ロ ー カ ル 線 再 生 の 理 想 的 方 向 性 と は ?
−地方ローカル線で行われて居る「再生への事例」を検証する−
TAKA 2008年06月24日
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今やローカル線再生の象徴!? 和歌山電鐵のいちご電車&おもちゃ電車 |
「参考サイト」 ●(和歌山電鐵関係) ・
和歌山電鐵HP
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両備グループHP
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貴志川線の未来を“つくる”会HP
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わかやまの交通まちづくりを進める会
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和歌山電鐵貴志川線
(wikipedia)
●(銚子電鉄関係) ・
銚子電鉄HP
・
銚子電鉄サポーターズHP
・
銚子電気鉄道
(wikipedia) ・
銚子電気鉄道線
(wikipedia)
●(三岐鉄道北勢線関係) ・
三岐鉄道HP
・
北勢線対策室HP
・
三岐鉄道北勢線
(wikipedia)
●(えちぜん鉄道関係) ・
えちぜん鉄道HP
・
ふくい路面電車とまちづくりの会
・
えちぜん鉄道
(wikipedia) ・
福井市 交通政策室 都市交通戦略
☆ ま え が き
今や日本の交通業界だけでなく日本の社会全体の問題として、「地方の公共交通を如何に維持するか?」という問題が存在しています。
日本では基本的に交通事業は、都市の公営交通事業や一部のコミュニティバスなどを除いて「民営企業に依る採算性を重視した運営」が中心となっています。特に鉄道事業においては、運営主体の基本は民間事業者か公的資本と民間資本の入った第三セクターが担っている為に、公的側面の強い交通事業に関しても採算性についてはシビアな見方をして、不採算な事業に関しては路線廃止・撤退等が行われるようになっています。
この様な動きは、平成12年3月に鉄道事業方が改正されて、旅客鉄道分野で「
需給調整規制
」が廃止されて「
参入を路線毎の免許制から許可制へ、退出を原則1年前の事前届出制へ
」変更され規制が緩和された事で、一層加速するようになりました。実際問題この規制緩和は参入・退出両方に行われましたが、規制緩和の結果押し寄せたのは「不採算ローカル線の廃止」であり、事業退出への規制緩和が不採算ローカル線廃止へのハードルを下げた事は間違いありません。
その為に鉄道路線に関しては、廃止は原則として1年前の事前届出でOKになり、旅客鉄道廃止のハードルは極めて低くなりました。近年ローカル民鉄の廃止が急速に増えて居る背景には「地方ローカル線の利用客・収入自体が減少している」という根本問題の他に、この様な「旅客鉄道の廃止自体が行いやすくなった」という「規制緩和の陰の側面」が存在しています。
しかしながら「地域の公共交通の維持」と言う側面からも、この様な「地方ローカル鉄道廃止」の流れに対し、「何とかして地方ローカル線を維持しよう」とする動きも出て居ます。実際近年民間事業者の撤退による地方ローカル線廃止が現実化した路線において、第三セクター設立に依る鉄道維持⇒万葉線,えちぜん鉄道etc・他の民間事業者への委託⇒和歌山電鐵・三岐鉄道北勢線などの対応策が取られて居る例も出てきて居ます。
その様な「地方ロ−カル線の維持」の動きは近年多くなって居ますが、その先に必要な物は「利用客減・収入減」と言う現実に控えて居る大きな問題を解消して、地方ロ−カル線を再生し活性化させる事です。その活性化に関しての試みは苦境に立たされたローカル鉄道を中心に色々と行われて居ます。
その「ローカル線の再生」に関しては、JRのロ−カル路線を本格的なLRTに変身させた富山ライトレール・「たまスーパー駅長」で一躍有名になった和歌山電鐵・事故による運行停止から第三セクターで運行再開したえちぜん鉄道・濡れ煎餅と危機がネット上で話題になった銚子電鉄等々、数多くの事例が存在しています。
今回は今までTAKAの交通論で取り上げて来た「ローカル線再生の話題」について、今までの訪問・今回のGWの訪問・行ってきた論述などを基にして、「ローカル線再生」と言う問題について、「総括」的に纏めながら考えてみたいと思います。
☆ 先ずはローカル線再生の事例について考えてみよう
ローカル線再生の理想形を捜し求める時に、先ず考えなければなら無い事は、日本全国で数多く有る「ローカル線再生」の事例の中でも「成功事例」といえる事例について探して分析をして見る事が重要では無いでしょうか?
近年地方ローカル線の存廃についての動きが出ており、色々な所でローカル線の「存続するか?」「廃止するか?」という有り方が問題になっています。ここ数年で地方ローカル線の存続・廃止が問題になった路線について振り帰ると、(その分類で色々な取り方が有りますが)私が思い出すだけで「存続⇒万葉線・三岐北勢線・えちぜん鉄道・和歌山電鐵」「廃止⇒名鉄岐阜4線・日立電鉄・鹿島鉄道」等が有ります。
これらのロ−カル線の存廃問題については、過去に弊サイト「TAKAの交通論の部屋」でも成功・失敗の事例について色々と取り上げた事が有ります。
(TAKAの交通論の部屋 参照記事:名鉄岐阜4線
1
・
2
鹿島鉄道
1
・
2
・
3
・
4
和歌山電鐵
1
・
2
三岐鉄道北勢線
万葉線
)
今まで取り上げたローカル線の存廃に関しての問題で、成功例・失敗例両方について自分なりの分析は加えて居るつもりです。その結果として有る程度は「ロ−カル線再生に必要な物は何であるか?」という物は見えて居るのではないか?と自分の中で感じては居ます。
今回表題の様な「ローカル線再生の理想形」を探るに当り、2つの手法が有ると思って居ます。一つは「成功事例から学ぶ事」であり、もう一つは「失敗事例から学ぶ事」です。この二つの手法は私自身「どちらも有りだ」と思いますが、近年のロ−カル線廃止に関して特に岐阜・日立・鹿島に関しては稚拙な市民運動と言う失敗要因が絡んでおり「失敗事例を学んでもローカル線再生の理想系を探せ無いのでは?」と感じて居ます。
その為今回はローカル線の存廃問題に晒された路線の中で、何とか再生の道筋を着けた鉄道、要は「成功事例」の中から、ロ−カル線再生の理想系を探る方が好ましいのでは無いか?と感じ、その様な路線の中から和歌山電鐵・銚子電鉄・三岐鉄道北勢線・えちぜん鉄道の4鉄道について再生の事例を見ながら「ローカル線再生の理想系」を探してみようと思います。
今回取り上げた4つの鉄道の内、和歌山電鐵・銚子電鉄・えちぜん鉄道の3鉄道は、現在ローカル線の存廃問題について「地方交通の有り方」を絡めて世間から注目を集めて居る鉄道です。しかし私は現在世間が色々な所で取りあげて居る内容は、必ずしもローカル線再生に必要な本質を表しては居ないと感じて居ます。ですからその世間一般が本質に辿り着いて居ない点を含めて、今回は取り上げながら考えたいと思います。
● ローカル線再生事例(1) −和歌山電鐵−
先ず第一の事例は「和歌山電鐵」です。和歌山電鐵の再生については、今や再生事例としても極めて知名度が高く別に考えれば和歌山電鐵貴志川線自体が「日本一知名度の高いロ−カル線」と言っても決して過言では無い状況になっています。
元々和歌山〜貴志間の鉄道は、大正5年に運行開始した山東軽便鉄道(のちに和歌山鉄道)が建設し運行していた路線で、その後昭和32年に南海系の和歌山電気軌道と合併し最終的には昭和36年に和歌山電気軌道と南海電気鉄道が合併し、昭和36年(1961年)から平成18年(2006年)までは、南海電気鉄道の一支線として運行されてきた路線です。
その路線が、南海電気鉄道が赤字に耐え切れなくなり、2004年8月に南海電気鉄道が貴志川線廃止の意向を表明の上2004年9月に事業廃止届を国土交通省に出した事から、貴志川線の廃止問題が表面化し、2005年2月和歌山県・和歌山市・貴志川町(当時)が存続で合意し、事業の引き継ぎ先を公募した結果、両備グループの岡山電気鉄道による運営が決定し、2006年(平成18年)4月1日から和歌山電鐵として運行が開始されました。
その運行を引き継いだ和架山電気鉄道が、岡山電気鉄道でも「
MOMO
」等の話題性の有る列車を運行した経験を和歌山電鐵でも生かして、運行開始直後から「いちご電車・おもちゃ電車・たまスーパー駅長」などの話題を提供し、関心を集めると同時に乗客も集め色々な意味で活性化を果たして居ます。
和歌山電鐵のこの様な活躍については、過去にも「
「たま駅長」と「いちご電車」がローカル鉄道を救うのか!?
