書籍紹介
スハルト体制下(その末期ではありますが)に編集された歴史教科書を見る機会がありましたので、「日本占領時代」の箇所を翻訳し内容を紹介したいと思います。
- 書名:SEJARAH NASIONAL DAN UMUM/Untuk Sekolah Menengah Umum Kelas 2 dan Sederajat
出版:Grasindo 社 (1998)
以前、翻訳を掲載した
Bumi Aksara社の教科書(高校3年向け)
と同じく高校用歴史教科書です。ただし、こちらは高校2年生向け。出版は1998年。同年5月にスハルト大統領が退陣していますが、その2月発行なので同体制の元で編集されたものと言えます。
この教科書の章構成は次のとおり。
- 一学期
- 第一章 西欧帝国主義・植民地主義の成長と発展
- 第二章 欧米、第二次大戦、アジア・アフリカの民族運動、そしてそれらがインドネシア独立闘争に与えた影響を理解する。(第一部)
- 第三章 欧米、第二次大戦、アジア・アフリカの民族運動、そしてそれらがインドネシア独立闘争に与えた影響を理解する。(第二部)
- 二学期
- 第四章 インドネシア民族運動
- 第五章 日本のインドネシア占領
- 三学期
第一章~第三章で、ルネサンス~産業革命~フランス革命~ヨーロッパ列強によるアジア・アフリカの植民地化を解説。アジア・アフリカの民族運動の解説では、ガンジー(インド)、孫文と蒋介石(中国)、ケマル・アタチュルク(トルコ)、ナセル(エジプト)や明治天皇(日本)の写真が掲載されています。
そして、日本の明治期から昭和20年の敗戦までを結構詳しく紹介しており、少々驚かされます。例えば;
- 1868年(明治元年)の御誓文(いわゆる“五箇条の御誓文”)が全文掲載されています。しかし、このインドネシア語訳は正確と言えるのだろうか。。。。下に、この教科書掲載の御誓文を引用しておきます。(p.29-30 から)
- Akan dibentuk parlemen.
- Diciptakan persatuan dan kesatuan demi kesejahteraan bangsa.
- Penghapusan adat-istiadat kolot yang menghambat kemajuan.
- Jabatan dalam pemerintahan terbuka bagi semua warga Jepang.
- Mengembangkan ilmu pengetahuan untuk memajukan negara.
- 短期間で日本が西欧列強に追いついたことを指摘。しかし『国際社会での日本の地位は西欧先進諸国と同じレベルに達した。日本が近代国家となった結果として、日本は帝国主義国家となったのだ』と批判。その朝鮮、台湾、満州、中国、東南アジアへの侵略を記述しています。(p.30 から)
- 他方、日露戦争での日本の勝利については『政治的な意味において、その勝利は極めて大きな意味を持っていた。つまり、有色人種が白人に勝利した、またはアジア民族がヨーロッパ民族に勝利したことだ。その勝利はアジアでの西欧人の植民地支配に抵抗する戦いに極めて大きな影響を与えた。』と評価しています。(p.30 から)
さて、前置きが長くなってしまいました。この教科書の第五章「日本占領期」(1942−1945)についての記述を下にご紹介します。
日本語訳を掲載します。
高等学校3年生・中学2年生及び小学校6年生向けの教科書も是非ご覧ください。
日本軍占領期のインドネシアについては、次のサイトも合わせて読まれることをお勧めします。
インドネシア大使館のWebに掲載されているインドネシア史のページを読んでみました。日本占領期についての記述を紹介します。
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