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「関西三空港問題」を考える
その3・問題の由来と解決への道のり






夜の関西空港



写真は2005年4月、7月、8月、11月、12月、2006年2月、3月、5月撮影

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●神戸と泉州の相克
関空は伊丹の代替であり、関空に集約することが国策であり...という批判があることは重々承知しています。当時は伊丹の騒音問題も旧世代の航空機ゆえ深刻でしたし、国際線の処理を含めると明らかにパンク状態でしたから、「伊丹の代替」が必要であったことは間違いありません。

しかし、そもそも「関西国際空港」の場所の設定が、関西の航空需要の下地と相反する以上、この場所に「関西国際空港」を建設した時点で、こうなることは火を見るより明らかだったと言えます。

関空・国際線ロビー

本来の計画では、現在神戸空港を建設中の神戸ポートアイランド沖を第一候補としていたわけで、これであれば大阪府北、兵庫が大半を占める関西の航空需要に応えた立地でした。
それが神戸市の反対運動で神戸沖の建設を断念して、泉州沖へ、というのが史実ですが、今にして思えばそれが総ての誤りであり、今日の結末はこの時点で約束されたのです。

その「誤り」とは、神戸市の反対を指すのが通説ですが、本当はその後の過程にあるのです。
神戸市が反対決議をしたあと、泉州沖に決定した直後の1982年、実は神戸市は反対決議を撤回しています。
当初は関西新空港の再誘致を考えていたようですが、泉州側が譲らず、結局「第三種空港」としての国内線空港の建設という建前での空港誘致になっていますが、少なくとも「空港建設」に関して神戸市はテーブルにつく姿勢を見せたのです。

●泉州へのこだわりが招いた現状
この時点では需要の見極めもあり、泉州沖の関空建設が始まるまでまだ間があったわけで、この「最後のチャンス」を活かせなかったことが駄目押しになっています。
つまり、神戸沖の立地が困難、というとき、なぜすんなり泉州沖に変更したのか。そして神戸が翻意した時、なぜ泉州にこだわり続けたのか。多分に「大阪国際空港」の代替を「兵庫県神戸市」に求めたくない地元大阪の行政や財界の支持や熱意が強かったことは想像に難くありませんが、よしんばそれがいくらあったとしても、「関西国際空港」として関西の航空需要に応えるためには、その立地はどこでもいいと言う話はないわけです。

駅側からターミナルを見る

例えば羽田空港の国際線を移すにあたって、成田の三里塚を選んだわけですが、激しい成田闘争に直面しながら成田と言う立地は変えなかったのはなぜか。もちろん成田の教訓と言う面は否定しませんが、そうであっても泉州沖への転進は、あたかも成田の反対が激しいから鹿島灘や渡良瀬遊水池のあたりに変更する、というようなものであり、無理が多過ぎました。

歴史にイフは禁物ですが、もし、当初の計画通り第一候補である神戸沖での計画を貫いて神戸市を説得していたらどうだったのか。そしてなぜ成田のように粘り強く推進しなかったのか。大阪側は泉州沖に「決まった」として現計画をそのまま今日に至るまで推進しているのですが、神戸市がその後空港誘致に転じた時点で、なぜ神戸沖に戻さなかったのか。
決定当時とは国内線需要の形態が大きく変化したとはいえ、それくらい長いスパンで考えないといけない大型の公共インフラ建設での現状認識と見通しの甘さが禍根を残した失敗例として、歴史に関空の名を刻むことになりました。

●時代を読むのは難しいが
もっとも、もし関空開港時に伊丹をすっぱり閉鎖していたとしたら、羽田−大阪線をはじめとするその後の国内線の発展は、こと関空に関しては無かったかも知れないわけで、我が国の交通事情は現状と大きく異なっていた可能性も否定できません。
それであれば内外ハブとしての関空は、こじんまりとした形ではあるが案外と成功していたかもしれませんが、それが航空産業や利用者にとって本当によかったのかとなると、意見が分かれるところです。

関西空港駅


このあたりは国内の航空需要の見誤りというのが大きいでしょう。
国際線需要も関空開港で大きく伸ばしたことは事実ですが、それ以上に国内線需要、特に羽田線の需要が大きく伸びたわけです。
これはさすがに読めないので、「見誤り」というのは酷なんですが、対首都圏と言う最大の需要に応えられなかった原因のひとつである羽田のキャパの問題が現在地への沖合展開で解消したこと、航空運賃自由化によるフレキシブルな運賃設定が、当初は複雑で不評だったのに、ネットや携帯の普及でユーザーが使いこなせるようになったこと、これらが国内線関係で発生したため、アクセスが遠い関空にとって不利なこと、さらには関西経済の地盤沈下で、対東京の支店経済化しつつあること(ビジネス需要における東京線の人気、地方線の苦戦)もあるわけで、ちょっと気の毒と言うことも出来ます。

●関空の残された道
国内線の「関空シフト」が、代替交通機関がない独占エリアを対象とした路線においてもすんなりと移行しないという現実があるわけです。いわんや代替交通機関がある場合は致命的な他交通期間へのシフトが発生することは必至であり、航空需要を減衰させるだけの結果に終わることは火を見るより明らかです。

こうした前提で、国内線の関空シフトをどうしても進めるのであれば、少なくともアクセスにおいて伊丹と同等の利便性(時間のみならずコストにおいても)を保証しなければなりません。
上記の日経の記事では、羽田発の利用者よりも伊丹発の利用者のほうが圧倒的に関空シフトを否定しています。もともと伊丹を選択しているから当然と言う見方も出来ますが、関西ベースの利用者にとって利用機会の多い早朝深夜の関空アクセスが不便極まることが、関西ベースの利用者が顕著に関空を嫌う理由とも言えるわけです。
2006年2月の神戸空港開港後は、関空国内線の生命維持装置とも言える伊丹の「門限」後の受け皿としての役割も大幅に減少することから、「関空嫌い」の傾向はさらに深度化するでしょう。

神戸発羽田行き最終便は盛況

そして、もし、アクセスなどの抜本的な改善が出来ないのであれば、首都圏のように、国内線は伊丹(&神戸)、国際線は関空という機能別の棲み分けにしてしまうほうが、航空需要を極大化して、かつ利用者の利便性を最大限担保出来ることになります。
あまりにも極端な意見であり、内外ハブという関空の最大の売り物でありメリットを捨てることになりますが、ではあのレベルの国内線で実際にはどの程度「内外ハブ」として機能していたかを考えた時、国際線連絡&大阪府南・和歌山需要用の最小限の国内線を羽田線中心に運行すれば、現状の需要の大半はカバー出来るのではないでしょうか。

●内外ハブとしての機能は
さて、関空に国内線を共存させる理由に挙がる内外ハブとしての機能はどうでしょうか。
関空便と関空発着の国際線がリンクしているのか、と見た場合、言うまでも無く関空からの国際線と言うのはアジア地区に大きく偏っており、羽田にも掲出されている「関空しか無い路線」の宣伝を見ても、相当マイナーなイメージが払拭できません。
そうなると、「成田」には無いアジア地区へのマイナー路線のゲートウェイとしての「東京」との需要、もしくは「関西」との需要はあっても、関空をハブとする各都市との需要はいかばかりか、と言う疑念は払拭できません。

関空経由中国の宣伝


もちろん羽田−関空を代表として内外ハブ機能は期待されるわけで、大阪府南や和歌山など近畿南部への需要も踏まえた便数の確保は必要ですので、関空国内線を完全に無くすと言う選択肢はさすがにありえませんが、幹線中心の設定や機能になるべきと考えます。

ただ、いかに幹線であっても成田便があるケースが多く、欧州線や北米線への対応と言う意味では関空便とは段違いで、アジアその他も主要都市は実は成田接続で事が足りそうな状態です。とはいえ関空利用がそれなりの数字を残しているのはなぜか、を考えたとき、成田には国内線に割けるスロットが足りない、という事情も考え得るわけです。内外ハブならそこが関空である必要は必ずしも無い、だったら空港が二分されていない中部はと見ると、それなりに健闘しているとはいえ関空に比べても国際線のラインナップは劣るのです。
で、関空行きを増やせるかというと、国内線としてみた場合伊丹と比較にならない、ということで三すくみと言うかなんと言うかのデッドロック状態になっているのも事実です。

国際線需要を考えたとき、関空国内線をミニマイズして羽田−成田や伊丹−関空の陸上移動を前提にする事は、需要の先細りを招くことは必定ですし、地方経済、観光にとって海外からの入り込みへのアピールを大きく損ねることは困りものです。
そこまで考えるとなかなか解決策が見つからないゆえに悩ましいのは事実です。

中国以外にも「多彩な」就航都市だが


●誰がために空港はある
なぜ関空が嫌われているのか。まずそこを分析しないと始まりません。
利用者が明確に突きつけている「No!」に真正面から向き合った「自然体」での解決に尽きるわけです。
こうした状況において、「なぜ関空を使わなければいけないのか」という素直かつ素朴な疑問があるわけで、その感情を「利用実績」の源泉である利用者が抱いていることに対して納得が行く説明が可能かどうか。「これなら仕方が無い」「これなら利用しよう」と明快に感じるものが導きだされるか、ということです。

このとき、「こういう決まりなのだから」、つまり、過去の経緯は確かに大事ではありますが、「そもそもその決まりがおかしい」という疑問があるわけで、利用者の視点で見れば、まさに「なんでや?」の世界なのです。
「関空シフト」などの対応を前提に二期工事の必要性を説き伏せた交渉に、利用者の視線はまったく考慮されていません。少なくとも二期工事は関西三空港で最大の無駄と言えます。
ちなみに、トータルでの「無駄」を考えたとき、やはり航空需要を最大にすることがベストであり、ミニマイズすることは、設備の除却損よりもそもそものランニングでの出血が命取りになります。

閑散とした夜更けの関空

そして、この問題の根底に共通するのが一種の「ダブルスタンダード」です。
かつては伊丹を廃港、もしくはそれに近い状態にしろという流れでありながら、それを事実上撤回して利用者の支持と利便性を理由に存続を願う一方で、一度は反対したが、空港設置を推進した神戸は「許せない」という伊丹の主張。もしくは、関空と伊丹があるのに神戸の建設は無駄、と言う一方で、最後発となる関空の二期は原則どおり推進すべき、という主張。これらの主張の根拠に整合性があるでしょうか。

確かに過去の経緯はいろいろあります。しかし、時間が経てば事情が変わるのです。
原理原則も大切ですが、それに固執して現実にそぐわないものを具現化することが一番問題です。公共事業においても昨今は「時のアセス」を導入することで、時代の推移による必要性の再検討はあたりまえになっています。
そういう姿勢が「ズルい」と言う批判は甘んじて受けますが、そうであっても、その相反するそれぞれの姿勢に正当性を与えるとしたら、それはやはり「利用者」の意向に合うものかどうかという基準を貫くべきです。
特に関空は、現在の国内線が、三空港の中で神戸よりも支持が無いともいえるなかで、自らの姿勢に正当性を備えるとしたらどうするべきかを考えることが急務なのに、利用者にそれが伝わらない、見えてこないのです。

●利用者の視点が見えていない「改善策」
アクセスが最大のアキレス腱というのは10年以上前の開港時から言われてきました。
にもかかわらず開港時とあまり変わらない内容のままであり、早朝・深夜便対応という面では、本来24時間空港のはずなのにアクセスがなくて使えない状態のままであり、羽田のように早朝便対応として各地を未明に出るリムジンがあるでもない状態です。
繰り返しになりますが、そういう時間帯に利用する機会が多いからこそ、関西での不人気が際立っているのです。

6時前。各地から続々とリムジンが到着する羽田ようやく尼崎リムジンが1本増えたのが夜間の「成果」

どちらかというと展望プラザのリニューアルや各種イベントの実施、物販の拡充などは熱心に見えますが、それはあくまで「枝葉末節」であり、空港とは航空機を利用する場所という大前提をまず考えないと話になりません。その意味で、第一部で比較しましたが、付帯サービスは素寒貧ともいえる伊丹も、航空機の利用という意味では関空より優れていると言わざるを得ません。

連絡橋の料金を下げた事は評価されます。しかし、社会実験で導入したETCの専用レーンの稼動はなぜか取り止めになりました。駐車場とのセット割引商品は未だにETC非対応です。アクセスもそうですが、こうした細かい対応が未だ持って全くなっていない。この恐ろしいまでの感度の低さこそが関空の低迷の象徴ともいえます。

スカイゲートブリッジ

また、 世界各国の空港の中でも高い評価 、ということをセールスポイントにしていますが、実際にその選考基準を見てみますと、 その評価ポイント の中には、預り荷物が確実に出てくるというような、日本の空港なら当然高くて当たり前で比較にならない部分も含んでいたり、国際空港として重視される機能であっても、国内線空港としては重視されない部分もあるわけです。
ですからそういう評価の「内外格差」と重み付けの違いによる高評価ということを割り引いて考えないといけませんし、いわんや利用者の評価のほうを疑うような見方は慎むべきです。

余談ですが、本当に使い勝手が良いのであれば、設備が整った「国際空港」ですからVIPも数多く利用するはずです。
しかし、今秋開催の「のじぎく兵庫国体」にご臨席の両陛下は神戸空港を使われました。メイン会場が神戸市ということもあるのでしょうが、新幹線よりも神戸空港のほうが使い勝手が良いという判断でしょう。
また、2005年11月に日米首脳会談のために来日したブッシュ大統領は伊丹空港を使っています。会談の会場は京都で、ヘリ移動ですからアクセスの時間差は然程無いでしょうし、警備上も関空のほうがやりやすいはずですが、伊丹でした。
「専門家」の評価も重要ですが、こういう「実績」もまた各空港への評価なのです。

大統領来日時の大型輸送機(伊丹)


●航空行政は公平な差配を
神戸空港は7時から22時までの15時間運用でスタートしましたが、国土交通省は「破格の対応」と自賛しているこの運用も、開港前から市側は延長を主張しており、管制官増員のコストを負担すると言う申し入れも行っている模様です。
開港後の実績、特に好調な羽田線関係の需要を鑑みると、夜間の延長をすることで航空需要を更に増やせることは確実ですが、現時点では受け入れられる気配が無いばかりか、発着便を30往復に限定するなど、世間から関空救済策とされる「規制」により神戸空港の利便性向上を阻んでいる格好です。

神戸空港搭乗口

こうした現状を見る限りにおいては、関空はもはや関西、いや、日本の国内線航空需要を道連れにした無理心中の道を歩んでいるとしか言いようがありません。
過去の経緯がいかなるものであろうと、利用されてはじめてその価値が出るインフラにおいてその肝心な利用者から「No」を突き付けられている現状を無視することは正常ではありません。
それでも関空国内線を活かすのであれば、半端ではない努力が急務ですし、それが出来ないのであれば、「名誉ある撤退」もまた意味のある選択肢になっている現実の前に、許された時間はあまり多くありません。

過去の経緯は重々承知はしていますが、現状を考えると「伊丹廃港」という選択肢は考えられません。
そこまでして「原則論」にこだわることが、利用者がまずありきのはずの運輸事業を巡る運輸行政のあるべき姿とは思えませんし、現状が大きく変わったという認識のもと、現実的な対応を取るべきでしょう。
その意味で、どうやっても国内線の利用に関して好転が望めないのであれば、関空の事実上の国際線専用化、という「名誉ある撤退」も含めた「三空港問題」の解決も十分考えるべきなのです。


 



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