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岡本綺堂 (おかもと・きどう) 1872〜1939。


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半七捕物帳24・小女郎狐  (青空文庫)
短編。「御仕置例書(おしおきれいがき)」の中に記された、小女郎狐(こじょろうぎつね)という変った事件について語る半七老人──。人間を化かす小女郎狐の伝説がある下総の村で、猪番(ししばん)小屋で酔い潰れた五人の男が松葉いぶしで死亡した。子狐を殺された小女郎狐の祟りなのか? 「ともかくも古狸の狐狩というところで、常陸屋の働きをお目にかけようじゃありませんか」。探索に乗り出した八州廻りの目あかし・常陸屋の長次郎は、十五夜の晩に水死した村の娘・おこよの悲劇を知る…。捕物帳シリーズ第24話。

半七捕物帳25・狐と僧  (青空文庫)
短編。「これも狐(きつね)の話ですよ。しかし、これはわたくしが自身に手がけた事件です」──。行方不明になった谷中(やなか)・時光寺の住職・英善の袈裟(けさ)法衣(ころも)を身に付けた狐の死骸が発見されるという奇怪な事件が出来(しゅったい)した。狐がいつの間にか英善の姿になりかわっていたのか? 「お住持は……お師匠さまは……」、「泣くことはねえ。おれがその仇を取ってやる」。師匠思いの小坊主・英俊から寺の事情を聞いた半七は、犯人を追って甲州街道を急ぐ…。捕物帳シリーズ第25話。

半七捕物帳26・女行者  (青空文庫)
短編。若い女の行者(ぎょうじゃ)が公家(くげ)の娘を名乗り、祈祷にかこつけて多額の金を寄進させていると聞いた半七。討幕派の活動費に使われている恐れがあり、慎重に捜査を進める半七は、毎夜、秘密の祈祷を受けていた紙屋の息子・久次郎が行方不明になったと知り、いよいよ祈祷所へ踏み込む…。「親分、どうしますえ。お縄ですか」、「どうも素直に行きそうもねえ。面倒でも畳のほこりを立てろ」──。美しい姉妹を自分の色と慾の道具に使う男…。捕物帳シリーズ第26話。

半七捕物帳27・化け銀杏  (青空文庫)
短編。化け銀杏(いちょう)と呼ばれる樹の下を通りかかった豪商「河内屋」の番頭・忠三郎は、何者かに投げ倒された挙句、掛軸と大金を盗まれてしまう。その掛軸は、旗本・稲川伯耆(ほうき)の屋敷から二百五十両で預かった大切なものだった。「化け銀杏め、いろいろに祟る奴だ」。掛軸の行方を探す半七は、贋物(にせもの)の掛軸の存在と、化け銀杏の下に現れた女の幽霊の正体を知る…。「いけねえ。いけねえ。幽霊が死んだら蘇生(いきかえ)ってしまうばかりだ。まあ、騒いじゃあいけねえ。おめえの為にならねえ」──。素晴らしい出来栄えの捕物帳シリーズ第27話。

半七捕物帳28・雪達磨  (青空文庫)
短編。「や、雪達磨のなかに人間が埋まっていた」。解けた雪だるまから発見された死体は、上州太田の百姓・甚右衛門だと判明。彼が宿泊していた部屋を調べてみると、そこには大量の南京玉が! 「なんぼ土産にするといって、こんなに南京玉を買いあつめる奴もあるめえ。商売にする気なら、どこかの問屋から纒(まと)めて仕入れる筈だ。割の高いのを承知で、店々から小買いする筈はねえ。どうも判らねえな」。近頃、品川の女郎を請け出したという錺(かざり)職人の豊吉を吟味する半七だが…。「なにしろお前に用があるから呼びに来たんだ。おれが呼ぶんじゃねえ、これ(南京玉)が呼ぶんだ」。南京玉の意外な用途を描いた捕物帳シリーズ第28話。