」と言う一文で、和歌山電鐵の活躍について書きましたが、今回は前回の訪問から丁度1年経過したので、その後の「追跡観察」という側面を含めて、再度現地を訪問すると同時に和歌山電鐵・市民団体等が主催の「貴志川線祭り」も見てきました。
現在の和歌山電鐵の活況については上記の訪問記に書いた通りですが、2006年4月の開業から約2年ですが、この間に「いちご電車・たまスーパー駅長・おもちゃ電車」と良くも此れだけ「世間へ話題のネタを提供したな」と驚くほど、人の関心を集める為の「創意工夫」「話題作り」を行ったと思います。
その最大の成功例が「たまスーパー駅長」で有る事は間違い有りません。2007年1月の「ネコ初の」駅長就任以来、テレビ・雑誌が取り上げる事数知れず、遂には「
フランスの映画(人間の鏡としての猫)
」に日本代表ネコとして登場するまでになっています。此れだけ取り上げられ、しかもテレビのニュースでは全国区で何回も取り上げられている事から見れば、その宣伝効果は金額に換算したら「十億円以上かな?」と思わせる程の効果が有り、その為和歌山電鐵は「日本一有名なローカル線」と言っても過言では無い状況になっています。
しかも和歌山電鐵の凄い所は、この「たまスーパー駅長」の人気を増収に上手くリンクさせて居る事です。和歌山電鐵の2007年4月〜12月の対前年比の状況は「旅客数:定期94.8%・定期外107.9%」「収入:定期93.8%・定期外109.2%」(2008年2月10日貴志川線ニュース(発行:貴志川線の未来を"つくる"会)より引用)という数字であり、定期外利用客の増加数は「和歌山電鐵1年目の2006年(この年は既に対前年で利用者192万人⇒210万人、前年比約10%の運輸収入アップ)との対比」という事から見ても極めて特筆すべきもので有ると言えます。
その結果として、2007年度決算は未だ出て居ませんが、2006年度は「運営移管後10年間の運営費補助(欠損補助)は、和歌山市65%・貴志川町(当時)35%の割合で8.2億円(8,200万円/年)を上限に実施する」という欠損補助以内に収まったと聞きます。又大多数の地方ローカル線では乗客減・収入源の流れが停まらない状況ですが、その中で和歌山電鐵開業後の2年間でのこの成績は特筆出来る成績で有ると言えます。
しかもこの成功が、和歌山電鐵・沿線市民団体が中心となった「創意工夫と自助努力」によりもたらされた事がより素晴らしい事で有ると言えます。結局の所誰が何を追うと、地域の公共交通を維持するには運営者・沿線住民の協力の上で、「如何にして利用客を集めるか?」と言う命題に取り組まないと地方交通は維持出来ませんし、外の地域から人を集めて来ないと地域の活性化を図る事が出来ません。その様な地方ローカル線の再生と地域への外部客の流入を、地域の鉄道と「いちご電車・たまスーパー駅長・おもちゃ電車」という魅力が引き金になり実現出来た事は大きな意義が有ると言えます。
● ローカル線再生事例(2) −銚子電鉄−
続いてのローカル線再生の事例は、「銚子電鉄」を取り上げました。
銚子電鉄に関しては過去に何回か訪問した事が有り、最初の訪問時には「
この会社は「鉄道会社」か?「せんべい屋」か?
」という紹介文を弊サイトで行って居ますが、この会社は有る意味「極めて特殊な破綻と再生」を経て居る特殊事例と言えます。銚子電鉄の場合、2006年8月に社長が総額約1億1000万円の業務上横領の疑いで逮捕され、此れが引き金となり自治体の補助金が停止され資金繰りが苦しくなり、加えて国土交通省関東運輸局が2006年10月23日から10月26日にかけて実施した保安監査に関して11月24日に安全確保に関する改善命令を受けて、存続の危機に立たされました。
その中で2006年11月の鉄道車両の法定検査が行えないという危機に際して、銚子電鉄は11月15日に、ウェブページ上で「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」という文章を掲載して、ぬれ煎餅の購入などによる支援を呼び掛けた事がネット上で大きな反響を読んで、多数のネット住民・鉄道ファン・観光客等が銚子電鉄に来訪すると同時に銚電の濡れ煎餅に注文が殺到し、当座の危機を切り抜ける事が出来ました。
これにより、銚子電鉄は経営危機とネット上での動きをきっかけにして世間の注目を集める事になります。しかもその世間の注目が「ネット」という特殊では有るが現代的な場所を中心に盛り上がった事で、銚子電鉄に協力するネット系企業(濡れ煎餅販売サイトに協力したオンラインショッピングのバリューコマース・ラッピングトレインを走らせたハドソン等)の支援を集めるなど、一般的なローカル線の再生・協力とは別の方向に進んで行きます。
今回はこの様な企業が「スポンサー+α」としてローカル鉄道の再生に協力をすると言う、今までに無い特殊な再生事例について、現地への訪問を中心に見てみたいと思います。
この訪問記で見たように、銚子電鉄は乗っただけでも他のローカル私鉄とは決定的に異なる事が良く分かります。「何が違うか?」といえば、地域の利用が殆ど無いという点です。確かに今回は訪問したのがGWの5月3日と言うのも有るでしょうが(過去の訪問全回が土・休日)、それを割り引いて見ても、地元の利用客は「極めて少ない」のは明らかです。
加えて今回の問題について深刻に思って居ないのは、他のローカル鉄道の廃止問題で大概発生する「地域による存続運動」が見た限り殆ど発生しなかった事です。地元の自治体銚子市の動きも鈍く見えましたし、ほぼ唯一「銚子電鉄を支援する組織」として今回の危機の後に出来た「
銚子電鉄サポーターズ
」も安全対策・施設改善の為の寄付等は行って居ますが、地元の人達の利用者促進策を打ち出す様な「ローカル線活性化の王道」的な施策が打たれて居ません。それは何故か?一つは「銚子電鉄サポーターズ」が銚子の住民以外の外部の人が中心になって居る事ともう一つは地元利用客が殆ど居ないという事が要因で有ると思います。
では誰が利用して居るのか?それは大部分が「観光客等の定期外使用客」ではないか?と感じました。私は土曜日・休日しか訪問した事が有りませんが、訪問した日は「此れだけ乗って居るのに経営危機なの?」と言いたい位乗客は乗っています。しかしそれでも鉄道事業の経営が厳しく、インフラ・設備に投資が出来ず、収入が上がらないのは、観光客が来る土日・休日以外は殆ど人が乗って居ないからでしょう。銚子電鉄自体が輸送密度1000人/日程度の輸送量で、土日にあれだけの人が乗って居るのですから、平日は閑古鳥が鳴いていて、土日は観光客で賑わって居る状況は容易に想像出来ます。
だから銚子電鉄の場合、普通とは違う形で再生と支援が行われて居るのでは?と感じます。元々今回の危機に際して「ネットで支援活動が盛り上がった」という事も有り、地元の利用促進の様な「地に根付いた」活動ではなくネットの世界等での「濡れ煎餅購入促進運動」の様なバーチャルな活動が中心となってしまい、「地域の利用者を増やしてローカル線再生を図る」という普通のローカル鉄道再生のとは違う形で動き出す事になりました。
其処にコラボレートして来たのがネット系企業です。ネット系企業は確かに銚子電鉄に手を差し伸べました。しかしその手は「ネット上の濡れ煎餅販売サイト構築」や「ゲームをネタにしたラッピングトレイン運行」など、副業収入が上がったり観光客の乗車増が望めるなど銚子電鉄の経営には貢献する内容ですが、地域の公共交通機関として銚子電鉄が貢献出来るようになる内容では有りません。その為傍目から見ると「チョット浮ついている鉄道会社」という感じに見えます。
しかし現実問題として、銚子電鉄は存廃の危機から約1年半が経過して居ますが、此の頃は「廃線の危機」という話が聞えてこなくなっています。厳しい状況である事は変わりは無いでしょうが、少なくとも絶対的な廃線の危機は脱したと言う事は「バーチャル上のローカル線支援運動」が其れなりに効力を発揮したという事で有ると思います。
銚子電鉄の場合は、偶々「濡れ煎餅」という誰でも気軽に買える「支援の材料」が存在したからこそ「ネットでの支援運動」が成功したのだと思います。これは極めて特異な例で有るとは思いますが、有る程度成功して居る以上は「一つの方策」で有る事は間違い有りません。「ネット上での支援活動」が「バーチャルな運動で地元に根づいて居ない運動」だからと言う理由だけで簡単には否定出来ません。「この様なやり方も有るのだ」という点で思慮に入れなければならない実例で有ると思います。
● ローカル線再生事例(3) −三岐鉄道北勢線−
続いてのローカル線再生の実例は「三岐鉄道北勢線」です。この路線は2006年9月に現地を訪問し
弊サイト
に「
過去の遺物「軽便鉄道」リストラクチャリングの現場を見て
」という一文を書きましたが、此処も間違い無く「ローカル線再生の一つの成功例」で有ると思います。
三岐鉄道北勢線は再生事例(1)で取り上げた和歌山電鐵と同じく「大手民鉄ローカル線」からの再生例で、これ又同じく「既存鉄道事業者が再生に乗りだした」事例で、極めて近似の事例で有るといえます。しかし三岐鉄道北勢線は和歌山電鐵に比べて決定的に劣る事例が有ります。それは762mmの軽便鉄道で有る事です。軽便鉄道は元々簡易な鉄道として造られた為にインフラ構造は弱く、其処から普通鉄道に近いレベルに昇華した鉄道(有る意味和歌山電鐵貴志川線も該当)は未だ良いのですが、軽便鉄道規格で残りしかもモータリゼイションの流れの中でも生き残った鉄道の場合、前時代的なインフラが残りその低規格の中で運行する状況になって居ます。三岐鉄道北勢線は珍しい「取り残された軽便鉄道」に該当します。
その様な「インフラにハンデを背負った鉄道」である三岐鉄道ですが、過去に「
過去の遺物「軽便鉄道」リストラクチャリングの現場を見て
」で取り上げたように、ローカル鉄道が現在の時代に適合し将来的に生き残る事が出来るレベルに改善を図って居ます。
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左:新しく整備された東員駅 中:此方も新設の大泉駅 右:大泉駅では地元産品の販売店や駐車場も同時整備 |
具体的にいえば三岐鉄道のインフラ改善施策は多岐になります。最初の近鉄北勢線から三岐鉄道への転換時に「
北勢線活性化基本計画
」を作成し、その中で転換後10年間で「赤字補填20億円(年2億円)・設備近代化に33.2億円」を投じ、北勢線を「延命存続ではなく、リニューアルして運行を継続する」命題の下で、「リニューアル計画(鉄道事業者中心)・鉄道を生かした街づくり計画(行政中心)・利用促進計画(住民中心)」の計画を作り、北勢線の再生・活性化を目指すと言う、かなり先進的な計画です。
三岐鉄道北勢線は、その「北勢線基本計画」に基づき、国土交通省の「
幹線鉄道等活性化事業
」「
鉄道軌道近代化設備整備事業
」等を活用した「
三岐鉄道・北勢線の利用促進と地域振興プログラム
」により、幹線鉄道等活性化事業で行違い設備増設・踏切制御回路変更・コンクリート柱化・曲線改良関連工事・軌道強化や鉄道軌道近代化設備整備事業で駅自動化システム導入・CTC装置更新・現業区の統廃合・車両の冷房化や高速化等の「盛り沢山」といえる数の事業が行われました。
その結果、元々「日本に残る数少ない軽便鉄道」であった北勢線が、軌間・車両こそ軽便鉄道時代のレベルの物が残って居ますが、駅関係サービス施設や軌道等のインフラ関係は「衰弱して居る老人に強壮剤をドーピングと言えるレベルで大量投入しているのでは?」と思うほど手が入れられており、今や昔の軽便のレベルとは比べ物にならない状況になっています。
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左:東員駅では駅前広場・駐輪場・駐車場も整備 中:こちらも新築された穴太駅 右:軽便ローカル線の駅なのに自動改札!@東員 |
特に三岐鉄道のインフラ改善で特筆出来る事は「思い切って駅を再配置して、広い場所で駅を拠点化すると同時に、車・自転車・コミュニティバス等の連携を図って居る」という施策を取って居る事です。実際北勢線活性化計画で行われた駅の再配置では、多くの駅が廃止されたと同時に「スーパーと隣接して作られた星川駅」「公共施設に隣接しアクセス道路が整備されコミバスが乗り入れる東員駅」「地元農産物販売施設と併設した大泉駅」等の特徴的な新駅が作られ、「隣接廃止駅の合計よりかも大幅に利用者が増えた」など非常に成果を挙げて居ます。
これらの駅は特徴的な配置をして居ます。新駅は「平行して居る幹線道路からのアクセスが非常に便利」な所に作られたりアクセス道路が整備されるなどで、車等でのアクセスが考慮されて居ると同時に、キス&ライド・パーク&ライド・駐輪場など、各住居から駅までのアクセス手段として徒歩を強要する訳でなく、自転車・車等の便利なアクセス手段でアクセスしてもらう事を狙った駅造りがされて居ます。此れも北勢線の利用客増加に大きく寄与した事は間違いありません。
加えて、三岐鉄道北勢線では、新駅以外の駅でも
パーク&ライド駐車場を整備
する等のハードの整備を行うと同時に、国土交通省北勢国道事務所などが行った「
かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト・北勢
」というモビリティ・マネジメント(MM)が行われ、これらの「自動車利用者に一部でも鉄道を使ってもらう施策」により結果として三岐鉄道北勢線の利用者が増えるなど、官が旗を振った施策が積極的に多数行われています。
その様な「官の努力」の効果も有り、三岐鉄道北勢線では三岐鉄道初年度である平成15年度と平成19年度では旅客数206.1万人⇒219.7万人・運賃収入280百万円⇒339百万円と大幅に増加しており、合わせて近鉄時代最終の平成14年度と比べると旅客数240.7万人⇒219.7万人・運賃収入226百万円⇒339百万円という感じになります。これは近鉄⇒三岐移管時に運賃が近鉄料率⇒三岐料率に変更されたに伴う値上げが「近鉄時代の旅客数にまで戻らない」要因が有ると言えますが、それを割り引いても「三岐移管後の利用客数増加」と「近鉄時代に比しての運賃収入増加」は極めて興味深い結果で有ると言えます。
三岐鉄道北勢線:利用客、3年連続増 経営は依然厳しく (5月30日:
毎日新聞
)
「記事の要旨」 ・「北勢線対策推進協議会」の会合が29日開かれた。三岐鉄道から07年度の経営状況が同鉄道から報告された。
・利用客は219万7034人と前年度より8万7539人増え3年連続の増加。利用客内訳は定期外73万6422人・通勤57万4320人・通学88万6292人といずれも増えた。最も増えたのは定期外利用客の5万2107人
・三岐鉄道は阿下喜温泉とタイアップした割引切符の販売や、各駅の駅舎や駐車場の整備で利用しやすくなったことが、増加につながったと説明
・営業収入3億4700万円(前年度比1800万円増)。営業費用6億7100万円(同700万円減)。経常損失3億4900万円(同2000万円減)減価償却費を含む赤字額4億6900万円(同700万円増)。
・03年7月の近鉄⇒三岐鉄道への事業譲渡後の累積赤字は約21億円になる。
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しかし三岐鉄道北勢線の問題は、「此れだけ官が旗を振って活性化しても未だに大赤字」という事です。元々北勢線基本計画では「今後10年間で近代化設備と運営経費に55億円」の費用を投じると有り、これを年間に直せば5億5千万円の費用が近代化投資と赤字補填に掛かるという事になります。その金額から見れば「減価償却費を含む赤字額4億6900万円」というのは「想定の範囲内」とも言えます。(単年度ずつで5.5億円の近代化投資補助・欠損補填に投じられているのであれば「累積赤字は約21億円」は無い筈で有る・・・)
これを住民合意の上で「地方交通路線維持のためのコスト」と割り切れば、決して高い物ではありません。チョット発想を変えて「利用客当り150円位の補助を出しているのだ」と考えれば、割り切れない金額ではありません。しかし別の見方をすれば「収入の倍のコストが掛かる運行体制」というのも少々問題有りと言わざる得ません。
加えて北勢線基本計画では「10年間に近代化投資と運営経費で55億円」の補助が投じられて居るのに加えて、「幹線鉄道等活性化事業」「鉄道軌道近代化設備整備事業」という補助が投じられています。実際「補助金のデパート」というほどありとあらゆる補助が「地方の一軽便ローカル鉄道」に投じられています。此処に多少の問題が有ると思います。
私は「ローカル鉄道に補助を投じて再生する」という事自体には賛成ですが、最低限の「費用対効果」は必要で有ると思います。北勢線の場合、行われて居るのは「キス&ライド・パーク&ライド・自転車アクセス等の環境整備」「鉄道利用促進の為のMM施策」など、鉄道活性化に役立ち社会的にも効果の高い施策であると思います。しかしこの「てんこ盛り」の補助の中で「果たして此処まで必要なの?」という補助まで行われて居ます。例えば「鉄道軌道近代化設備整備事業での駅自動化システム導入」で幾つかの駅で自動券売機・自動改札が整備されましたが、幾ら「活性化に力を居れて居るローカル線」でも輸送量的には「輸送密度2000人/km台半ば」の輸送量の路線です。その路線に「自動券売機&自動改札」です。これは果たして必要なのでしょうか?「ワンマン化対策と確実な運賃収受への対応」という事なのでしょうが、もう少し費用対効果の高い上手いやり方が有ったのでは?と感じます。
加えて、新聞報道では「阿下喜温泉とタイアップした割引切符の販売」等の運行者の補助によらない自助努力による増客策が実ったと報道されて居ますが、他のローカル私鉄の成功例と見比べる限り、「企業の努力」が足りないのでは?という感じもします。確かに「たまスーパー駅長」の和歌山電鐵・「濡れ煎餅」の銚子電鉄は「特異事例」かもしれませんので一概に比較は出来ませんが、三岐鉄道北勢線の場合他のローカル鉄道に比べて「官の補助」が多数有るので、それに隠れてしまう側面も有るのでしょうが、如何も色々な側面で「民間の努力が足りなく見えてこないのでは?」と感じました。そこはもう少し何とかする必要が有ると思います。
● ローカル線再生事例(4) −えちぜん鉄道−
今回取り上げる「ローカル線再生事例」の最後の例は「えちぜん鉄道」になります。えちぜん鉄道もこれ又チョット特殊な再生事例になります。なぜなら「今まで走っていた鉄道の転換」ではなく「一度走らなくなった鉄道の再生」という事例だからです。
えちぜん鉄道の路線は、元々京福電気鉄道福井鉄道部の路線として運行されており、1992年の越前本線東古市(現在の永平寺口)〜勝山間・永平寺線の廃止・バス転換表明以降、鉄道路線の廃止についてその対応策が検討され関係自治体で「京福越前線活性化協議会」が作られ、行政支援や利用促進策が講じられ存続に向けての動きが下地として存在して居ました。
しかしその様な動きの中で、2000年12月17日越前本線志比堺〜東古市間・2001年6月24日越前本線保田〜発坂間で、半年間に2度も電車同士の列車衝突事故が発生し、その後国土交通省により、「2回目の事故の翌日から京福電気鉄道に対し全線の運行停止・バス代行」が命じられた上で、翌月には「安全確保に関する事業改善命令」が出されました。その結果京福電鉄は事業改善命令の負担に耐えられないとして営業の継続を断念し、京福バスによるバス代行が行われ、その代行バス運行のまま京福電鉄は10月に廃止届を国土交通省に提出し京福電鉄による運行の廃止が確定します。
その後、(京福のバス増車などの努力に関わらず)冬季のバス代行の混乱などで「壮大な負の実験」とまで報道されるほどの状況になり、結果として遅まきながら沿線自治体が立ちあがり、京福電鉄の事故による運休から約2年後の2003年7月19日に第三セクターの「えちぜん鉄道」として勝山永平寺線福井〜永平寺口間・三国芦原線福井口〜西長田間が正式営業再開し、同年10月19日には廃止が確定した永平寺線を除く全線が運行再開しました。
そういう様に見ると、えちぜん鉄道は色々な意味で「他のローカル鉄道」とは違う形を辿り運行再開・再生を果たして居ると言えます。
当初においては「えちぜん鉄道」は10年間限定の財政支援として県:113億円(基盤整備)・沿線市町村:31.2億円(損失補填)が決められて、加えて近代化設備整備費補助が行われるなど、今回取り上げた地方ローカル線4線の中で
最大規模の公的な補助
が投入されて居ます。
それにより2階も正面衝突事故を起こして「ボロボロ」と評しても良いレベルで有った京福電鉄が、えちぜん鉄道として見事再生しましたし、事故の原因になった老朽化した車両も比較的車齢の新しい中古車を増備する事が出来て大きく改善されるなど、えちぜん鉄道に変わって鉄道のサービスレベルも改善されたと言えます。
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左:第三セクター化に伴い新型車両も導入@福井 中:新型車両MC6001形車内 右:えちぜん鉄道の切り札!? 今や知名度抜群のアテンダント |
しかしながら、確かに新型車両等が入り、加えて
全駅に駐輪場・19駅にパーク&ライド用駐車場
が整備されるなど、えちぜん鉄道のサービスレベルは改善が図られた事は間違いありません。しかし元々路線規模が長く京福からの施設買取に20.5億円を投入(三岐北勢線は近鉄から土地は簿価・設備は無償譲渡)していて、運行再開・安全関係の投資に約47億円を投じている事も有り、三岐北勢線の様な「劇的なインフラ改善」が目に見える形で見えない状況になっています。
けれども、えちぜん鉄道の場合は其処を「創意工夫」で切り抜けて居るのが特徴と言えます。今「えちぜん鉄道」と言えば「ローカル線ガールズ」という本が出版され加えて12ch「
ガイアの夜明け
」で取り上げられて、一躍有名になった「
アテンダント
」の存在が良い例です。
地方ローカル線ではワンマン運転・無人駅というのは「当たり前」の存在です。こうなると問題なのは「運賃収受」のやり方です。実際既存の方法では「取り逸れ」が多数有るのはほぼ間違い無いと思います。そうなると「収入確保」の為には「確実なる運賃収受」が問題となるのですが、その解決策は2つ有ると思います。それは(相反する施策ですが)三岐鉄道北勢線が取った方策とえちぜん鉄道が取った方策です。
三岐鉄道北勢線では、確実なる運賃収受を目指して鉄道軌道近代化設備整備事業で駅自動化システム導入(自動券売機・自動改札機)を行いました。それに対してえちぜん鉄道が取った方策が、(運転業務は行わないが)運賃収受等を主な仕事とする「アテンダント」を導入して車内で運賃収受を行うと同時に、車内放送や乗客への誘導・案内等の乗客へのサービスを行うようにしたのです。
三岐鉄道北勢線・えちぜん鉄道、どちらも「確実なる運賃収受を行う」という目的に対して取った施策は間違えては居ません。只その手段に関しては、三岐鉄道は「補助」が有ったからこそ「駅自動化システム」というイニシャルコストは多額に掛かるものの人件費を削減出来るシステムを選択したと言えますし、えちぜん鉄道は「駅自動化システムに投資する金は無いから、給与というランニングコストが掛かれども人間で対応しよう」「折角採用するなら地元の人にしよう」「男性よりコストが安いから女性にしよう」「折角乗っているのだから色々なサービスをして貰おう」という考え方で、現在の「アテンダント」というシステムを考えたのだと思います。
どちらも目指して居る方向性は間違えて居ません。正解で有ると言えます。しかしながら波及効果を含めて見れば「得られた効果」はどちらが大きかったか?と言えばえちぜん鉄道の方が極めて大きかった事は間違いありません。ハッキリ言えば「三岐鉄道の駅自動化システム⇒富者の発想・えちぜん鉄道のアテンダント⇒貧者の発想」です。鉄道会社の王道の発想は富者の発想の方ですが、それが出来ない状況のえちぜん鉄道では「持たざるものの苦しさ」から苦肉の発想として考え出したのがアテンダントといえますが、それがえちぜん鉄道の知名度を全国区にしたのです。
ローカル鉄道の再生には、インフラ設備投資・運行欠損補助両面において、公的な補助が大切な事は間違い有りません。しかし「何でも金を投じれば良い」という訳では有りません。あくまで公的な税金を財源にして補助を投入して居る以上、「最低限の補助で最大限の効果」を狙わなければなりません。そうなると大切な発想が、「高いコスト意識を持った柔軟な発想による施策」という事になります。
しかし同時に「お客さまが何を望んで居るか?」「お客さまに必要なサービスは何か?」という事を探りながら、最善の投資を行わなければなりません。しかも三岐鉄道北勢線の様に「衰弱した老人に強壮剤をドーピングと言えるレベルで大量投入」で、補助金が投入される「モデル路線」とも言える恵まれたローカル鉄道はそう多くありません。大部分のローカル鉄道の場合「少ない投資で大きな効果」を得られる投資とは何か?を必死になって考えて行わなければなりません。
その中でえちぜん鉄道の「アテンダント」は、一つの「考えるべき方向性」を示したと考えられます。「アテンダント」の無人駅での料金収受は「人の存在」が一定の安心感を生みますし、乗降補助はソフト的なバリアフリー対策にもなります。前出の「ローカル線ガールズ」の中に『田舎鉄道の欠点を逆手に取り「当社には全国的にも珍しいアテンダントが居ます。きめこまやかなサービスを致します。」というアピールポイントに変えてしまおうと言う訳です。』という一文が有りますが、正しくこの様な柔軟な発想がローカル線の再生には必要なのでは?と感じます。
その他にもえちぜん鉄道には、「放置自転車を活用した『
無料レンタサイクル
』」というサービスもあります。これも鉄道を利用した人達にフィーダー部での交通手段を提供するサービスですが、「放置自転車」を活用しているから初期コストはゼロですし、目的地での徒歩以外でのフィーダー交通手段を提供するという点で、鉄道利用を促進する施策です。「金が無い」ながらも、工夫してこの様な柔軟な施策を実施するという点に、一つの「ローカル線を再生する解」が有るのでは?と改めて感じます。
まして、えちぜん鉄道は努力の成果もあり、一定の成績を挙げて居ます。
えちぜん鉄道は「約2年間の運休」という運行の断絶が有りながら、えちぜん鉄道再生後には「
廃止時約8,300人/日⇒バス代行時約2,000人台前半/日⇒えちぜん鉄道運行再開時約6,300人/日
」まで盛り返し、平成17年には廃止前に近い7,000人台半ば/日に戻るなど、2年間の鉄道廃止という運行断絶がありながら健闘して居ると言えます。
(参考資料:えちぜん鉄道の主要指標)年度 | 営業キロ | 輸送人員 | 輸送密度 | 職員 | 資本金 | 営業収益 | 営業費用 | 全事業経常損益 |
平成16年 | 53.0km | 2,425千人 | 1,438人/日 | 162名 | 537百万円 | 665,964千円 | 1,031,609千円 | ▲346,748千円 |
平成17年 | 53.0km | 2,795千人 | 1,622人/日 | 151名 | 537百万円 | 742,963千円 | 1,057,538千円 | ▲302,118千円 |
この表はえちぜん鉄道の「1年間連続で稼動した」平成16年・平成17年の成績です。前の京福時代の成績資料が無いので一概に比較は出来ませんが、この数字を見る限りえちぜん鉄道が着実に成績を上げて居る事が分かります。少なくとも過疎化・少子高齢化が進んで居る地方の鉄道で上がり調子の成績を出して居るのは評価出来ると思います。
又収支的にも平成17年度には赤字が約3億円まで減少し、欠損補助の年間平均額(10年間で31.2億円⇒年平均3.12億円)を少しの金額ですが下回る状況まで来ており、「(赤字額から見て)当初想定の成績をクリア」する所まで来ています。当初運営の計画が出来た時にはは「許容出来る社会的補填額が年間3.12億円」という事で合意されて居ると考えると、その当初想定以下に赤字が収まる事は社会的にも好ましい事です。
今までの「放置プレイ」に起因して、巨額の補助・投資をして再生せざる得なかったえちぜん鉄道ですが、地域が「壮大な負の実験」のバス代行で鉄道の重要性を認識し、その上で地域住民も出資すると同時に
各種のボランティア活動等
でマイレール意識を持ち鉄道運営に協力すると同時に、利用客減少が一般的な地方ローカル鉄道で、利用客増・運輸収入増を達成したのは素晴らしい成果で有ると言えます。
此処までの再生をもたらした要素は色々有ると思います。住民の意識・地方自治体の努力・「壮大な負の実験」による経験等色々な要素が有ると思いますが、その中でも大きな要素は「えちぜん鉄道の努力」が有ると思います。今回取り上げた「アテンダント」の話だけでなくえちぜん鉄道では乗客増加のために「
イベント・ツアー・割引乗車券・サポーター制度
」など色々な制度が行われて居ます。これらの試みが有形無形の効果でえちぜん鉄道にプラスをもたらしたと言えます。この点は「成功事例」として学ばなければならないと言えます。
☆ ローカル線再生の「理想的方向性」とは? −ソフトとハードの融合が大切?−
さて、この様な「成功・失敗」さまざまなローカル線再生の現場を、和歌山電鐵・銚子電鉄・三岐鉄道北勢線・えちぜん鉄道と、(有る程度の)再生の成功事例に絞って見て来ましたが、その成功事例を見ると「何故再生に成功したか?」という事について見えてきます。
先ず和歌山電鐵ですが、此処は間違い無く「和歌山電鐵の運営母体といえる
両備グループ
の経営センス・努力」と「地域の努力」が上手く融合して、それが良い方に作用して「(主に定期外)乗客の増加」という成功をもたらしたと言えます。その和歌山電鐵の成功の象徴が「たまスーパー駅長・いちご電車・おもちゃ電車」の3点セットで有ると言えます。この3点セットは当事者の予想外の効果をもたらした側面も有りますが、両備グループの経営センス・努力と地域住民の協力がなければ出来なかったと思います。
銚子電鉄の場合、此処は「再生の成功例」として取り上げるのがチョット気が引けますが、銚子電鉄が「廃線の危機」から一定の再生を果たせたのは、観光客の存在・ネット上の盛り上がり・ツールとしての「濡れ煎餅」の存在という物が、(偶々)上手く作用した特異例で有ると言えます。「ネット」という世界は「熱しやすく冷めやすい」世界ですし、地域の公共交通を如何にするか?という視点とは違った世界で進んでしまって居る事なので、必ずしも「好ましい例」とは言えないと思います。
三岐鉄道北勢線の場合、此処が何故成功したか?は和歌山電鐵と有る意味正反対で、要は「公的補助の大量投入による体質改善・利用客増加策」が上手く機能して居るからだと言えます。三岐鉄道北勢線は現在でも「762mmの軽便鉄道」という規格で有るが故に、和歌山電鐵等と比べても大きくインフラ・車両規格が劣ります。実際「小さい電車」という事が不満として挙がる車両で運営している状況です。しかしそれでも(営転換時に一度逸走した乗客が戻りだして利用者は増えつつ有るのは、軌道改良による速度向上・駅の大胆な再配置・パーク&ライドやキス&ライドへの対応等の利便性向上へのインフラ改善を行ったからです。そのインフラ改善の原動力は「大量の補助」で有る事は明らかです。そう言う点では三岐鉄道北勢線の成功は「官により造られた成功」とも言えます。
最後の実例はえちぜん鉄道になりますが、此処は「官・民・運営者の危機感」が成功の秘訣でしょう。京福の事故以来約2年間の運休による「壮大な負の実験」により、鉄道の重要性が官・民両方に認識された事で、鉄道の復活に官が積極的に取り組み投資も行い民も協力し運営者もアイディアを出し積極的に集客策やサービス向上策を打つなど、「社会のサービスとして鉄道を如何にするか?」という事を積極的に考えています。確かに運営者の努力の注目度は上手く話題作りに成功した和歌山電鐵の方が目立ちますし、官の補助による体質改善・インフラ改善は三岐鉄道北勢線の方が劇的です。しかしえちぜん鉄道は(目立たないものの)その両方で上手くバランスが取れて居ると感じます。其処が正しく再生の要因では?と感じます。
この様に今回取り上げたローカル路線4社の成功の要素について、その要因について考えて見ると意外な事が分かります。それは「絶対的に欠点の無い成功例は無い」という事です。
今回取り上げた4社の内銚子電鉄は「インターネットという極めて特異な手法を用いて乗客を取り戻すとした例」であり、再生手法を分析する事で「再生の理想形」を探す為に取り上げるのには適当では無いと言えますが、それ以外の3社の再生事例に関しても、私が見るに「再生の理想形」を探す為に取り上げる例としては適当だが、何処かに足りない点が有り「決して全て完璧な再生の理想形では無い」という事です。
つまり和歌山電鐵も「経営上の努力とセンス」「地域の協力と関心」「最低限の税金投入」で此処まで再生し、利用客が大幅に増えて赤字も最低限に納まるなど「再生に成功している」と見えますが、公的資金のインフラ投入が少なく将来にわたり「鉄道を永続的に運行出来るインフラ的裏付けが無い」という点で将来に不安を抱えていますし、三岐鉄道北勢線は「軽便鉄道を現代的に体質改善した大幅投資」や「駅再配置・P&R・モビリティマネジメント等の先端的な施策」が行われ現代的鉄道として大幅にモデルチェンジしましたが、「官主導で地域住民の協力が乏しい」「運営の収支的にはかなり厳しい」点に問題が有りますし、えちぜん鉄道も「県・自治体の大幅投資」「運営者の色々な創意工夫」「地域のボランティアの協力や地域の意識の高さ」「赤字が想定の範囲内に収まりつつ有る経営状況」など素晴らしい状況ですが、ここもインフラに問題点を抱えていますし、将来的には福井鉄道との関係やLRT計画との関係と言う問題も抱えて居ます。
この様に「ローカル鉄道再生の理想的な方向性に近い」といえる3社でも、「何処かしらに欠点を抱えて居る」状況であり、残念ながら現存の地方ローカル線には「再生の理想的な方向性」は存在しないといえます。
ではローカル線再生の理想の方向性はどのような形なのでしょうか?
確かに「ローカル鉄道再生の理想的な方向性に近い」が「何処かしらに欠点を抱えて居る」といえる今回取り上げた3社ですが、その各社の状況は「欠点は抱えて居る」ものの「成功事例」で有る事は間違いなく、私はその成功事例の中から有る程度の「ローカル線再生の理想的方向性」は探る事が出来るのでは?と考えて居ます。
ズバリ言えば、私が思う「ローカル線再生の理想的方向性」とは、「和歌山電鐵・三岐鉄道北勢線の良い所を足して2で割る」では?と感じて居ます。実際和歌山電鐵の「両備グループのマネジメント能力・地域の協力」と、三岐鉄道北勢線の「国・自治体による補助・劇的な体質改善」が重なった時には、どれだけ素晴らしいローカル線が出来るのか?と言うのが私の感じです。確かにえちぜん鉄道も頑張っていますし、単体でバランスを見ればえちぜん鉄道の施策は「全てが揃って居る」とも言えますが、何か私の個人的にはえちぜん鉄道は「注目と客を集め金に結びつけるマネジメント」では和歌山電鐵の方が優れ、「諸々の施策を用いた劇的な体質改善」と言う事への公的セクターの積極的関与と努力では三岐鉄道北勢線の方が優れて居るのでは?と感じて居ます。その為この様な書き方をしました。
要は「ソフトとハードの融合」による総合的な改善と運営が、「ローカル鉄道再生の理想的方向性」には必要なのでは?と言う事です。基本的に鉄道はインフラ産業ですから、その運営の永続性を担保するのは「一定レベルに整備されたインフラと設備」です。又地方では人口減少が進んで居る中で色々な手法で乗客を増やすには「何か手を変えて乗ってもらうマネジメント」が必要です。加えて此れだけモータリゼイションが進んだ時代では、地域の住民の意識と協力とそれを利用に結びつけるインフラとマネジメントが必要です。それを達成する為に必要なのが「ソフトハードを融合して色々な手法を用いて行うローカル線運営」が必要で有ると言う事です。
その理想的方向性は「ソフトは和歌山電鐵」「ハードは三岐鉄道北勢線」という事になります。三岐鉄道北勢線の施設はモータリゼイションが極めて進んだ時代の中で「車から電車に移りたくなる様なインフラ」がハードとして揃っていますし、和歌山電鐵には「いちご電車・たまスーパー駅長・おもちゃ電車」という人の注目を集めるソフトとそれを企画・実現した経営力が備わって居ます。形は多少別で有るにしても方向性としてこの二つが兼ね備わった鉄道こそ、「理想的方向性」を示す物ではないでしょうか?
しかし問題は問題を抱える地方ローカル線が多数あれども、この様な「理想的方向性」を示せても、この成功を展開するシステムが存在しない事です。現状においては「各社の努力で勉強しながら手探りで進む」しか、再生に向けて行動を起こす事が出来ない状況です。
規模が小さく「今を生き残る事に日々汲々としている」数多くの地方ローカル鉄道に、「この様な方向性を自分で勉強して関係各所と調整して将来を自分で切り開きなさい」と言う事は、苦しみながら最大限頑張って居る人に「高所から頑張れと激励」するだけであり、何も状況を改善出来る物では有りません。理想的方向性を現実にするには、何かもっと「色々相談に乗り手助けをする」第三者が必要ではないか?と感じます。
ではその「手助けをする第三者」のなり手は一体誰が適当なのでしょうか?
一つの候補として現在「
地域力再生機構
」の存在が有るといえます。地域力再生機構は本来今年の通常国会で法案成立後今年夏にも設立と言われて居ましたが、ねじれ国会下で法案が成立せず早急な設立が危ぶまれて居ます。その「地域力再生機構」が準備段階で(機構送りの候補としての)
「50社リスト」が有る
と言う報道が流れて居ます。その「50社リスト」には地方ローカル鉄道が第三セクター・民営合わせて13社(青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道・三陸鉄道・山形鉄道・会津鉄道・いすみ鉄道・松本電気鉄道・福井鉄道・天竜浜名湖鉄道・北近畿タンゴ鉄道・井原鉄道・土佐くろしお鉄道・土佐電気鉄道)が取り上げられて居ます。
しかし地域力再生機構は「産業再生機構の地方版」といわれて居ますから、「リストラに大胆に鉈を振るう」「過大債務企業の債務を整理する」「複雑な関係を合法的に整理する」という場合に有効と言えます。そういう点では過剰債務で金融支援を受けて居る松本電気鉄道(アルピコグループ)や、支援で名鉄・金融機関・自治体で協議中の福井鉄道の再生などには有効かもしれません。しかしローカル鉄道で本業が衰退している鉄道の再生が鉄道・交通のプロが居ない地域力再生機構で出来るのでしょうか?私はNOだと思います。債務の棒引きは出来ても「地域交通として使われ、結果として経営も有る程度成立する鉄道」にローカル鉄道を再生させる力は、地域力再生機構には無いのでは?と感じて居ます。(そういう意味では「無闇やたらな債務棒引きをさせない」という点で、東葉高速等の「営業利益は出て居るが、キャッシュフローで苦しく減価償却費で赤字」の企業にも適用すべきではない)其処から考えれば、交通の分野で地域力再生機構の役割は少ないといえます。
では「地域力再生機構」がローカル線再生に役に立たないと言うのであれば、何処が良いのでしょうか?本来なら「国土交通省」という事になりますが、確かに国土交通省は「
中小鉄道への助成
」や「
ベストプラクティス集
」などを出したり、中小鉄道支援に積極的ではありますが、如何せん「補助を出す当事者で監督官庁」という立場を考えると、地方ローカル鉄道再生の「手助けをする第三者」としては、チョット相応しく無いと言えます。
そうなると誰が「手助けをする第三者」として相応しいのだろうか?と考えると、私は「
独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(以下鉄道・運輸機構と略す)」が相応しいのかな?と思います。元々は日本鉄道建設公団・国鉄清算事業団・運輸施設整備事業段が統合されて出来た組織で、イメージ的には「新幹線・鉄道新線を作る組織」というイメージが強いですが、現在では船舶整備への補助なども行って居ますし、鉄道分野でも新幹線・都市鉄道の整備だけでなく「
地方の鉄道事業者に対して、鉄道施設の日常保守に関する相談や、改修計画のアドバイス、近代化補助等各種補助制度の説明などを行う「ホームドクター」を積極的に推進
」するなど、地方鉄道への支援も行って居ます。此れを「インフラ・施設面でのアドバイス」だけでなく、もっと総合的に広げて「経営のコンサルタントから地域交通の活性化策や地方鉄道への総合的なアドバイス」まで広げる事で、地方鉄道にとっての「手助けをする第三者」になる事が出来ないでしょうか?
少なくとも、「地域力再生機構」とは異なり、経営的なノウハウはそんなに無くても、鉄道に関してはインフラ・施設・運営に関してはプロが揃っていますし、足りない所は外部から力を借りて来れば十分対応出来ると思います。しかも「補助金」という最後の金の出所で有る国土交通省とも近く、民間組織に比べて自治体に対しても影響力を発揮しやすい立場にあり、「第三者では有れど、高所に立ち総合的にプロデュース」をするにはベターな立場に居ると思います。この様な組織が有るのなら積極的に活用すべきではないでしょうか?
今や幾ら「ローカル鉄道再生の理想的方向性」を示しても、何処の会社でも和歌山電鐵・三岐鉄道北勢線・えちぜん鉄道の様に上手く再生の道筋を付ける事が出来るわけでは有りません。銚子電鉄の様に「奇跡的に盛り上がる」例も有りますが、それは「偶々当った」というは奇跡に類する話です。又自治体にしても何処の自治体もその様なノウハウを持って居る訳では有りませんし、自治体組織間の壁がネックになり上手く水平展開も図れません。そうなるとやはり包括的に大きく動ける「第三者」が上手くサポートをして挙げなければ、再生は実際問題として上手く行かないのでは?と思います。
此れだけローカル線の危機が一般化して来た現在、何かしらの全国的に展開出来る施策が必要です。その第一歩は「再生の相談・アドバイス・コンサルタント等が出来る手助けをする第三者組織」の設立では?と思います。器を作ればそれで色々な事が動き出すのでは?と思います。今こそその第一歩を踏み出す時ではないでしょうか?
☆(あとがきに変えて)ローカル線再生に一番大切な物は?
この様にローカル線の再生について、『地方ローカル鉄道活性化の現場を見る』という視点を中心に、ローカル線の再生には何が必要なのかを見てきました。
私自身は、決して交通の専門家でもありませんし交通の実務にも関わって居ません。有る意味「チョット詳しい普通の人」という感じです。又ローカル線問題については弊サイトで色々書いては居ますが、市民活動等で何も「具体的な活動」をして居る訳でもありません。そう言う意味では「口だけで言う素人の部外者」ですし、有る意味ではプロの方々に(自分では絶対違うと堅く思って居ても)「鉄ヲタの妄想」と言われても、研究や実務で実績が無い以上致し方ないといえます。
しかし私自身(鉄道自体には20年以上前から興味がありましたが)ここ数年で交通論全般に興味を持ち、社会人としての生活を送りながら色々な場所を見て廻り、特に廃止問題に晒されて居るローカル線について何箇所も(表面的だけかもしれませんが)見て廻りました。その初期はローカル線問題に関して「如何も存続の市民活動は間違えた方向に進んでいて役割を果たして居ないのでは?」と思い、その考えに沿った文章を弊サイトにも書いて居ました。それが「
路面電車の復活は市街地活性化に寄与するのか?
