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新撰組異聞 〜 夏の名物を巡って大騒動 〜


〜 第三版 〜


今は、夏。


沖田総司達が京の町に着て迎える初めての夏になる。


夏の名物を食べる日が近付いている。


ここは、京の町。


一軒の店。


夏の名物を調理する時に出る香ばしい煙が立ち上っている。


店の前。


沖田総司は店を羨ましく見ている。

斉藤一は普通の表情で居る。


沖田総司は店を見ながら、斉藤一に羨ましく小さい声で話し出す。

「食べたいです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「食べれば良いだろ。」

沖田総司は店を見ながら、斉藤一に羨ましく小さい声で話し出す。

「物凄く食べたいです。」

斉藤一は沖田総司に話し出す。

「食べれば良いだろ。」

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に羨ましく小さい声で話し出す。

「本当に物凄く食べたいです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の気持ちは充分に伝わった。今日は本番前だが、一緒に食べよう。本番当日も、一緒に食べよう。二度も食べられる。満足だろ。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴むと、斉藤一に小さい声で残念な様子で話し出す。

「斉藤さん。私は二度も食べるお金の持ち合わせが無いです。物凄く残念ですが、当日のみにするしかありません。物凄く残念ですが、今日の一緒に食べる件は、遠慮させてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。言葉と行動が一致していない。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、店を残念な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司にお金の持ち合わせが無いならば、俺が二回分を奢る。総司。嬉しいだろ。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を見ると、斉藤一に苦笑して話し出す。

「私は斉藤さんより年上です。私は年齢的にも立場的にも、斉藤さんに奢る立場です。年下の斉藤さんに奢らせる訳にはいきません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺の袖を掴み続ける理由は何だ? 鰻屋を幾度も気にする理由は何だ? 言葉と行動が一致しない理由は何だ?」

沖田総司は斉藤一の袖を放すと、斉藤一に慌てて話し出す。

「あの! これは!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに鰻が食べたいと話せ。美鈴さんは美味しい鰻屋へ連れて行ってくれる可能性が高い。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴むと、斉藤一に僅かに大きな声で話し出す。

「鈴ちゃんに丑の日が近付く頃に鰻が食べたいと話したら、私が鈴ちゃんに鰻を奢って欲しいと頼む状況と同じです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。鰻屋は逢引きの場所にも利用している。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。鰻は出来るまでに時間が掛かる。鰻屋は個室が多い。二人のみの空間で長い時間を過ごせる。鰻屋は便利な場所だ。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を不思議な様子で見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんの年齢。美鈴さんの育ち。以上の状況から、美鈴さんは知らない可能性が高い。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を不思議な様子で見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は美鈴さんに会った時が無い。今から、美鈴さんに会って、鰻屋に関する知識、総司が鰻を食べたいと話した、などの内容を、挨拶を兼ねて伝える。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一に赤面して話し出す。

「鈴ちゃんに変な内容を話さないでください! 鈴ちゃんは物凄く大切な友達です! 斉藤さんが変な内容を話したために、鈴ちゃんが私を避ける可能性があります! 斉藤さん! 何が何でも責任を取ってください!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「慕う二人のみで過ごせる場所を教えるだけだ。鰻を食べるのみの理由で、鰻屋を訪れる人物がいる。俺は変な内容を話さない。安心しろ。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一に赤面して話し出す。

「鈴ちゃんは私の物凄く大切な友達です! 鈴ちゃんは物凄く優しい子です! 鈴ちゃんを困らせないでください!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。物凄く大切な美鈴さんのために、“ぽっぺん”を買ったな。鰻が一回のみしか食べられない。俺は美鈴さんといろいろと話したい。総司。いろいろと大変だな。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一に赤面して話し出す。

「鈴ちゃんに変な内容を話さないでください!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を赤面して睨んだ。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺の袖を離せ。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を赤面して睨んでいる。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「鰻が食べたくなった。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を赤面して不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司はお金の持ち合わせが無いと話した。俺が鰻を奢る。本番当日までに鰻を奢ってくれる人物が現れない場合は、俺が鰻を再び奢る。個室で二度もゆっくりと話しが出来る。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を赤面して不思議な様子で見ている。

