このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

新撰組異聞 〜 鳴神月の雷鳴 〜


〜 第三版 〜


ここは、京の町。


暗い灰色の空が広がっている。


ここは、町中。


沖田総司は楽しく歩いている。

少女は微笑んで歩いている。


沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんより早く到着するかな?」

少女は沖田総司を微笑んで考えながら見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私は鈴ちゃんより、斉藤さんにたくさん逢っている。私が分からなければ、鈴ちゃんも分からないよね。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。


濃い灰色の空になった。


雨が降り始めた。


沖田総司は少女に僅かに慌てて話し出す。

「鈴ちゃん。雨が降ってきた。近くの場所で雨宿りをしよう。」

少女は沖田総司に僅かに慌てて頷いた。

沖田総司は少女の手を僅かに慌てながらも、優しく掴んだ。


沖田総司は少女の手を取り、早く歩き出した。

少女は早く歩き出した。


僅かに後の事。


ここは、京の町。


雨が強く降り始めた。


ここは、沖田総司と少女が歩いていた場所に近い寺。


本堂。


沖田総司は僅かに慌てて入ってきた。

少女も僅かに慌てて入ってきた。


沖田総司は少女に心配して話し出す。

「着物が少し濡れているね。寒い? 大丈夫?」

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「私は大丈夫です。総司さんのお着物も濡れています。寒いですか? 大丈夫ですか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私も大丈夫だよ。」

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「総司さん。無理をしないでください。」

沖田総司は少女に不思議な様子で話し出す。

「無理をしていないよ。大丈夫だよ。」

少女は沖田総司を心配して見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは心配性だね。鈴ちゃんが無理をしないか心配になるよ。」

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「私は大丈夫です。総司さんはご自分の心配をしてください。」

沖田総司が少女を心配な様子で見た。


外が雷光で突然に輝いた。


大きな音が鳴った。


少女は驚いて直ぐに目を瞑った。


突然の雷光は直ぐに消えた。


少女は直ぐに目を開けると、沖田総司を心配して見た。

沖田総司は少し体を小さくして目を閉じている。

少女は沖田総司に不思議な様子で話し出す。

「総司さん。大丈夫ですか?」

沖田総司は慌てて目を開けると、少女を見て、少女に苦笑して話し出す。

「雷の音が凄かったね。雷の光も凄かったね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を苦笑して見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「今は雨の降る音が、はっきりと聞こえます。」

沖田総司は少女に苦笑して頷いた。

少女は沖田総司に不思議な様子で話し出す。

「雷も雨も、直ぐに落ち着くと思います。」


外が突然に雷光で輝いた。


大きな音が鳴った。


沖田総司は直ぐに目を瞑った。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は直ぐに目を開けると、少女を見て、少女に僅かに苦笑して話し出す。

「鈴ちゃん。続きを話して良いよ。」

少女は沖田総司に不思議な様子で話し出す。

「私の話しは終わりました。」

沖田総司は少女を苦笑して見た。

少女は沖田総司に不思議な様子で話し出す。

「総司さん。大丈夫ですか?」

沖田総司は少女を僅かに動揺して見た。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に僅かに動揺して話し出す。

「鈴ちゃん。雷は平気なの?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「雷は怖いと思います。少しだけならば、大丈夫です。」

沖田総司は少女を苦笑して見た。

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「総司さん。私は頼りになりませんよね。」

沖田総司は少女を不思議な様子で見た。

少女は沖田総司に悲しく話し出す。

「私は総司さんより凄く年下です。私は総司さんに迷惑をたくさん掛けています。私は頼りになりませんよね。」

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。何か遭ったの?」

少女は沖田総司に悲しく話し出す。

「私は総司さんのお仕事について、ほとんど知りません。私は総司さんの役に立ちません。私は総司さんの苦労を増やしています。私が頼りないから、総司さんが悩んでも相談相手になれません。私が頼りになれば、私が総司さんのお仕事について理解できれば、総司さんは安心して過ごせますよね。」

