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「空港比較シリーズ:その1」 上 海 浦 東 空 港 を 見 る



TAKA   2008年 01月 24日




 ☆ ま え が き

 今回08年の正月旅行で上海・香港の2都市を訪問した為、上海(浦東国際空港)・香港(香港国際空港)・東京(成田空港)の東アジアでもメジャーな3空港を利用しました。
 という訳なので、弊サイト「 TAKAの交通論の部屋 」で今回各空港の「空港&アクセス」について「空港比較シリーズ」として纏める事にしました。

 まず第一弾は上海浦東空港です。実を言うと上海浦東空港は私の今までの経験の中で過去6回利用した事が有り、羽田・成田と並んで今までの中で一番使った事が有る空港です。東京在住の私の場合「羽田or成田」が一番使った事が有る空港なのが普通ですが、国内線では飛行機を使うほど遠出をしないですし、国際線は友人との旅行の関係で東京発と名古屋発が同じ位での比率で有ったので、中国での目的地&トランジットポイントとしてよく使う上海の空港で有る上海浦東空港が使用空港の上位に入ってきます。
 過去6回利用という頻度からも「よく知った空港」の上海浦東空港ですが、此処はアジアの大空港としては1999年開業と比較的新しい空港です。しかも空港アクセスに「陸上を走る世界最速の交通機関」であるトランスラピットが有るなど、色々と見る所が有る空港&空港アクセスです。今回の「空港比較シリーズ」では上海トランスラピットを中心に、上海浦東空港とその空港アクセスについて見たいと思います。

「上海浦東空港概要」
空   港都心への距離滑  走  路乗り入れ都市数乗入航空会社利 用 客 数貨物取扱量備      考
上海浦東国際空港約50km4000m*1・3800m*1 (オープンパラレル)約150都市(中国約40都市)約50社2679万人約183万トン(世界8位)参考資料 (1) (2)


 ☆「空港&アクセス訪問記」 12月30日PM 上海浦東国際空港⇒上海市街地(上海地下鉄2号線静安寺駅)

 今回の旅行で最初の訪問地は上海です。上海での目的は「 中国国鉄の高速電車CRHシリーズへの試乗 」で、JL791便で12:05に上海浦東空港に到着後「ホテル(上海ヒルトン)にチェックイン&切符受取り→15:30過ぎに上海南駅へ行く」行動をしなければなりません。これは「上海を一人で歩くのは始めてで言葉が殆ど喋れない」私に困難の伴う話です。
 しかも成田出発時の混雑で、飛行機が30分ほど遅れてしまいました。その為上海浦東空港で各種手続きを終えて到着ロビーに出たのは12:50で、上海南駅まで約2時間半で到着しなければなりません。流石に慌てて行動を開始しました。
 到着ロビーに立った段階で既に成田で両替を済まして人民元を持っていたので、迷わずトランスラピットの駅を目指します。到着ロビーにはトランスラピットの駅を示す「MAGLEV」看板が出て居ますが、到着ロビーの1階から一度2階に上がらなければなりません。2階に上がった後200m程度の通路を通った先がトランスラピットの駅です。
 上海浦東空港は今のターミナルに加え2010年上海万博を睨んで東側に第二ターミナルが増築されます。それに備えて第一ターミナルビルと第二ターミナルビルの間にトランスラピットの駅と地下鉄2号線の駅建設予定地スペースを設けたのですが、空港内導線など最新の空港の割りには「少々使いづらい」感じですが、「共産中国の空港」ですから仕方ないかもしれません。

  
左:トランスラピット上海浦東空港駅改札口  右:トランスラピット上海浦東空港駅ホーム

  
左:トランスラピット車内  右:上海浦東国際空港アクセスの切り札? 最高速度430km/hで走るトランスラピッド

 通路の先にはトランスラピットの改札口が控えています。切符を買い改札口に入ると直ぐ荷物検査がありX線検査機に大きな荷物を通します。中国では国鉄に乗る時もX線検査を必要とします。チベットや 東トルキスタン で分離独立運動が有るので「テロへの警戒」は怠れないのでしょうが、空港アクセスの利便性と言う点では「成田空港駅での荷物チェック」並みの負担です。
 改札口を入ると・・・何と目の前でホームに降りるゲートが閉められてトランスラピットは出発してしまいました。次の列車は15分後です。急ぐ所ですが構内まで入ったので仕方有りません。コンコースで次の列車を待つ事にします。三々五々利用者が集まりますが、次の列車の乗車案内がされた10分後でもトランスラピットを待つ人は50人も居ません。大空港唯一の軌道系アクセスとしては、開業後時間も経過しているのに利用者は未だに増えていません。
 トランスラピットには、開業直後の 4年前に一度試乗 をしており、目新しいと言う物ではありません。4年ぶりに乗るといつも驚く最高速度430km/hだけあり、空港を出発してあっという間に上海側のターミナル龍陽路駅に到着します。

