このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください




何も「正攻法」だけがローカル線の再生法ではないのでは!?

−セブンイレブンと銚子電鉄のコラボレートによる「銚子電鉄弁当」は新たな救済策になるのか?−



TAKA  2008年08月24日



  
桃太郎電鉄の次は駅弁だが・・・果たしてその効果は?


☆ ま え が き

 「地方ローカル線再生」という問題は、今や公共交通を考える上で非常に重要であり、その問題の解決は避けては通れないものの、実際は「此れが何処にでも通じる」という特効薬的な解決策が有る訳で無く、非常に解決困難な問題です。
 私も、「交通に個人的に興味を持つ独りの素人」という視点で、弊HPにもローカル線問題について色々と意見を書いています。
 その中で、色々なローカル線について取り上げましたが、06年の「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」騒動以来「濡れ煎餅」がローカル線の危機を救ったとして、一躍全国区になった銚子電鉄についても、「ローカル線再生の成功事例の一つの形」として取り上げさせて頂きました。

「過去のTAKAの交通論の部屋での銚子電鉄関連記事」・ ローカル線再生の理想的方向性とは?  ・ この会社は「鉄道会社」か?「せんべい屋」か?

 その銚子電鉄について、偶々「美味しいネタ?」を拾ったので、そこからチョット感じた物を含めて書いてみました。

※本記事は、私がmixiで日記として8月20日に書いた物を、一部加筆・修正・編集の上改めて「TAKAの交通論」の記事として掲載させて頂いてます。予めご了解下さい。


☆ 所用時間30分の鉄道線が駅弁を発売!?

 その美味しいネタを拾ったのは、8月13日の水曜日です。
 この日は、市川〜港北NT〜立川と廻る予定で、時間が無かったので、市川〜横浜までの総武・横須賀線のグリーン車車内で、コンビニ弁当で昼食を取る事にしました。
 そのため、市川駅近くのセブンイレブンで昼食の弁当を探して居ると…。数多い弁当の中に・・・、あれ?見たことの無い駅弁を見つけました。その名も「銚子電鉄弁当」と有るでは有りませんか?。今まで銚子電鉄で駅弁とは聞きませんでしたから、「此れは試さないと!」と思わず衝動買いに近い感じで、購入してしまいました。

 弁当は680円とコンビニ弁当としては高いですが、中身は銚子特産のイワシのつみれ煮・、サバの照り焼き・マグロカツなど、千葉県の海の幸を中心に色々な具が入っています。
 この弁当は セブンイレブンの「千産千消」キャンペーン の一環として、セブンイレブンと銚子電鉄のコラボレーションで出来、銚子電鉄公認の駅弁と言う触れ込みです。
 大食いの私的には「チョット量的に物足りない?」と言う感じはしましたが(大食いなのであまり参考にならない?)、コンビニ弁当としてはチョット高めの680円という金額と考えても、中身の質的にはかなりレベルの高いもので、美味しく頂く事が出来ました。


☆ 銚子電鉄の経営は最悪期を脱したか?

 さてその様に今度は「セブンイレブンとの駅弁コラボレート」を行った銚子電鉄ですが、此の頃濡れ煎餅を始め、 桃太郎電鉄とのコラボレート など色々な施策が効を奏したのか?報道によると銚子電鉄の経営は2年前の最悪期を一応脱したようです。

「ぬれ煎餅」銚子鉄道2年連続黒字 「観光鉄道」へ転換図る (8月18日: J-CASTニュース
「 記 事 の 要 旨 」
・08年7月に発表した07年度の決算では、利用者は前年度16%以上増の82万9793人。鉄道部門は1470万円の赤字、06年度の5965万円に対し4分の1にまで減少。「ぬれ煎餅」等の副業は、07年度の損益は前年度比24%増の1億1553万円。会社全体も、前年度比194%増の9812万円の利益で2連連続の黒字。
・現状は「副業の煎餅が本業の鉄道の赤字を穴埋めして、延命している」構図だが課題も多い。車両は全般的に老朽化しており、08年度中に1編成を新車両に更新の為約8,000万円必要で、その他にも安全確保に工事を多数発注する必要があり、多額の費用負担が見込まれている。
・定期券の利用客が減少を続けているので、「地域の足」として伸びる余地は少ない。07年度の乗客数約83万人のうち、首都圏からのバスツアー客が11万人に達している状況とツアー以外の観光客から、乗客のかなりの割合を観光客が占める状況で、今後の活路を「観光鉄道化」に見出したい考え。

