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新撰組異聞 〜 五月雨と蜻蛉 〜


〜 第五版 〜


ここは、京の町。


花菖蒲の咲く頃。


朝の間は雨が静かに降っていたが、直ぐに止んだ。


今は重い灰色の空が広がっている。


ここは、たくさんの花菖蒲が綺麗に咲く場所。


沖田総司は傘を持ち、花菖蒲を微笑んで見ている。

少女は花菖蒲を微笑んで見ている。


沖田総司は傘を持ち、少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「雫をたくさん載せて咲く花菖蒲。綺麗だね。」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は傘を持ち、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。花菖蒲の名前を教えて。」

少女は花菖蒲を指すと、沖田総司に微笑んで話し出す。

「薄い青色の花菖蒲は、“五月雨”です。」

沖田総司は傘を持ち、少女の指す花菖蒲を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「名前も花の姿も、今の時季に合う綺麗な花菖蒲だね。」

少女は花菖蒲を指すのを止めると、沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は傘を持ち、少女を微笑んで見た。


沖田総司の後ろと少女の後ろから、女の子の明るい声が聞こえた。

「総司さん! こんにちは!」


沖田総司は傘を持ち、後ろを微笑んで見た。

少女は後ろを不思議な様子で見た。


女の子が傘を持ち、沖田総司と少女を微笑んで見ている。


沖田総司は傘を持ち、女の子を微笑んで見た。

少女は女の子を不思議な様子で見た。

沖田総司は傘を持ち、女の子に微笑んで話し出す。

「こんにちは。花菖蒲を見に来たのかな?」

女の子は傘を持ち、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は傘を持ち、女の子を微笑んで見た。

少女は沖田総司と女の子を寂しく見た。

女の子は傘を持ち、少女に微笑んで話し出す。

「挨拶が遅れて申し訳ありません。私は総司さんが屯所にしている八木の家の者です。」

沖田総司は傘を持ち、女の子に微笑んで話し出す。

「私のとても親しい大切な友達。美鈴さん、だよ。私は、鈴ちゃん、と呼んでいるんだ。」

少女は沖田総司を僅かに寂しく見た。

女の子は傘を持ち、沖田総司と少女を不思議な様子で見た。

少女は女の子を見ると、女の子に微笑んで話し出す。

「初めまして。美鈴と申します。私もご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした。」

女の子は傘を持ち、少女に微笑んで話し出す。

「総司さんとたくさんお出掛けしていますよね。」

少女は女の子に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は傘を持ち、女の子に微笑んで話し出す。

「三人で花菖蒲を見ながら話そう。」

女の子は傘を持ち、沖田総司と少女に微笑んで話し出す。

「用事を思い出しました。失礼します。」

沖田総司は傘を持ち、女の子に微笑んで話し出す。

「たくさんの場所で地面が濡れている。気を付けてね。」

女の子は傘を持ち、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

少女は女の子に微笑んで軽く礼をした。

女の子は傘を持ち、沖田総司と少女に微笑んで軽く礼をした。

沖田総司は傘を持ち、少女に微笑んで頷いた。

少女は女の子に微笑んで軽く礼をした。


女の子は傘を持ち、微笑んで歩き出した。


沖田総司は傘を持ち、女の子を微笑んで見た。

少女は女の子を寂しい微笑みで見た。


女の子の姿は見えなくなった。


少女は沖田総司を見ると、沖田総司に寂しく話し出す。

「仲が良いのですね。」

沖田総司は傘を持ち、少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「仲の良い子だよ。明るくて良い子だよ。たくさん話すよ。一緒に居ると楽しいよ。」

少女は沖田総司を寂しく見た。

沖田総司は傘を持ち、少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。大丈夫?」

少女は沖田総司に寂しく小さい声で話し出す。

「羨ましいです。」

沖田総司は傘を持ち、少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。調子が悪いの?」

少女は沖田総司を静かに泣いて見た。

沖田総司は傘を持ち、少女に心配して話し出す。

「私は鈴ちゃんを悲しませる内容を話したんだね。ご免ね。」

少女は沖田総司に静かに泣いて話し出す。

「総司さんは悪くないです。私は我がままです。私が悪いです。」

沖田総司は傘を持ち、少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃんは我がままではないよ。鈴ちゃんは悪くないよ。」

少女は沖田総司を静かに泣いて見た。

沖田総司は傘を持ち、少女を心配して見た。


翌日の事。


ここは、京の町。


朝から、雨が静かに降る、雨が止む、を繰り返している。


今は雨が止んでいる。


今は重い灰色の空が広がっている。


ここは、町中。


沖田総司は傘を持ち、少女を心配して見て歩いている。

少女は僅かに寂しく歩いている。


沖田総司は傘を持ち、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。出掛けたい場所を教えて。」

少女は沖田総司に寂しい微笑みで小さく首を横に振った。

沖田総司は傘を持ち、少女に心配して話し出す。

「私は鈴ちゃんを悲しませる内容を話したのかな?」

少女は沖田総司に寂しい微笑みで小さく首を横に振った。

沖田総司は傘を持ち、少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。調子が悪いの?」

少女は沖田総司に寂しい微笑みで小さく首を横に振った。

沖田総司は傘を持ち、少女に微笑んで話し出す。

「今日も花菖蒲を見に行こうか?」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は傘を持ち、少女を安心した表情で見た。


