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新撰組異聞外伝 〜 真澄の鏡 十月桜の咲く中で 〜


〜 中編 〜


時尾のお産の始まった翌日の事。



ここは敬一と美鈴の家のなか。

敬一は美鈴に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さんの家に出掛けるね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「行ってきます。」

美鈴は敬一を微笑んで見ている。

敬一は藤田五郎の家へと元気良く出掛けて行った。



それから少し後の事。

敬一は藤田五郎の家に到着した。

軽く戸を叩きながら、いつもより小さめの声を出す。

「こんにちは。敬一です。」

出迎えの人が現れる気配が無い。

敬一は戸を叩くのを止めると、困った様子で呟いた。

「大きな声を出してもいいのかな?」

突然に戸が開くと、藤田五郎が現れた。

敬一は驚いた表情になった。

藤田五郎は敬一を見ると、普通に話し出す。

「早く入れ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お邪魔致します。」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

藤田五郎と敬一は、家の中へと入って行った。



敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「時尾さんと赤ちゃんは、元気ですか?」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「赤ちゃんは、男の子と女の子のどちらですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「男だ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「おめでとうございます。」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「では、今日はこれで帰ろうと思います。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「時尾と子供達に会ってから帰れ。」

敬一は藤田五郎に不思議そうに話し出す。

「迷惑になりませんか?」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「時尾さんと赤ちゃんに会ってきます。」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。



敬一は、時尾と生まれたばかりの赤ん坊の居る部屋の前に来ると、静かに声を掛ける。

「こんにちは。敬一です。入っても良いですか?」

勉の影が障子に近づくと、明るい声で話し出す。

「どーぞ!」

敬一は障子越しの勉に向かって微笑んで話し出す。

「入ります。」

障子越しの勉は敬一に明るく声を掛ける。

「どーぞ!」

敬一は静かに障子を開けると、部屋の中へと入っていった。



時尾は床の上で体を起こしながら、敬一を微笑んで見た。

時尾の横では、生まれたばかりの赤ん坊が、静かに寝ている。

敬一は時尾の横に座ると、微笑んで話し出す。

「男の子が生まれたと聞きました。おめでとうございます。」

時尾は床の上で体を起こしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「ありがとう。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「例の話が叶わなくて残念です。」

時尾は床の上で体を起こしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「私も残念です。」

敬一は時尾を微笑んで見た。

時尾は床の上で体を起こしながら、敬一を微笑んで見ている。

敬一は、時尾の横で寝ている生まれたばかりの赤ん坊を、微笑んで見た。

時尾は床の上で体を起こしながら、敬一を微笑んで見ている。

生まれたばかりの赤ん坊が泣き始めた。

時尾は生まれたばかりの赤ん坊を、微笑んで抱き上げた。

敬一は時尾に微笑んで軽く礼をすると、部屋を出て行った。



敬一が部屋を出て直ぐの事。

藤田五郎は敬一の前に来ると、普通に話し出す。

「敬一。部屋に来てくれ。」

敬一は藤田五郎を見ながら不思議そうに頷いた。

藤田五郎は黙って歩き出した。

敬一は藤田五郎の後を不思議そうに付いていった。



ここは藤田五郎の部屋のなか。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。今は、時尾の母親や、手伝いの人が来ている。居なくなるまで、剣道の稽古を中止しようと思う。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。わかりました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「稽古の時間が減るから、家での練習を更にしっかりとやるように。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「都合が付けば、敬一の家に行く。本格的な稽古は無理だと思うが、指導は出来ると思う。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「いつも通り家で稽古を続けます。斉藤さん。無理をしないでください。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。当分の間、家に来るな。都合が付いたら、敬一に連絡する。それまで待っていろ。」

敬一は藤田五郎を驚いた表情で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に小さい声で話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕。帰ります。」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで軽く礼をすると、部屋から出て行った。



敬一は藤田五郎の部屋から出ると、下を向いて軽く息をはいた。

直ぐに顔を上げると、時尾と勉と赤ん坊が居る部屋へと向かった。



敬一は、時尾と勉と赤ん坊が居る部屋の前に来ると、微笑んで声を掛ける。

「敬一です。入っても良いですか?」

障子越しに勉の明るい声が聞こえてきた。

「どーぞ!」

敬一は障子越しの勉に微笑んで話し掛ける。

「入ります。」

障子越しの勉は敬一に微笑んで話し出す。

「どーぞ!」

敬一は微笑みながら部屋の中へと入っていった。



時尾は床の上に体を起こして、横に寝ている赤ん坊を微笑んで見ている。

敬一は時尾と赤ん坊を微笑んで見た。

時尾は床の上に体を起こしながら、敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「帰ります。」

時尾は床の上に体を起こしながら、敬一に微笑んで話し掛ける。

「何も出来なくてごめんなさい。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

時尾は床の上で体を起こしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「気を付けて帰ってくださいね。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「はい。時尾さんも赤ちゃんも、体に気を付けてくださいね。」

