このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

column 10 〜2等のススメ〜

 船には等級というものがある。昔は国鉄でも1等から3等までに分けられており、「グリーン車」はかつての2等車の名残りらしいが、今では「〜等」という呼び名は残っていない。それはさておき。
 船の最低等級は2等である。短距離航路ではほとんどが2等しかないが、比較的長時間走る航路では1等や特等を設けている船もある。それらの上級船室がどのようなものであるか、残念ながら私は見たことがない。自らの金で船に乗るときは必ず2等か、せいぜい2等寝台までしか買ったことがないからである。
 短距離の2等は「椅子席」となっている。これは進行方向に向かってズラッと椅子が並んでいるもので、天井からテレビが何台か下がっているのが普通である。2等船室最後尾には売店や自販機コーナーがあり、大抵は徒歩乗船口から直接出入り出来る構造になっていることが多い。お世辞にも快適な環境とはいえないが、利用客の多い航路になると、やかましい位のざわめきが航路全体の活気のようにも思えてくる。
 比較的長距離の航路になると、一部が「座席」になっている。これはカーペット敷きの船室で、船の造りによっていくつかのゾーンに分かれている。航路によっては、枕や毛布が備え付けてあることもあるが、有料で貸し出している場合もある。いずれにしても、よほどの混雑でもない限りは、座席で横になることが出来る。これは「体を休める」というフェリー利用の大原則から考えると非常にありがたいことであり、私などは「2等船室の総座席化」を提唱したいと考えているくらいである。それはさておき。
 私は必ず2等を利用し、2等が満席でも2等寝台まで、と決めている。1等や特等は、利用したいとも思わないし、正直言ってもったいない。フェリーに乗る一つの楽しみを放棄するために高い金を払う気持ちにはなれないのだ。
 ちなみに等級が変わるとどのくらい値段が違うのか。1等は2等の1.5倍以上、特等は2等の2.25倍以上3倍以下に決められているとのこと(全国フェリー・旅客船ガイド参照)。等級が変わると出費はかなりのモノとなることがここからも判るだろう。こんなに出費をしてまで楽しみを捨てるという「常軌を逸した行動」を、私はとても取ることは出来ない。それはさておき。
 2等船室(特に座席)では、見知らぬ人どうしが同じ船室に乗り込むことになる。ほんの数十分の航路ならばそうでもないだろうが、長距離航路ともなると、隣近所の人たちと話が始まることも多い。この出会いが後々まで続くつき合いにつながったり、旅先の思わぬ情報が転がり込んできたりすることもある。また、長時間「かん詰め」にされた中で、話し相手と言うものは非常にありがたい存在だ。「何もしないことをする」ための旅とはいえ、やはり一昼夜ただ寝転がっているだけでは飽きてくる。たまには声の一つも出してみたくなる。そんなとき、アホな話でも聞いてくれる相手が一人でもいれば、ずいぶんと時間がつぶれるものだ。もっとも相手にとっては苦痛かもしれないが。それはさておき。
 一人旅の道連れの調達場所でもあり、情報交換場所でもある2等船室。ここから始まる出会いを大切にしたい。そしてまた、ここでの出会いを期待して船に乗り込みたい。だから私は2等を愛する。船を考えるとき、2等以外は考えられない。
 これほどまでに2等が大好きな私であり、多くの人に2等の良さを分かってもらいたいと願っているが、それでも2等を使って欲しくない人や場合がある。一つは子連れ・老人連れの家族。もう一つは自分たちのことだけを考えて一日中大騒ぎを繰り広げる者どもだ。
 子供に関しては、「乗るな」とは言わない。小さい頃からフェリーに親しむことは素晴らしいことだ。しかし、私のようにフェリーを「体を休める場所」として考えている者にとって、叫び声を上げながら船室を走り回る子供は「騒音公害」以外の何者でもない。1等船室の中で騒ぐ分には一向に構わないが。せめて、そのあたりのことが分かる年頃になるまでは、1等船室を取って船旅を楽しんで欲しい。2等の良さは、大きくなってからでも分かるはずだ。
 もう一つの者どもには、「乗るな」と言いたい。消灯後には静かにする。消灯前でも、眠っている人がいるときには騒がないようにする。この程度の最低限の「常識」が分からない人は、船に乗る資格はない。ふぇりい倶楽部にはそのような部員はいないと確信しているが。
 それ以外の人たちには、是非とも船を、2等を積極的に利用して欲しい。そこから始まる出会いは、きっとあなたの旅を飾る素敵な思いでとなることだろうし、場合によってはかけがえのない財産となることもあるのだから。

2等バンザイ!

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