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岡本綺堂 (おかもと・きどう) 1872〜1939。


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小来栖の長兵衛  (四国の山なみ)
短編。戯曲。時は羽柴秀吉が明智光秀を倒した「山崎の戦」の直後。村一番の暴れ者である長兵衛の悪行の数々に堪忍ならなくなった小来栖(おぐるす)村の人々。長兵衛を簀(す)巻きにして川へ投げ込むことにするが、そこへ秀吉の家来・堀尾吉晴がやって来て…。「いくらお慈悲ぶかい庄屋どのでも、親に傷をつけた不孝者を、もう助けてはおかれますまい」。手のひら返しぶりが笑える喜劇。

小坂部姫  (青空文庫)
長編。
姫路城の天守閣に棲む「刑部狐(おさかべぎつね)」の伝説を題材に、南北朝時代の京都を舞台とした伝奇小説──。
足利尊氏(たかうじ)の執事である武将・高師直(こうのもろなお)の娘・小坂部姫(おさかべひめ)。武将・塩冶高貞(えんやたかさだ)の妻に懸想した挙句、振られた腹いせに、塩冶の一家を滅ぼそうと企んだ父・師直の乱心で、もはや館に居られなくなってしまった彼女は、恋人である若侍・本条采女(うねめ)と一緒に家を出る。都をさまよう怪しい異国の男に運命を託した彼女は、命からがら京都を脱出するが、師直が放った追っ手の一団に捕まってしまう…。
「さりとは解せぬことじゃ。異国に生まれたお身が何のためにわたしをたずねてまいられた。」
「神のお告げでござる。」
何もかも見透しているかのような怪しい異国の男は、果たして味方なのか? 敵なのか? そして意表の正体は?
「判ったか。あの天主閣がお身の棲家じゃ。」。
とてつもない展開に圧倒されまくり! 世の盛衰、人の栄枯を手玉に取る、何とも恐ろしい悪魔の呪い! 秀吉が一代しか続かなかった原因、徳川の時代が二百六十余年も続いた原因は、何と姫路城にあった! 冒頭で歌人・吉田兼好を登場させる知的好奇心な演出も素晴らしい。悲恋小説としても秀逸な超絶の時代小説。

籠釣瓶  (青空文庫)
中編。放蕩のせいで身代を潰し、故郷の野州・佐野を立ち退いて江戸へ出てきた次郎左衛門。吉原の花魁(おいらん)・八橋(やつはし)に貢ぎ続ける次郎左衛門だが、八橋には情夫(おとこ)・栄之丞がいた。もはや八橋を請け出すこともならず、千両という大金も使い果たしてしまった次郎左衛門が、とうとう最後に到着した結論とは? 「おれは八橋と離れて生きてはいられない。八橋は自分の命であった」。博奕打ちだった次郎左衛門に言い知れぬ怖れを感じ、八橋と縁を切ろうと考える能役者あがりの浪人者・栄之丞だが…。「あの人を欺すのは悪い。ああいう人を欺すと殺されるぞ」。衝撃的なラストシーンに目を見張る。いつもながら文章のうまさに感心。

蟹満寺縁起  (青空文庫)
短編。戯曲。蛇に呑まれそうだった蛙の子供を助けてやった漆間(うるま)の翁の娘だが、そのために蛇の人身御供となる運命に。娘の窮地を救うため、蛇を退治してみせるという里の青年(わかもの)だが…。「弱いものを救いたければ、自分がまず強いものになれ。世間に強いものが多くなれば、弱いものは自然に救われるのだ」──。世の中をよくする術を教えてくれるそんな素晴らしい寓話。

黄八丈の小袖  (青空文庫)
短編。持参金目当てで娘・お熊の婿にした又四郎のことが邪魔になった材木商「白子屋」の女房・お常は、下女・お菊に無理心中を仕掛けさせ、それを科(とが)に又四郎を追い出そうと考える。奉公人ゆえに断わりきれず、その役目を引き受けてしまうお菊だが…。「お慈悲でございます、お慈悲でございます」。名奉行・大岡越前をもってしても…。階級制度の厳重な時代における“量刑”が興味深い。