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。誰かに酷い内容を言われたの?」

少女は沖田総司に悲しい表情で小さく首を横に振った。

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。私は変な内容を話したのかな?」

少女は沖田総司に悲しい表情で小さく首を横に振った。

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃんは今のままで良いよ。」

少女は沖田総司に悲しく話し出す。

「私は総司さんに相応しくないと思います。」

沖田総司は少女に不機嫌に話し出す。

「鈴ちゃん! 自分を下げる内容を話すのは止めるんだ!」

少女は驚いて目を閉じた。

沖田総司は少女に僅かに慌てて話し出す。

「鈴ちゃん。怖いよね。大きな声を出してご免ね。」

少女は目を開けると、沖田総司を見て、沖田総司に悲しく話し出す。

「総司さんが困るのも、総司さんが私に悩みを話せないのも、私が頼りないからです。総司さんは悪くないです。」

沖田総司は少女を困惑して見た。

少女は沖田総司に悲しく話し出す。

「総司さんの悩みは、私には話せない悩みなのですね。」

沖田総司は少女を困惑して見ている。

少女は沖田総司に悲しく話し出す。

「総司さん。困らせてごめんなさい。」

沖田総司は少女を抱きしめると、少女に悲しく話し出す。

「鈴ちゃん。いつも気を遣わせてご免ね。私と鈴ちゃんに間には、主従関係は無い。私は親を早くに亡くしている。私の家は裕福ではない。私より上の身分の人物はたくさんいる。鈴ちゃんは、お嬢様だと直ぐに分かる。私の家と比べると、鈴ちゃんの家は立派だ。」

少女は沖田総司に悲しく話し出す。

「私はお嬢様ではないです。総司さんは大変なお仕事をしています。私と比べられないほど立派です。」

沖田総司は少女を抱きしめて、沖田総司に悲しく話し出す。

「鈴ちゃんと話す時は、とても楽しいよ。鈴ちゃんの笑顔を見ると安心するよ。鈴ちゃんが私の無理をたくさん聞いていてくれるから、とても助かっているよ。私は鈴ちゃんにいつも迷惑を掛けているから、申し訳ないと思っているよ。」

少女は静かに泣き出した。

沖田総司は少女を抱きしめて、少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。大丈夫?」

少女は静かに泣いている。

沖田総司は少女を抱きしめて、少女を心配して見た。

少女は沖田総司に静かに泣いて話し出す。

「私は総司さんの悩みを知りません。斉藤さんは総司さんの悩みをご存知ですよね。」

沖田総司は少女を抱きしめて、少女に悲しく話し出す。

「鈴ちゃん。自分を悪く話さないで。鈴ちゃん。私のために、辛い思いをしないで。鈴ちゃん。自分を責めて悩まないで。」

少女は静かに泣いた。

沖田総司は少女を抱きしめて、少女に悲しく話し出す。

「鈴ちゃんがたくさん悩んでいるのに気付かなかった。鈴ちゃんに隠している訳ではないんだ。鈴ちゃんに何から話して良いのか分からないんだ。鈴ちゃんには、いつになるか分からないけれど、必ず話す。待って欲しい。私は鈴ちゃんを信頼している。鈴ちゃんは悪くない。悪いのは、私だよ。私は、鈴ちゃんの笑顔を見たい、鈴ちゃんと楽しく話したい、鈴ちゃんといろいろな所に行きたい。鈴ちゃん。安心して。」

少女は沖田総司に静かに泣いて話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を強く抱きしめた。

少女は静かに泣き止んだ。


雷の音が聞こえなくなっている。


雨の音も聞こえなくなっている。


沖田総司は少女を抱いて、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。雨が止んだみたいだね。」

少女は沖田総司に小さく頷いた。

沖田総司は少女を微笑んでゆっくりと放した。

少女は沖田総司を不安な様子で見た。

沖田総司は障子を微笑んで開けた。


青空が広がっている。


沖田総司は外を微笑んで見た。

少女も外を微笑んで見た。

沖田総司は少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。空が綺麗な青色をしているよ。」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女を何かを思い出した様子で見た。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に慌てて話し出す。

「突然に土砂降りの雨が降り始めたよね! 斉藤さんは雨宿りの場所を見付けられたのかな?! 斉藤さんが土砂降りの雨の中で約束の場所で待っている可能性がある! 斉藤さんが私と鈴ちゃんを心配しているかも知れない! 早く約束の場所に行こう!」

少女は沖田総司に不思議な様子で頷いた。


沖田総司は本堂を慌てて出て行った。

少女は本堂を微笑んで出て行った。


少し後の事。


ここは、沖田総司、斉藤一、少女が、約束をした場所。


一本の緑色の葉が繁った木の傍。


木の葉の雫が陽の光に当って輝いている。


斉藤一は普通に立っている。


時折になるが、木の葉の雫が斉藤一に向かって落ちてくる。


斉藤一は落ちてくる雫を手で受け止めて、普通に立っている。


沖田総司は微笑んで来た。

少女も微笑んで来た。


斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「遅くなりました。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「遅くなりました。」

斉藤一は沖田総司と少女に普通に話し出す。

「想像より濡れていない。雨宿りが出来て良かったな。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは着物が濡れていませんね。雨宿りが出来たのですね。安心しました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「雨の降る前に、雨宿りの出来る場所が見付かった。」