半七捕物帳29・熊の死骸  (青空文庫)
短編。天神様へ参詣に出掛けた半七だが、大火事に巻き込まれてしまう。「あぶねえ、あぶねえ。熊だ、熊だ」。火事場で荒れ狂う熊に襲われそうになった生薬屋「備前屋」の娘・お絹。その後、親類宅で療養していたお絹だが、何者かに殺されてしまう。「さて、どいつがお絹を殺したか」。熊の胆(い)と熊の皮を売って一儲けしようと企む連中と、お絹殺しの一件との接点は? 捕物帳シリーズ第29話。

半七捕物帳30・あま酒売  (青空文庫)
短編。「甘酒や、あま酒の固練(かたね)り…」。甘酒売りの老婆に近寄っただけで多数の者が病気になるという怪異な事件。老婆を尾行する半七だが、老婆はある藩の若侍に斬り殺されてしまう。と同時に、質屋「河内屋」の女中・お熊が、恋人である小間物屋・徳三郎に殺されるという事件も出来(しゅったい)して…。「とんでもねえことを仕出来(しでか)しゃあがった。手前なんで女を殺した。素直に申し立てろ」。他の土地の者との婚姻を許さない村の掟と、蛇神(へびがみ)の魔力を持つ女の悲劇。捕物帳シリーズ第30話。

半七捕物帳31・張子の虎  (青空文庫)
短編。とっさの機転で草履を投げ付け、罪人の捕縛に協力した伊勢屋の遊女・お駒。その後すっかり評判になった伊勢屋は繁昌するが、お駒は何者かに絞め殺されてしまう。死んだお駒の枕もとにはなぜか張子(はりこ)の虎が…。「草履の片足はとんだ鏡山(かがみやま)のお茶番だが、張子の虎が少しわからねえ」。お駒の馴染客だった呉服屋の番頭・吉助…、お駒と姉妹のように親しかった遊女・お定…、駆け落ちして姿をくらませた遊女・お浪…。犯人の殺害動機は? 捕物帳シリーズ第31話。

半七捕物帳32・海坊主  (青空文庫)
短編。「潮が来る、颶風(はやて)が来る」。潮干狩りで賑わう品川の海岸に現れた奇怪な男。誰よりも先に颶風や潮を予報してみせた彼は一体何者なのか? 強風が吹き荒れる中、その男と何やら話していたという船宿の女客・おとわに当たりを付ける半七だが…。水死人かと思いきや、水中から出現し、生きた魚をむしゃむしゃ食べる男! 「だが、妙な奴だな。人間の癖に水のなかに棲んでいて、時々に陸(おか)や船にあがってくる。まったく河童の親類のような奴だ」──。捕物帳シリーズ第32話。

半七捕物帳33・旅絵師  (青空文庫)
短編。舟から落ちた娘・おげんを助けたのが縁で、奥州の穀屋・千倉屋伝兵衛の家に長逗留することになった若い旅絵師・山崎澹山(たんざん)。実は彼の正体は、ある藩のお家騒動を探るために江戸から放たれた隠密・間宮鉄次郎だった。伝兵衛からマリア像を模写してほしいと頼まれた鉄次郎。伝兵衛が禁制の邪宗門を信仰する切支丹(きりしたん)宗徒であったと知った鉄次郎は…。「先生…」、「わたくしはここにいます」──。いつもの捕物とは違い、一人の隠密の姿を描いた特別編といった趣き。鉄次郎とおげんの悲恋が胸を打つ。江戸の隠密の仕組みにも興味が湧く。捕物帳シリーズ第33話。

半七捕物帳34・雷獣と蛇  (青空文庫)
短編。二本立て。(1)米屋「尾張屋」の娘・お朝が落雷で死亡し、遠縁の重吉も何者かに顔を掻きむしられ死亡した。人々は雷獣の仕業だと噂するが…。「天災といえば仕方もねえが、そう立てつづけて一軒の家(うち)に祟るのもおかしいな」。雷獣よりも恐ろしいものは?──。(2)とぐろを巻いた数十匹の蛇の中に平気で手を突っ込み、ひと束の切髪を掴み出した少女。見物人たちを驚かせた少女だが、次の日の夜、何者かに刺し殺されてしまう…。「その娘は何者だろう。その娘とその切髪とどういう因縁があるのだろう」。不良少女たちの理屈のない動機が今日的──。捕物帳シリーズ第34話。

半七捕物帳35・半七先生  (青空文庫)
短編。手習い師匠・小左衛門の寺子屋へ通っていた生薬屋「甲州屋」の娘・お直が、稽古帰りに行方不明になった。習字の出来が悪く、小左衛門に叱られたのを苦にした家出なのか? それとも、お直の兄・藤太郎と瀬戸物屋の娘・お紋との婚礼の破談に何か原因があるのか? 秘密の手紙をお直が隠し持っていたと知った半七は、女髪結のお豊の存在を突き止める…。「甲州屋のむすめの手習い草紙がどうしてここに懸けてあるんだ。仔細をいえ。わけを云え」。狂言事件の意外な顛末がすこぶる楽しい捕物帳シリーズ第35話。

半七捕物帳36・冬の金魚  (青空文庫)
短編。俳諧の宗匠・其月(きげつ)の家で、主人の其月が何者かに斬り殺され、女中のお葉が庭の池で水死した。其月の仲介で「寒中でも湯の中で生きる金魚」を売っていた千住の元吉が犯人なのか? 「この寒空に金魚を売ろうの、買おうのと、つまらねえ道楽をするから、いろいろの騒動が出来(しゅったい)するんだ」。指に怪我をした其月の弟子・其蝶が怪しいと睨む半七だが…。「冬の金魚も変りものですが、この宗匠も女中も人間のなかでは変りものの方でしょうね」。落葉して月の光のまさりけり。捕物帳シリーズ第36話。

半七捕物帳37・松茸  (青空文庫)
短編。深川八幡の祭礼を見物に行った後、なぜか顔色が悪くなった加賀屋の嫁・お元。加賀屋の女中・お鉄を強請っていた男を追跡する半七だが、男は不忍池に飛び込んで、水死してしまう。お鉄から事情を聞き出した半七は、事件の意外な真相を知る…。「あれはお前の情夫(おとこ)かえ」、「あいつはわたくしの仇(かたき)でございます」──。丙午(ひのえうま)の年に生まれた女は、男を食い殺すという迷信…。幕府への「松茸献上」をうまく絡ませた捕物帳シリーズ第37話。

半七捕物帳38・人形使い  (青空文庫)
短編。仲の良かった人形使いの紋作と冠蔵。夜中に人形同士が斬り合うという奇怪な現象を目撃した紋作だが、冠蔵は信じようとしない。この一件ですっかり不仲になってしまった二人は、ある晩、何者かに殺害されてしまう。紋作の恋人・お浜にちょっかいを出していた衣装屋の定吉に眼をつける半七だが…。「紋作がどうして死んだか、冠蔵が誰に殺されたか、その仔細がわからねえじゃあ、おめえ達もいつまでも心持がよくあるめえと思う。そこできょうはそれを話しに来たんだから、そのつもりで聴いてくれ」。シリーズ第38話。

半七捕物帳39・少年少女の死  (青空文庫)
短編。二本立て。(1)外神田の貸席「田原屋」の二階で、踊りの師匠・光奴(みつやっこ)の復習(さらい)が催される中、踊り子の少女・おていが何者かに手拭(てぬぐい)で絞め殺された。「手拭には薄い歯のあとが残っていたんです。うすい鉄漿(おはぐろ)の痕(あと)が…」。縁を切らざるを得なかった子供への未練──。(2)芝・田町の大工の子供・由松が急病で死んだ。隣家の紙屑屋の子供もやはり急病で死んだと知った半七は、玩具(おもちゃ)の蛙の水出しに目をつける。「実はこの水出しは買いましたのではございません。よそから貰いましたのでございます」。恐ろしい継母(ままはは)根性が生んだ悲劇…。捕物帳シリーズ第39話。

半七捕物帳40・異人の首  (青空文庫)
短編。末広町の質屋へ二人連れの浪人が押し借りに来て、異国人の生首を突きつけて、攘夷(じょうい)の軍用金を巻き上げて行くという事件が起きた。異人の正体を探索するため、横浜までやって来た半七は、港崎(みよざき)町の遊廓で女遊びをするイギリス人を突き止める…。「むむ。もうこれで大抵判った。ロイドという奴を引き挙げりゃあ世話はねえんだが、異人じゃあどうも面倒だからな。まあ、いい。折角乗り込んで来た甲斐があった」──。半七の妹・お粂の登場が嬉しい捕物帳シリーズ第40話。