斉藤一は沖田総司の腕を普通の表情で掴んだ。


斉藤一は沖田総司の腕を掴んで、普通に歩き出した。

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、不思議な様子で歩き出した。


同じ頃。


ここは、町中。


原田左之助は普通に歩いている。

藤堂平助も普通に歩いている。


原田左之助は藤堂平助に確認するように話し出す。

「平助。夏の名物を食べる日が近付いているな。俺は今年も食べたい。」

藤堂平助は原田左之助に不思議な様子で話し出す。

「近藤さんに相談しないのですか?」

原田左之助は藤堂平助に困惑して話し出す。

「近藤さんに相談する内容が無い。」

藤堂平助は原田左之助に不思議な様子で話し出す。

「土方さんに相談しないのですか?」

原田左之助は藤堂平助に困惑して話し出す。

「土方さんに相談する内容が無い。近藤さんに相談する状況も、土方さんに相談する状況も、同じだ。」

藤堂平助は原田左之助を考えながら見た。

原田左之助は藤堂平助を困惑して見た。

藤堂平助は原田左之助に微笑んで話し出す。

「沖田さんに話す方法が良いと思います。」

原田左之助は藤堂平助に僅かに不機嫌に話し出す。

「総司は俺達とほとんど変わらない。総司は、最近、お金が無いと溜息をつく機会が多い。総司に話す方法が良いと思えない。」

藤堂平助は原田左之助に僅かに焦って話し出す。

「沖田さんは、近藤さんや土方さんに気軽に頼んでいます。沖田さんに上手に話せば、沖田さんが近藤さんや土方さんに頼んでくれると思います。」

原田左之助は藤堂平助に笑顔で話し出す。

「平助! 良い案を思い付いたな! 凄いぞ! さすがだ!」

藤堂平助は原田左之助を苦笑して見た。

原田左之助は藤堂平助に笑顔で話し出す。

「平助! 楽しみだな!」

藤堂平助は原田左之助に苦笑して頷いた。


同じ頃。


ここは、屯所。


一室。


山南敬助は微笑んで居る。

土方歳三も微笑んで居る。


山南敬助は土方歳三に微笑んで話し出す。

「隊士達から、夏の名物を当日は必ず食べたいと、幾度も頼まれた。」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し出す。

「隊士達は俺に頼みに来ません。隊士達が夏の名物を物凄く食べたいと話す声は、遠くから幾度も聞きました。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し出す。

「私から近藤さんに頼むより、土方さんから近藤さんに頼む方が良いと思う。」

土方歳三は山南敬助に普通に話し出す。

「俺から近藤さんに必ず伝えます。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し出す。

「土方さん。後は頼む。」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し出す。

「話は変わります。総司は大坂で高価な土産物を買いました。京の町に帰る途中で、総司に気軽に近付くと、総司に物凄く怒られました。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し出す。

「私が話して良い内容なのか分からない。詳しい話は、総司に聞いて欲しい。」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し出す。

「男性が女性のために高価な贈り物を選ぶ。大切な友達と違う関係が伝わる出来事です。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し出す。

「総司もあの子も、楽しい様子が分かる。総司が総司本人の想いに気付くまでには、長い期間が必要だと思う。あの子は更に魅力的になり、あの子も良い年齢になる。総司が気付くまでの期間は、良い期間だと思う。」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し出す。

「鰻屋は個室が多いです。鰻屋は逢引きに良い場所ですよね。鰻は物凄く高価な食べ物ではありません。鰻は美味くて栄養があります。鰻が出来上がるまでの間、鰻を食べる間、二人のみで過ごせます。一石二鳥以上の良い内容があります。総司に教えたいです。」

山南敬助は土方歳三に苦笑して話し出す。

「総司が顔を真っ赤にして騒ぐ。止めた方が良いと思う。」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し出す。