少し後の事。


ここは、たくさんの花菖蒲が綺麗に咲く場所。


沖田総司は傘を持ち、少女と花菖蒲を心配な様子で見ている。

少女は花菖蒲を僅かに寂しく見ている。


沖田総司は傘を持ち、少女に笑顔で話し出す。

「鈴ちゃんが教えてくれた“五月雨”が咲いているね! 綺麗だね!」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は傘を持ち、少女を笑顔で見た。

少女は花菖蒲を寂しい微笑みで見た。

沖田総司は傘を持ち、少女を心配して見た。


暫く後の事。


ここは、屯所。


斉藤一の居る部屋。


沖田総司は部屋の中に考え込んで入ってきた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に考え込んで話し出す。

「斉藤さん。話しがあります。時間は大丈夫ですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「外で話したい。」

沖田総司は斉藤一に考え込んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


斉藤一は部屋を普通に出て行った。

沖田総司は部屋を考え込んで出て行った。


少し後の事。


ここは、町中。


沖田総司は考え込んで歩いている。

斉藤一は普通に歩いている。


沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。

「数日前から、鈴ちゃんの元気がないです。」

斉藤一が沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんの体調が悪いのか?」

沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。

「鈴ちゃんに体調が悪いか確認しました。鈴ちゃんは体調が悪くないと返事をしました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「今回も総司は美鈴さんを悲しませる内容を話したのか?」

沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。

「昨日の出来事です。鈴ちゃんと居る時に、八木の家の女の子と偶然に会って話しました。気付いたら、鈴ちゃんの元気がなかったです。鈴ちゃんに私が悲しませる内容を話したのか尋ねました。鈴ちゃんは違うと返事をしました。八木の家の女の子と話す間に、鈴ちゃんを悲しませる内容を話したのかも知れません。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。

「鈴ちゃんが寂しく小さい声で何か話しました。私は聞き取れませんでした。鈴ちゃんに元気になって欲しくて、花菖蒲を一緒に見ました。鈴ちゃんの元気は戻りませんでした。私のために鈴ちゃんの元気がなくなったならば、耐えられません。鈴ちゃんに早く元気になって欲しいです。鈴ちゃんが元気になる方法が分かりません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんが簡単に元気になる方法はあるが、今の総司には出来ない方法だ。別な方法を考える。暫く待て。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 早く教えてください!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「別な方法を考えるから暫く待てと話しただろ。」

沖田総司は斉藤一に納得のいかない様子で話し出す。

「鈴ちゃんは、私にとっても、斉藤さんとっても、物凄く大切な友達です! 早く教えない理由は何ですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が今の内容を話す間は出来ない方法だ。早く諦めろ。」

沖田総司は斉藤一を納得のいかない様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「今の総司が出来ない方法を無理に実行したら、美鈴さんが更に落ち込む。」

沖田総司は斉藤一を悲しく見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「今までのように総司が謝るだけでは、美鈴さんの笑顔は戻らない。美鈴さんの笑顔が戻る方法は、総司本人で考えろ。総司の考えた方法を俺に確認しても構わない。」

沖田総司は斉藤一に不安な様子で頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。


翌日の事。


ここは、京の町。


曇り空が広がっている。


ここは、少女の家。


玄関。


斉藤一は普通に訪れた。


少女は心配な様子で来た。


斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。時間に余裕があれば一緒に出掛けたい。」

少女は斉藤一に心配して話し出す。

「総司さんに何か起きましたか?」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「何も起きていない。安心しろ。」

少女は斉藤一を安心した表情で見た。


斉藤一は普通に居なくなった。

少女は微笑んで居なくなった。


少し後の事。


ここは、沖田総司、斉藤一、少女が幾度も訪れた寺。


本堂。


斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。


斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司が美鈴さんに元気がないと心配している。総司は美鈴さんの元気がない理由を分からない。総司も普段のような元気がない。」

少女は斉藤一に心配して話し出す。

「私は総司さんに迷惑ばかり掛けています。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さんが悩んでも八木の家の者にならない。美鈴さんが八木の家の者になったとしても状況は変わらない。総司は直ぐに親しくなる性格だ。悩むな。」

