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新撰組異聞 〜 撫子物語 〜


〜 第三版 〜


今は、秋。


ここは、京の町。


町中。


沖田総司は警備を兼ねて真剣な表情で歩いている。

一番組の隊士達も警備を兼ねて真剣な表情で歩いている。


沖田総司の視線の先に、少女が一人で普通に歩く姿が見えた。


沖田総司は直ぐに視線を戻すと、真剣な表情で任務を続けた。


少女は普通に立ち止まった。


少女は沖田総司を普通の表情で見た。


少女の後ろから、数人の嫌悪を含む話し声が聞こえた。

「新撰組は田舎者の集まりだ。新撰組に壬生狼の喩えは物凄く合う。新撰組は壬生狼だから、京の町の護りが荒い。」

「壬生狼を怒らすと恐ろしい出来事が起きるぞ。」

「新撰組の関係者に今の話を聞かれたら、斬り殺されるかも知れない。」


少女は沖田総司を普通の表情で見ている。


少女の後ろから、お雪の穏やかな声が聞こえた。

「美鈴さん。こんにちは。」


少女は後ろを不思議な様子で見た。


お雪は微笑んで居る。


お雪は微笑んで来た。


少女はお雪に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「気にしないでね。」

少女はお雪に微笑んで話し出す。

「私は大丈夫です。お雪さんも気にしないでください。」

お雪は少女を微笑んで見た。

少女はお雪に微笑んで話し出す。

「ゆっくりとお話しをしたいのですが、用事が残っています。失礼します。」

お雪は少女に微笑んで軽く礼をした。


少女は微笑んで歩き出した。


お雪は少女を微笑んで見た。


お雪は微笑んで歩き出した。


数日後の事。


ここは、季節の花のたくさん咲く場所。


大きな木の下。


沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。

お雪は微笑んで居る。

少女も微笑んでいる。

少女の傍には、包みが置いてある。


斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。用事が有る。少しの間になるが外す。少しの間だけ一人で頼む。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「分かりました。心配しないで出掛けてください。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

お雪は斉藤一に微笑んで軽く礼をした。

斉藤一はお雪と少女に普通の表情で軽く礼をした。


斉藤一は普通に居なくなった。


少女はお雪と沖田総司に微笑んで話し出す。

「おはぎを用意しました。」

沖田総司は少女に嬉しく話し出す。

「鈴ちゃん! 何時もありがとう!」

お雪は少女に微笑んで軽く礼をした。

少女は沖田総司とお雪を微笑んで見た。

沖田総司は少女に嬉しく話し出す。

「斉藤さんは甘い物が苦手だから、おはぎを食べないと思うんだ! 斉藤さんの分は、私が代わりに食べるね!」

お雪は沖田総司と少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは、甘い物は苦手ですが、美鈴さんの用意したおはぎを食べたいと思うかも知れません。念のために、おはぎを一個は残す方が良いと思います。」

沖田総司はお雪に微笑んで話し出す。

「分かりました。」

少女は包みを微笑んで広げた。

沖田総司は包みからおはぎを取ると、少女に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

お雪は包みからおはぎを取ると、少女に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

少女は沖田総司とお雪を微笑んで見た。

沖田総司はおはぎを笑顔で美味しく食べ始めた。

お雪はおはぎを微笑んで食べ始めた。

沖田総司はおはぎを笑顔で美味しく食べ終わると、包みからおはぎを笑顔で取った。

お雪はおはぎを食べながら、沖田総司を微笑んで見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司はおはぎを笑顔で美味しく食べた。

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司はおはぎを笑顔で美味しく食べ終わると、包みを笑顔で見た。


包みの中に、おはぎが一個しか残っていない。


沖田総司はお雪と少女を恥ずかしく見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんの美味しく食べる姿を見ました。嬉しいです。気にしないでください。」

沖田総司は少女に申し訳なく話し出す。

「鈴ちゃんの言葉は嬉しいけれど、鈴ちゃんはおはぎを一個も食べていない。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私は別な機会に食べます。気にしないでください。」

沖田総司は少女に申し訳なく話し出す。

「鈴ちゃん。何時もご免ね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。謝らないでください。次も美味しく食べて頂けるお菓子を用意します。」

沖田総司は少女を安心して見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

お雪は沖田総司と少女を微笑んで見た。


斉藤一が普通に来た。


沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「お帰りなさい。」

少女も斉藤一に微笑んで話し出す。

「お帰りなさい。」

お雪は斉藤一に微笑んで軽く礼をした。

斉藤一は、沖田総司、お雪、少女に普通の表情で軽く礼をした。

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「おはぎを用意しました。いかがですか?」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「俺は遠慮する。代わりに食べてくれ。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。おはぎを食べて。」

