ガンタン駅、それはタイ国鉄唯一のアンダマン島への玄関である。バンコク〜ガンタンの直通列車は週に一本だけ。クルンテープ〜トゥンソン〜トラン〜ガンタンのルートを通り列車は一路、海を目指す。トラン〜ガンタンは一つのさびれた支線に過ぎないが、トランまでは主力亜幹線に数えても良いと思われる。バンコク〜ガンタンの直通列車にはもう一つの顔がある。それは外国人旅行者を対象とするスラーッ・ターニー経由でサムイ島やパンガン島へのジョイントチケットの列車のパートを担っている。おそらく多くの旅行者はその列車の終点がガンタンということは気づきもしないだろう。 ガンタン駅には古き蒸機時代の遺産であるターン・テーブルが残っている。そして真っ赤に塗られた美しい駅舎が草原に面して建っている。駅のホームはかなり短いので列車がすべて入り込むことはできない。
▲ガンタン駅駅長 一説によればこの駅は海外から輸入されるタイ国鉄インフラの数々を陸揚げするためにできたと言われている。しかしそれにしては海の港へ伸びる線路がない。どうせなら、港で荷物を陸揚げしてそのまま列車に乗せてしまう方が楽だろう。アンダマン海からの陸揚げの便のいい輸出国とすると英国ではないかと思われる。それはおそらくビルマへの船便の経由地になりえるからだ。ラングーンへ通じる河川を登るにはアンダマン海からのアクセスとなるからだ。少なくとも日本ではないと思われる。それはあの海域へ向かう日本からの船団が米海軍の通称破壊包囲網をくぐって到達できるはずがないからだ。特に日本海軍は対潜水艦戦用の駆逐艦などの補助艦艇が極めてすくなかったからである。戦前から戦中にかけて日本の鉄道で貨物牽引の機関車を旅客用の機関車をさしおいて増産したように、海の世界でも戦艦という目立つ存在だけが増産されていったということだ。縁の下の力持ちを無視してはいけない。 |