時尾は床の上で体を起こしながら、敬一を不思議そうに見た。

敬一は勉を見ると、微笑んで話し出す。

「勉君。お兄ちゃんになったね。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。体に気を付けてね。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「またね。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。元気でね。お兄ちゃんだから、弟をしっかりと守ってあげてね。」

勉は敬一を見ながら笑顔で頷いた。

敬一は時尾を見ると、微笑んで話し出す。

「では失礼します。」

時尾は床の上で体を起こしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。また来てくださいね。」

敬一は時尾に微笑んで礼をすると、静かに部屋から出て行った。



敬一は家へと向かって歩いている。

立ち止まると、空を見上げた。

陽の当たる場所は僅かに暑いが、雲の様子は秋の雲となっている。

敬一は空を見上げながら、軽くため息を付いた。

青空の中を白い雲がゆっくりと動いている。

敬一は前を向くと、家へと向かって歩き出した。



敬一は家に帰ってきた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。ただいま。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「お帰りなさい。」

敬一と美鈴は、家の中へと入っていった。



美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「飲み物を持ってくるわね。」

敬一は美鈴に寂しそうに話し出す。

「お母さん。斉藤さんから、当分の間、家の来ないようにと言われたんだ。」

美鈴は敬一に心配そうに話し掛ける。

「時尾さんか赤ちゃんに何か遭ったの?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「元気な男の赤ちゃんが生まれたよ。時尾さんも元気だったよ。だから、何も起こって無いと思うよ。」

美鈴は敬一の話を聞くと、安心した表情になった。

敬一は美鈴に寂しそうに話し出す。

「斉藤さんは、都合が付いたら、僕に連絡すると言ったんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「少しの間だけ、斉藤さんの家で、剣道のお稽古が出来ないのね。家でお稽古の分をしっかりとやらないといけないわね。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。僕は、斉藤さんの家には、もう行かない。剣道の稽古も辞める事にする。」

美鈴は敬一に心配そうに話し掛ける。

「敬一。斉藤さんと何か遭ったの?」

敬一は美鈴に寂しそうに話し出す。

「わからない。でも、僕が何かをしたのかも知れない。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さんは、敬一が何かをしていたら、隠さずに話しをすると思うの。敬一に何も言わないという事は、心配しなくても良いと思うわよ。」

敬一は美鈴に寂しそうに話し出す。

「斉藤さんの家には行かない。剣道の稽古もしない。もう決めたんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「何か飲み物を用意するわね。ゆっくりと話をしましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。剣道の道具を押入れに仕舞いたいんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「お母さんも手伝うわ。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「ありがとう。」

美鈴は敬一を微笑んで見ている。



敬一は剣道の道具を持って、押入れの前に来た。

美鈴は敬一の横に居る。

敬一は真剣な表情で、剣道の道具を押入れの中に仕舞っている。

美鈴は敬一の様子を確認しながら、剣道の道具を押入れの中に仕舞うのを手伝っている。



それから何日か後の事。

朝から青空が広がっている。



敬一は縁を雑巾掛けしている。

美鈴は敬一を微笑んで見ている。

敬一は雑巾掛けを終えると、美鈴に微笑んで話し掛ける。

「お母さん。次に何かする事はある?」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「何も無いわよ。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「たんすを動かして、後ろを掃除しようか?」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一。年末の大掃除には、まだ早いわよ。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「早いうちから、少しずつ掃除をしていこうよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「今日は止めましょう。晴れた日に、少しずつ片付けていきましょう。」

敬一は美鈴を見ながら微笑んで頷いた。



それから更に何日か後の事。



時尾と勉と赤ん坊は、部屋に居る。

勉は赤ん坊を笑顔で見ている。

時尾は勉と赤ん坊を微笑んで見ている。

勉は時尾を見ると、笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。まもる。」

時尾は勉に微笑んで話し掛ける。

「勉もお兄ちゃんね。みんなでしっかりと守ってあげましょうね。」

勉は時尾に笑顔で話し掛ける。

「けーいちおにいちゃん。つとむおにいちゃん。おなじ。」

時尾は勉を見ながら微笑んで頷いた。



それから数日後の夜の事。



ここは藤田五郎の家のなか。

時尾は藤田五郎の部屋を訪れた。

藤田五郎は時尾を普通の表情で見ている。

時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「敬一君の事で気になる事があります。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見ている。

時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「敬一君の様子が、いつもと違うように感じました。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で黙って見ている。