」であり「
鹿島鉄道の存続運動は何故挫折したのか?
」でした。この時期に名鉄岐阜4線・日立電鉄・鹿島鉄道等の廃線が続き、その廃線とそれに対する市民活動を見ていて「市民活動の動きは間違えて居る」と強く感じ、この様な批判的な記事を書いて居ました。
けれども私自身のローカル線問題について考え方を変えさせたのが、昨年に訪問した和歌山電鐵でした。その時の内容について「
「たま駅長」と「いちご電車」がローカル鉄道を救うのか!?
」という一文に書きましたが、正直言って和歌山電鐵を訪問して「ローカル線に此れだけ注目を集めて人を呼び寄せらるのか!?」と驚かされた事を覚えて居ます。
正直言って此処が私に取ってローカル線について考える「ターニングポイント」となりました。この後視点を「如何に努力すればローカル線は再生するのか」という視点でローカル線問題を見るようになりました。
今回はその様な私の「ロ-カル線問題」についての「如何にすればローカル線は再生するのか」という考え方の一つの総括として、「ローカル線再生の理想形」という点で「ローカル線再生の有り方」について一体何が必要なのだろうか?今度はもっと抽象的な視点から書いてみる事にしました。
近年ロ-カル線の廃止と再生について、色々な事例を「遠い外部」から少しだけですが見て来た私ですが、廃止の事例と再生の数多くの事例を見ると、上手くローカル線を再生させるのには何が必要なのかは?見えてくる様な気がします。
それは「天の時・地の利・人の和」という事です。約2300年前に中国で活躍した孟子は「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」といって居ますが、これは普遍の考え方でありローカル線再生にも当てはまると思います。
確かにこれらは普遍的にビジネスを成功させるのに必要な要素だと思います。それは小さな会社でも経営者として経営して居ると良く分かる話です。ではこの
孟子の言葉
をローカル線の話に当てはめれば「天の時⇒色々な要因による公共交通見直しの動き」「地の利⇒沿線に成立するだけの潜在人口・需要が有る」「人の和⇒コーディネイター・経営者等に優れた人が居て、地域等と上手くコラボして運営する」という事になると思います。この中で孟子の言葉「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」に当てはめれば、成功にはどれも重要だが順序を付ければ「人の和>地の利>天の時」となると言う事で有ると思います。
私は色々ローカル線問題について見て来たつもりですが、その中でも個人的に主観的に見ると理想形は「和歌山電鐵」で有ると思います。和歌山電鐵の再生事例こそ「天の時・地の利・人の和」を満たした成功事例だと思います。
和歌山電鐵の場合、廃線問題が発生した時に、元々「県庁所在地の郊外路線で其れなりの最低の需要は存在した」という地の利が存在し、其処に「
NHKの番組
で取り上げられて一気に注目が集まった」という天の時が現れたが、大元は人の和として「地道に影として活躍するコーディネイターとしての
WCAN
と
辻本勝久和歌山大学准教授
の存在と、「
ラブレター
」で上手く「公共交通の救世主」と言われる両備グループの小嶋光信社長を引き込み和歌山電鐵設立までこぎつけた」という点だと思います。有る意味どれが欠けていても、和歌山電鐵の今の奇跡的再生は無かったでしょう。しかし一番大切だったのは、
交通の関して確かな見識を持つ
「両備グループと小嶋社長」の存在と「上手く地元を含めたコーディネイトをした黒子」の存在で出来た「人の和」だと思います。
確かに今まで述べてきた様に、ローカル線再生の為に「手助けをする第三者」が必要で有る事は、間違い無いと思います。少なくとも事例の水平展開やトータル的な相談窓口・対応窓口を纏めて、効率よく「再生の手段の手助けを求めるのに」は「手助けをする第三者」の存在は効果が有る事は間違い無いでしょう。
しかしそれだけでは駄目です。最終的にローカル線を再生させるのは「住民・利用者・運営者・自治体」等の関係者が一体となり「必死になり再生に努力する事」で有ると思います。その努力があってこそ根本的に変えられない「地の利」をカバーする程の「天の時・人の和」が得られて、最終的にローカル線の再生が果たせるのでは?と感じます。
それは成功事例としての
和歌山電鐵
の存在と、失敗して廃線になってしまった
鹿島鉄道
の存在を見比べれば明らかです。今や地方の公共交通を維持する為には、地方のローカル鉄道の再生は重要な課題で有ると言えます。その課題の解決の為に、成功事例・失敗事例から再生の為に必要な手法も分かってきて居るといえます。
その再生に必要な事例の研究・手助けをする組織の必要性と共に、一番大切なのは古今東西変わらない「天の時・地の利・人の和」で有る事を考えていただきながら、今後はローカル線再生が地方の公共交通維持に寄与する様になって欲しいと心から念じたいと思います。
* * * * * * * * * * * * * * *
○(余談)TAKA的ローカル線再生の「秘策」とは?
この様に「ローカル線再生」の有り方について私見を述べてきましたが、最後はチョット視点を変えて「余談」をしたいと思います。
今まで述べてきた様に「ローカル線再生」の施策は、有る意味一定の「理想的方向性」が有る事は此処で示したように間違い有りません。しかし同時に「理想的方向性」は存在すれども、此れが全てのローカル鉄道に「万能」に当てはまる訳ではありません。進むべき方向性の中にも「此処に対応したオーダーメイド」が必要で有る事は間違いありません。
今回は最後に「余談」として「ローカル線再生の為の考え方」として、(妄想的要素が強いですが・・・)一つの可能性を示して見たいと思います。
これは一つの「可能性」に過ぎません。偶々私が自分のサイトに「
TAKAのグルメ探求の部屋
」というコーナーを作るほどグルメであり、偶々「ラーメン発見伝」で「銚子」に関するラーメンの話を聞いた事から、今回の「余談」のような事を考えだしました。
しかし発想の根源は「たまスーパー駅長」「濡れ煎餅」と同じく、ローカル線に人の目を集める普通の人・大勢の人に受け入れられる人気の集まる物は無いか?と言う視点から考えて、「ラーメン」という物を導き出しただけであり、考え方の「根源」は特に「たまスーパー駅長」と同じで有ると言えます。
確かに今回も「発想の根源」とは言いましたが、結局の所最後に「人気を呼ぶ事が出来ればいいや」という事で、今回の事を思い付きました。実際回答が一つではありませんから、私の「余談」における内容が本当に合って居るかは分かりません。
実際の所、この企画内容が漫画で「銚子」が取り上げられ、其処には濡れ煎餅・たい焼き等のグルメ系の名物が有るローカル私鉄銚子電鉄が有ったから、この様なコラボレートを考え出しただけで、実際の所「最初から大外れする事は無いだろう」とは思いつつ、「本当に成功するの?」と言われれば、それだけの綿密な調査をした訳ではありません。
しかしながら、ローカル線の活性化を考えるに当り「色々な方法が有るのでは?」という中から、自分で思い着いた一つの案を考え出して見ました。あくまで私の個人的私案ですが、ご照覧頂ければ幸いです。
※「
TAKAの交通論の部屋
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