国道9号線村岡トンネルの北側坑口手前である。
ご覧のとおりいかにも旧道と言った本線から分岐していく道がある。
正直、通りすがりの道に偶々あっただけで、別にこの旧道を探索しようなんて全くも思っていなかった。
一応旧道っぽい道があんなー、と思いとりあえずココで立ち止まってみた、と言うのがこの時点の心境である
地図でこの道の状況を確認してみる。
とりあえず、地図上には通り抜けられそうな雰囲気で記載されている。
しかし、隧道とか「おいしそうな物件」等は見当たらない。
おそらく普段だったらスルーしていた所であろう。
ただ、この時予定より少し時間があった事と、2時間ほど前に「
大変美味なブツ
」を見つけて、やや浮かれ気味であった。
「もしかしたら、ここでも意外な発見があるかも」と非常にイヤラシイ気持ちで、この旧道へと入り込んでいく事となった。
旧道へ入って少しばかり行くと巨大な堰堤が見えてきた。
国道沿いを流れる矢田川支流の湯舟川を塞き止める入江ダムである。
関西電力が管理する水力発電の為のダムだ。
ここで取水された水は谷田川発電所の発電タービンを廻し、最大出力11000kwの電力へと変換される。
堰堤横を通り過ぎると案の定、道は頼りなくなる
道両脇が植物に侵食され、幅員が狭くなっている。
しかし、舗装路が続き以外にもまだ使われているかのようだ。
んー、何事も無く通り抜けられちゃうのかなー・・・
路肩には昭和中期の道路に良く見られる転落止めの縁石。
はたしてこの縁石程度で転落を防げたかどうか謎なのだが、あるだけ気持ち程度に安心感はあるかもしれない。
路肩横にはかなり近くまで水面が来ているのだが、ダムに塞き止められた川なので、この濁った水面下にはダムの高さから推定するに100m近い深さがあると思われる。
音も無く波も無い静かなダム湖の水面は何故か無性に不安感が掻き立てられる。
いつの間にかに引き込まれてしまいそうな恐怖。
不必要なまでに山側に依って走行してしまう。
ダム湖脇の旧道に点々と経つ電柱。
トンネル旧道などで良く見られるが、この旧道も電線管理道として今も使われているようだ。
4輪の轍もある事から、管理の為に時々軽トラが入り込んでいるみたいだ。
草に覆われているとは言え、それなりに締まっていた路面が徐々にぬかるんで来た。
時折、深めの泥濘も現れる。
時期が6月ではあるが、この前日は雲一つ無い晴れ間だった事を考えるとここは常に湿っていると考えられる。
個人的に崩落や倒木等の障害物より一番タチが悪い。
何故なら、派手な崩壊形の障害は一見して「こりゃダメだ」と分かるが、泥濘系の「トラップ」はなんとなく「行けそう」と思わせてしまう怖さがある。
しかし、ヤバイ!と思った時には既に遅し。
もがけばもがく程、文字通り「泥沼化」するのがこの手の障害の恐ろしさである。
頭に
房総半島の旧道
の恐怖が過ぎる。
しかし、引き換えせない。
一度旧道に入り込んでしまった以上、よほどの事がない限り通り抜けせずにリターンしてしまうのはオブ野朗の屈辱である
だがそれ以上に先の状況を考えずに突撃するのは、探索者としては失格なのだが・・・
此処に来て法面が小崩落。
バイクなら余裕で抜けられるスペースがあるが4輪はアウトである。
当然この先は4輪の轍は無い。
というか、どうやって転回したんだろう?
完全一車線分の幅員しかないんだが。
ダム横までバックで帰ったとしたら相当過酷の道程だぞ
路肩を見ると、さり気なく錆び付いたガードレールが存在。
遺構としてはかなり美味しい部類だが、最早そんな事はどうでも良くなる
奥但馬の渓谷旧道が牙をむく。
草生す湿地帯を分かつ一本の轍。
それがこのレポの「答え」だ
こんな所へ入るバカモノはめったにいない。
「事件」は此処で起きた。
浜旧道の悪夢再び。
バカは何度やっても懲りない。
いや、バカは一度目より更にヒドイバカを2度目に起こす。
まあ、要するに此処でスタックしちまった訳だ。
前後共に前進不能。
タイヤが埋まる埋まる。
しかもこの時、遠征用大荷物を抱えたままだったんで更に重量で沈んでいくだな。
そんな物入り込む前に降ろしておけよ!とも思うんだが序盤がヌルイ展開だったんで成り行きで荷物抱えたまま来ちまったのさ。
ここで大慌て荷物降ろしに入るわけだが、更に此処で状況ヒートアップさせる役者が登場。
ぶん♪ぶん♪ぶん♪
スズメバチが飛ぶ♪
!!!!!!!!
声に出ない恐怖。
手が震える。
ナップサック周辺を旋回する彼。
その昔、稚内のキャンプ場で火を炊いていた所へミツバチが飛んできて、
勝手に火に飛び込んだクセに逆ギレして場内中を追っかけ回されたと言うロクでも無い思い出がある。
ミツバチなら刺されてもまだ「痛ってェ!」ですむが・・・
とにかく刺激しないように、緩やかに荷物を降ろす。
後は速やかに此処を立ち去りたいのだが、エンジンを噴かした時に驚いて攻撃態勢へ入ったらどうしよう。
だが、一刻も早くこの状況から脱したい。
少しずつ緩やかにアクセルを・・・
ぶゥあおーーん!
ふげェーー!入れ加減しくったァーーー!
や、やめてえーー!
・・・だが、予想外にも「ハッチ」は呑気に旋回中。
よっ、よかった、音に無関心でいてくれて・・・。
しかし、無駄に穴掘りしてしまった事は変わりなく、また一つ状況を悪化させる。
が、荷物を降ろし軽くなった分グリップ感がマシになったのか、、少しずつ前進できるようになった。
不必要な力を加えず、ゆっくりと泥濘を抜けていく。
タイヤに感触が戻ってきて、ようやくまともに転がせようになった。
とは言え、路面が泥ヌタなのは変わらず、まともに跨って運転するのは不安が残る。
また、泥濘ゾーンの所に荷物が置きっぱなしだが、スズメバチもそっちにいる様でちょっと回収しに行く気になれない。
とりあえず、それは後回しにして前進する事にした。
通り抜け後に身軽な状態になって回収しに行けばいい。
と、この時は思っていた。