少女は、沖田総司、斉藤一、お雪に、微笑んで話し出す。

「お言葉に甘えて、おはぎを頂きます。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

お雪は少女を微笑んで見た。

少女は包みからおはぎを取ると、おはぎを微笑んで食べた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女はおはぎを微笑んで食べ終わった。


沖田総司、斉藤一、お雪、少女より少し離れた所から、嫌悪を含む話し声が聞こえた。

「先日、壬生狼を見た。」

「壬生狼は嫌になるくらい何処にでも居るだろ。」

「壬生狼を遊郭で見た。遊郭でも、例の如く大暴れしていた。」

「田舎者は遊び方を知らない。本当に困る。」

「少しは都の生活に慣れて欲しい。」

「壬生狼だから、都の生活に慣れるのは無理だと思う。」

「確かに。」


沖田総司、斉藤一、お雪、少女の元に、嫌悪を含む話し声は聞こえなくなった。


少女は沖田総司の腕を掴むと、沖田総司と斉藤一を心配して見た。

沖田総司は少女を心配して見た。

斉藤一は、沖田総司、お雪、少女を、普通の表情で見た。

お雪は、沖田総司、斉藤一、少女に、微笑んで話し出す。

「壬生に狼は居ないのに、壬生狼と話していました。不思議ですね。」

斉藤一はお雪に普通に話し出す。

「壬生に狼が居るなら、退治が必要です。」

お雪は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「壬生に狼が居たとしても、沖田さんや斉藤さんがいらっしゃいます。安心です。」

少女は沖田総司の腕から手を放すと、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんの腕を突然に掴んでしまいました。すいませんでした。」

沖田総司は少女に微笑んで小さく首を横に振った。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す

「次回は、おはぎを更に多く用意します。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。私に気を遣って無理をしないでね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「無理はしていません。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんの用意してくれる菓子は、何時も美味しいから、気付くと食べ過ぎてしまう。私が満足する量を用意するのは大変だよ。普段どおりで良いよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「無理のない程度にたくさん用意します。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。ありがとう。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

お雪は沖田総司と少女を微笑んで見た。

斉藤一は、沖田総司、お雪、少女を、普通の表情で見た。


暫く後の事。


ここは、屯所。


斉藤一の部屋。


沖田総司は考えながら居る。

斉藤一は普通に居る。


沖田総司は斉藤一に寂しく話し出す。

「私は何時も真剣に任務に就いています。世間の評価も陰口も、今迄と変わりません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「世間の評価。陰口。共に気にするな。」

沖田総司は斉藤一に寂しく話し出す。

「鈴ちゃんが私を気遣って励ます姿を見て、可哀想になりました。鈴ちゃんに申し訳ない気持ちになりました。友達の悪い評判や陰口を黙って聞くのみの状況は、辛くて悲しいはずです。鈴ちゃんは今日のような話を、幾度も一人で聞いているはずです。想像するだけでも辛くて悲しい思いになりました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「京の町は、京の町以外の人物を田舎者だと思う人物が多い。気にするな。」

沖田総司は斉藤一に不安な様子で話し出す。

「鈴ちゃんも、私や斉藤さんを、田舎者だと思っているのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんもお雪さんも、俺や総司を、田舎者だと思って接していない。分かるだろ。」

沖田総司は斉藤一な不安な様子で話し出す。

「先程の話の内容を幾度も聞く間に、鈴ちゃんも私を田舎者だと思う可能性がありますよね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんが今の総司の話を聞いたら悲しむ。悪い方向に考えるな。」

沖田総司は斉藤一に辛い様子で話し出す。

「鈴ちゃんは物凄く大切な友達です。鈴ちゃんの寂しい様子を見るのは、辛くて悲しいです。鈴ちゃんがたくさん笑顔になる方法を知りたいです。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を辛い様子で見た。

斉藤一は沖田総司の額を指で思い切り弾いた。

沖田総司は額を痛い様子で抑えると、斉藤一に大きな声で話し出す。

「斉藤さん! 痛いです!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の頭の中に必要な物が隠されているのが分かるから、今回は見付かる可能性があると思って叩いた。今回も残念ながら見付からなかった。総司は相当にしぶとい。」

沖田総司は額を痛い様子で抑えて、斉藤一に怪訝な様子で話し出す。

「斉藤さんの話す意味が分かりません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんのたくさんの笑顔が見たいのだろ。総司自身も真剣に考えろ。」

沖田総司は額を痛い様子で抑えて、斉藤一に怪訝な様子で話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。