経帷子の秘密  (青空文庫)
短編。“経帷子(きょうかたびら)の老婆”に呪われた酒屋「井戸屋」に嫁入りした質屋の娘・お妻。井戸屋では代々、跡取りが生まれてもみんな死んでしまうため、同じ血筋が二代と続かず、縁のない他人が店を相続していた。お妻が懐妊したと知り、不安に襲われるお妻の母・お峰だが…。「おっ母さん安心していて下さい。男の児にしろ、女の児にしろ、わたしの生んだ児はわたしがきっと守ります」。家にまつわる呪いを消滅させ、井戸屋の血統を続かせる驚愕の方法は? 経帷子(死者に着せる着物)の奇怪な伝説を描いて面白い。

蜘蛛の夢  (青空文庫)
短編。刀屋・会津屋の主人・源造と係り合いのあった若い女・お春が、雷に撃たれて死亡した。事件以来、源造が行方をくらませ、源造の娘・お定とお由の姉妹も家出してしまう…。負ければ負けるほど熱くなる勝負事の恐ろしさ…。「蜘蛛の祟りかどうだか判りませんが、ともかくもみんなが蜘蛛の夢を見ていたのは事実でございましょう」──。事件の意外な真相を描いて面白い時代推理小説の好編。

くろん坊  (青空文庫)
短編。美濃の山奥にある小屋に辿り着いた旅の武士。若い僧が一人住むこの小屋に泊めてもらうが、夜通し聞こえてくる不気味な笑い声に悩まされる。「あの忌(いや)な声はいったいなんですね」、「まったく忌な声だ。あの声のために親子三人が命を取られたのだからな」。山奥に昔から棲む「黒ん坊」と呼ばれる怪物と良好な関係を築いてきた親子三人に襲い掛かる悲劇! ホラーミステリーの秀作。

子供役者の死  (青空文庫)
掌編。甲州のある町へ興行にやって来た江戸の子供役者の一座。年上の女客・お初と親密な関係になった十六歳の人気役者・六三郎だが、実はお初は、博奕打ちの大親分・吉五郎の妾だった。吉五郎の家に連行された六三郎は、なぶり殺しにされたお初の死骸を見せられて…。「おめえはあの女を知っているかえ」。子供役者の危険な恋のてん末。この際、ユーモア・ホラーでよかったと思うけど…。

権三と助十  (青空文庫)
短編。戯曲。強盗殺人の罪で捕まり、牢中病死した父・彦兵衛の無実を信じて疑わない小間物屋の彦三郎に、実は真犯人を知っていると打ち明ける駕籠(かご)かきの権三(ごんざ)と助十(すけじゅう)。係り合いになるのを嫌って今まで黙っていたという二人を証人にして、奉行所に彦兵衛の無実を訴え出る彦三郎だが…。「なるほど大岡様はえらいものだな」、「名奉行とあがめ奉つるも嘘じゃあねえ」──。江戸っ子気質な長屋の人々のやり取りがまるで落語のようで楽しく、サプライズなラストも嬉しい。「大岡裁き」もの人情譚。

佐々木高綱  (青空文庫)
短編。戯曲。石橋山の戦や宇治川の戦で殊功を立てた源頼朝の家臣・佐々木高綱だが、その恩賞の少なさに不満を抱いている。上洛する頼朝の出迎えに行かないと強情を張る高綱を、懸命に説得する一族の者たちだが…。罪なき馬士(まご)を殺した過去を懺悔する高綱と、その高綱を父の敵(かたき)と狙う若い姉弟(おみのと子之介)…。鎌倉初期の武将・佐々木高綱の出家を描いた歴史もの。

修禅寺物語  (青空文庫)
短編。戯曲。源頼家の催促に、やむなく不出来な木彫の仮面「頼家の面(おもて)」を献上した面作師(おもてつくりし)・夜叉王(やしゃおう)と、頼家に気に入られ、側女(そばめ)となった夜叉王の娘・桂(かつら)…。「それは世にある人の面ではござりませぬ。死人の面でござりまする」──。伊豆・修禅寺に幽閉され、謀殺された鎌倉幕府第二代将軍・源頼家の最期を題材にした作品。著者の代表作。

心中浪華の春雨  (青空文庫)
短編。行く末の約束を結んだ大工の丁稚・六三郎と遊女・お園。十年ぶりに再会した父親(海賊・赤格子九郎右衛門)が獄門となったため、世間から迫害されるようになった六三郎は、親切な親方・庄蔵の勧めで、しばらく大坂を離れて、江戸へ行く決心をするが…。「六三(ろくさ)さん。お前、どうしても江戸へ行く気かえ」。初心で素直で気の弱い年下男を思いやる年上女の心情を美しく描いて心に残る。
→国枝史郎「赤格子九郎右衛門の娘」

人狼  (青空文庫)
短編。戯曲。人の肉を喰い、人の血を啜る恐ろしい狼の出没に恐怖する村人たち。狼退治に出掛ける狩人の弥三郎だが、なかなか姿を見せない相手にどうすることも出来ない。実は狼の正体は、弥三郎の妻・おいよだったのだ! 夜になると狼の声が聞こえてきて、たちまち悪魔に取り憑かれてしまうおいよ。宣教師・モウロと出会い、救いの道を見出したかに思えたが…。「やあ、これはおれの女房だ、女房だ」。島原を舞台に、善良な一家が見舞われる悲惨劇を描いた伝奇もの。ラストのモウロと源五郎(青年猟師)の心配りに感心。

玉藻の前  (青空文庫)
長編。
昔から祟りがあると言い伝えのある古塚の森に迷い込んだ幼なじみの美少女・藻(みくず)を救い出した少年・千枝松(ちえまつ)。しかし、その日を境に、素直だった藻は人が変わったように冷淡となり、彼女は千枝松を捨てて、関白・藤原忠通の侍女(こしもと)になってしまう。

「おまえは怪異(あやかし)に憑(つ)かれて命をうしなうという相(そう)が見ゆる。あぶないことじゃ」。

失意の千枝松(千枝太郎)は、安倍晴明の子孫である陰陽師・安倍泰親(やすちか)に救われ、彼の弟子となるが、泰親から「藻(玉藻)の魂には悪魔が宿っている」と聞かされ、驚愕する。
日本を魔界の暗黒に堕(おと)そうと企んでいる妖魔と向かい合って闘うことを決意する千枝太郎だが…。

忠通の寵愛を一身に受ける玉藻は、公家や侍たちを魅惑し、次々と死に追いやっていく。そして、泰親との祈祷合戦に勝利した玉藻は、念願の采女(うねめ)に推挙され…。

「お前はそれほどにわたしが恋しいか。人間を捨ててもわたしと一緒に棲みたいか」。

「玉藻前」「殺生石」の伝説を題材に、平安末期の関白・藤原忠通と弟・頼長の不和・対立を絡めながら、狐の化身と陰陽師の戦いを描いた伝奇小説。岡本綺堂の卓越した文章力でぐいぐい読ませる。藻(玉藻)と千枝松(千枝太郎)の悲恋物語が美しく切ない。

鳥辺山心中  (青空文庫)
短編。京都・祇園の遊女屋「若松屋」に売られて来た不仕合せな身の上の少女・お染。遊女になって初めての客である若侍・菊地半九郎の優しさに取りすがり、他の客を迎える苦労を知ることもなく、安心した時を過ごすお染だが、半九郎が江戸へ帰らなければならない日が迫って来て…。「お前の心はよく判った。もう泣くな」、「あい」──。色恋とは違う“心細さ”と“哀れみ”で結ばれた関係が、行きがかりの運命によって最高なものに昇華していくラストが美しい。“心中”という結末が分かっていても、泣けてしまう綺堂の手腕に敬服。

