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私の旅日記
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2012年
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唐招提寺
〜碑巡り〜
奈良市五条町の
唐招提寺
(HP)を訪ねた。
唐招提寺は南都六宗の一つである
律宗
の総本山。
金堂
元禄5年(1692年)5月10日、貝原益軒は唐招提寺を訪れている。
それより招提寺にいりぬ。此間久しく開帳ありて、けふを限りなるよし聞ゆ。まうでくる人多し。門の額は唐招提寺とかけり。孝謙帝の宸翰なり。講堂の内、開帳の書画霊宝品々あげてかぞふべからず。此比取出して人に見する品々を目録一巻としてうる。諸堂の内見つくしてのち、寺門を出づ。凡此寺は聖武の御時、唐僧鑑真和尚創立せり。今に至て星霜をふる事九百七十九年、幸にして一度も回禄の災にあはず、諸堂皆創立のまゝなり。世に類なき古代の梵刹也。
『壬申紀行』
金堂の左手に会津八一の歌碑があった。
おほてらのまろきはしらのつきかけをつちにふみつつものこそおもへ講堂
講堂
昭和2年(1927年)4月、
水原秋桜子
は唐招提寺を訪れている。
唐招提寺
なく雲雀松風立ちて落ちにけむ
再び唐招提寺
蟇ないて唐招提寺春いづこ
『葛飾』
蟇鳴いて唐招提寺春いづこ
この句もその場で詠んだものではない。
唐招提寺の金堂を出て、附近を散歩していると、木の芽がようやくひらいて、若葉になりかけた時季で、簷
(ひさし)
の下がほのかに染まっているようである。美しいなと思って眺めていたら、ごこかで蟇の鳴く声がきこえた。おそらく菖蒲の萌えはじめた池にいるのだろう。蟇はきらいなものの一つで、その声も不気味なのだが、この時はさほどうとましいものとは思わなかった。
『水原秋櫻子自選自解句集』
鼓楼と礼堂
礼堂北側の旧開山堂手前に
芭蕉の句碑
があった。
若葉して御目の雫拭はばや
出典は
『笈の小文』
。
俳人松尾芭蕉が貞享5年(1688年)陰暦4月8日当寺に詣で鑑真和上を拝しての句。
文政4年(1821年)、建立。
『諸国翁墳記』
に「
若葉塚 南都招提寺境内 □□山社中 靑々・万鬼・兎月・□□
」とある。
碑陰に
三津人
の句が刻まれているようである。
ひいやりと牡丹の門を出にけり
昭和5年(1930年)5月6日、
荻原井泉水
は唐招提寺で芭蕉の句碑を見ている。
金堂の後ろに講堂がある。礼堂に続いて舎利殿がある。その間を行くと——道は砂地で、雨を吸ってすがすがしい——後ろの丘に掛けて一むらの若葉がこんもりと茂っている中に小さな堂がある。開山上人の堂である。正面の石段の前、梅の若葉の蔽うている中に、一基の句碑がある。
若葉して御目の雫ぬぐはばや 芭蕉
『随筆芭蕉』
(奈良の若葉)
昭和35年(1960年)、
山口誓子
は唐招提寺を訪れた。
唐招提寺
永き日を千の手載せる握る垂らす
開山忌盲
(めしい)
鑑眞起ちて出づ
『方位』
昭和40年(1965年)6月、山口誓子は唐招提寺で芭蕉の句碑を見ている。
金堂を右手に廻って講堂と札堂の間を行くと、自然に開山堂に達する。その石階の左裾に芭蕉の句碑がある。自然石。
若葉して御目の雫拭ばや
「芳野紀行」には、「招提寺鑑真和尚来朝の時、船中七十余度の難をしのぎたまひ、御目のうち塩風吹入て、終に御目盲させ給ふ尊像を拝して」とあって、この句を掲げている。
「若葉して」が問題だ。私はそれを「若葉を以て」と解して句意を通らしめる。「若葉になって」ではどうにも句意が通らない。
建立は文政四年。
『句碑をたずねて』
(大和路)
旧開山堂の北側に
北原白秋の歌碑
があった。
水楢の柔き嫩葉
(わかば)
はみ眼にして花よりもなほや白う匂はむ
『黒檜』(昭和15年8月13日、八雲書林刊)に収録されている歌である。「
四度、鑑真和上を憶ふ
」とある。
昭和5年(1930年)2月末、北原白秋 は南満州鉄道の招きにより中国東北部を旅行。4月8日、妻子と奈良を回っている。
昭和55年(1980年)8月、建立。
昭和10年(1935年)、
水原秋桜子
は唐招提寺を訪れている。
唐招提寺
蕨萌えわづかの築地のこりたる
『秋苑』
昭和28年(1953年)、
水原秋桜子
は唐招提寺を訪れている。
唐招提寺
冬紅葉校倉寂びて暮れゆけり
短日の靄に金堂のうかぶのみ
『帰心』
昭和45年(1970年)9月15日、
水原秋桜子
は唐招提寺の讃佛会に訪れている。
六時に門が開かれ、ここで大島君はじめ民郎研究会の人々、それに黒木君、羽田君にあう。門内に入ると向こうさがりにやや低く見える金堂が開け放たれ、照明によって諸佛が光りかがやいている。そこまでの左右にはいくつかの紙燭がおかれ、想像以上に好い情趣だと感心した。
「長崎と島原」
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