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鳥取2003年「最後の夏の国鉄色」その3 




鳥取は全国でも珍しい温泉の湧く県庁所在地。駅から近い
ところにも温泉がある。ずっと昔に妻と旅行した際、普通列車
で鳥取まできた。そして、鳥取から寝台特急「出雲」に乗って
東京まで帰ったことがある。そのときに、「ないだろうな」と
思って、駅の観光案内所で、温泉があるかどうかたずねたら
駅から徒歩で行けるところに温泉の銭湯があるという。今
あちらこちらにある日帰り温泉施設ではない。「銭湯」だ。
とても気持ちのよいお湯だった。そして、なんと今回宿泊の
シティホテルにも温泉大浴場がある。シティホテルにこのよう
な天然温泉の浴場とはさすが鳥取という感じがする。ホテル
に着いてからはこの温泉に行ったのか、と思っている読者の
方も多いかと思うが実はそうではなかった。温泉はもうしば
らくおあずけということで、一休みすると徒歩で出かけた。
もちろん、近くの居酒屋に行ったわけではない。鳥取駅まで
歩いて5分ほど。まずは腹ごしらえをし、切符を買いホームに
上がる。まだ時間は早かったが、ホームには19:27発の
253D普通列車がとまっていた。が、この列車はキハ58と
キハ28の編成で、最初はこれが「とっとりライナー」かと
思ってしまった。よく見るとヘッドマークはかかっていない。
そう。私はこのキハ28+キハ58の「とっとりライナー」に
今度は乗りに来たのである。なぜか。それは昔の房総の
準急や急行はこの気動車が使われていたからである。
私がまだ幼いころ、遠出をするといえばこの気動車に乗って
出かけていたわけだ。そのころの感触をもう一度味わいた
いと思った。もちろん、乗ってしまえばみな列車なのだが、
それでもやはりエンジンの音や乗車中の走行音というのは
微妙な違いがあり、それはやはりその車両でなければ味
わえないものなのだと思う。国鉄色の普通列車はまもなく
米子方面へ出発。立っている人もいるぐらいの乗車率だ。
そして、その後から私が乗ることにしていた、3435D
「とっとりライナー」が入線してくるホームには19:31発浜坂
行き186Dがとまっていたが、まもなく発車。
こちらはガラガラであった。その間にも「スーパーくにびき」が
益田より到着したりと、なかなか短時間に忙しい鳥取駅の
光景であった。さきほど、キハ58がとまっていたホームに
次に入線するのは20:24発、寝台特急「出雲」東京行きだ。








しばらくして「とっとりライナー」に乗車する客が集まってくる。
車掌さんらしき人もホームに上がってきて、乗務員室の位置
で待機している。ちょっと気になることがあったので、乗務員
の方に話し掛けてみた。「あの、つかぬことをお伺いいたし
ますが・・・今度のとっとりライナーは宝木で寝台特急出雲
と入れ替えでしょうか?」とても親切な方で「そうだと思い
ますが、一応確かめてみましょう。」と運行表を取り出し、
確認してくださった。「そうですね。間違いありません。」
とっとりライナーに乗るのも目的だったが、どうせなら「出雲」
とすれ違う駅まで行ってみようか、と思ったのだ。私は
そう見等をつけ、「宝木」までの乗車券を買っていた。
ほどなく列車が入線。なぜかどきどきしながら乗車する。
早速ボックスシートに腰掛ける。禁煙車なのに昔からその
ままの灰皿やその上の、よくジュースなどを置いた小さな
テーブル。完璧だ。「これだよなぁ、昔からの列車というの
は!」ある種の感動を覚える。シートそのものは当然新しい
ものにかえられているとは思うが、雰囲気はそのままだ。
私はキハ58の方の車両に乗車した。19:52分。定刻に
「とっとりライナー」は発車した。ディーゼルエンジンの音が
響きわたる。すっかり暗くなった鳥取の町並みの中をどんど
ん加速していく。加速が終わるとニュートラルに入り、突然
エンジンの音がしなくなる。エンジンの音が途絶えたあとは
軽やかなジョイントを通過するときの「カタンコトン」という音
が響く。列車は「湖山」「鳥取大学前」を通過。最初の停車
駅である「末恒」に停車。末恒を出発すると次は宝木だ。
まだまだ乗っていたい気持ちもあったが、このまま乗っていく
と下手をすると帰ってくることができなくなる。
宝木に近づくと、私は座席を立ち上がり、後ろへと進んだ。
客室を出て、車掌室の前で待っていると、停止信号が出て
いる間、先ほどの車掌さんがドアを開けて話し掛けてきて
くれた。「58、28ですか?」「はい、なくなってしまいます
から・・・」「多いですよ。最近写真撮りに来られる方。」
「使われなくなった車両はどうなるんですかね?」「多分、
廃車でしょうねぇ。機関車だと外国に売られることもあるの
ですがね。この車両はそれはないでしょうし。」「なんか
もったいないですね。まだまだ動くのに。」「そうですね・・・」
車掌さんも何かもの悲しげだったのは私の気のせいだろう
か。そうこうしているうちに列車はゆっくりと動き出し、
宝木に到着。「あちらから出雲号がやってきますよ。」
と降りる客の切符を回収しながら教えてくださった。
私も切符を渡し、お礼をいい、ホーム前方に移動する。
程なく、東京行き寝台特急「出雲」がやってきた。デジカメの
動画機能を使い、撮影する。いつかはページにアップしたい
なぁという気持ちだが・・・。さらに、とっとりライナーは普通列
車との交換で、この宝木駅のホームはすべて使われている
という状態。夜の無人駅でこのような大掛かりな交換が
行われるとはいささか驚きである。とっとりライナー、普通
列車それぞれの発車を動画におさめると、誰もいなくなり
虫の声が聞こえるのみとなったホームに1人残り、無人駅の
夜を撮影した。そういえば昨年も富山で同じようなことを
したなぁ。駅の規模はそれよりも大きいだけに、だれもいな
いということが寂しさを増長させた。しかし、まもなく通過列車
がやってくることがわかっている。「スーパーはくと9号」だ。
三脚をセットし、撮影に備える。夜の無人駅を通過する列車
を列車を流した感じでも撮影したかった。それとともに動画に
も残したい。欲張ったが、これも予定通りカメラにそれぞれ
おさめることができた。
帰りの列車を待つことしばらくの間。20:59発256D普通
列車がやってきた。鳥取着21:16。これで本当に今日の
予定はすべて終了した。長い一日が終わった。すべてが
予定したとおりことが運ぶという自分としては珍しいパターン。
ホテルに戻り、温泉に浸かり一日の疲れを癒す。ただ、
シャワーで汗を流すだけとは全然違う、温泉の効用を感じた。

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