このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

新撰組異聞 〜 鳴神月 〜


〜 第三版 〜


ここは、京の町。


一日を通して蒸し暑さを感じるようになってきた。


空の色が重い灰色に変わり始めた。


ここは、屯所。


土方歳三の部屋。


土方歳三は机に普通の表情で向かっている。

机の上には、お茶が入った湯飲みが置いてある。


沖田総司が部屋の中に乱暴に入ってきた。


土方歳三は沖田総司を不思議な様子で見た。


沖田総司は土方歳三を立って睨んだ。


土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。何か遭ったのか?」


沖田総司は土方歳三を立って睨んでいる。


土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。座るか、怖い顔を止めるか、選べ。」


沖田総司は土方歳三を立って睨み続けている。


土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「部屋の中で立って睨んで黙り続けるな。直ぐに部屋を出てくれ。」


沖田総司は土方歳三を座って睨んだ。


土方歳三は沖田総司に苦笑して話し出す。

「俺は総司を怒らせる言動をしたのか?」

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「土方さんが笑顔で過ごしている。私には理解が出来ません。」

土方歳三は沖田総司に苦笑して話し出す。

「総司が斬る時の他に睨み続ける姿を、物凄く久しぶりに見る。」

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「土方さん。斉藤さんをあのような任務に就かせる理由を教えてください。」

土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が話す任務が分からない。具体的に話してくれ。」

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「真剣に答えてください。」

土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「真剣に話している。」

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「斉藤さんのみに、無茶な内容の任務を押し付ける理由を教えてください。」

土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「無茶な内容の任務を安心して任せられる隊士が、斉藤のみになるからだ。斉藤の他に該当する隊士がいれば、該当する隊士にも任せる。新撰組には強い隊士が揃っているから、斉藤に全ての任務を任せていない。総司に斉藤に頼む任務を安心して任せられるならば、斉藤に頼む回数が減る。」

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「土方さんの今の話の内容は、斉藤さんが無茶な任務に就く理由になりません。」

土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。斉藤が物凄く大切だから、物凄く怒るのか?」

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「はい。土方さんよりも、斉藤さんが物凄く大切だから、物凄く怒ります。」

土方歳三は沖田総司に苦笑して話し出す。

「俺は総司の上役だと分かって話しているのか?」

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「土方さんは私の上役だと分かって話しています。私は問題になる内容を話していません。」

土方歳三は沖田総司に僅かに不機嫌に話し出す。

「総司の発言を聞く間に、僅かずつ腹が立ってきた。」

沖田総司が土方歳三に不機嫌な微笑みで話し出す。

「私は土方さんと全く逆です。私は土方さんの発言を聞く間に、僅かずつ嬉しくなってきました。」

土方歳三は沖田総司に僅かに不機嫌に話し出す。

「総司。少し調子に乗り過ぎだ。」

沖田総司は土方歳三に不機嫌な微笑みで話し出す。

「私は調子に乗り過ぎていません。」

土方歳三は沖田総司に僅かに不機嫌に話し出す。

「総司。斬られたいのか?」

沖田総司は土方歳三に不機嫌な微笑みで話し出す。

「土方さんに私は斬れません。今の発言は、私への脅しに該当しません。」

土方歳三は沖田総司に意地の悪い微笑みで話し出す。

「俺が総司を斬るとは限らない。」

沖田総司は土方歳三に不機嫌な微笑みで話し出す。

「私を斬れる人物はいません。」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。一人のみだが、総司を斬る行為を任せられる人物がいる。」

沖田総司は土方歳三を睨んだ。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。誰だか分かったのか。さすかだな。」

沖田総司は土方歳三を睨んで低い声で話し出す。

「私と土方さんは、同じ人物を想像していますね。私と土方さんが想像する人物に、土方さんが話す任務を頼んだ場合は、土方さんを斬ります。」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司が俺を斬るのか?」

沖田総司は土方歳三に睨んで頷いた。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。調子に乗っていると、近い内に危険な出来事が起こるかも知れないぞ。」

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「土方さん。大切な内容を忘れて話しています。」

土方歳三は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「私は“新撰組一番組組長”です。斉藤さんは“新撰組三番組組長”です。私も斉藤さんも、剣術関連で太刀打ちできる人物は存在しません。」

土方歳三は沖田総司を睨んで見た。

沖田総司は土方歳三を睨んで小さい声で話し出す。

「土方さんが私を本気で斬りたいならば、私に事前の説明無しで、土方さんの都合の良い時に斬ります。私が斬られた場合、新撰組一番組組長の沖田総司が斬られた状況になります。自慢する訳ではありませんが、私の名前は世間に一応は知られています。私の斬られた状況によっては、新撰組の評価が落ちます。私の斬られた状況と新撰組の評価の落ちる状況が合わされば、動揺する隊士が増えます。斉藤さんが私の斬られた状況に関係する噂が、新撰組内部でも、世間でも、広がる可能性があります。動揺する隊士は更に増えます。新撰組の評判は更に悪くなります。私が考えるだけでも、面倒が増えます。土方さんが考えたら、更に面倒が増えます。」

土方歳三は沖田総司を睨んで見た。

沖田総司は土方歳三に真剣な表情で話し出す。

「私は斉藤さんに絶対に斬られません。理由は、土方さんが斉藤さんに最低な命令を頼む前に、私が土方さんを斬るからです。」

土方歳三は沖田総司を睨んでいる。

沖田総司は土方歳三を睨んだ。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司が思いのままの名前の梅の木の下で話した可愛い子がいたらしいな。今頃、可愛い子は何をして過ごしているのかな?」

沖田総司は土方歳三を睨んで低い声で話し出す。

「土方さん。何を考えているのですか?」

土方歳三が沖田総司に微笑んで話し出す。

「秘密。」

沖田総司は土方歳三を睨んで低い声で話し出す。

「土方さん。何を考えているか早く教えてください。教えない場合は、斬ります。」

土方歳三は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は湯飲みを取ると、土方歳三の頭上に湯飲みを睨んで傾けた。


湯飲みの中のお茶は、土方歳三に向かって流れた。


土方歳三は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は土方歳三の頭上に湯飲みを睨んで傾けている。


湯飲みの中のお茶は、土方歳三に全て流れた。


沖田総司は湯飲みを机に睨んで置いた。

土方歳三は沖田総司を睨んで見た。

沖田総司は土方歳三に睨んで低い声で話し出す。

「土方さん。私を斬る命令の理由が、一つ出来ました。」

土方歳三は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は土方歳三を睨んで低い声で話し出す。

「私を斬りたいと思うならば、他人を巻き込まず、一人で実行してください。」

土方歳三は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は土方歳三を睨んで低い声で話し出す。

「斉藤さんと彼女を巻き込んだ時は、土方さんを迷わずに斬ります。私の今の話は覚えていてください。」

土方歳三は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は土方歳三を睨んで見た。

土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「俺も調子に乗り過ぎた。悪かった。」

沖田総司は土方歳三を睨んでいる。

土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「仮に、俺が総司に何かをすると考えた場合は、斉藤も彼女も巻き込まない。約束する。」

沖田総司は土方歳三に睨んで小さな声で話し出す。

「私も調子に乗り過ぎた時がありました。」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「互いに調子に乗り過ぎた。互いに忘れよう。」

沖田総司は土方歳三を睨んで見た。

土方歳三は沖田総司を微笑んで見た。


沖田総司は部屋から普通に出て行った。


僅かに後の事。


ここは、屯所。


縁。


沖田総司は普通に歩いている。


斉藤一が普通に歩く姿が見えた。


沖田総司は斉藤一に笑顔で声を掛ける。

「斉藤さん!」


斉藤一は立ち止まると、沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は斉藤一の傍に笑顔で来た。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。」


雷が鳴った。


沖田総司は斉藤一に抱き付くと、直ぐに目を閉じた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


急に強い雨が降り出した。


斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は女性ではない。総司は子供ではない。総司に抱き付かれても嬉しくない。俺と総司の様子を見た人物は、不思議に思うか、怪しく思う。早く離れろ。」

沖田総司は斉藤一に目を閉じて抱き付いている。


雷が鳴った。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に目を閉じて抱き付いている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は総司が雷を苦手にしているのを知っている。総司の苦手な物を知る人物は少ない。俺は総司の今の行為を理解できる。俺と総司の様子を見た人物は、不思議に思うか、怪しく思う。早く離れろ。」

沖田総司は斉藤一に目を閉じて抱き付いて、斉藤一に困惑して話し出す。

「斉藤さんの話は理解できますが、今は無理です。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「今日の雷は、先程の鳴った雷で最後だと思う。」

沖田総司は斉藤一に抱き付いて、ゆっくりと目を明けた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一からゆっくりと放れた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「剣を持つと、雷が鳴っても、全ての修羅場で冷静に的確な対応が出来る。普通の時は、雷が鳴ると、今の言動になる。総司は本当に不思議だ。」

沖田総司は斉藤一に申し訳なく話し出す。

「迷惑を掛けてすいません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話しか出す

「総司は常に面白い。気にするな。雨も雷も止んだ。一緒に出掛けよう。」

沖田総司は斉藤一を嬉しく見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。

「斉藤さんが行きたい所に出掛けましょう!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の彼女に逢いたい。総司の告白を俺に見せてくれ。」

沖田総司は斉藤一を赤面して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今の話を本気にしたのか。本当に面白い。」

沖田総司は斉藤一に赤面して話し出す。

「今の話しは冗談なのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の想像に任せる。」

沖田総司は斉藤一に赤面しながらも安心して話し出す。

「斉藤さんの今の話は本気にしなくて良いのですね。安心しました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を赤面しながらも微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に小さい声で話し出す。

「彼女が可哀想になった。」

沖田総司は斉藤一を赤面しながらも不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。出掛けるぞ。」

沖田総司は斉藤一に赤面しながらも微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は微笑んで歩き出した。

斉藤一は普通に歩き出した。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語の前半の部分は、ある出来事を参考にして書く予定でした。

しかし、しっくりといきませんでした。

そこで、沖田総司さんが斉藤一さんのために怒る時、沖田総司さんが上役に対しても怒る時、などを考えました。

沖田総司さんは、斬り合いの時や稽古の時は、凄く怖かったそうです。

沖田総司さんは、それ以外の時は、明るく楽しい雰囲気だったそうです。

斬り合いの場面をたくさん書く予定がないので、凄むなどの怖い雰囲気の沖田総司さんを書きたいと考えて書いた物語にもなります。

「鳴神月(なるかみづき)」は「陰暦の六月の異称」です。

「雷鳴が多い月」というところから付いた別名です。

現在の暦にすると、六月から七月頃になります。

この時期を想像しながら物語を書きました。

「鳴神月」は、物語の雰囲気と合うと思った事や、怒りや凄みを面に出す沖田総司さんと雷が重なったので、題名に使いました。

史実の土方歳三さんと沖田総司さんは、差ほど仲が良くないのでは、情に流されない合理的な関係だったのでは、とする説があります。

沖田総司さんと土方歳三さんの仲が良いという資料が見付からないし確認も取れていないそうです。

逆に、沖田総司さんと土方歳三さんの仲が悪いと決め付ける資料も見付からないし確認も取れていないそうです。

そのため、土方歳三さんと沖田総司さんの仲が良くないとは限らない、とする説があります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください