大日本炭鉱新鉱専用軌道
〜勿来駅から蛭田川まで〜
一つ隣は
６０９ｍｍ時代の大日本炭鉱専用軌道（勿来鉱も含む）の石炭積替場はこの駅舎の真裏に存在したと言う。
西口に廻ってみよう。
西口の北西部には今現在でも広大な土地が地均しされた状態のままになっている。
この土地が恐らく大日本炭鉱専用軌道の勿来駅周辺施設が存在していた場所なのだろう。
広大な土地は多くが杭木（坑道の支えに使われる木材）置場に割かれていた。
専用軌道は敷地のやや西側を通り、画像の背後に存在したであろう石炭積替所に通じていた。
新鉱専用鉄道に乗り入れていた三和三松（さんわみまつ）炭鉱専用軌道は、敷地の隅に独自に石炭積替所を設けていた。
現在建っている白い建物の辺りと推測する。
敷地を出た専用軌道は同じく敷地の隅から出て来た三和三松炭鉱の引込線と合流する。
大日本炭鉱専用軌道跡には住宅が建ち、三和三松炭鉱の引込線は正体不明の細道に姿を変えている。
画像の奥のアパート付近が合流地点なのだろう。
合流地点から程無く行くと、田園風景が拡がっていた。
私が今進んでいる道が専用軌道跡のようだ。
隣には幅３ｍほどの細長い用地が並行している。これは
大日本炭鉱勿来鉱専用鉄道
（昭和３２年〜昭和４１年）の跡地と思われる。
諸事情
により専用鉄道敷地は昭和５３年まで鉄道用地として管理されていたので、未だに跡地の有効活用が見出せないのだろうか。
専用鉄道の切り通しを横手に見ながら専用軌道跡を辿ると、道が二手に分かれていた。
左に別れて潮見台（ヘビ山）に向かうのは「勿来鉱専用軌道」、右に分かれるのが今回レポートする「新鉱専用軌道」だ。
現在では小川の向こうで分岐しているが、軌道の現役当時は画像の地点辺りでポイントが存在していたと考える。
上の画像に写っている水門の横に立ち、新鉱専用軌道の跡を見る。
今では一本の農道と化しているが、これはれっきとした軌道跡なのだ。
軌道跡は緩やかなカーブを描きながら蛭田川（びんだがわ）に進んでいく。
この道は市道に準じた扱いを受けているようだ。
（参考）軌道廃止後の所有者
大日本炭鉱新鉱専用軌道は昭和３１（１９５６）年に廃止されたが、三澤地区から勿来駅を結ぶ専用軌道は地元民の生活道路としても機能していた。
軌道沿線の住民は「軌道は農道的役割を果たしているので、撤去されると不便をきたすので軌道跡を市で獲得して欲しい」と勿来市（当時）に陳情した。
勿来市はこれを受け、昭和３４（１９５９）年に軌道跡２７反（２６８アール）を３６０万円、５ヵ年払いで取得した。
上述の通り、市によって取得された軌道跡は、農道としての余生を過ごしている。
道幅は軽自動車１．５台分位だ。その細さが軌道跡の雰囲気を増している。
５０数年前まではこの道を蒸気に牽かれたトロッコが勿来駅に向かっていったのだ。
上の画像から振り返って撮影してみた。
画面中央の勿来鉱専用軌道跡がお分かり頂けるだろう。
軌道の向こうは切り通しになっている。勿来鉱専用鉄道はその中を通っていた。
専用軌道は勿来の田園地帯の端っこを進んでいく。
四輪車の通行はほとんど無いが、ジョギングや犬の散歩の人はかなり利用しているようだ。
勿来の山を見ながらのんびりマイペースで進む。実に気持ちのいい道だ。
蛭田川が近付き、勿来の工場地帯が見えてきた。
日本製紙とクレハの工場だ。
日曜日と言えども工場から立ち上る煙は絶える事は無い。
軌道は蛭田川に橋を架け、対岸に渡っていた。
資料によると木橋だったようだ。名前は「蛭田川橋梁」となっている。
軌道廃止後もしばらく存置されていたが、少し上流に道路橋が出来たので橋は撤去されたようだ。