新撰組異聞　〜　福禄寿につつじ咲く　〜


〜　第三版　〜


沖田総司達が京の町に着いてから、幾月も経っていない頃。


ここは、京の町。


青空が広がり過ごしやすい日となっている。


ここは、沖田総司と少女が逢う約束をした寺。


境内。


八重桜の花と躑躅の花が咲いている。


少女は山門を心配な様子で見ている。


沖田総司が山門を潜り、少女の傍に元気良く走ってきた。


少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に元気良く話し出す。

「良かった〜！　間に合った〜！」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お仕事が忙しいですよね。遅れて来て大丈夫です。」

沖田総司は少女に笑顔で話し出す。

「遅れると逢う時間が少なくなるよね！　逢う時間が少なくなると寂しいよね！　私に遠慮しないでね！」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は躑躅の花を見ると、少女に笑顔で話し出す。

「たくさんの色の躑躅の花がとても綺麗に咲いているね！　たくさん見ようね！」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女の手を笑顔で握った。

少女は沖田総司を微笑んで見た。


沖田総司は少女の手を握り、笑顔で歩き出した。

少女は微笑んで歩き出した。


沖田総司は少女の手を握り、慌てて止まった。

少女は不思議な様子で止まった。


沖田総司は少女の手を放すと、少女に申し訳なく話し出す。

「突然に手を握ってしまった。突然に勢い良く歩いてしまった。ご免ね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私は大丈夫です。気にしないでください。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私と鈴ちゃんの間に上下関係は無いよ。気にしないで、と思わないで。」

少女は沖田総司に申し訳なく話し出す。

「ごめんなさい。」

沖田総司は少女に慌てて話し出す。

「言い過ぎた！　ご免ね！」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女を安心して見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「沖田様と躑躅をたくさん見たいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「境内に、八重桜の花と躑躅の花が一緒に咲く場所があるね。近くで見よう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。


僅かに後の事。


ここは、沖田総司と少女が逢う約束をした寺。


境内。


八重桜の花が綺麗に咲いている。

躑躅の花が綺麗に咲いている。


沖田総司は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。


沖田総司は八重桜を見ながら、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。私が見ている八重桜の名前を教えて。」

少女が沖田総司に微笑んで話し出す。

「“福禄寿”です。」

沖田総司は少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「“福禄寿”。縁起が良い名前だね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に笑顔で話し出す。

「斉藤さんと一緒に花を見る時があるんだ！　斉藤さんは、興味が無いと話すけれど、植物について詳しいんだ！　凄いよね！」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「植物に詳しい方が、身近に居たのかも知れません。」

沖田総司は少女に笑顔で話し出す。

「鈴ちゃん！　さすがの推理だよ！」

少女は沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「私は可能性の一つを話しただけです。」

沖田総司は少女に笑顔で話し出す。

「先日は、斉藤さんと一緒に躑躅を見たんだ！　とても楽しかったよ！　私と斉藤さんと鈴ちゃんで、たくさんの花を見よう！　私から斉藤さんに話すから、心配しないで返事をしてね！」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私が一緒にお出掛けしたら、斉藤様に迷惑が掛かりますよね。」

沖田総司は少女に笑顔で話し出す。

「斉藤さんは優しい性格だよ！　斉藤さんは迷惑だと思わないよ！　斉藤さんは花を含めた植物について詳しいから、楽しく話が出来るよ！」

少女が沖田総司に微笑んで話し出す。

「斉藤様に悪いので遠慮します。」

沖田総司が少女に笑顔で話し出す。

「斉藤さんは怖くないよ！　大丈夫だよ！」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「沖田様も斉藤様も、怖いと思った時はありません。」

沖田総司は少女に笑顔で話し出す。

「斉藤さんは、斉藤様の呼び名が似合わない雰囲気なんだ！　斉藤さんを斉藤様と呼ぶと不思議な感じがするんだ！」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「斉藤様は沖田様の大切な人物ですよね。斉藤様が可哀想です。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「斉藤さんは大切な友達なのに、失礼な内容で話してしまった。」