少女は斉藤一に寂しく話し出す。

「八木の家の女の子と総司さんが一緒に居る姿は、幾度も見ました。総司さんと斉藤さんのお仕事場の貸主のご親戚の女の子です。総司さんと一緒に居る機会が多いのは当然です。先日の総司さんは、短い時間ですが、私を忘れて八木の家の女の子と楽しく話していたように感じました。総司さんと八木の家の女の子の話す様子を見て、総司さんが私と一緒に居る理由、総司さんが私と楽しんで話しているのか、いろいろと考えてしまいました。寂しくなりました。総司さんは私とたくさん逢ってくださいます。私が我がままだから、寂しくなると思います。私は総司さんのお役に立つ言動をしていません。総司さんは私と一緒に居ても楽しくないと思うようになりました。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司から頻繁に会う約束をする人物は、新撰組の関係者以外では、美鈴さんか子供だ。美鈴さんが話す内容は、同じ状況ならば誰もが思う内容だ。美鈴さんは我がままではない。悩むな。」

少女は斉藤一を僅かに不安な様子で見ている。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司は美鈴さんの笑顔が戻らないと心配している。総司本人に原因があると感じて、美鈴さんの元気が戻る方法を考えている。総司を含めて、逢いたくない相手を想って考えないし、逢いたくない人物を心配しない。自信を持て。」

少女は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「家まで送る。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「お願いします。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は斉藤一を微笑んで見た。


数日後の事。


ここは、京の町。


雨の降る気配のない曇り空が広がっている。


ここは、少女の家。


玄関。


沖田総司は微笑んで訪れた。


少女は不思議な様子で現れた。


沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「突然の訪問でご免ね。今から少しだけ一緒に出掛けられないかな?」

少女は沖田総司に不思議な様子で話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。


沖田総司は微笑んで居なくなった。

少女は不思議な様子で居なくなった。


少し後の事。


ここは、たくさんの花菖蒲が綺麗に咲く場所。


沖田総司は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。


沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに、今の居る場所の花菖蒲が綺麗に咲く間に見て欲しかったんだ。鈴ちゃんは花菖蒲が綺麗に咲く間に見られた。嬉しいな。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は近くに咲く花菖蒲を指すと、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。私が指す花菖蒲の名前は、“蜻蛉”と書いて“せいれい”と呼ぶんだ。」

少女は花菖蒲を微笑んで見た。


沖田総司は花菖蒲を指すのを止めて、少女を微笑んで見た。

少女は花菖蒲を微笑んで見ている。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「鈴ちゃん。」

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「鈴ちゃんの元気がない理由を考えたんだ。数日ほど前、鈴ちゃんと逢っている時に、八木家の女の子と少し話した。鈴ちゃんを無視する状況になってしまった。鈴ちゃんは寂しかったよね。私は鈴ちゃんへの気遣いが足りなかった。ご免ね。」

少女は沖田総司を心配な様子で見た。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「鈴ちゃんに喜んで欲しくて、鈴ちゃんが知らない可能性の高い花菖蒲を探したんだ。“蜻蛉”を見付けた時は、素敵な名前だと思った瞬間に、鈴ちゃんの笑顔が思い浮かんだんだ。」

少女は沖田総司を心配な様子で見ている。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「私は鈴ちゃんの笑顔が早く見たい。怒った、呆れた、寂しい、他の思いも含めて、はっきりと教えてくれ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「“蜻蛉”は綺麗な花菖蒲です。私のために素敵な花菖蒲を探して頂いてありがとうございます。総司さんと一緒に“蜻蛉”が見られました。嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“蜻蛉”。再び一緒に見ようね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に慌てた様子で話し出す。

「鈴ちゃん! せっかく来たのに帰る時間になってしまった! 家まで送るね!」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女の手を笑顔で握った。

少女は沖田総司の手を微笑んで握った。


沖田総司は少女の手を握り、笑顔でゆっくりと歩き出した。

少女は沖田総司の手を握り、微笑んで歩き出した。




*      *      *      *       *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承ください。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

壬生浪士組時代から新撰組時代の途中までは、八木家などを屯所として借りていました。

その頃の八木家に子供は居ました。

息子さん(男の子)は記録などから確認できますが、娘さん(女の子)の確認は取れないようです。

八木家に娘さんがいた場合は、その後に生れた可能性があります。

沖田総司さんは、八木家の人達などを含めて、直ぐに親しくなる性格のように感じました。

そこで、身近な女の子として、新撰組が世話になっている八木家の親戚の女の子を登場させました。

この女の子は、他の物語に頻繁に登場する予定はありません。

この物語は、沖田総司さんが親しく接する人物が多い事を実感して、鈴ちゃんが悩んでしまう場面が登場します。

この物語に登場する「花菖蒲(はなしょうぶ)」は、「蜻蛉(せいれい)」と呼びます。

「かげろう」も「とんぼ」も、「蜻蛉」と書きます。

「かげろう」の読みの方が、花菖蒲の雰囲気に近いと思いました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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