  
左:トランスラピット上海側のターミナル龍陽路駅  右:龍陽路駅で地下鉄2号線に乗り換えて浦東新都心・上海旧市街へアクセス

  
左:トランスラピットの運行概要  右:浦東新都心・上海旧市街へのアクセス手段 上海地下鉄2号線

 龍陽路駅は高架3面2線構造で乗降ホームが分かれており、上海側のターミナルとして立派な施設になっています。しかし龍陽路はターミナルの施設は其れなりの規模ですが問題は立地です。地下鉄二号線の駅が隣に有り、上下3フロアの移動がありますがエスカレーターで移動可能でそんなに支障なく移動出来ます。又地下鉄2号線は上海の中で浦東の中心陸家嘴や上海の中心繁華街南京路・上海全市の中心人民広場等を通る大阪の御堂筋線にも近い幹線ですが(参考資料: 上海の商圏分析〜地下鉄2号線上の商圏編〜 )、龍陽路駅は郊外に位置する立地で浦東副都心の外側で、しかも浦東の交通ターミナルで地下鉄3路線(2・4・6号線)が乗入れる世紀大道駅まで3駅有る中途半端な立地です。
 その為トランスラピット龍陽路駅から大部分の場合地下鉄2号線に乗り換えなければ目的地に到達出来ません(下手したらもう1〜2回乗り換えが必要)。私の目的地静安寺も丁度南京路の西の端で、地下鉄2号線に乗り20分程度移動しなければなりません。という訳で地下鉄2号線に乗り換えます。地下鉄2号線は上海地下鉄の幹線だけ有り龍陽路駅時点では空いていても、西に進めば進むほど混雑します。最終的に人民広場周辺ではかなりの混雑になり、龍陽路駅〜静安寺駅間約20分の大部分を、旅行用の荷物を持ち混雑に耐える羽目に陥りました。
 それでも無駄な浦東空港駅での「トランスラピッド1本待ち」時間を除けば、浦東空港→静安寺間で実質アクセスタイムが50分を切るのは優れています。お蔭でホテルでチェックインして切符を取って地下鉄3号線・4号線とチョット見ても、上海南駅で杭州行きの列車に間に合いました。これが上海の金融センターの浦東地区であれば40分未満で到着可能です。上海の都市の重心が東に移動している事を考えると、上海浦東空港から上海市街地までのアクセスはそんなに不便で無いといえます。

「上海浦東空港のアクセス概要」
都心への距離今回のアクセスタイム比較区間今回のアクセスタイム運賃運転間隔評価備考
約50kmトランスラピット乗車時⇒地下鉄2号線静安寺駅ホーム約49分トランスラピット50元+地下鉄3元トランスラピット15分毎手荷物機内持込・入国審査等の時間(約30分)は未計上


 ☆ 「(上海) 感想編」良しも悪しくも「トランスラピット」がカギを握る? 上海浦東国際空港アクセス

 先ずは上海浦東空港とそのアクセスです。上海浦東空港は能力が限界に達しつつ有った上海虹橋空港を救済する第二空港として1999年に開業の空港で、成田・香港国際・上海浦東の3空港の中で一番新しい空港です。丁度東京の羽田と成田の関係に近い感じですが、虹橋空港が国内線+日韓シャトル便という羽田と同じ役割を果たしているのに対して、上海浦東空港は上海発着の国際線ほぼ全部(日韓シャトルを除く)と60都市を越える中国国内線が発着しており、国内線に対しても役割を担っている点が異なっています。上海の虹橋・浦東の関係は東京の羽田・成田の関係より大阪の伊丹・関空の関係に近いかもしれません。
 上海浦東空港は「最新の空港」という事も有り、滑走路は2本供用で第一ターミナルビルのみ使用して居ますが、 第二ターミナルビル・第三滑走路を中心とした拡張工事 が本年前半にも供用開始をするなど、2010年の上海万博を目指しての拡大を続けている状況です。又空港アクセスに関しても、既存のトランスラピットによるアクセスに加えて地下鉄2号線の浦東空港までの延伸が予定されており、大幅に変わる事は間違い有りません。その点では上海浦東空港は「発展途上の空港」です。
 その様な「設備増強」が行われるのは、設備が不足しているのが一番大きいです。実際過去に合計6回上海浦東空港を利用して居ますが(マイナーな路線が多いですが)ボーディングブリッジを使ったのは今回の成田⇒上海便だけで、それ以外は全てバスで沖止めの飛行機に乗り行く状況でした。これはターミナルビルの能力不足を示して居ます。だからこそターミナル増設が行われるのでしょう。

 その空港改善事業で「空港アクセス」という点で、今後の2010年の上海万博までに「 地下鉄2号線の延伸 」が行われて、浦東新都心・南京路・人民広場等の上海の都心部へ直通で結ばれる事になります。しかし地下鉄2号線は「普通の地下鉄」です。都心から距離が遠い浦東空港まで各駅停車ではアクセスの主力とはなり得ません。又今の時点で大多数の人が利用しているリムジンバスも道路混雑による定時性の低さから不安な側面もあります。
 こうなると上海空港のアクセスのカギは良くも悪しくも「上海トランスラピット」という事になります。確かに都心側ターミナルの龍陽路駅は立地が中途半端で、「地下鉄orタクシーに乗り換えないと都心・浦東新都心にアクセス出来ない」欠点は有りますが、上海の中心部へは地下鉄2号線で10分〜20分でアクセスが可能です。しかも上海トランスラピットは430km/hという「世界最速で地上を走る交通機関」だけあり、上海浦東空港〜龍陽路駅を約7〜8分で結んでおり、速達効果は非常に大きいです。上記表で都心まで約50km距離が有るのに、空港〜都心のチョット先まで49分という所要時間であるのは、偏に「トランスラピット効果」で有る事は間違い有りません。
 上海浦東空港のアクセス改善に効果が有りそうなのは、上海トランスラピットの延伸です。一見するとトランスラピット龍陽路駅は先にビルが建っており「もう延伸は不可能」に見えます。しかし(共産主義の定義的問題からも)原則論として「土地は公有」の中国では、今や私有が実質的に認められていても土地を収用する事は難しい事ではありません。上海トランスラピットは「実験線だ」「収支が合っていない」と色々な面で問題視されていますが、中国の一般人民に片道50元は高くてもビジネスマン等には上海浦東空港〜龍陽路駅を約7〜8分という速度は魅力です。そういう点から上海トランスラピットの延伸によるアクセス改善は考慮に入れても良いと思います。
 具体的には、今の龍陽路駅から西進して上海南部に地下鉄駅接続の駅と上海南駅隣接に計2つ駅を造り、上海南駅から北上して虹橋空港隣接の虹橋地区まで延伸すると、虹橋空港・京滬高速鉄道の上海ターミナルの虹橋駅・リニアモーターカーの上海−杭州線等の集まる 上海虹橋の交通ハブ地区 にアクセスする事で、広域交通手段との連携も強くなりますし、地下鉄駅と複数接続すれば直接上海都心には乗り入れなくても都心へのアクセスは大幅に改善出来ます。そういう点では上海トランスラピット延伸は大きい可能性を秘めて居ます。

 変わりつつ有れども実際の所中国は、誰が何を言おうと国家の根本は共産主義の国であり、民衆が利用しやすいように物を作るという発想が乏しいのは否定出来ません。ですから幾ら「インフラの大建設」を進めていても、「利用しやすい施設を造る」という発想に辿り着きにくいのは致し方ないです。それは最新の上海浦東空港・上海トランスラピット・上海地下鉄を見れば明らかです。それを「改善せよ」といっても「革命」でも起きないと困難です。
 しかし利用しやすい施設を造る事が苦手な共産党統治下の中華人民共和国でも、経済力を背景にインフラを構築・増設する事はお得意で「インフラ建設の速度」は超一流です。そうであればその特色を生かすしかありません。ですから今の段階では「優れているインフラの追加」しか空港能力改善・空港アクセス改善の施策は無いです。そうなると改善ポイントは「良くも悪しくも主役」の上海トランスラピットを改善するしか無いのでは?と感じました。




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