を機に駅前に移転された。個性的な建築スタイルは駅

前のアイドルであったようだ。しかし、第二次世界大

戦の空襲で焼け落ちて今はない。その大野銀行前のカ

ーブを曲がると駅前停留場であった。市電敷設前の乗

り物の主役は、人力車と乗合自動車であったが、次第

にその足を市電にとられていったようだ。

　豊橋市電は、当時の路面電車としては、スマートで

デラックスな姿として、市民の熱い視線を集めた。各

地の市電は、吹きさらしのオープンデッキの運転台や、

ニ段屋根の時代であったが、その中にあって豊橋の市

電は、丸尾根.ドア付き、さらに明かり窓、柱には鏡

もついた豪華版で市民を魅了した。近隣の村々からは

弁当持ちで見学に来るほどであった。開通一週間後に

は、札木十字路から赤門前まで1.1kmの営業を開始し

ている。ところがそこから先の東田までの1.2kmは道

路幅が狭く認可がおりず、苦心の末側溝にふたをして

幅員をかせぎ認可にこぎつけたという話である。