は斉藤さんが教えたくない内容まで言わせてしまいました。本当に申し訳ありませんでした。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺と総司が逢った時は、全て僅かな時間だった。総司は剣を交えていない人物の姿や顔を覚えるのが、物凄く苦手だろ。総司の性格や特徴から考えると仕方が無いと思う。俺は総司が今の話に関する内容をずっと黙っていてくれるだけで充分だ。」

沖田総司は斉藤一に安心した表情で話し出す。

「やはり斉藤さんの話しを聞くと安心します。斉藤さんの昔の出来事については誰にも言いません。安心してください。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に言い難そうに話し出す。

「斉藤さん。失礼な内容になるかも知れませんが、念のため確認したい内容があります。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に言い難そうに話し出す。

「斉藤さんは山口一君ですよね。斉藤さんは私より年下と考えて良いのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を困惑した様子で見た。

斉藤一は沖田総司の肩に普通の表情で手を置いた。

沖田総司は斉藤一を緊張した様子で見た。

斉藤一は沖田総司の肩に手を置いたまま、普通に話し出す。

「総司お兄ちゃんの話した状況になります。総司お兄ちゃん。これからもよろしくお願いいたします。」

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見た。

斉藤一は沖田総司の肩に手を置いたまま、普通に話し出す。

「多摩や江戸では何度も近くに居たのに、声を掛けてくれなくて寂しかったです。でも、いつか必ず逢えると信じて過ごしていました。総司お兄ちゃんが僕に気付く日が早く訪れて欲しいと思って過ごしていました。総司お兄ちゃんがやっと気付いてくれました。とても嬉しいです。」

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見ている。

斉藤一は沖田総司の肩に手を置いたまま、普通に話し出す。

「寺の境内に在る桜は、総司お兄ちゃんと初めて逢った時と同じ種類の桜です。葉桜になっていますが、同じ種類の桜の傍で気付いてくれました。とても嬉しいです。総司お兄ちゃんもとても嬉しいですよね。」

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司お兄ちゃんは嬉しくないのですか?」

沖田総司は斉藤一を見ながら、驚いた表情で首を横に振った。

斉藤一は沖田総司の肩に手を置いたまま、普通に話し出す。

「総司お兄ちゃんも嬉しいのですね。更に嬉しいです。」

沖田総司は斉藤一を見ながら、驚いた表情で小さく頷いた。

斉藤一は沖田総司の肩に手を置いたまま、普通の表情で話し出す。

「総司。新撰組に入隊するまでの経緯は、近藤さんも土方さんもある程度は知っている。だが、今の話の内容については、俺と総司だけの秘密で良いよな。」

沖田総司は斉藤一に驚いた表情で小さく頷いた。

斉藤一は沖田総司の肩を軽く叩いてから、手を普通に離した。

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見た。

斉藤一は沖田総司の肩を軽く叩くと、普通に話し出す。

「総司。大丈夫か?」

沖田総司は斉藤一に驚いた表情で小さく頷いた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


葉桜の枝の間から沖田総司と斉藤一の元に陽の光が差した。


沖田総司は斉藤一に疲れた表情で話し出す。

「斉藤さんの話を聞いていたら、物凄く疲れました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は総司が物凄く疲れる内容を話したのか?」

沖田総司は斉藤一に疲れた様子で話し出す。

「斉藤さんにとっての物凄い内容の話を一度で良いから聞いてみたいです。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で話し出す。

「今から物凄い内容の話をしようか?」

沖田総司は斉藤一を見ながら、驚いた表情で首を横に降った。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を緊張した表情で見た。


心地良い風が吹いた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一を緊張した表情で見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。そろそろ戻ろう。」

沖田総司は斉藤一を気の抜けた表情で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。返事は?」

沖田総司は斉藤一に疲れた表情で話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


斉藤一は普通に立ち上がった。

沖田総司はゆっくりと立ち上がった。


斉藤一は普通に歩き出した。

沖田総司は斉藤一を複雑な表情で見ながら歩き出した。


沖田総司は山口一に逢いたいと想い続けていた。

山口一は沖田総司の知らない内に、斉藤一と名乗っていた。

沖田総司は京の町で山口一と共に過ごしていたのに気付かなかった。

沖田総司は山口一と本当の意味で再び逢えた。

沖田総司が山口一と初めて逢った時は、素直な良い子に見えた。

今の沖田総司にとって、斉藤一は信頼できる人物になる。

沖田総司は斉藤一の凄さを本当の意味で理解していない。

沖田総司が斉藤一の凄さを本当の意味で理解するのはいつの日か?

答えるが分かるのは、桜だけかも知れない。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承ください。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正しながら書いていきます。

今回の物語の時間設定は、沖田総司さんが斉藤一さんと山口一さんが同一人物と知る時の出来事になります。

史実の斉藤一さんが、山口一さんから斉藤一さんに名前を変えた理由は、今回の物語で斉藤一さんが沖田総司さんに話した「江戸で旗本を斬ったために、江戸に居られなくなり、京に逃げてきたから。」という内容が一般的な説として知られています。

旗本を斬った理由は、幾つかの説があるらしく、はっきりとしていません。

沖田総司さんと斉藤一さんの年齢差は、史実の生没年を基にしています。

小説などで描かれる印象やドラマなどで演じる役者さんの年齢からは、想像し難い年齢差だと思います。

「新撰組異聞外伝 短編 行き散る者が出逢う時」は、沖田総司さんと斉藤一さんの年齢差を僅かに表す場面が登場する物語になっています。

今回の物語でも詳しい年齢差は伏せて書きました。

想像しながら読んでください。

人生の裏表を見る世界を一人で生きて、落ち着いた雰囲気で無口で無表情な斉藤一さん。

人生の明るく楽しい事をたくさん見て真っ直ぐに生きて、明るい性格や周りを明るい雰囲気にする沖田総司さん。

沖田総司さんと斉藤一さんには、このようなイメージがあるように思います。

この物語以降にいろいろな事が起きて、沖田総司さんと斉藤一の関係が少しずつ変わっていくと想像しながら読んでください。

今回の物語の題名の「孤高の桜 孤高の桜 誠の姿を知る者は」は、斉藤一さんの誠の姿を知る者は誰なのか? という意味で考えました。

物語の時系列は、「新撰組異聞外伝 短編 一瞬の出逢い 桜の舞うなか」→「新撰組異聞外伝 短編 桜の舞う中でのすれ違い」→「新撰組異聞外伝 短編 桜散るなか 一瞬の出逢い」→「新撰組異聞 短編 都に咲く孤高の桜」→「新撰組異聞 短編 桜舞散り葉桜へ 出逢いの時」→「新撰組異聞 短編 孤高の桜 誠の姿を知る者は」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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