半七捕物帳41・一つ目小僧  (青空文庫)
短編。四谷伝馬町で小鳥を売っている「野島屋」の主人・喜右衛門は、十五両の高価な鶉(うずら)を、新宿のとある屋敷へ届けに行くが、一つ目の妖怪の出現に驚いて気絶した隙に、鶉をまんまと盗まれてしまう。犯行現場となった屋敷で、按摩の笛を拾った半七は、怪談がかりの一件を見事に解決する。「それにしても、一つ目小僧とは考えたね。悪くふざけた奴らだ」。捕物帳シリーズ第41話。

半七捕物帳42・仮面  (青空文庫)
短編。ある能役者に二十五両で売却が決まった生成(なまなり)の仮面(めん)を、どうしても売ってくれという若侍の要求に、道具屋の主人・孫十郎は、百五十両なら売ると商売気を出す。多額の違約金を払って能役者を納得させた孫十郎だが、肝腎の若侍がいつまで経っても現れず…。「畜生…。一杯食わせやがった」。狂言強盗だと思われた事件の意外な真相は?──捕物帳シリーズ第42話。

半七捕物帳43・柳原堤の女  (青空文庫)
中編。魔所と恐れられている柳原堤(どて)の清水山のあたりに、怪しい女が現れるという噂。清水山へ探検に出掛けた材木屋の喜平たちだが、何者かになぐり倒されたり、得体の知れない獣(けもの)におびやかされたりして、肝心の女の正体は突き止められずに終わる。世間の噂があまりに騒々しくなったため、遂に探索に乗り出す半七だが…。「わたくしは清水山の一件に係り合いがあるには相違ありませんが、決して悪いことをした覚えはないのでございます」。男恋しさに物狂おしくなった女の情念…。捕物帳シリーズ第43話。

半七捕物帳44・むらさき鯉  (青空文庫)
短編。夜更けに怪しい女の訪問を受けた草履屋の女房・お徳。亭主の藤吉が殺生禁断の江戸川で釣った紫色の鯉を、夢の告げがあったといって持ち去ってしまう女。「そりゃあどうもおかしいな。その女はいってえ何者だろう」、「ねえ、もしや川から出て来たんじゃ無いかしら」。人間に化けた雌(めす)の鯉が、雄(おす)の鯉を助けにやって来た? 川に流されたはずの紙屋の為次郎が生きていて、無事だったはずの藤吉が水死体で発見されるという不思議! 怪談がかりの事件の意外な真相を描いた捕物帳シリーズ第44話。

半七捕物帳45・三つの声  (青空文庫)
短編。川崎大師へ参詣に出掛けた鋳掛屋(いかけや)の庄五郎だが、芝浦で水死体で発見される。庄五郎と一緒に川崎へ行く約束をしていた従弟(いとこ)の平七と建具屋の藤次郎。「あの女(庄五郎の妻・お国)に亭主が無ければなあ」と言っていた平七が、下手人(げしゅにん)として挙げられるが…。庄五郎が出掛けた後、鋳掛屋の戸を叩いた「三つの声」から犯人を見破る半七の名推理。「なまじいに余計な小刀細工(こがたなざいく)をするから、却って貴様にうたがいが懸かるとは知らねえか」──。捕物帳シリーズ第45話。

半七捕物帳46・十五夜御用心  (青空文庫)
短編。押上(おしあげ)村の古寺・竜濤寺(りゅうとうじ)の古井戸から、四人の死骸(出家二人と虚無僧二人)を発見した荒物屋のお鎌婆さん。十五夜の晩に二人の虚無僧と竜濤寺の中へ入って行った若い女の正体と、木魚(もくぎょ)の中から見つかった「十五や御ようじん」と書かれた結び文(ぶみ)の謎…。「今夜の怪物は化け猫に古狐だ。引っ掻かれねえように用心しろ」。女は怖し…。捕物帳シリーズ第46話──。東京スカイツリーのある押上も江戸時代はまだ村だったんですね。



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