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佐々木味津三 (ささき・みつぞう) 1896〜1934。 |
『右門捕物帖20・千柿の鍔』 (青空文庫) |
短編。「な、なんとかいってくれッ。辰ッ…辰公…! もう息はねえのかッ…」。あの善光寺辰が何者かに斬殺された! 松平伊豆守の隠密・古橋専介を逆恨みする犯人が、刃傷の相討ちに見せかけて殺したのだ。「お、おめえのかたきは、兄貴が、この伝、伝六がきっと討ってやるぞ!」。高価な刀の鍔(つば)から犯人を突き止める名人・右門、無敵無双の草香流、炸裂! さすがの伝六も今宵ばかりは、しんみり、涙、涙…。シリーズ第20話。 善光寺辰が殺されちゃう展開には驚きだが、いまいちキャラ立ちできなかっただけに、やむを得ないところ(?)。 |
『右門捕物帖21・妻恋坂の怪』 (青空文庫) |
短編。本郷の妻恋坂の二階家で、子供ばかり三人が殺された怪事件。同僚・おばたの敬四郎に容疑者を次々と横取りされても平然としている右門に、不満タラタラのおしゃべり屋伝六…。「いやんなっちまうな。何をにやにや笑っていらっしゃるんですかい。人もあろうに、あばたの大将なんかに出しぬかれてうれしいんですか!」。いかさま師が使うサイコロの細工が興味深い。「明けましておめでとうござる。ことしもこんなぐあいに、あいかわらず」。 |
『右門捕物帖22・因縁の女夫雛』 (青空文庫) |
短編。許嫁の印として古島家から預かっていた大切な男雛が偽物とすり替えられた。しかも古島家への嫁入りが間近に迫った渡辺家の娘・春奈が行方不明に。「古島雛」のまがい物を作って金儲けする人形師を突き止めたむっつり右門だが…。「ただの雛どろぼうだろうとにらんだやつが、またここでどんでん返しよ、だから、やっぱり、どうもべっぴんは目の毒さ」──。ハッピーエンドで、おみごと! おみごと! 「ね、伝六あにい」、「フェ……?」。 |
『右門捕物帖23・幽霊水』 (青空文庫) |
短編。人気の上方役者・嵐三左衛門が泊まる宿屋に毎晩出没する“幽霊水”。いくら宿を代えても、必ず朝になると部屋が水浸しになっているのだ。三左衛門に人気を奪われた役者・江戸屋江戸五郎の妾・二三春(ふみはる)が幽霊水の下手人であると睨む右門だが、二三春は何者かに殺されてしまう…。「控えろッ、むしのいいにもほどがあらあ。江戸の女は、お囲い者でも操がいのちのうれしい心意気を持っているんだッ」──。死んだ善光寺辰のために精霊だなを作る伝六にほろり。さすがは戸っ子の中の江戸っ子だね。シリーズ屈指の秀作。第23話。 |
『右門捕物帖24・のろいのわら人形』 (青空文庫) |
短編。丑(うし)の刻(とき)参りで有名なお堂を舞台に、禄持ちの藩士が喉笛をえぐられて殺害されるという奇怪きわまる連続殺人事件。死体の引き取り手がまったくない不思議と、呪いのわら人形に書かれた「急」の字の謎…。意外なる下手人は一体? 「伝六あにいのおしゃべりと、あば敬だんなのあの根性は、刀鍛冶にでもかけてたたき直さなきゃ直らなねえとみえるよ」。右門のライバル(?)あばたの敬四郎、またまた登場! 第24話。 |
『右門捕物帖25・卒塔婆を祭った米びつ』 (青空文庫) |
短編。「母(かあ)よ。みんなひもじくてならねえんだ。はやくかえってきてくんな」。日本橋で起きた捨て子騒動は、行方知れずの母親を探すため小娘がわざと仕出かしたものだった。金策に出掛けたまま帰って来ない若後家の居所は一体? 「バカ野郎ッ。やい、いなかのひひじじいのバカ野郎っ」。家捜しで右門が見つけた豆本の題名に思わず笑っちゃいました。へそくりの有効な使い道を教えてくれる、笑いあり、涙ありのシリーズ第25話。 |
『右門捕物帖26・七七の橙』 (青空文庫) |
短編。七草、七ツ刻、七駕籠、七場所、七橙──。正月そうそう発生した七ずくめの捨て駕籠騒動。ある人物に頼まれてヘンテコなまじないを実行したという町奴の親分・伝兵衛が口封じのため殺されてしまう…。まじないの頼み手は一体? そしてその目的は? 「堅いばかりが能じゃねえとかなんとか大きにご説法なすったようだが、そういうだんなはどうです! いいかげんにだんなもほっかりと蒸しかげんのいい人間にならねえと、七橙かなにかで祈られますぜ」──。右門と伝六の掛け合いの面白さといい、事件の鮮やかな収束といい、毎回、感心しきり。 |
『右門捕物帖27・献上博多人形』 (青空文庫) |
短編。松平伊豆守に直訴し、自害した束巻き師・源五兵衛。お番所の訴状箱を調べた右門は、源五兵衛の息子・弥七郎が行方不明になっていることを知る…。七年前から人形師・泥斎の弟子となった弥七郎が作り上げた青焼き人形の謎…。「魂まで打ち込んで芸道に精進した者の、命までかけた心の秘密ア、心のなぞは、さすがのおいらにもわからねえわい──。未熟だな…未熟だ、未熟だ。くやしいよ。伝六、くやしいな…情けねえな…身の修業の足りねえのが、いまさら恨めしいわい…」。“親心”の履き違いを象徴的に描いたシリーズ第27話 |
『右門捕物帖28・お蘭しごきの秘密』 (青空文庫) |
短編。加賀家の奥仕えのお腰元のお蘭が考案し、江戸で大評判の腰帯「お蘭しごき」。その「お蘭しごき」ばかりを狙った連続窃盗事件を捜査するむっつり右門は、色恋沙汰に絡んだ「お蘭しごき」の“秘密”を突き止める…。「なに! お蘭がおらんというのかい。しゃれからとんだなぞが出りゃがったな」──。おしゃべり伝六が書き留めた「ふところ日記」がいと楽し。もっと読みたいくらい面白い、笑える。「事のしだいによっちゃ後世まで残るかもしれねえおらがのこの日記を、へそ日記とは何がなんですかよ!」。絶好調シリーズ第28話。 |
『右門捕物帖29・開運女人地蔵』 (青空文庫) |
短編。深川興照寺の石仏(女人地蔵)六基が何者かに盗まれ、無残な姿で永代橋上に捨て置かれるという奇妙な事件が出来した。悪い噂のある住職・蓮信や、女人地蔵の寄進者たちを調べるむっつり右門だが、結果は全て空振りに終わってしまう。そんな中、不審な死に方をした浪人者四人の死骸が見つかり…。「あい、おじさん。今度またお目にかかりましたら、お地蔵さまともお相談をして、おはぎをどっさりおもてなしいたします。さようなら…」。天真爛漫な小坊主・珍念が何とも可愛らしく、うれしくて思わず涙が出ちゃう。第29話。 |
『右門捕物帖30・闇男』 (青空文庫) |
短編。孫太郎虫の売り子・おなつが絞殺された。証拠品の片そでから売り子仲間のおくにが下手人だと目星が付くが、口封じでおくにも殺されてしまう…。奇妙な病にかかり、人前に姿を現さない旗本・友次郎が住む「闇男屋敷」の秘密とは? 「えへへ。さあ、おもしれえや。どっちを取るか、腕の分かれめ、てがらのわかれめ、いいや、道のとり方によっちゃ、知恵の浅い深いがおのずとわかることになるんだからね。どうですえ? 敬だんな。右門のだんなは気が長くとも、あっしゃ気がみじけえんだ。早いところどっちかにお決めなさいよ」。あばたの敬四郎に情けをかける右門の器量の大きさに感服。判じ絵を見事に解いてみせた伝六の食い意地が楽しい。第30話。 |
『右門捕物帖31・毒を抱く女』 (青空文庫) |
短編。江戸城・内濠で発見された水死体は、ご宝蔵の番士・中山数馬と判明した。おしゃべり好きなお城坊主・可賀(べくが)を利用して、大奥に探りを入れるむっつり右門の名推理。将軍家のご宝物の槍「八束穂(やつかほ)」に絡んだ殺人事件の“悲しい子細”とは? 「死ねば罪のおわびもかない、父への孝道もたちますはず。たって父の居どころ、お槍のありかを知りたくば、ともども、あの世へおいでなさりませ…」──。シリーズ第31話。 |
『右門捕物帖32・朱彫りの花嫁』 (青空文庫) |
短編。「いつこんなにだいじな膚をけがされましたのやら、気味がわるいのでござります…」。昨日、式を挙げたばかりの新妻・お冬の二の腕に、本人も知らないうちに、いつの間にか彫られてしまった奇怪な朱色のいれずみ。一体誰が何のためにやらかしたものなのか? いれずみに彫られた「喜七」とは一体何者なのか? 朱彫りの彫り師や、お冬の生家である薬種問屋を調べる右門だが、捜査は行き詰まってしまう…。いれずみの陰にひそんだ“意外な秘密”を描くシリーズ第32話。犯人の犯行動機に同情を覚える人も多いのでは。間違いなく秀作。 |
『右門捕物帖33・死人ぶろ』 (青空文庫) |
短編。米屋「増屋」の後妻・おマキが風呂桶の中で絞め殺された。死体の爪跡から下手人は大人ではなく子供だと見抜いた右門は、おマキの前身を調べ、事件の背景にある暗い影を突き止める…。増屋の主人・弥五右衛門は、七百両という女房の大金を持ち出して、一晩中どこをうろついていたのか? 「おじさんが来たからにゃ心配するなよ。慈悲をかけてあげましょうからのう」──。面白さ抜群のシリーズ第33話。いつもながら「あば敬」には困ったもんです(笑)。「あいかわらず荒療治がおすきだな。目違いもいいかげんにしないと、のろい殺されますよ」。 |
『右門捕物帖34・首つり五人男』 (青空文庫) |
短編。自殺に見せかけた五人の首つり死体。辻番小屋に運ばれた死体が何者かに盗まれた挙句、また同じ木の枝に吊るされるという奇怪な事件…。「お高祖(こそ)頭巾の女」の意外な正体と、信者が女だらけの「お富士教」の実体は? 「何を無礼なことおっしゃるんです! かりそめにも寺社奉行さまからお許しのお富士教、わたしはその教主でござります。神域に押し入って、あらぬ狼藉いたされますると、ご神罰が下りまするぞ!」、「笑わしゃがらあ。とんでもねえお富士山を拝みやがって、ご神罰がきいてあきれらあ」。第34話。 |
『右門捕物帖35・左刺しの匕首』 (青空文庫) |
短編。伝馬町の牢屋で起った、囚人が囚人を刺し殺すという前代未聞の殺人事件。死体の傷から下手人は左ききだと推理したむっつり右門は、被害者(豊太)も下手人(梅五郎)も同じ両替屋の手代であったことを突き止める…。凶器の匕首(あいくち)を入牢の梅五郎に渡した人物は一体? そしてその方法は? 「わからねえのかい。ああいうやつには、動かぬ証拠をつきつけて責めたてるよりほかには手がねえんだ。その手をまちがえたというんだよ。とんだ忘れものさ。むっつり流十八番桂馬(けいま)飛びという珍手を忘れていたはずだが、おまえさん心当たりはないかえ」──。両替屋ののれん分けに隠された陰謀を描くシリーズ第35話。高値安定! |
『右門捕物帖36・子持ちすずり』 (青空文庫) |
短編。幕府に献上される雪を使って、加賀家の奥祐筆・松坂甚吾を変死させた怪事件を調べるむっつり右門だが、甚吾の同役が口封じのため殺され、甚吾の妻・おこよが自殺をほのめかした書き置きを残して行方不明に…。「よからぬことをおやりじゃな」、「なにッ。どこの青僧だ!」、「知らねえのかい。おいらがむっつりのなんとかいう名物男さ、覚えておきな」──。弓道の名人vsむっつりの名人! 祐筆が絡んだ事件だけに“手跡”が重要な鍵となっており、甚吾の女中・しげ代に名前を書かせる意表性も素晴らしい。捕物帖シリーズ第36話。 →久生十蘭「顎十郎捕物帳08・氷献上」 |
『右門捕物帖37・血の降るへや』 (青空文庫) |
短編。「ご内密におしらべ願おうと、お越し願ったのでございます。このへやのこの床の間へ軸ものをかけると、知らぬまにこのとおり血が降るのでございます」。町医・岡三庵の屋敷で起る怪事に挑む右門。一体誰が、何の目的で仕出かしたものなのか? 血の出どころは? 「どう考えたって、あの床の間へ降った血は、外から忍びこんできたいたずらのしわざじゃねえ。たしかに、あの家の者がやったにちげえねえんだ」。三庵の娘・千萩の長虫遊びと、親ゆえの子を思う親心…。シリーズ第37話。今回も素敵に面白い。伝六、でんでん、名人、むっつり。 |
『右門捕物帖38・やまがら美人影絵』 (青空文庫) |
短編。浅草の鳶頭(とびがしら)・音蔵を殺した嫌疑で捕まった山雀(やまがら)使いのお駒だが、証拠不十分のため無罪放免に。「おいたはおよしなさいませ…」。お駒の鮮やかすぎる身のこなしに不審を抱いたむっつり右門は、再捜査に乗り出すが…。音蔵の家に居着く御家人くずれの男と、お駒の家にいる町人風の男は、果たして同一人物なのか? 冷然とした態度に秘められたお駒の秘密…。「やまがら使いじつは武家の娘、ゆえあって世間を忍ぶかりの姿のお駒とにらんだが、違うかえ」──。情け深い右門の心根に感涙。シリーズ最終話。もっと読みたい、名残惜しい…。右門と伝六に感謝。著者に感謝。素晴らしい作品をありがとうございました。 |
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むっつり右門……………本名・近藤右門。八丁堀の同心。黙り屋という設定だけど結構よく喋る印象(笑)。 |
おしゃべり伝六…………右門の手下の岡っ引き。とにかくよく喋ります。右門との掛け合いが絶妙。 |
あばたの敬四郎…………準レギュラー。右門と同じ八丁堀の同心。右門に敵対心を抱くも連戦連敗…。 |
松平伊豆守信綱…………時の老中。知恵伊豆。右門のよき理解者。 |
善光寺辰(たつ)………松平伊豆守の推挙で右門の手下に。残念ながらキャラ立ちできず…。 |
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