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佐々木味津三 (ささき・みつぞう) 1896〜1934。
 




十万石の怪談  (青空文庫)
短編。官軍に抗して会津城に籠城している会津藩主・松平容保(かたもり)への援兵を一刻も早く行いたい陸奥二本松藩主・丹羽(にわ)長国だが、援兵の是非を巡る重臣たちの藩議がなかなかまとまらず、イライラする。お気に入りの近侍たちを集めて、怪談を聞くことを思いつくが…。「未練者めがっ。たかが女じゃ。婦女子の愛にうしろ髪曳(ひ)かれて、武士(もののふ)の本懐忘れるとは何のことか! 情けのうて愛想がつきるわ」──。会津戦争の影で起きた悲劇を、怪談の祟りを絡ませて描いた幕末もの時代小説。

旗本退屈男  (青空文庫)
短編。退屈! 退屈! 眉間に三日月形の刀傷を持つ千二百石の直参旗本・早乙女主水之介(さおとめ・もんどのすけ)は、天下泰平の元禄の世に退屈しきっていた。愛妹・菊路の恋人である若侍・霧島京弥(きょうや)が何者かに誘拐されてしまったと知った旗本退屈男は、格好の退屈払いができるとばかりに、吉原の花魁(おいらん)の部屋へ乗り込むが…。「毎夜々々、うるさい事を申す奴よな。わしが女子(おなご)や酒にたやすく溺るる事が出来たら、このように退屈なぞいたさぬわ」──。小気味いい男の小気味いい物語。シリーズ第1話。軽妙洒脱な文章がすこぶる楽しい。

旗本退屈男2・続旗本退屈男  (青空文庫)
短編。町役人に追われ、塀外から屋敷うちへ飛び込んで来た風体怪しき血まみれの男を匿(かくま)ってやった主水之介だが、実はその男は、婦女子を浚(さら)う大罪人・百化け十吉だった! 「これはどうも、いやはや、ずんと面白いわい。段々と退屈でのうなりおったな」。十吉をおびきよせるため、妹・菊路の恋人・京弥に女装させる退屈男だが…。「もう十日程、そちを女にして眺めたいが、さぞかし菊めが待ち焦れておろうゆえ、かえしてやるか喃(のう)——」。菊路と京弥の仲を冷かす主水之介が楽しい。シリーズ第2話。

旗本退屈男3・後の旗本退屈男  (青空文庫)
短編。競馬の御前試合のさ中、騎手の古高新兵衛が疑問の怪死を遂げた。何者かが馬の鞍壺に毒蛇を潜ませていたのだ。事件後すぐに行方をくらませた古高の中間(ちゅうげん)・六松の居所を突き止めた主水之介は、事件の意外な真相を知り…。武士の風上にもおけぬ不埒者どもを成敗! 「少し寂しゅうなったわ。退屈じゃ、退屈じゃと思うていたが、今となって思い返してみると、やはり人が斬りたかったからじゃわ。——しかし、もう斬った。久方ぶりにずい分斬った。そのためか、わしはなんとのう心寂しい!」。シリーズ第3話。

旗本退屈男4・京へ上った退屈男  (青空文庫)
短編。江戸を旅立ち、京都の色街・島原へ現れた早乙女主水之介。金に物を言わせて大きな顔をしている数珠屋の大尽にへいこらと取り巻いている所司代付きの役侍四人。不埒な彼らの振る舞いに憤激した退屈男は、彼らが遊興している揚げ屋に乗り込むが…。「ほほう。これはまた、ちと急に雲行が変ったようじゃな。面白い! 面白い! 京というところは、ずんと面白いぞ」──。観音像の御利益と職権悪用の企み…。意表の展開が楽しいシリーズ第4話。

旗本退屈男5・三河に現れた退屈男  (青空文庫)
短編。東海道を通る諸大名は、長沢松平家に対して付け届けをすることになっているにもかかわらず、薩摩・島津家はいつもその音物(いんもつ)を出し惜しみしていると知った早乙女主水之介。島津の家臣の不埒な振舞いに憤慨した退屈男は、ぐずり松平の異名のある領主・源七郎と相談して、島津修理を懲らしめることに。「いや、面白いぞ、面白いぞ。島津が対手ならば、久方ぶりに肝ならしも出来ると申すものじゃ」──。シリーズ第5話。

旗本退屈男6・身延に現れた退屈男  (青空文庫)
短編。身延参りの人々の祠堂金(しどうきん)ばかり狙う女スリの存在を知った早乙女主水之介。怪しい若い女の後を追って境内に潜入した退屈男だが…。「わははは、申したな、申したな、恋ゆえと申したな。いやずんと楽しい話になって参ったわい」──。乙女の悲しい難儀と、荒法師の悪業…。眉間の三日月傷が物を言うシリーズ第6話。

旗本退屈男7・仙台に現れた退屈男  (青空文庫)
短編。奥州・仙台の青葉城下にやって来た直参旗本・早乙女主水之介だが、なぜかどの宿屋にも宿泊を拒否されてしまう。仙台藩では近頃、他国の武家に対しての取締まりを厳しくしているのだという。弓道場で見事な腕前を披露した退屈男だが、江戸隠密と間違われ、仙台藩士たちに包囲されてしまう…。「身の程知らずがッ、この眉間傷、目に這入らぬかッ」。仙台藩の秘密と、悲しい恋の宿命…。勧善懲悪シリーズ第7話。ヘゲタレ(笑)。

旗本退屈男8・日光に現れた退屈男  (青空文庫)
短編。領内の女たちを人身御供にしている助平な旗本・十郎次に怒り心頭に発した領民たちだが、一揆の企てがバレて十郎次に召し捕られてしまう。不埒な十郎次を懲らしめるため、江戸から呼び寄せた妹・菊路を十郎次の屋敷に乗り込ませる退屈男。「愛のしるしに、いえ、あの誓いの御しるしに、わたくしのわがままおきき届け願いとうございます。そしたらあの…」、「身をまかすと申すか!」、「あい…」。花も恥らう菊路の手管がお見事! シリーズ第8話。

旗本退屈男9・江戸に帰った退屈男  (青空文庫)
短編。槍術の町道場へ普請に行った大工や人夫たちが、いつまで経っても帰ってこないという不思議。何やら曰(いわ)くのある道場の秘密(カラクリ)を暴き出すため、妹・菊路の恋人・京弥に道場破りをさせる早乙女主水之介だが…。「悪を懲らすに悪を以てするとは下々の下じゃ。主水之介ならばそのような女々しいこと致しませぬわ!」。道場主・釜淵番五郎と黒幕・竜造寺長門守の大それた悪だくみとは? 退屈男・シリーズ第9話。

旗本退屈男10・幽霊を買った退屈男  (青空文庫)
短編。「ようしッ。主水之介、傷にかけてもこの謎解いて見しょうぞ」。吉原の遊女・誰袖(たがそで)と商人の息子・源七の奇怪極まる心中事件──。幽霊から退屈男あてに届いた菓子折と、別人の水死体の謎! 「曲輪(くるわ)育ちの女子(おなご)はな、千石万石がほしゅうはない。気ッ腑がほしゅうござるとよ。わはは」──。シリーズ第10話。

旗本退屈男11・千代田城へ乗り込んだ退屈男  (青空文庫)
中編。絵師・篠原梅甫の妻・小芳に横恋慕した小納戸頭取・腰元治右衛門の悪だくみ!──。治右衛門の娘で将軍・綱吉の愛妾であるお紋との不義密通の罪に問われた主水之介は、江戸城へ登城し、怒りをあらわにする綱吉の直々の裁きを受けるが…。「たわけめッ! 将軍家が寵愛の女の膝にたわむるが何ゆえ天下の為じゃ!」。闇討ちを仕掛けてきた刺客たちを相手に、なぜか素手で立ち向かう退屈男、その理由は? 「これでまいる! 素手は素手ながら三河ながらの直参旗本、早乙女主水之介が両の拳(こぶし)、真槍(しんそう)白刄(しらは)よりちと手強いぞ。心してまいられい」。菊路と京弥の“おいちゃいちゃ”が何とも微笑ましい(笑)。第11話。

名君修業  (電子文藝館)
短編。「盲目の美童が剣の達人を相手に親の讐(かたき)を見事に討った」という隣藩(土浦藩)の美談を聞いた常陸笠間八万石の大名・本荘宗資(むねすけ)。そんな中、タイミング良く、家中で刃傷(にんじょう)事件が起きる。すっかり仇討病と名君熱に浮かされた宗資は、無理矢理にでも仇討を行わせるのだが…。「名君修業と言うものは凡(およ)そせつないものじゃ喃(のう)」──。元禄の世を背景に、“筋違いの仇討”を悲喜劇的に描いた時代小説。これぞ本物の大バカ殿だ。

山県有朋の靴  (青空文庫)
短編。明治政府の陸軍中将・山県有朋(やまがた・ありとも)の下男(げなん)に成り下がった元幕臣・金城寺平七。急激に自分たちの世界を打(ぶ)ち壊されて了(しま)い、よその国のよその軒先に雨宿りしているような生活を送る平七は、本所・石原町の小料理屋の女中・お雪を無意識のうちに慕い求めるのだが…。「いいえ! いいえ! 放しませぬ! 人でなし! 人でなし! 嘘つきのご前さまの人でなし! わたしをだまして、こんな悲しい目に会わして、だれがなんと仰有(おっしゃ)ろうとも、この靴は放しませぬ!」──。自分を持ちこたえる気力、自ら生きる力をなくした男の死に様を描いて印象に残る。

流行暗殺節  (青空文庫)
短編。「しょうもない。大村を斬ったら九人目じゃ。アハ…。世の中には全く変な商売があるぞ」。明治新政府の兵部大輔(ひょうぶたゆう)・大村益次郎を襲撃するも、暗殺しそこない、手傷を負った刺客・神代直人(くましろ・なおと)。見知らぬ女の家へ咄嗟に飛び込み、捜索隊から逃れた直人は、そのさ中に、女の枕の匂いを嗅ぐ…。「只のいっぺんでいい! 頼まれずに、憎いと思って、おれが怒って、心底(しんてい)このおれが憎いと思って、いっぺん人を斬ってみたい!」──。人斬りを稼業としてきた男の悲哀を描いて秀逸。

老中の眼鏡  (青空文庫)
短編。屋台店の寂れた様子を目の当たりにした老中・安藤信正(対馬守)。外国との交易が必要だと確信した対馬守は、攘夷派の志士達に命を狙われるのを覚悟の上、登城するが…。「たわけ者めがっ。言外の情(なさけ)分らぬか。死んでならぬ者と、死なねばならぬ者がある——」。対馬守の眼鏡は「時代の底の流れと、海の外を視る御用」にのみ役立つのではなく、もう一つ効用があった! 侍女・お登世との恋(不義)を対馬守に叱られ、追放された近侍・道弥の姿も絡めて描く。「坂下門外の変」を題材にした時代小説。



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