 実際の所、此処に書かれて居る「濡れ煎餅が会社を支えて居る」状況と「設備的に老朽化が進んで多額の投資が必要」という銚子電鉄の苦境と、「地域の足として生きられない」「観光鉄道として生きる道を探る」という銚子電鉄の将来のあり方については、既に「既定の話」といえる内容です。
 銚子電鉄は会社の収益的には確かに最悪期を脱しています。又黒字化達成自体は2年前の廃業寸前の苦境を考えると慶賀すべき事です。只それで「先行きが保障された」とは言えません。観光鉄道化を目指すと言う事は「浮動票」を相手にすることであり、それは成功しつつ見えますが将来的に見れば、乗客増に貢献しそうな新たな話題作りは「 銚子市が舞台の地域発信型映画製作が決まる。あの銚子電鉄の実話が映画に銚子映画製作委員会 )」という、2年前の銚子電鉄の話を基にした映画作りしか有りません。後は「犬吠崎とのワンセットによるバス・車観光の誘致」で観光客を地道に集めるしか無いと言えます。
 そうなると、将来の「不安定な観光鉄道に生きる道を探る」状況の中で、「車両更新・設備更新の原資を稼ぐ」為には、「稼げるうちに金を稼いで置く」必要が有ります。その視点で行くと銚子電鉄にはチョット不安が有ります。それは今回の話題の「セブンイレブンとのコラボ駅弁」への姿勢です。


☆ 銚子電鉄はもっと貪欲になる必要が有ったのでは?

 今回のセブンイレブンの「千産千消」キャンペーンでの「銚子電鉄弁当」のコラボレーションは、ローカル線業界においての銚子電鉄の「和歌山電鐵並みに全国区の知名度」を上手く使ってキャンペーンを仕掛けたと言えます。
 実際の所、私が行った市川駅近くのセブンイレブンでは、11時半頃でまだ4個弁当が有ったことを見ると、「数量限定」で有りながら売れ行きは「ボチボチ売れて居る」と見る事が出来て、セブンイレブンの側から見るとコラボレートによる成果は其れなりに有ったと予想出来ます。

 しかし銚子電鉄の側面から考えると、今回のセブンイレブンとのコラボレーションは、何のメリットが有ったのでしょうか?
 確かに知名度は上がるかも知れません。観光鉄道として生きて行くのであれば確かに知名度は大切です。しかし銚子電鉄の知名度は今や「ローカル線有数」であり、今や「知名度を上げる」よりかも「知名度を収入に結びつける」事による「一円でも増収を図る」が必要な状況です。
 そうなると、銚子電鉄の知名度向上は限定的にしか意味は有りません。
 又状況から考えると、「銚子電鉄公認」と言う名前を使って居ることから、コラボレーションの代償として、セブンイレブンから銚子電鉄に広告料的な物が対価が支払われて居る可能性も有ります。その分は知名度向上以上の「プラスアルファ」をもたらした可能性は有ります。

 しかしもう少し、宣伝に成り、銚子電鉄の収入に結びつける方法は無かったのでしょうか?
 確かに、私もローカル線にグルメを結び付けて人を呼ぶ事は、ローカル線活性化の一つの方法だと思って居ます。実際自分のHPでは、グルメの話も含めて銚子電鉄を例に挙げてこの様な事を書いて居ます。「参考:(ローカル線再生の理想的方向性とは?内) TAKA的ローカル線再生の「秘策」とは?
此処では、銚子電鉄の再生に、ラーメングルメを絡ませて「ローカル線とラーメングルメのコラボレートによる活性化」について書いて居ますが、観光的要素を強める為に、グルメとコラボレーションをするのは一つの方法だと思います。

 しかし今回の銚子電鉄とセブンイレブンのコラボレーションでは、「これがローカル線再生に如何に結びつくか?と言うのが、イマイチ見えてきません。
 (実際は幾らかのマージンを貰ったとしても)銚子電鉄の立場から見ると、「銚子電鉄の名前を上手く使われて、セブンイレブンに商売された」と言う感じなのでは無いでしょうか?その状況では余りに寂しいと言えます。
 敢えて冷たくビジネス的に言えば、「苦しいなら石にしがみついても金を稼ぐ」というバイタリティが、銚子電鉄には必要だったと感じて居ます。
 他の会社とのコラボレートで有る以上色々な制約は有るでしょうが、強いて言えばコラボレートで名前を出してマージンを貰うほかに、「弁当1個販売につき幾らかの寄付を募り、それを設備改善に用いる」位の提案を名前使用の対価としてセブンイレブンに提案すると同時に、セブンイレブンにも「銚子電鉄の存続に協力しています」という名声をプレゼントする事で、ネット上で大きな話題になった銚子電鉄問題に対して、セブンイレブンが存続に協力する事の効果を提示しても良かったのでは?と感じます。


☆ 今やローカル線は「泥臭くも金を稼ぐ」必要が有るのでは?

 私は正直言って、今やローカル線再生に「手段を選ぶ余裕」は無いのでは?と感じます。実際の所、ローカル線に「乗客増のチャンス」や「運賃収入以外の収入の機会」などは滅多に訪れる訳ではありません。その機会が訪れた「たま駅長」の和歌山電鐵や「濡れ煎餅」の銚子電鉄は、逆に言えば非常に恵まれた鉄道で有ると言えます。
 その恵まれた機会を生かす為には、私は「お涙頂戴」でも何でも良いと思います。収入を得る為には何でも良いので出来る限りの努力をすべきだと思います。要は「白猫でも黒猫でも鼠を捕る猫は良い猫」と言う「白猫黒猫論」ではありませんが、(合法的で、道義的に問題無い事が前提で)「金を稼ぐのに手段を選ぶ必要べきでない」と言う事だと思います。
 実際交通事業者ですから、運賃収入ですべてを賄えれば良いですが、実際はローカル線は乗客減に悩んで居る状況なのですから、その様に上手くは行きません。そうなった時にどうすれば良いのか?先ず会社として生き残る為には有りとあらゆる手段を尽くして、努力をするしか無いと思います。

 私も経営者の端くれですから、会社の経営に対しては、それ位の「気概と覚悟」を持って物事に当たっているつもりです。実際他の経営者の方々も同じだと思います。
 その中で、銚子電鉄は今回のセブンイレブンとのコラボレートにおいて、其処まで努力したのでしょうか?私はそうは感じられません。何かセブンイレブンに良い様に丸め込まれて、知名度だけ使われて、銚子電鉄としては折角のビジネスチャンスを逃してしまったと感じます。
 本来なら、今回の場合は最善の策はこのコラボレートが確実に集客に結び付くスキームを作れることだったと思います。又集客に結び付かなくても、最低限努力の代償として最低限+αの物を努力して得なければなりません。そうしてでも稼がないと、将来的に「車両更新」「最低限のインフラ設備更新」が目の前に控えて居る以上、支出に対応出来なく又「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」騒動が発生する可能性が有ります。
 この様な場合「二度目のチャンス」は多分ないでしょう。もう一度危機の時に「ネットで濡れ煎餅ブームに火が付く」可能性は低いと思います。そう考えると今回はチャンスを生かしてもっと積極的に動くべきだったと考えても可笑しくは無いと思います。

 地方を走るローカル鉄道に、この様なチャンスは無限に転がって居る訳では有りません。
 実際和歌山電鐵の「たまスーパー駅長」にしても、色々なキッカケが有ったにしても、「計算立てて」あそこまで行った訳ではないと思います。周りから「仕掛け」が有ったにしても、そのキッカケをがっしり掴んで上手く生かした両備グループ小嶋代表のセンスが有ってこそ、上手く行ったのだと思います。
 その様に考えると、ただ「コラボレートして、公認弁当を出す」だけでは、折角のチャンスを逃してしまったのでは?という気がします。
 例えば、弁当を680円→700円にする代わりに、20円を「銚子電鉄を救おう!」と名づけて、寄付金を募る「お涙頂戴」作戦で、千葉限定から(せめて)東京・神奈川県辺りまで広げるなど、どちらにもwin・winの関係になる事を提案・実現出来たのでは?と思います。
 どちらにせよ、銚子電鉄は今回のセブンイレブンとのコラボレートに関して折角の「収入を得るチャンス」を逃したのでは?と思います。今の私に出来る事は「今回の逃したチャンス」が銚子電鉄に取って大きなダメージにならない事を祈るだけです。

 銚子電鉄の場合、06年の経営危機に際して、ネット上で「銚子電鉄を救おう」という運動が盛り上がって「濡れ煎餅」が売れて、一時の経営危機は脱し黒字化を達成するまでになりましたが、ネット上のブームは一過性です。又「観光鉄道」として観光客を呼ぶことが鉄道事業の収支改善に繋がったことも事実ですが、これも又「浮動票」的な一過性が存在します。
 しかし銚子電鉄は、幾ら「定期客が減少して」「地域の足として伸びる余地は少ない」と言えども現実は公共交通事業者としては、ネット上のブームが去ろうとも、濡れ煎餅が売れなくなっても、観光客が来なくなっても、会社に鉄道を安全に運行する力が有る限り、最後まで安全に公共交通としての鉄道を運営しなければならない、社会的義務が有ります。それからは逃れる事は出来ません。
 その様な社会的義務を考えると、(外野の人間だから簡単に言えますが…)「使える物は何でも使う」位の精神で、より安定した基盤を作る為に一円でも多い収入を目指すように、最大限頑張るべきだと思います。

 銚子電鉄の先行きは、前に述べたように「観光鉄道化」に活路を見出すにしても、非常に厳しい将来が待って居る事は間違い有りません。
 又沿線自治体で有る銚子市も「 銚子市民病院の休止 」を決定するなど、銚子市政は非常に厳しい状況に置かれて居ます。この様な状況下で「市民病院を維持出来ない」のに、市内交通としては殆ど機能して居ない銚子電鉄を救う為に税金を投入出来るでしょうか?私は残念ながらNOだと思います。
 自治体の支援が殆ど期待出来ない現状では、銚子電鉄自身が本当に頑張らないと、銚子電鉄は生き残る事が出来ない状況では?と私は傍目から見ていると感じます。
 その中で、現実問題として如何にして生き残っていくか?色々な方策を考えなければならないですし、ピンチのローカル線事業者や苦しい地方自治体だけ出なく、前に「 ローカル線再生の理想的方向性とは? 」で「色々相談に乗り手助けをする第三者が必要ではないか?」と書きましたし、mixiに置いてもこの問題を書いた時にマイmixiの方々からのコメントで「内で捌ききれない事項を代行し、PRや副収入の手助けを行う団体としての「再生機構」的な団体」や「鉄道・交通・都市(まちづくり)・環境・広報広告・経営の専門家集団」の必要性がコメントされましたが、正しくその様な組織が必要なのかもしれません。
 ローカル線の再生に関しては「鉄道事業者の自助努力」と「周囲で協力する体制」は車の両輪で有ると考えます。実際の所地方自治体は財政が危機的になって居る自治体が多く多くを頼れない状況になっています。この様な状況では現在頼りになるのは「鉄道事業者の自助努力」だけです。しかしこれも「鉄道事業以外の総合的なノウハウに乏しい事業者」では限界があります。ですから今や早急に「外部から地方ローカル線事業者を支援・アドバイスする組織」造りをしなければ、今回のような「もったいない」様な事例が発生する可能性もあります。今や残された時間は多くは有りません。




※「 TAKAの交通論の部屋 」トップページへ戻る




このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください