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乗鞍賛歌

その3・シャトルバスで行く乗鞍岳


乗鞍岳剣ヶ峰山頂


特記なき写真は2005年7月撮影

【ご案内】 乗鞍岳マイカー規制についての論説は、「交通論の部屋」の 「乗鞍岳マイカー規制について」 をご覧下さい。


●シャトルバスで行く乗鞍岳(その1・遥かなる乗鞍)
2005年7月22日未明に神戸を出発し、ETCの早朝深夜割引や通勤割引の適用をフルに受けるべく途中で出たり入ったりを繰り返して北陸道福井北ICに至りました。
前回の「ラストイヤー」は東海北陸道経由でしたが、今回はさらに山一つ越えないといけない北陸道経由にしたのは、乗鞍岳訪問は2日目にして、初日はアプローチを楽しむ目的。勝山からR157に入り、石川県に入って手取川上流域を進み、白山スーパー林道を試しました。

白山スーパー林道

上高地、乗鞍、さらに南アルプスの広河原と環境保護を大義名分としたマイカー規制が続くなか、その乗鞍へのアプローチに建設時から環境問題が叫ばれて来た白山スーパー林道を選ぶというのもいい度胸なんですが、3150円の通行料に見合う素晴らしい景色を前にすると、クルマで来れるありがたみのほうが先に立ってしまうのも事実です。

世界文化遺産に指定された白川郷がスーパー林道の終点。俗化した感のある中心街で合掌造りの家を眺めて、荘川沿いの細道に過ぎないR156を進みます。ロックフィル式の御母衣ダムを過ぎ、ダム湖である御母衣湖沿いのトンネルは大型車の離合が出来ず、バスなど大型車はクラクションを鳴らして対向車を抑制してトンネルに入っています。

白川郷バスターミナル御母衣ダム

この区間、東海北陸道が富山側から白川郷ICまで、岐阜側から飛騨清見ICまで伸びていますが、最後の区間となった両IC間に立ちはだかったのが飛騨トンネル。関越トンネルに告ぐ我が国第二の長さとなる10.7kmの道路トンネルは1997年の掘削開始から8年を経た今日でもまだ7割程度しか貫通していないという難工事となり、完成は着工から10年となる2年後の見通しとなっています。
このため、白川郷ICから荘川ICまでの区間、大型車の離合もままならないR156が途切れた高速をつないでいますが、世界文化遺産指定で入り込みが急増していることもあり、もはや限界でしょう。

ようやく開けると荘川IC。IC前には温泉もある道の駅「桜の郷荘川」があり、バスの駅があって高山、白川郷、郡上白鳥などのバス路線の要となっています。
ここから飛騨清見ICまで東海北陸道を行き、そのまま高規格道の中部縦貫道(高山清見道路)に入って高山西ICに向かいます。もともと飛騨清見IC自体が中部縦貫道側にあるため、東海北陸道で飛騨清見ICの標識にIC番号は添えられていませんし、ICというよりJCTのような作りです。

飛騨清見IC。直進は中部縦貫道

前回は標識に従って市街地を迂回した高山市街を今回は中心街を抜けて見ましたが、結構混んでいて失敗。旧丹生川村役場のところで迂回路と合流しますが、7月1日の大雨でR158の長野県旧安曇村内の沢渡〜奈川渡間での土砂崩れによる通行止の案内が現れます。4トン未満は白骨温泉経由の迂回路が使えますが、大型車の迂回路はなく、北の親不知か、南の下呂〜中津川を迂回するしかないのです。

R158で徐々に高度を稼ぐと朴の木平スキー場に至ります。国道から外れてスキー場に至ると、その駐車場が乗鞍岳シャトルバスの駐車場兼バスターミナルになっています。
ここは乗鞍岳マイカー規制の西の玄関であり、ここから30分ヘッド、往復1800円のシャトルバスに乗り換えるのです。
15時を回っており、もう帰ってしまった観光客のほうが多いのか、駐車場は予想外に空いています。すれ違ったシャトルバスも満員というほどではなく、それとも入り込み自体が相当落ちているのかもしれません。

平湯峠の分岐をトンネル側に取らなければ乗鞍スカイラインですが、もうそちらへ行くのは叶わずトンネルに向かいます。畳平経由なら今宵の宿も近いのですが、安房峠〜沢渡〜白骨経由の大迂回を余儀なくされます。若干時間があるので安房峠旧道を行くことを考えており、旧安曇村サイトの交通情報でも通行可能とあったはずなのに、現地の案内は「通行止」。すごすごと750円を払って安房トンネルを抜けました。

安房トンネル(平湯側入口)中の湯。ゲートの左手が上高地方面

改修された釜トンネルが口をあける中の湯の三叉路を右折し、梓川上流域の渓谷をトンネルで縫うと沢渡。上高地へのシャトルバスの基地として有名ですが、上述の通行止で乗鞍高原に始発を移しています。(7月28日10時に仮復旧しており沢渡始発に復帰)
バリケードに阻まれる格好で白骨温泉への道に入りますが、ここも離合不能区間が多いたいがいな道です。しかし離合不能区間は案内員が立ち片側交互通行になっており、通常より快適に越えられたのは皮肉です。特に白骨温泉直下のZカーブは難所ですから、日頃からこうして欲しいです。
もっとも、迂回期間中にこのZカーブで路線バスの回送車が脱輪して数時間通行止にしたという情けない事故も起きていますが。

沢渡のバリケード交互通行のため停車中

白骨からは上高地乗鞍スーパー林道B区間。ただし迂回路に指定されたため7月28日11時までは無料開放されていました。実はスーパー林道には白骨から安房峠(旧道)を結ぶC区間が存在するのですが、ここ3年ほど閉鎖されたままです。
ひと山越えると乗鞍高原で、時間があるので一の瀬園地で少し遊んで今宵の宿に入りました。


●シャトルバスで行く乗鞍岳(その2・山頂への道)
今回は前回とは違う宿。温泉を堪能して早寝すると、明け方から宿の前をアルピコカラーのバスが駆け抜けていきます。どうも上高地シャトル、乗鞍シャトルの回送のようですが、県道から入った道路を何故通るのでしょうか。

乗鞍シャトルは観光センターから毎時0分発車と聞いており、9時発をターゲットに8時半頃に観光センターに移動しました。高山方面への迂回案内のための係員に乗鞍シャトルの駐車場を聞くと観光センターの駐車場とのこと。駐車場はまだ余裕がありました。

観光センターと駐車場

観光センターの窓口で乗車券を購入。大人2000円、子供1000円ですから未就学児の子供は無料としても4人で5000円は結構なお値段。朴の木平からだと4人で4700円ですが、まあ無料だったエコーラインはともかく、スカイライン側は有料時代の通行料が1570円ですから、往復で3140円となるわけで、ドライバーも景色が楽しめ、畳平での駐車場待ちの渋滞がないことを考えると悪くはない感じです。

テントの下にベンチが並ぶバス乗り場で並びますが、係員がベンチに座るのも順番に座らせているのはありがたいです。往々にして並ぶ人は立って、座ってると後回しになるのですが、それなりに待たされるのでこれはいいです。
ベンチは2列になっているんですが、きちんと前列〜後列の順で座らせて、ベンチに溢れたらベンチの後ろに行列するように指示し、後から来てベンチに座ろうとすると注意するなど、整理がしっかりしてました。

20分前には早や入線の案内がありましたが、人数を数えていた係員から「2台目が出ます」と案内。1時間ヘッドですが、複数台運行することで輸送力を確保しているようですが、最大で4台のようで、早朝の上り、昼過ぎの下山はそれでも足りずに1時間待ちになることもあるようです。
ちなみに補助席は使うものの、座席定員は守っているようなので、山道を延々と立たされることはないようです。
やって来たのはアルピコカラーの松本電鉄バス。「低公害車両」と書かれたハイブリッドの前扉車です。
幸い後列前方のベンチにいたので1台目に座れましたが、2台目には空席もある程度の乗客で出発しました。

ここから規制区間(三本滝ゲート)

鈴蘭、スキー場、休暇村などを通り三本滝ゲートに至ります。以前は簡単なゲートだけだったのに、チェックする係員が常駐するゲートになっていた三本滝で時間調整して、エコーラインに進入します。
スキー場からだいぶ上った三本滝ですが、さらにかなり登ってようやくスキー場の最上部に至ります。ここで1700m程度の標高ですから、まだ1000mも上るのです。
乗鞍高原を一望するスキー場最上部を過ぎるとしばらく白樺やダケカンバの林の中を行きます。バスとタクシーしか通れなくなったこともあり、離合不能区間の標識が整備されており、この先XXXm離合不能という情報が分かる様になっています。そして道路もだいぶ手が入っており、出来ればこのきれいな道を自分のクルマで走りたかったです。

林の中、ちょっと道が広がったところでバスが止まりました。下ってくるバスとの交換ですが、下りは4台口。もっとも、上り対応で増発していた回送ということもあり4台ともガラガラでした。このバスは車掌が乗務しているんですが、交換待ちの案内の際、「下りとのスライドのため...」というのは新鮮でした。

ひたすら上り、冷泉小屋、位ヶ原山荘を過ぎると、徐々に背が低くなっていた木々がついに無くなります。
森林限界を超えて、高山植物だけの世界になると前方に大雪渓と乗鞍岳の雄大な姿が広がります。道路脇には雪が残り、ハイマツの中をうねるように高度を稼ぎます。

エコーラインを行くシャトルバス

大雪渓の下に位置する肩の小屋口で降車する人がいます。大雪渓での夏スキー目当てのほか、山頂を目指すなら畳平に向かわずに真っ直ぐ肩の小屋に向かうほうが近いです。

スキーヤーが集う大雪渓

かつてはこのあたりから渋滞が厳しさを増したのですが順調です。畳平への最後の難関。東側に大きく崩れた箇所を抜けるところは桟道のように張り出す形で改修されていました。
そこを抜けると県境、そこは2715mの日本の道路最高地点です。岐阜側は「高山市」に改められてましたが、長野側は「安曇村」のままというのはちょっとお粗末かな。
そのまま水が少ない鶴が池を見やりつつ、畳平に到着。50分ほどの道のりでしたが時間を感じさせない道中でした。

畳平に到着。霧は晴れた!

下の観光センターで乗車前に、畳平の天候は雨が止んで濃霧、気温は10度、と言っていたんですが、気温はそれくらいでしたが、霧は晴れています。これなら山頂までいけそうで、さっそくお花畑経由の登山道に取り付きます。
チングルマが可憐に咲くお花畑を経て、コロナ観測所と東大の宇宙線研究所への車道を歩いて肩の小屋へ。途中、水源となる不消ヶ池のあたりでは、ハイマツの中で雷鳥の親子がお出迎えと高山らしい光景です。
大雪渓の上部を横切ると肩の小屋。ここからいよいよ山道です。

左下に大雪渓。正面奥に山頂・剣ヶ峰が見える

まあ畳平自体が2702mで山頂が3026mと標高差は324mしかなく、地元の六甲山の前衛に登るほうが高低差があると言うのが現実でして、気楽に高山が楽しめるお気楽な場所となっています。とはいえ3000mの高山ですから気は抜けません。ましてや子供を連れてますから岩とガレ場が続く上り坂を慎重に登り、ようやく最高峰、剣ヶ峰へ続く尾根道である馬の背に辿り着きました。

馬の背から山頂方向馬の背から見た大雪渓とエコーライン

ここからは勾配も緩い尾根道なんですが、風が通り体感気温は急降下。上着を着ていよいよ山頂にアタックです。最後の区間は上り下りを分けています。ガレ場を登ると山頂にある乗鞍本宮の裏手に出て、ついに山頂に到着。標準で90分ですが、子連れと言うこともあって畳平から約2時間かかりました。
三角点と山頂の標柱、それと本宮の簡素な建屋がある狭い空間が3026mの乗鞍岳の主峰、剣ヶ峰山頂です。
順番を待って標柱をバックに記念撮影をして、本宮の脇で昼食を摂りました。

山頂の三角点



●シャトルバスで行く乗鞍岳(その3・簡単な山だと舐めた報い)
ここまでたまに霧が流れる程度でしたが視界が効いていい感じでした。
さて、下山にかかり、馬の背を下っていると霧が流れてきました。またか、と思う間もなく、今度は細かい霧雨が身体を襲います。おいおい、と思っていると雨粒が大きくなり、本降り、というかみぞれに変わって激しく降り出しました。
子供に雨具を着せましたが、実は大人が舐め切っており、雨具が無いのです。特に私は帽子もなく、ズボンは綿と最悪。タオルを何枚か頭と首にかけて頭部だけは冷やさないようにしましたが、大変です。
そういえば登ってる途中、畳平の放送が聞こえて来たりしてましたが、雨のもとになる上昇気流が発生していたと言うことに気がつきました。

これまでは霧が来ても流れ去ってましたが、それ以降はガスったまま。雨も断続的に激しく降っており、これで雷が来たらマジでヤバイ状況ですが、幸い雷は来ませんでした。
それでも雨の中を登る人も多いわけで、中には軽装の女子高生の集団が登ってましたが、肩の小屋まで戻ったところで見ると、さすがに雨具も無い状態での登山は無謀であり、続々下山していましたが、山では引き返す勇気こそが大切です。
そういう私も最低の行為だったことは事実で、山を舐めた報いと言えましょう。

霧と雨の肩の小屋

畳平に戻ると13時半。あたりはガスって何も見えません。土産物の購入もせずにシャトルバスの列につきましたが、天候のせいもあってか建物の外に並ぶはずの行列が建物の中にも伸びて二又になっています。係員に聞くと外が正しいようで、程なく建物の中に並んだ人が外に並びなおすように誘導されてました。
14時10分のバスが入って来たのは30分前のこと。満員必至なので、定員になり次第発車と言う案内です。畳平には何台かバスが待機しており、2台ないし3台での運行になるようです。
乗鞍高原、朴の木平行きのほか、濃飛バスの平湯温泉行きも乗り場についており、どれもかなり乗ってました。

シャトルバスを待つ人々シャトルバス入線


1台目に乗れたのですが、補助席まで埋まって出発。シャトルバスといいながら、クルマからの乗り換え客だけとは限らないわけで、新島々までの通し切符を車掌に求める客もちらほら。ただ、補助席も埋まった状態で運賃と切符をどうやって引き換えるかが見ものでしたが、なんとその女性車掌、「すみません、前のお客様、お金を手渡しして回してください」と言ってのけました。そこからはお金と切符のリレーです。みんな観光客ゆえ和やかにお金と切符のリレーをしてました。

車掌さん奮闘中...

大雪渓(肩の小屋口)ではスキー帰りの8人が待ってましたが、2席しか補助席が空いておらず、運転士が無線で2台目以降に肩の小屋口で8人待っていると連絡して座席を確保していました。
ただ大雪渓だとまだ畳平の後続が発車して無いこともあるので調整が効きますが、下った三本滝で6人ほどが待っていたのはもうお手上げです。実はシャトルバスの往復券、上りは1券片ですが、下りは畳平−三本滝、三本滝−観光センターの2券片になっており、途中下車が可能です。(上りもOK)
にもかかわらず迂闊に途中で降りたら後続に乗れる保証が無いと言うのもあんまりですね。

やがて木々が戻ってくる


バスは15時前に観光センターに戻ってきました。
スーパー林道を挟んで東側の日帰り温泉「湯けむり館」に入り、濡れ細り、冷えきった身体を温めてリフレッシュ。マイカー規制やR158迂回関係の様子を眺めて出発です。
実は首都圏への帰省途上と言うことでもあり、松本に出て、R254三才山トンネルなどを経て、佐久から上信越道、関越道で帰りました。
県道を下り、R158に合流する前川渡はR158が通れないため停まらずに通過。そして梓川ダムなどのダム湖を見やりつつ松本に抜け、関東に向かったのです。

迂回路になっていた乗鞍高原への道






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