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。


暫く後の事。


ここは、町中。


沖田総司は普通に歩いている。

斉藤一も普通に歩いている。


沖田総司は斉藤一に静かに話し出す。

「鈴ちゃんが、私が一人で悩んでいると話しました。鈴ちゃんは自分が頼りにならないから、私が黙っていると話して、自分を責めました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に静かに話し出す。

「自分を責める鈴ちゃんが可哀想です。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に静かに話し出す。

「今までは、鈴ちゃんに私の体調を話したら去っていくと思って、何も話せませんでした。鈴ちゃんは、私の体調を知っても私の傍に居てくれると思うから、鈴ちゃんに私の体調について話すと決めました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは総司の状況を知っても、総司の傍に居ると思う。美鈴さんの周囲の人物達は美鈴さんと違う考えになる可能性が非常に高い。当分の間は、総司と美鈴さんの間の秘密になる。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんにも正しく伝えます。私と斉藤さんと鈴ちゃんの間の秘密です。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は弥勒菩薩の前で美鈴さんと約束を交わした。約束は必ず守れ。」

沖田総司が斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「酷い雷雨になる空模様になったから、雨宿りの出来る場所を探していた。傍に在る寺の本堂に入った。俺が本堂に入った後に、総司と美鈴さんが、本堂に入ってきた。総司と美鈴さんは、深刻な内容を話し始めた。先程の総司と美鈴さんの話の内容の場合は、総司と美鈴さんの前に現れる行為は無粋だ。小雨の降る程度ならば、本堂から直ぐに去る。当時は雷雨だったから、外に出るのは嫌だった。以上の状況から、限られる隠れ場所の中で、気付かれないように隠れた。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。いつから寺の中に居たのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺の話が理解できなかったのか。仕方が無い。話の一部を再び話す。俺が雨宿りのために寺の本堂に入った。俺が本堂に入った後に、総司と美鈴さんが本堂に入ってきた。」

沖田総司は斉藤一を僅かに驚いた表情で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは、途中で気付いたが、話しを続けた。」

沖田総司が斉藤一に怪訝な様子で話し出す。

「もしかして、私は斉藤さんの存在にずっと気が付かなかった、と考えて良いのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に大きな声を出した。

「斉藤さん!」

斉藤一は沖田総司の背中を普通に前に押した。


沖田総司は驚いた表情で勢い良く前に出た。


沖田総司は後ろを直ぐに見た。


斉藤一の姿は見えない。


沖田総司は周りを慌てて見た。


斉藤一の姿は見えない。


沖田総司は辺りを見ながら、不思議な様子で呟いた。

「斉藤さん。今回も一瞬で姿を消した。一瞬で姿を消す方法が分からない。」


沖田総司は空を不思議な様子で見た。


青空が広がっている。


沖田総司は視線を戻すと、微笑んで呟いた。

「斉藤さんは、私のたくさんの相談に乗ってくれる、私の相談にたくさんの助言をくれる。斉藤さんは私と鈴ちゃんをたくさん助けてくれる。今回の件は知られても構わないよね。」


沖田総司は微笑んで歩き出した。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

当時の雷は、今より怖い対象だったと思います。

雷を怖がる人がいても不思議ではないと思います。

「新撰組異聞」の沖田総司さんは雷が苦手ですが、鈴ちゃんの前なので、平静を保とうと努力しています。

鈴ちゃんは沖田総司さんとは逆で普段とほとんど変わりません。

雷が鳴らなくなったところから、沖田総司さんと鈴ちゃんの本格的な会話が始まります。

沖田総司さんが鈴ちゃんに話せなかった理由、鈴ちゃんが沖田総司さんに尋ねられなかった理由は、この物語の中で少しだけ分かるように書きました。

物語の設定当時は、裕福な家と武士の家との付き合いがあったりするので、鈴ちゃんの場合は問題ないと思いますが、真剣に考える程に悩むと思いました。

鈴ちゃんの性格と家柄などを考えて、このような雰囲気の物語にしました。

斉藤一さんが沖田総司さんに、沖田総司さんと鈴ちゃんを見ていた事を話した理由は、みなさまのご想像にお任せします。

鈴ちゃんが斉藤一さんの存在に途中で気付いているのに、話しを続けた理由は、斉藤一さんが沖田総司さんと鈴ちゃんにとって大切な存在のため、と思ってください。

沖田総司さんが鈴ちゃんに自分の病気について話すと決めましたが、いつ話すのか、話す機会が作れずに終わるのか、疑問は残ります。

この物語は、沖田総司さんが「鈴ちゃんに沖田総司さん本人の病気について話す」意思表示をしたところで終わっています。

「鳴神月(なるかみづき)」は「陰暦の六月の異称」です。

「雷鳴が多い月の意味」から付いた異称です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください