このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

column 7 〜岸壁について〜

 陸上で生活している我々が海に浮かぶフェリーに乗り込むには、どこかで陸地を離れなければならない。陸地に別れを告げる場所、それが岸壁。船の大きさに応じた様々な種類の岸壁がある。
一般的な可動橋桟橋(泉佐野港)
 最も一般的なのが、可動橋方式の岸壁だろう。海に突き出した鋼鉄製の橋とその上にそびえ立つゲートが特徴的だ。このゲートを見ると、「これからフェリーに乗る!」という実感が起こってくる人も多いだろう。
 余談ではあるが、この可動橋とゲートは、赤く塗られていることが多い。別に規則で「赤く塗るものとする」と決められている訳ではないのだろうが、どうしてだろうか。考えてみると、港のクレーンも赤いものが多い。昔の鉄道の鉄橋も赤かったような気がする。赤いといっても、郵便局関係や消防関係の赤とは微妙に違った赤である。それはさておき。
 単純可動橋は、小型〜中型フェリーの就航している港に多い。大きなフェリーになると、車両甲板が重層になっているものもある。これらの場合、上層甲板に車を乗せるにはランプウェイなどの設備が必要になってくる。車両を多く運ぶには有効な方法ではあるのだが、単純可動橋に比べると設備も大がかりになるし、ある程度以上の大きさの船でなければ、旅客スペースの圧迫になってしまうこともあり、大型船を除けばその数はあまり多くはない。
 しかし、フェリーの「中腹」にポッカリと空いた入り口を目指してランプウェイを登っていくときの気分はまた格別だし、下船時に、これから上陸する街並みを高いところから眺める気分もまた格別だ。初めて訪れる街にはこの形式で上陸してみたいものだ。それはさておき。
固定岸壁全景(白石港)
 最も単純なものはといえば、やはり固定岸壁だろう。海へ向かって、なだらかなスロープがあり、船から渡し板をスロープにかけるだけ。ロープでの係留すらないこともある。初めてのときにはちょっと怖いかも。
 しかし、漁船フェリーに乗るにはこの形式か浮き桟橋(次掲)がほとんど。多くの人が利用しているフェリーに乗るならともかく、「美味しい航路」を開拓するためには固定岸壁にも慣れなければならない。慣れなければ気持ち悪いかもしれないが、一度経験して慣れてしまうと病みつきになってしまう。まるで「ふ○ずし」や「く○や」のような設備だ。ふぇりい倶楽部部員としては「必修科目」とも言える設備であろう。
 同様に、慣れないと少々怖いのが浮き桟橋。巨大なものならばそうでもないのだが、6畳程度の大きさのものになると、少しの波で大きく揺れる。青ヶ島(東京都)や十島・三島(鹿児島県)で船から「艀(はしけ)」に乗り移るときの様に、タイミングを合わせないと乗り込めない程激しくはないが、それでも慎重になってしまう。しかしこの設備も「渡船」や漁船フェリーに乗るには避けては通れないものであり、固定岸壁同様に「必修科目」に入れておきたいものである。熱帯の果物「ドリ○ン」や、日本のある地方の人にとっての「なっ○う」の様なものか。それはさておき。
 これら様々な岸壁に接岸する船の大きさも、種類も様々だ。大は2万トンクラスの巨大フェリーから、小は20トンに満たない「漁船フェリー」まで。しかし漁船フェリーであっても、海を渡る快感は巨大フェリーに負けはしない。たとえ5分でも、24時間でも、陸地を離れることに変わりはないのだから。そして新たな陸地に上陸するという感動は、航海の長さには関係なく等しいものである。
 いきなり外洋に出ろとは言わない。まず小さな渡し船に乗って、向こう岸に渡ることからはじめて欲しい。そしてそのときに一目でいい、岸壁を見つめて欲しい。旅のプロローグを飾る素敵な演出者を。

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