少女は沖田総司を困惑して見た。


強い風が吹いた。


沖田総司は下を向いた。

少女も下を向いた。


風が僅かに弱まった。


沖田総司はゆっくりと顔を上げた。

少女もゆっくりと顔を上げた。


沖田総司と少女の周りで、桜の花びらが風に乗って舞っている。


桜の花びらが遠くに飛んでいく。


沖田総司は桜の舞う様子を微笑んで見た。

少女は桜の花びらの舞う様子を見ながら、微笑んで呟いた。

「綺麗。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女を慌てて見た。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に慌てて話し出す。

「斉藤さんと出掛ける約束をしていた！　屯所に早く帰らないと！　家まで送るよ！」

少女が沖田総司を寂しい表情で見た。

沖田総司は少女を不思議な様子で見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お願いします。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。


沖田総司は微笑んで歩き出した。

少女も微笑んで歩き出した。


少し後の事。


ここは、屯所。


斉藤一の居る部屋。


斉藤一は普通に居る。


沖田総司は部屋の中に笑顔で入ってきた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん！　お待たせしました！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司から楽しい様子が伝わる。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「躑躅を見ました！　八重桜を見ました！　躑躅も八重桜も、とても綺麗でした！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「誰と見た？」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「友達と一緒に見ました！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の話す友達は、幾度も逢う年下の子で良いのか？」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「はい！」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん！　近い内に、三人で躑躅を見に行きましょう！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「遠慮する。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「遠慮する理由は何ですか？」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「理由も遠慮する。」

沖田総司は斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さん！　とても良い子です！　心配しないでください！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「良い子でも、遠慮する。」

沖田総司は斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さんも逢えば、絶対に良い子だと思います！　一緒に出掛けましょう！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。総司とその子の関係を説明しろ。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「物凄く仲の良い友達です！　物凄く大切な友達です！」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「その子が可哀想に思った。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一が沖田総司に普通に話し出す。

「その子が俺と出掛けて良いと返事をしたら、考える。」

沖田総司が斉藤一に笑顔で話し出す。

「分かりました！　明日になったら、斉藤さんの話を伝えます！」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん！　今日の出掛けたい場所は有りますか？！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司に任せる。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「出掛けながら考えましょう！」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。


沖田総司は部屋を笑顔で出て行った。

斉藤一は部屋を普通に出て行った。


今日の京の町は、八重桜の花が咲き、躑躅の花も咲き、穏やかな日となっている。




＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

沖田総司さんと少女の間には、後に子供が生まれます。

「新撰組異聞」に登場する少女と子供は、基本的には架空の人物です。

そのため、沖田総司さんと少女の関係は、基本的には架空の関係です。

「新撰組異聞　短編　思いのまま」を書いて、沖田総司さんと少女の物語をたくさん書きたいと思うようになりました。

この物語の時間設定は、沖田総司さんが京の町に来て初めて迎える晩春から初夏の頃、斉藤一さんが新撰組（当時は壬生浪士組）に入隊して間のない頃、です。

沖田総司さんは、少女と会っているのに、斉藤一さんに関する内容を話す、斉藤一さんに逢うので早く帰る、斉藤一さんと一緒に出掛けようと誘う、などの言動を取っています。

この物語より後の時間設定として、沖田総司さんと少女が、「新撰組異聞　短編　愛逢月が近づいて」、「新撰組異聞　短編　愛逢月の夢語り」、「新撰組異聞　　短編　愛逢月に蓮華が咲いて」などの物語の雰囲気になるのか、という状態ですが、この物語は、このような雰囲気になっています。

斉藤一さんと少女が初めて話す時は、「新撰組異聞　短編　思いのまま」です。

「福禄寿（ふくろくじゅ）」についてです。

桜の一種類です。

八重桜です。

「福禄寿」は「七福神」の神様です。

「福禄寿」は、「幸福・俸禄・長寿の三徳をそなえていて、福禄を授ける神様」です。

この物語の時間設定に見られるのか、との確認は取っていません。

良い名前で、八重桜なので、この物語で登場しています。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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