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悲願は急坂を越えた〜神戸くるくるバス
その4・本運行を開始した「くるくるバス」

JR住吉にて


特記なき写真は2005年5月撮影


●雌伏10ヶ月、そして本運行へ
これだけの成績を残したとはいえ、まずは社会実験ですから、本運行に移行するとなると許認可や関係各所との調整が必要になります。また、事業として本当に成立するのかということも重要で、行政の財政的サポートも考えないと行けません。

とはいえ社会実験終了からわずか10ヶ月足らずで本運行にこぎつけたのは相当なものです。
CS神戸の機関誌 を見ると、社会実験で浮き彫りになった課題が出てきて、その解決を図って行った結果の本運行でもあるようです。

また2004年4月のうちに「くるくるバスを走らせよう会」が発足し、住民、事業者、NPO、行政の協働による本運行への道のりが始まりました。
社会実験の時には神戸市との関係が今一つ見えませんでしたが、ここで神戸市(東灘区)が輪に入った格好です。
この「走らせよう会」は6月には 「東灘交通市民会議」 として、本運行時の委託主体となっています。

さて、CS神戸が挙げた課題は主なものだけで10点ありました。

1)渦森台から阪急御影への需要、渦森台から甲南病院への昼間需要は少なからずある
2)鴨子ヶ原でのバス停新設置は坂道の関係で困難。
3)鴨子ヶ原からJR住吉・シーア買い物への需要は極めて強い。
4)住吉台からJR住吉へのシャトルニーズは極めて強い。停留所を国道北側にしたのが好評。
5)JR住吉止とせず、そのまま区役所に行けることがコープ生活文化館などの利用等で有効。
6)渦森台、住吉台から阪神御影へのニーズが高い。
7)住吉台は、ミニコープ先上がりでないと荷物をもった乗客のニーズに合致しない。
8)住吉台県営住宅前の道路は両側青空駐車が多く、一方通行運転にしても運行しづらい。
9)住吉台においては、認可される停留所よりも、欲しい停留場が多い。これをどう解決するか。
10)西岡本住民のニーズが少なからずあった。

見ていると社会実験時に感じたポイントも多々含まれており、やはりそこが論点か、と言うものが多いです。これらの中には「くるくるバス」本運行時に対応したもの、市バスによって対応したものもあれば、今後の課題?となっているものもあり、何らかの形で解決していくことになるでしょうし、今後の展開をここから予測することが出来るかもしれません。

ちなみに4、5、7、8、9は本運行時に対応してますし、3は2005年4月に市バス39系統(阪神御影−JR住吉−鴨子ヶ原)が開設されて対応しています。6は予想外でしたが、ゆえに阪神御影に入る市バス38系統が強かったということでしょう。

市バス39系統(JR住吉)(2005年8月撮影)


本運行開始後は順調で、聞くところによると社会実験時の倍の乗客がいるそうです。社会実験時の乗客数でも立派だったのに、さらに倍となると(本数も増えていますが)、これは太い鉱脈を掘り当てたといって良いでしょう。
近時では取材や視察に訪れる人も多いようで、まずは順調な経過を辿っているようです。

なお、地元のサポートという点で特筆すべきことは、住吉台の老人会が「守る会」を結成し、「守る会」が、これまでJR住吉駅前のショップに委託販売していた定期券の発売を受託することになったということです。ただ、「守る会」もボランティアなので、定期券を歴月単位での発行に統一し、切り替え時期になる月末月初の数日間に限定して住吉台県住の集会所で発売するというスタイルにしています。
このあたり、ボランティアの受託もさることながら、それに制度を合わせたと言うのもユニークです。

同朋保育園前
定期券発売方法変更のお知らせが掲出



●本運行の様子から
2005年1月23日、社会実験時と同じく みなと観光バスの受託 により本運行が始まりました。

地元紙にも出ていましたし、社会実験の時から追っていたのですぐに乗るべきだったのですが、なかなか時間がとれず、かつ近所ゆえ逆に思い立ってということにならなかったせいか、試乗は大幅に遅れて開業から4ヶ月も経った5月28日になってしまいました。

停留所(JR住吉)(2005年4月撮影)時刻表(JR住吉)(2005年4月撮影)

運行時間帯はエクセル東発が6時46分〜21時31分、JR住吉駅発が7時1分〜21時16分となっており、概ね15分ヘッド。社会実験時と同じく200円均一で、回数券と持参人式の定期券の設定があります。
変わったところでは、OMCカードと組んだポストペイICカード 「神戸みなと観光カード」 があり、岡本線、三宮線とともに住吉台線でも使えます。バスにエディのような読み取り台があります。

神戸みなと観光カードの案内

15分ヘッドと書きましたが、12時台、13時台は乗務員の昼食休憩の関係か30分ヘッドになっています。そのせいもあるのでしょうか、JR住吉駅前の乗り場に着く寸前に見た13時発、そして私が乗った13時半発ともに15人程度の乗車で、14名の座席定員を上回る乗りは立派です。
運行パターンがエクセルを出てJR住吉を回ってエクセルに戻る形に変更されており、これによりJR住吉を通り越して東灘区役所前まで乗車することが可能になっており、現に利用もありました。(前述の課題5の解決)

JR住吉でのバス待ち(2005年4月撮影)バスに乗り込む人々(2005年4月撮影)


バス通りから住吉台への上がり方が社会実験と逆になり、ミニコープ先回りになったのは、地域唯一のスーパーであるミニコープの買い物帰り対応ということ。(課題7の解決)
ならば往復ともミニコープ経由にすればといいたいのですが、残念ながら路駐が多く、対面通行が難しいということで回り方を入れ替えたようです。(課題8)

住吉台県住前で上下ルートが合わさってエクセル東に向かうのですが、エクセルでは循環運転をしていない(サイトの時刻表では28分で一周して折り返せるタイミングだが、実際には32分で一周し、エクセル東到着寸前に出発するので、3台での運用になっている)ため、ミニコープで乗ってきた乗客に県住で下りを待つように案内してました。(運賃は下り便で払うように案内)

エクセル東で出発を待つエクセル東での邂逅

同朋保育園前からの停留所が無かった区間ですが、やや上手に住吉台北停留所が新設されていました。下りも県住を出て荒神山住宅の少し下に万翠園前バス停が新設されており、エリア内の需要に応えています。(課題9の解決)

住吉台北停留所


社会実験時には渦森橋へ降りる300段階段の頂上をかすめてエクセル前まで入ってましたが、本運行ではエクセルの下にエクセル東バス停を置き、バスはここで方向転換をして折り返すようになっています。全線通しで乗って見ると、利用は県住前の利用が多かったです。

街を見下ろしながら終点へ向かう万翠園前へ下る


この後ルートに沿って市バスの通りまで降り、300段階段を直登してエクセルに戻り、JR住吉まで乗車して戻ったんですが、時間が少しあったので、登山道に入って見ました。くるくるバスが上がってきた道がそのまま登山道になり、住吉川源流に至るコースですが、ほんの2、3分で深山幽谷の趣き。もっとも、これが六甲山系本来の姿だけに、そういうレベルの場所まで住宅地として開発して来たことに改めて脅威を覚えました。

300段階段の頂上から。
市バス渦森橋へは渦森台との間に見える道路まで降りる
登山道から住吉台方向を望む


***
住民、NPO、事業者、そして遅れ馳せながらとはいえ行政も加わって産まれた「くるくるバス」。
この理想的な関係が、住民の悲願を叶えたといえます。




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