時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「敬一君は、子供が生まれるのを楽しみにしていました。女の子ならお嫁さんにしたいとまで言ってくれました。男の子が生まれたので、敬一君の希望は叶いませんでした。でも、子供の誕生を喜んでくれました。それなのに、あれから一度も家に来ません。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「敬一には、少しの間だけ、家に来ない様に頼んだ。」

時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「母は敬一君が来ない事を、自分が何かしたのではないかと、心配しています。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見ている。

時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「勉も敬一君の話を時々します。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で黙って見ている。

時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「私は敬一君か美鈴さんに対して、失礼な事を言ったのかと気になっています。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「その心配しない。だから、安心しろ。」

時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「敬一君の様子を見ていたら、もう二度と家には来ないように感じました。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で黙って見ている。

時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「私の勘違いなら良いのですが、なぜか気になってしまいます。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「近い内に敬一の様子を見に行く。だから、心配するな。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は時尾を見ながら普通の表情で黙って頷いた。



それから何日か後の事。

朝から青空が広がっている。



ここは敬一と美鈴の家。

敬一は縁に座って庭を見ている。

美鈴は敬一の横に来ると、微笑んで話し掛ける。

「十月桜を見に行こうと思うの。敬一も一緒に見に行かない?」

敬一は美鈴を見ると、考え込んでしまった。

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一は、ここ最近、たくさんお手伝いをしてくれたから、疲れたわよね。十月桜を一緒に見に行くのは、次の機会にしましょうね。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「僕は大丈夫だよ。十月桜を一緒に見に行こうよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「無理しなくてもいいわよ。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「無理はしていないよ。僕もお母さんと一緒に十月桜を見たいな。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。」

敬一は美鈴を微笑んで見ている。

敬一と美鈴は、直ぐに準備をすると、十月桜を見に出掛けて行った。



美鈴と敬一は、十月桜の咲いている場所に到着した。

十月桜は春の桜のように満開にならないが、淡く綺麗な桜の花を、たくさん咲かせている。

美鈴は十月桜を微笑んで見ている。

敬一は美鈴の様子を微笑んで見ている。

美鈴は敬一を見ると、微笑んで話し出す。

「綺麗ね。」

敬一は美鈴を見ながら微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一。剣道のお稽古を続けなくてもいいの?」

敬一は美鈴を見ながら微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんに気を遣う必要は無いのよ。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「僕が剣道を辞めたいと思ったから、辞めるんだよ。お母さんは心配しすぎだよ。」

美鈴は敬一を微笑んで見ている。

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は十月桜を微笑んで見た。

敬一も十月桜を微笑んで見た。

陽の光が敬一のもとに向かって差してきた。

敬一は眩しそうに目を瞑ると、直ぐに下を向いた。

美鈴は敬一を見ると、心配そうに話し掛ける。

「敬一? 大丈夫?」

敬一は下を向いて辛そうに目を閉じながら、美鈴に話し出す。

「大丈夫。急に日差しが差してきて、眩しくなっただけだよ。」

美鈴は敬一に心配そうに話し掛ける。

「どこかで休みましょう。」

敬一は美鈴を見ると、微笑んで話し出す。

「大丈夫。」

美鈴は敬一に心配そうに話し掛ける。

「無理しないでね。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「無理していないよ。大丈夫だよ。」

美鈴は敬一を心配そうに見ている。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。心配しすぎだよ。」

美鈴は敬一を心配そうに見ている。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。せっかく十月桜を見に来たのに、楽しめなくなるよ。笑って十月桜見ようよ。」

美鈴は敬一を見ながら微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し掛けようとしたが、急に驚いた表情になった。

美鈴は敬一の様子を見ると、不思議そうに同じ方向を見た。



藤田五郎が美鈴と敬一のもとへと歩いてくる姿が見える。

敬一は美鈴を見ると、慌てた様子で話し出す。

「お母さん! 別な十月桜を見ようよ!」

美鈴は敬一を見ると、微笑んで話し掛ける。

「ここの十月桜を見ましょう。」

敬一は美鈴の手を取ると、慌てた様子で話し出す。

「お母さん! 早く行こうよ!」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一。何を慌てているの? 斉藤さんとお話をしなくても良いの?」

敬一は美鈴の手を取りながら、慌てた様子で話し出す。

「斉藤さんと話す事は何も無いよ!」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さんは敬一とお話しがしたいから、ここに来たのかもしれないわよ。敬一は斉藤さんに、たくさんお世話になったわよね。だったら、敬一は斉藤さんのお話しを、しっかりと聞く必要があると思うの。」

敬一は美鈴から手を離すと、不安そうに話し出す。

「お母さん。斉藤さんと連絡を取ったの?」

美鈴は敬一を微笑んで見ながら、ゆっくりと首を横に振った。

敬一は美鈴に小さい声で話し出す。

「わかった。斉藤さんと話をするよ。」

美鈴は敬一を見ながら微笑んで頷いた。



藤田五郎が敬一と美鈴の前に来た。

敬一は下を向くと、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「こんにちは。」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

敬一は下を向きながら、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「斉藤さん。なぜ、僕とお母さんが、この場所に居るとわかったの?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一と美鈴さんの家に出掛けたら留守だった。遠出はしていないと考えて、この時期に見頃の花の咲いている場所から当たりをつけて探したんだ。」

敬一は下を向きながら黙っている。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「家の方が落ち着いて話が出来ると思います。戻ってからお話しをしませんか?」

藤田五郎は美鈴を見ると、普通の表情で黙って頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一も良いわよね。」

敬一は顔を上げて美鈴を見ると、小さく頷いた。

藤田五郎、敬一、美鈴は、十月桜を背にしながら去っていった。



ここは、敬一と美鈴の家のなか。

藤田五郎と敬一は、縁に座っている。

美鈴は藤田五郎と敬一の傍に黙ってお茶を置くと、その場から居なくなった。



藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。この前は、時尾の母親や手伝いの人が居たから、詳しい話が出来なかった。直ぐに説明が出来れば良かったが、都合が付かなかった。今更だが、敬一を送るという事にして、外で説明をすれば良かったと思っている。」

敬一は下を向きながら黙っている。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今は、俺の家には、時尾の母親や手伝いの人が来て居ている。少し落ち着かない時がある。敬一が俺の家に頻繁に出入りしていたり、俺が敬一に剣道の稽古を就けていたりする姿を見たら、疑問に思う人が現れるかもしれない。俺や時尾や敬一に、訊ねる人が現れるかもしれない。だから、敬一に俺の家に来ないように話をした。」

敬一は下を向きながら黙っている。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「剣道の練習は、しっかりと続けているのか?」

敬一は下を向きながら、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「やっていません。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「練習は毎日続けないと、後が大変だぞ。」

敬一は下を向きながら、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「剣道を辞める事にしました。だから、練習をする必要は無いと思います。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「剣道を続けて強くなって、美鈴さんを守るという話は、どうなるんだ?」

敬一は下を向きながら、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「お母さんを守りたいから、剣道を辞める事にしました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「剣道を辞める事が、美鈴さんを守る事になるのか?」

敬一は下を向きながら、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「斉藤さんの家に行くと、迷惑が掛かります。剣道を続けようとしたら、東京で道場を探さないといけません。剣道を続けるとお父さんの事を質問されます。京都に住んでいた時の事も、質問されるかもしれません。僕のお父さんが沖田総司だとは、人には言えません。斉藤さんのように、僕は上手く説明が出来ないと思います。だから、剣道を辞める事にしました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一が家に来るのは迷惑ではない。俺が剣道の稽古を就けているだろ。だから、辞める必要は無いだろ。」

敬一は下を向きながら、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「これ以上、斉藤さんにもお母さんにも迷惑は掛けられません。だから、斉藤さんの家に行かない事に決めました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「剣道の稽古を辞めて、家にも来ないという事なのか?」

敬一は下を向きながら、小さく頷いた。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「時尾が敬一に何かしたのではないかと、心配している。時尾の母親も、敬一の事を心配しているらしい。勉も敬一の話を良くしているそうだ。もう一度だけで良いから、家に来てくれ。」

敬一は下を向きながら、小さく首を横に振った。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今回の件は、俺の説明が足りなくて、敬一に悪い事をしたと思っている。」

敬一は下を向きながら、黙っている。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一の都合の良い時に、家に来てくれ。俺も時尾も勉も、敬一が家に来てくれるのを、待っている。」

敬一は下を向きながら、黙っている。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。俺の話しは、これで終わりだ。」

敬一は下を向きながら、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「わざわざ家に来て頂いて、ありがとうございました。」

藤田五郎は黙って立ち上がった。

敬一は下を向きながら、黙っている。

藤田五郎は美鈴のもとに向かって歩き出した。



藤田五郎は美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎を見ると、微笑んで軽く礼をした。

藤田五郎と美鈴は、玄関へと向かった。



藤田五郎と美鈴は、玄関に居る。

美鈴は藤田五郎に申し訳なさそうに話し出す。

「時間を割いてお忙しい中を来て頂いたのに、敬一がほとんど話しをしなくて、申し訳ありませんでした。少しだけ時間をください。敬一を必ず斉藤さんの家に行かせます。」

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「今回の件は、俺が悪かったと思っている。美鈴さんも気にしないでくれ。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「いつもの事で申し訳ありませんが、後の事はよろしくお願いします。」

藤田五郎は美鈴を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

美鈴は藤田五郎を見ながら微笑んで軽く礼をした。

藤田五郎は敬一と美鈴の家から去っていった。





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