「山南さんに迷惑を掛けると困るので、今回は止めます。」

山南敬助は土方歳三を苦笑して見た。

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し出す。

「総司とあの子の件は、暫く静観します。先程の話は、近藤さんに伝えます。心配しないでください。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで頷いた。

土方歳三は山南敬助を微笑んで見た。


幾日か後の事。


夏の名物を食べる当日を迎えている。


ここは、屯所。


落ち着かない様子の隊士達がたくさん居る。


縁。


永倉新八は普通に歩いている。


沖田総司は嬉しく歩いてきた。


永倉新八は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は永倉新八に嬉しく話し出す。

「今日は近藤さんの奢りです! 楽しみですね!」

永倉新八は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。楽しそうだな。」

沖田総司は永倉新八に嬉しく話し出す。

「私は今日を楽しみに待っていました! 楽しいのは当然です!」

永倉新八は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は嬉しく居なくなった。


僅かに後の事。


ここは、屯所。


縁。


沖田総司は嬉しく歩いている。


沖田総司の視線の先に、斉藤一の姿が見えた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は嬉しく歩いてきた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。

「斉藤さん! 今日は近藤さんの奢りです!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司と斉藤一の元に、原田左之助の明るい声が聞こえた。

「みんな〜! 鰻が着たぞ〜!」


沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。

「斉藤さん! 行きますよ!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一の腕を嬉しく掴んだ。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は斉藤一の腕を掴んで、嬉しく歩き出した。

斉藤一は普通に歩き出した。


沖田総司を含む隊士達が嬉しく騒ぐ理由は、今日が「土用の丑の日」になるから。

鰻を巡る大騒動の本番が近付いている。

今から何が起こるのか?

予想が当たる新撰組隊士は多いと思うが、今は慌しいため誰にも確認できない。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承ください。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

「土用の丑の日(どようのうしのひ)」についてです。

「夏の暑い時期を乗り切る栄養をつけるために鰻を食べる日」となっています。

由来は幾つかあるようですが、平賀源内が発案したというのが一般的だと思います。

江戸時代に、商売が上手くいかない鰻屋が平賀源内に相談したところ、平賀源内は、「丑の日に“う”の字が付く物を食べると夏負けしない」という民間伝承をもとにして、「本日土用の丑の日」と書いて店先に貼ったという出来事があります。

その鰻屋が繁盛したので、他の鰻屋もそれをまねるようになったそうです。

それ以降、「土用の丑の日」に鰻を食べる風習が定着したというのが、有名な話だと思います。

土用入りの日が、申から丑の日の間の場合は、丑の日は二回あります。

二回目の丑の日を「二の丑」と言います。

「土用の丑の日」は、毎年の七月二十七日前後です。

二回ある年は、七月下旬と八月上旬になります。

初版(2005年)の前後で、「二の丑」があった年は、2004年、2006年、2008年、です。

改訂前(2005年)の「土用の丑の日」は、7月28日です。

改訂版(2007年)の「土用の丑の日」は、7月30日です。

第三版(2011年)の「土用の丑の日」は、「二の丑」があり、7月21日、8月2日、です。

念のために確認をお願いします。

恋人達が鰻屋で逢引きする話ですが、江戸時代は個室の鰻屋が多かったそうです。

現在は、客の注文を受けてから生きている鰻を調理する店は減っているそうですが、昔は、客の注文を受けてから生きている鰻を調理していました。

客の注文を受けてから、鰻を調理する場合は、出来上がるまでに時間が掛かります。

鰻の調理が終わるまでの間は、個室には客だけとなる時間が多くなります。

当時は二人きりになれる場所が少なかったため、鰻屋は逢引きの場所として良く利用されていたそうです。

私は客の注文を受けてから鰻をさばく鰻屋に行った事があります。

一人でお店に行きました。

お酒を飲む、本などを読む、など、何かをしていないと、時間が有りすぎて暇になるように思いました。

この物語の時間設定は、沖田総司さん達が京の町に着て迎える初めての夏です。

沖田総司さんが“ぽっぺん”を買った出来事は、「新撰組異聞 短編 夏の青空 光の音」に登場しています。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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