このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

新撰組異聞 〜 思い草物語 〜


〜 第三版 〜


今は秋。


ここは、京の町。


秋の涼しさを感じる頃となっている。


先日の出来事になる。

少女が子供を庇い怪我をした。

沖田総司は僅かでも時間が空くと、少女の怪我の治り具合の確認も兼ねて逢いに行く。


ここは、少女の家。


玄関。


沖田総司は小さな花束を持ち、微笑んで訪れた。


少女は微笑んで来た。


沖田総司は小さな花束を持ち、少女に微笑んで話し出す。

「時間に余裕が出来たんだ。鈴ちゃんに逢いに来たんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は小さな花束を持ち、少女に微笑んで話し出す。

「玄関での長話は辛いよね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私は大丈夫です。お時間に余裕があれば、お庭を見ながら話したいです。」

沖田総司は小さな花束を持ち、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんの体の負担にならないように、短めに話そうね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は小さな花束を持ち、少女を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、少女の家。


少女の部屋の前に在る縁。


沖田総司は微笑んで座っている。

少女も微笑んで座っている。

沖田総司の傍には、小さな花束が置いてある。


沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。本当に辛くないの?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「先日は無理をしたために、総司さんに心配を掛けしてしまいました。以降は、辛い時は横になります。横になると直ぐに調子が戻ります。横になる時間は短いです。」

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「無理をすると、後々、辛くなるよ。無理をすると、後々、完治が遅くなるよ。鈴ちゃんに逢えないと心配だし寂しいよ。無理はしないでね。」

少女は沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女を赤面して見た。

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「総司さん。お顔が赤いです。大丈夫ですか?」

沖田総司は少女に赤面して話し出す。

「急に暑くなった気がする。不思議だね。話が逸れた。話を戻すね。鈴ちゃん。無理はしないでね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんと早くお出掛けしたいです。無理をしないように気を付けます。」

沖田総司は小さな花束を微笑んで持った。

少女は沖田総司と小さな花束を微笑んで見た。

沖田総司は少女に小さな花束を差し出すと、少女に微笑んで話し出す。

「お見舞いを兼ねて、鈴ちゃんに花を用意したんだ。香りは良くないけれど、黄色くて可愛い花だから、気持ちが明るくなると思って選んだんだ。」

少女は沖田総司から小さな花束を受取ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「女郎花の花束をありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに喜んでもらえて嬉しいよ。」

少女は小さな花束を脇に置くと、沖田総司に微笑んで話し出す。

「お見舞いの度のお花の贈り物。ありがとうございます。お花の用意のために無理をしていませんか?」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「私は花に関して疎いだろ。斉藤さんなどに相談しながら花を選ぶんだ。無理はしていないよ。大丈夫だよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「いろいろな花を見て楽しめます。嬉しいです。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。


幾日か後の事。


ここは、少女の家。


少女の部屋。


沖田総司は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。


少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「怪我が治ってきています。少しだけで良いので、総司さんとお出掛けしたいです。」

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「怪我は治ってきている様子に見えるけれど、完治していないよね。辛さや痛みを感じないの?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「近場で落ち着いた場所に出掛けようね。出掛ける日は、明後日で良いかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんを誘うよ。三人で出掛けよう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「楽しみです。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、屯所。


斉藤一の部屋。


斉藤一は普通の表情で机に向かっている。


沖田総司が部屋を微笑んで訪ねた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんと逢う度に怪我が治っていきます。嬉しいです。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんが花を笑顔で受け取ってくれます。斉藤さんからたくさん教えてもらったおかげです。ありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんが無理のない程度に出掛けたいと話しました。予定は明後日です。斉藤さんを誘うと話したら喜んでいました。一緒に出掛けましょう。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。


二日後の事。


沖田総司、斉藤一、少女が出掛ける日となった。


ここは、女郎花の花のたくさん咲く場所。


斉藤一は辺りを普通の表情で見ている。


沖田総司は微笑んで来た。

少女も微笑んで来た。


斉藤一は沖田総司と少女に普通の表情で頷いた。

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。お久しぶりです。先日はありがとうございました。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「礼を言われる内容は何もしていない。」

少女は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「酷い怪我にならなくて良かったな。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は斉藤一に僅かに強い調子で話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんの怪我は完全に治っていません。立ち話を続けたら、鈴ちゃんが疲れてしまいます。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。座って話そう。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を心配して見た。


沖田総司は少女を心配して座らせた。

少女は微笑んでゆっくりと座った。

斉藤一は普通に座った。

沖田総司は微笑んで座った。


子供達が笑顔で来た。


沖田総司は子供達に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

斉藤一は子供達に普通の表情で頷いた。

子供達は少女に心配して話し出す。

「お姉ちゃん。体は辛くないの?」

少女は子供達に微笑んで話し出す。

「こんにちは。心配を掛けてごめんなさい。怪我はかなり治っているの。安心して。」

子供達は少女に心配して話し出す。

「みんなもお姉ちゃんの怪我を心配していたよ。」

少女は子供達に微笑んで話し出す。

「みんなに、心配を掛けてご免ね、怪我はかなり治っているから安心して、と伝えてね。」

子供達は少女に微笑んで頷いた。

少女は子供達を微笑んで見た。

子供達は、沖田総司、斉藤一、少女に微笑んで話し出す。

「失礼します。」

沖田総司は子供達に微笑んで頷いた。

斉藤一は子供達に普通の表情で頷いた。

少女は子供達に微笑んで頷いた。


子供達は元気良く居なくなった。


沖田総司は少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「少し離れた場所に黄色の花と白色の花が咲いているね。共に女郎花かな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「黄色の花は、女郎花です。白色の花は、男郎花です。」

沖田総司は少女に不思議な様子で話し出す。

「“おとこえし”?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「女郎花の花と男郎花の花は、似ています。」

沖田総司は少女に不思議な様子で話し出す。

「共に香りも良くないのかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「姿も香りも、似ていると思います。」

沖田総司は男郎花を不思議な様子で見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「男郎花を近くで見てくる。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」


沖田総司は男郎花に不思議な様子で近付いた。


男郎花は一般的に想像する良い香りを放っていない。


沖田総司は斉藤一と少女が居る場所を僅かに慌てて見た。


少女は斉藤一に微笑んで話している。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いている。


沖田総司は斉藤一と少女を寂しく見た。


少女は心配して来た。


沖田総司は少女に僅かに拗ねて話し出す。

「鈴ちゃんは、私が居なくても、斉藤さんと話せるから、楽しいんだ。」

少女は沖田総司に申し訳なく話し出す。

「斉藤さんに久しぶりに逢いました。斉藤さんに助けて頂いたお礼も含めて話しました。」

沖田総司は少女を僅かに不機嫌に見た。


斉藤一が普通に来た。


沖田総司は斉藤一を僅かに不機嫌に見た。

少女は沖田総司と斉藤一を申し訳なく見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんは怪我が完治していない。美鈴さんに心配を掛けるな。」

沖田総司は少女に申し訳なく話し出す。

「鈴ちゃん。理由は分からないけれど、少し不機嫌になってしまった。ご免ね。」

少女は沖田総司に申し訳なく話し出す。

「総司さんが傍に居ないのに、たくさん話しました。申し訳ありませんでした。」

沖田総司は少女に申し訳なく話し出す。

「鈴ちゃんが楽しいと、私も楽しくなるんだよ。鈴ちゃんは本調子ではないのに心配を掛けてしまった。気配りが出来なかった。気遣いも出来なかった。ご免ね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私は大丈夫です。総司さん。心配しないでください。」

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。長く立ち話をしている。歩いて帰るから、今は無理をしないで座って休んでね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。


暫く後の事。


ここは、屯所。


沖田総司の部屋。


沖田総司は不安な様子で居る。

斉藤一は普通に居る。


沖田総司は斉藤一に不安な様子で話し出す。

「鈴ちゃんは、斉藤さんと話す時は、私と話す時より、楽しく見えます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司には今の話の状況に見えているのか?」

沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。

「斉藤さんと鈴ちゃんは、たくさん話しています。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が、俺を誘い、俺を頼るから、俺と美鈴さんの接する機会が多くなる。」

沖田総司は斉藤一に不安な様子で話し出す。

「私は花について疎いです。私は鈴ちゃんの稽古事について分からない内容が多いです。鈴ちゃんは私と一緒に居て楽しいのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは怪我が完治していないのに、総司と出掛けたいと話したのだろ。美鈴さんは総司と一緒に居ると楽しいから話した内容だ。」

沖田総司は斉藤一を不安な様子で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を不安な様子で見ている。

斉藤一は沖田総司の額を指で普通の表情で思い切り弾いた。

沖田総司は痛い様子で額を抑えると、斉藤一に大きな声で話し出す。

「痛いです! 何をするのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の頭の中に必要な物が入っているか知りたくて叩いた。」

沖田総司は痛い様子で額を抑えて、斉藤一を怪訝な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「大切な物はしっかりと入っているらしい。大切な物の仕舞ってある所が違うらしい。叩く所を間違えた。」

沖田総司は痛い様子で額を押さえて、斉藤一に怪訝な様子で話し出す。

「斉藤さんの話す意味が分かりません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が俺の話す意味を分かれば、美鈴さんが喜ぶ。美鈴さんが満面の笑みを浮かべる日が、美鈴さんの喜ぶ日が、一日も早く訪れるように祈る。」

沖田総司は痛い様子で額を抑えて、斉藤一を不思議な様子で見た。


斉藤一は部屋を普通に出て行った。


数日後の事。


ここは、女郎花の花のたくさん咲く場所。


沖田総司は微笑んで座っている。

少女も微笑んで座っている。


沖田総司は少女に考えながら話し出す。

「鈴ちゃん。念のために話したい内容があるんだ。」

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「先日、私は鈴ちゃんにいろいろと言ってしまった。先日の私の態度のために、斉藤さんと鈴ちゃんの関係が気まずくなるのは嫌なんだ。先日の私の態度は気にせずに、斉藤さんと今までどおりに過ごしてね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。いつも迷惑を掛けてご免ね。」

少女は沖田総司に微笑んで小さく首を横に振った。

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。怪我が完治していないのに、一緒に出掛けてくれてありがとう。辛くなる前に戻ろう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私の怪我は心配しないでください。私も総司さんとお話しが出来て嬉しいです。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。


沖田総司は微笑んで立ち上がった。


沖田総司は少女に微笑んで手を差し出した。


少女は沖田総司の手を微笑んで握った。


少女は沖田総司の手を握り、微笑んでゆっくりと立った。


沖田総司は少女の手を握り、微笑んで歩き出した。

少女も沖田総司の手を握り、微笑んで歩き出した。


少し後の事。


ここは、京の町。


空の色が僅かに橙色に染まり始めている。


沖田総司は微笑んで歩いている。

少女も微笑んで歩いている。


少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。女郎花には別名があります。私は、女郎花の名前より、女郎花の別名が、好きです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「女郎花の別名。知りたいな。早く教えて。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「“思い草”、です。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“おもいぐさ”。良い別名だね。私も鈴ちゃんと同じだよ。“おもいぐさ”の名前が好きだよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんと同じ想いです。とても嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私もとても嬉しいよ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「暗くなると石などにつまずく可能性がある。念のために、手を繋いで帰ろう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで手を差し出した。

少女は沖田総司の手を微笑んで握った。


沖田総司は少女の手を握り、微笑んで歩いた。

少女は沖田総司の手を握り、微笑んで歩いた。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の雰囲気や展開を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語は「新撰組異聞 短編 桔梗物語」の後日談です。

鈴ちゃんの怪我は完治していません。

「思い草(おもいぐさ)」についてです。

「女郎花(おみなえし)」の別名です。

「女郎花」は「秋の七草」の一つです。

ちなみに「秋の七草」は、「萩。桔梗。葛(くず)。撫子。尾花(おばな。薄[すすき]の事。)。女郎花。藤袴。」です。

「女郎花」は、小さくて黄色い清楚な花を咲かせますが、香りは余り良くありません。

「男郎花(おとこえし)」は、「女郎花」に似る花です。

「女郎花」に対比して付いた名前だそうです。

「男郎花」は小さくて白色の清楚な花を咲かせますが、「女郎花」同様に香りは余り良くないです。

見ためなどが似ている「女郎花」と「男郎花」ですが、「男郎花」の方が茎や葉はしっかりとしています。

「男郎花」の別名は、「敗醤(はいしょう)」というそうです。

花瓶に活けておくと醤油の腐ったような香りがする事から付いた名前だそうです。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください