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西日本高速のエリアガイドが再び迷走
フリーペーパー化で「過去最悪」の情報量に



エル・アルコン  2007年4月16日



※この作品は「交通総合フォーラム」とのシェアコンテンツです。


高速各社が高速道路のサービスエリアで配布されているロードマップ(エリアガイド)については、これまで何回か述べてきていますが、独自化初期の迷走期を脱して、公団時代を超える出来になりつつあると 評しました

しかし今春、西日本高速のロードマップがフリーペーパー化されると同時に、各社を通しても過去最悪といえた初回バージョンをさらに下回る情報量の提供となりました。

左が今回新登場の「奔放」、右が「最終号」の従来版


私事ながらこのところ高速道路とご無沙汰していたのですが、久しぶりに遠出を決め込んだ西名阪の香芝SAのインフォメーションデスクでそれを見かけました。
4月5日から地図が新しくなりました、と銘打ってカウンターには従来版の「うまいもん&イベントガイド」と並んで置いてあったタブロイド版のフリーペーパー 「奔放」 。表紙に中年男性の顔が大写しでなかなか先鋭的ですが、これが「東京タワー」が大ヒットとなったリリー・フランキー氏の近影で、巻頭にインタビュー記事が出ていました。

東日本の「ハイウェイウォーカー」を強く意識したのでしょうか、読み物がメインとなっており、読み物事態は可もなく不可もなく、西日本高速の石田会長が座談会的なコラムの連載を持ち、初回と次回は昔のよしみでラグビー元日本代表監督の平尾誠二氏が相手と、トップの素顔を晒すと言うのは異色かつ面白いです。

しかし、そうした好企画を評価しても余りある、いや、総てをぶち壊すのが「ロードマップ」としての機能です。
表紙右肩に「道路地図とSA・PA情報つき」と書いてあり、また、インフォメーションでも「新しくなりました」と銘打っているのですが、スポーツ紙の競馬面のように抜き取り使用を想定したのか、ちょうど真ん中にある地図のページを見て愕然です。

目次では「保存版!」と謳うその地図は、まずタブロイド版なのでサイズが小さくなり、かつ地図自体がこれまでの53万分の1から66万分の1と粗くなりました。しかもカバー範囲は中国道が作東→佐用、山陽道が備前→赤穂、北陸道が金津→敦賀、東名、伊勢湾岸、東名阪方面は中央道瑞浪、東名音羽蒲郡までだったのが名古屋ICがギリギリと、縮尺を小さくしたのにこれも縮小です。
さらに国道の区間距離表示は消えており、あの悪名高い初版の時代に戻った格好です。

「SA・PA情報」に至っては、ありません。全滅です。表紙の謳い文句は何なんでしょうか。
目を皿のようにしても山陽道三木SAにドッグランとタイガースショップができたと言う情報、また名神の黒丸、草津、近畿道の東大阪の各PAにコンビニができたと言う情報だけです。
あのポンチ絵マップでも、まず給油所の有無や営業時間という安全にかかわる根幹情報が載り、どのSA、PAにどんな店やサービスがあり、名物料理やお土産品は何、と言う情報が出ていましたが、こちらには皆無です。まさかいきなり大胆な落丁かと思いましたが、目次を見る限りこれが仕様のようです。

給油所情報はサービスのイロハ、というよりも、これが無いとガス欠という「事故」に直結するわけで、特に 給油所の閉鎖や営業時間の短縮 が目立つ同社管内でこの情報が無いのは致命的です。
また、サービス面でも、ドライバーがどのSAに入るかはその時々でないと分からないわけで、飯時の休憩ともなれば、メニューによって早めに寄ったり、もう少し先まで、となることもあるわけですが、そうした選択に資する情報がなくなると、高速道路会社の収入にも影響するわけで、これはサービス悪化であると同時に、自爆気味でもあります。

さらに、この「奔放」を実はクルマに戻って目を通していたんですが、タブロイド版になったことでかつての地図のようにあれこれ広げずにぱっと見開くだけ、と思っているのかもしれませんが、ベースのサイズが大きいことから逆に車内の置き場に困ります。かつての地図のように畳めばドアポケットなどに「立つ」こともなく、へにゃっと曲がるタブロイドは邪魔です。おりしも関西私鉄が広報誌をタブロイド版にしており、今春、阪神もA4版からタブロイドになり、一部のマニアの間ではタブロイド化が好評のようで、同じ関西の交通企業として倣ったといったら穿ち過ぎでしょうが、「なるようになる」と言う感じで折って曲がった状態で仕舞うしかないタブロイドは、車内にあっても美しくなく、不本意ながら通勤の夕刊紙のように読後は邪険に扱わざるを得ません。

ついでに言えば、関西私鉄がタブロイド版の広報誌を出していると書きましたが、そのライバルとなるJR西日本は、A4版のフリーペーパー「旅こよみ」を配布しています。こちらは関西地区で情報誌「ミーツ」を出版している京阪神エルマガジン社が編集しており、同社編集の雑誌と内容が被り気味(なので無料の「旅こよみ」は重宝する)という問題?はありますが、それだけに内容はしっかりしており、かつサイズや紙質もしっかりしていることから、持ち帰って家で取って置く確率が高いです。

さてこの「奔放」、「年6回発行」とあり、今後はこれしかないのか、と暗澹たる思いになりましたが、従来版をよく見ると、「最終号」とあります。
発行を見ると2007年4月とあり、「奔放」の創刊号と同時のようです。
となると今回の「奔放」の地図情報は暫定版で、次回からは一本化であれば、車内の置き場に困るタブロイド版であることを除けばまあ許容範囲ともいえるのですが、一方で今回「暫定版」にする必要性は全くないわけで、「新しい地図」と銘打って配布している以上、これがデフォルトになる懸念が強いのです。

ただ、中面抜き取り使用を考えたら、地図の裏面にSA・PA情報が来ることになりますが、あのサイズだと例のポンチ絵時代といい勝負になりそうです。
そうなると、同じ情報誌スタイルでも情報量は東日本高速のそれに比べると月とスッポンと言う評価になってしまうわけで、次号でどのように改善されるかによって、今後の評価が定まります。
とはいえ、GWをカバーする時期に刊行された創刊号は、利用者が手に取り、目にする機会も多いはずで、そこにこれまでの汚名返上どころか「振り出しに戻る」という地図情報を提供したことは、「次で改善」してフォローすることを必要以上に困難にしたといえます。

なお、奇しくも 同時期にリニューアルした中日本高速のサービスエリアガイド は、西日本と好対照です。エリアマップが公団時代の地図型表記に戻るなど、情報案内に傾注しています。これまでのJTBパブリッシングとの提携を解除したようで、基本に立ち返った格好です。
フリーペーパーながら公団時代の情報は維持している東日本、基本に立ち返った中日本と比べると、せっかく基本に立ち返りながら、今回大きく後退した西日本の迷走ぶりが目立つだけに残念です。






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