数日後の事。


ここは、お雪の家。


一室。


お雪は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。

少女の傍には、小さな木箱が置いてある。


少女はお雪の前に小さな箱を丁寧に置くと、お雪に微笑んで話し出す。

「お雪さんはお出掛けする機会が少ないと聞きました。お雪さんが家で過ごす時の楽しみが少しでも増える助けになればと思って、撫子を用意しました。」

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「ありがとう。大切に育てるわ。」

少女はお雪に微笑んで話し出す。

「喜んで頂いて嬉しいです。」

お雪は小さな木箱を微笑んで開けた。


小さな木箱の中には、撫子が小さな花を咲かせている。


お雪は少女を微笑んで見た。

少女もお雪を微笑んで見た。

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「私も先日の話を聞くと寂しくなるの。気にせずに過ごしましょう。私達も強くなって、新撰組の隊士の方達を支えられるようになりましょう。」

少女はお雪に微笑んで話し出す。

「はい。」

お雪は少女を微笑んで見た。

斉藤一はお雪と少女を普通の表情で見た。


少し後の事。


ここは、町中。


斉藤一は普通に歩いている。

少女は微笑んで歩いている。


少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「お雪さんは凄い人物です。私もお雪さんのように、大切な人達をさり気なく支えられるようになりたいです。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さんとお雪さんは、似ている。美鈴さんは無理しなくてもお雪さんのようになれる。」

少女は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。


暫く後の事。


ここは、屯所。


斉藤一の部屋。


斉藤一は普通に居る。


沖田総司が小さな木箱を大事に抱えて、部屋を笑顔で訪ねた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一の前に小さな木箱を丁寧に置くと、斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 撫子です! 鈴ちゃんのように可愛いですよね!」

斉藤一は撫子を一瞥すると、沖田総司を見て、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さんも私と同じ思いですね! 嬉しいです!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「鈴ちゃんの喜ぶ可愛い花を探していましたが、納得のいく花が見付からなくて困っていました! 以前に、寺で撫子を見掛けたのを思い出しました! 住職さんに頼んで撫子を分けてもらいました!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「明日になったら、鈴ちゃんに撫子を持っていきます!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は小さな木箱を大事に抱えると、斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 明日、再び話しましょう!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は小さな木箱を大事に抱えて、部屋を笑顔で出て行った。


翌日の事。


ここは、少女の家。


少女の部屋。


沖田総司は微笑んで居る。

沖田総司の脇には、小さな木箱が置いてある。

少女は微笑んで居る。


沖田総司は少女の前に小さな木箱を丁寧に置くと、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに撫子を用意したんだ。受け取って。」

少女は小さな木箱を微笑んで開けた。


小さな木箱の中には、撫子が小さな花を咲かせている。


少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「可愛い撫子です。ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんが喜んでくれて、とても嬉しいよ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に申し訳なく話し出す。

「鈴ちゃん。昨日は、悲しい思いをさせてしまった。ご免ね。」

少女は沖田総司を心配して見た。

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「私自身がいろいろな内容を言われるのは、任務の関係で仕方がないと思っているんだ。鈴ちゃんが悲しい思いをするのは嫌なんだ。鈴ちゃんが落ち込む話を聞いた時に、少しでも気晴らしになればと思って、撫子を贈りたいと思ったんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お仕事が忙しいのに、私のためにいろいろとお気遣い頂いてありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私が鈴ちゃんの笑顔をたくさん見たくて贈り物を用意したんだ。礼は要らないよ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「撫子は小さくて可愛いよね。撫子の花も小さくて可愛いよね。撫子は鈴ちゃんに似ているよね。」

少女は沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女を赤面して見た。


沖田総司は、大切な物を厳重に隠してしまったらしいが、時折だけ姿を現す。

斉藤一の苦労、お雪の苦労、少女の苦労は、暫く続く状況になっている。

撫子の花は、斉藤一、お雪、少女に、穏やかな時間を贈りながら咲いている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

「壬生狼」は、新撰組の隊士達を喩えた言葉ですが、当時の人達は悪い喩えで使う事が多かったので、良い喩えで使う事は少なかったと思います。

影で「壬生狼」と言う人はいたとしても、新撰組隊士本人に「壬生狼」と言う勇気のある人は余りいなかったと思います。

新撰組の隊士達と付き合う人達の中には、悲しい思いをしている人が多かったと思います。

「撫子(なでしこ)」についてです。

ナデシコ科の多年草です。

小さくて可憐な花を咲かせます。

花びらの縁が細かく切れ込んでいるのが特徴です。

中国から平安時代に渡来したそうです。

「わが子を撫でるように可愛い花」という意味から「撫子」と呼ぶようになったとも言われています。

「秋の七草」の一つです。

「秋の七草」は、「萩。桔梗。葛(くず)。撫子。尾花(おばな。薄[すすき]の事。)。女郎花(おみなえし)。藤袴。」です。

少し遅めに咲いた「撫子」を巡る物語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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