 (青空文庫)
短編。お伊勢参りの帰りに立ち寄った木曾・奈良井の宿で、十一年前にかどわかされた娘・お元と偶然再会した四谷忍町(おしまち)の質屋・近江屋七兵衛。お元を江戸へ連れ戻し、大喜びの七兵衛と女房のお此だが、お元にはある秘密があった…。「お元には鼠(ねずみ)が付いていると言うのです」、「ほんとうか」、「まったく本当だそうで…」。ありきたりな怪談かと思いきや、意表の展開で面白満足。

俳諧師  (青空文庫)
短編。戯曲。武士を捨て、俳諧師になった鬼貫(おにつら)だが、娘・お妙との生活は困窮を極め、餓死か自殺か娘を売るかしかない状況にまで追い込まれる。旧友で芭蕉の弟子でもあった宿なしの路通(ろつう)と再会した鬼貫だが…。「おまえも命を捨てず、娘も身を売らず、無事安穏に生きていられる智慧を授けてやろうと思うのだが、どうだ」。苦しい時こそポジティブ・シンキングでありたいものだ。

馬妖記  (青空文庫)
短編。異様な嘶(いなな)きで飼馬をおびやかし、遂には人間をも踏み殺す、巨大で長い毛に掩われた怪しい馬の出現に恐怖する村人たち。妖馬の噂を知った若侍たちは、功名心から馬狩りを実行するが…。「それも淫奔の罰(ばち)かも知れません」。結局、妖馬の正体は判らずじまいだが、妖馬に殺された百姓の後家・お福と、隣村の若い男・鉄作の、親子ほども年の離れた二人の愛憎劇が面白い。

番町皿屋敷  (青空文庫)
短編。旗本奴の集団「白柄組」の一員である七百石の旗本・青山播磨と言い交した腰元・お菊だが、播磨に持ち込まれた縁談が気になって落ち着いていられない。播磨の心を疑った彼女は、播磨の心を試すため、青山家の家宝である高麗焼の皿を割ってしまうが…。「今となっていかに詫びても、罪のない者を一旦疑うた罪は生涯消えぬぞ。さあ、覚悟してそれへ直れ」。潔白な男の、その潔白の代償を、白柄組の頭目・水野十郎左衛門と町奴の頭領・幡随院長兵衛の闘争を絡めて描いた悲劇。綺堂版「皿屋敷」の小説バージョン。

箕輪心中  (青空文庫)
中編。五百石の旗本・藤枝外記(げき)と吉原の花魁(おいらん)・綾衣の許されぬ恋。すれ違い際、偶然に綾衣の袖が外記の刀の柄に絡んだのが縁で恋に落ちた二人。放埓の科(とが)で没落する外記…、占いで剣難の相が出た綾衣…。雪のような蓮の花びらが美しくも物悲しい…。綺堂の美しい文体による正攻法な心中もの。 →広津柳浪「今戸心中」

指輪一つ  (青空文庫)
掌編。関東大震災で妻と娘二人が行方不明であるという西田さんと知り合いになった僕(学生のK君)。木曽の宿に泊まった僕は、風呂場で若い女の幻覚を見て、一つの指輪を拾うが…。「これも運で仕方がありませんよ。家(うち)の者ばかりが死んだわけじゃあない、東京じゅうで何万人という人間が一度に死んだんですから」。偶然を超越した不思議な出来事を通して、被災の悲しみを描いた秀作。

両国の秋  (青空文庫)
中編。東両国の観世物小屋の蛇つかい・お絹は、武家奉公に行ってしまった恋人・仁科林之助への恋慕が募り、心労で倒れてしまう。列び茶屋「不二屋」の茶屋娘・お里と林之助との仲を疑うお絹の怨念…。「蛇は執念ぶかいんだから、そう思っておいでなさいよ」。お絹の蛇のような怖ろしい妖艶な眼から逃れたい林之助は、不幸な身の上のウブなお里に惹かれていくが…。心理描写が秀逸の名編。



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