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関 西 鉄 道 ア ッ ト ラ ン ダ ム
TAKA 2007年05月20日
仕事の都合上、GW・夏休み・正月等の「世間一般も休む長期休暇」でないとナカナカ長い休みを取る事が出来ない私に取り、GW・夏休み・正月の長期旅行は「TAKAの交通論の部屋」のネタ集めに取り重要な旅行で有ると言えます。
本来今年のGWは台湾新幹線を狙った台湾旅行を企画して航空券&ホテルまで確保していたのですが、諸般の事情で旅行を企画していたGW前半が旅行に出れなくなり、泣く泣く旅行はキャンセルする事になり、その代替案として色々考えた結果GW後半に日帰りで和歌山電鐵を中心に大阪南部・和歌山方面を廻る事にしました。
日帰り旅行なので「始発に近い新幹線で大阪入り・最終に近い新幹線で帰京」と言う強行軍でしたが、関西内での移動には主にJR西日本のアーバンネットワークを使う事になりました。関西には昨年4月も
神戸
に訪問したので、「始めて」と言う訳では有りませんでしたが、前回はバス・私鉄主体の移動だったので今回は本当に久しぶりのJR西日本のネットワーク利用となりました。
そういう訳で今回は「駆け足訪問」だったので「表面だけを見る」形になってしまいましたが、関西の鉄道特にJR西日本のアーバンネットワークを中心に利用して感じた事を「アットランダム」と言う形で纏めてみる事にしました。御笑覧いただければ幸いです。
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☆ 本当に新快速は「早いが混んでいる・・・」 (JR京都線新快速 京都8:44〜大阪9:13)
本来和歌山に向かうのであれば新大阪or京都乗換で「くろしお」に乗るのが一般的ですが、今回は和歌山電鐵での乗継上の理由で先を急いでも変わらない状況に陥ってしまい、その為「和歌山に向かうのに時間調整の一ひねりが必要」と言う状況に成ってしまいました。その為新幹線を京都で降りて新快速で大阪に向かい大阪から紀州路快速で和歌山に向かう事にしました。
この日はGW後半初日で観光客が動き出す日ですが、9時前で流石に東京発始発新幹線ですから京都での降車客も多くは有りませんし未だ京都駅構内も人出が多くは有りません。巨大な駅ビルが控える京都駅ですが、駅構内は非常に閑散に見えます。
この時間は大阪方面へ雷鳥・スーパーはくと・オーシャンアロー・はるか等が発車していきますが、大阪へ向う雷鳥を除いて大需要地を経由する前の列車の為京都時点では閑散としており、やはりこの区間では京阪神三都間を結ぶ新快速が主役です。
日曜日のこの時間でも新快速は15分毎で運転しており「待たずに乗れる」状況ですが、新快速到着直前にはホームに何処からとも無く人が現れ、最前部でも10名/ドア程度の乗客が列車を待っています。新快速が到着すると各ドア数名程度の降車に10名/ドア程度の乗車が錯綜しかなりの混雑になります。京都発車時点で最前部でも転換クロスが補助席まで埋りチラチラ立ち客が出るほどの乗車率です。日曜日朝と言えどもこの乗車率は驚くべき物が有ります。
左:新快速の乗降風景@京都 右:新快速車内@京都〜高槻
左・右:複々線を並走する列車
新快速は京都を発車すると複々線の外側線を飛ばしていきます。途中向日町で「踏切に人が立ち入り安全確認」との事で先発の雷鳥が向日町の出発信号(駅構内)で停車、乗車の新快速が向日町の場内信号で停車し其処で5分程度待たされる状況が有りましたが、それ以外は特に問題も無く危なしい感じも無く時々130km/hを出しながら新快速は疾走していきます。
流石に天下の大動脈東海道本線と言う事もあり、写真に有るように直線が長く伸びていて軌道も整備されていて踏切が多少「危険な事も有るのかな?」と思わせる以外、高速運転に何も支障が無い線路が延びています。これは民鉄ではこうは上手く行かないでしょう。このインフラの良さこそ「官設鉄道」を引き継いだJRの最大の武器なのでしょう。
この後新快速は高槻・新大阪と停車していきますが、5分の遅れと言う事も有るのか両駅とも多くの人が乗車してきて最前部でも新大阪到着時点で混雑率80%程度・発車時点で100%overと言う混雑率です。平行走行の緩行列車が座席の半分も埋まるか?と言う程度の混雑率で有った事から比較しても、良く言われる「新快速への集中」と言うのは常時起きていることなのでしょう。只これだけ高速で三都を結ぶのであれば誰でも利用する事は間違いないですが・・・。しかし利用者にしてみれば「早い・便利」と言うのは良い事ですが「混んでいる・座れない」と言う事は良い事では有りません。とは言ってもこれ以上の増発は難しいでしょうし、12両への増結で昼間の混雑は救われてもラッシュ混雑の問題は残ります。その点では「売れる新快速」は同時に「悩ましい新快速」と言う事が出来ます。
まあそれには「緩行線を走る快速の速達化・活性化」等の方策を考えなければいけませんが、この様に見ればJR西日本アーバンネットワークのスター新快速は非常に悩ましい存在で有ると言えます。福知山線事故以来騒がれている「ダイヤの余裕」はダイヤ改正の効果で有る程度取り戻したと言えます。(防護無線発報で向日町で約5分停まった私の乗車の新快速も大阪発車時点で遅れが2分になっていた。回復運転の効果も有るのだろうがそれ以上に大阪での余裕時分の効果であると推察できる)この次にJR西日本が打つ方策は「新快速の混雑緩和」でしょう。しかし混雑緩和は簡単そうに見えて難しい課題です。ですから今後の新快速の歩む道は「売れっ子スター故の厳しさ」が待っていると言えるでしょう。
☆ 関西こそ「路線のブレークスルー」の元祖? (関空快速 大阪9:35〜天王寺9:52)
大阪で新快速を降りて大阪環状線のホームに向かい、関空快速・紀州路快速を待ちます。しかし便利になった物で昔は「泉南・和歌山・紀州へは天王寺か難波から行く物」と言う感じでしたが、今ではくろしお&オーシャンアローと関空特急「はるか」が新大阪・京都へ乗り入れており、同時に関空アクセスを担う関空快速と阪和線沿線と和歌山への輸送を担う紀州路快速が大阪駅乗入を果たして居り非常に便利になっています。
JRにとっての大阪の南部のターミナルである天王寺は確かに繁華街で地下鉄も接続しておりデパートも有りそれなりの拠点性は有ります。しかし大阪の中心は「キタ」の梅田の方が強く天王寺だと大阪環状線or御堂筋線でアクセスと言う事になります。しかも大阪市内の拠点の一つである「ミナミ」の難波にもJRはJR難波(昔の湊町)と言う駅が有りますが、繁華街から遠く拠点を置くには不便な駅です。ましてや新幹線アクセスとなると天王寺・大阪乗換となり「天王寺から御堂筋線が一番便利?」と言う状況に有り、天王寺をターミナルとするJR関西線・JR阪和線は「ターミナル立地が不利」と言う状況で有ると言えました。
その「ターミナルの不利」を解消して大阪・新大阪・京都に乗り入れさせたのが関西線・阪和線からの大阪環状線への乗り入れ運転でした。この直通運転は1973年の関西線電化時から関西線快速(今の大和路快速)が1989年からは天王寺に連絡線を建設の上阪和線列車(最初はくろしおが直通)が大阪環状線に運転直通を始めました。1973年から大阪環状線への快速列車直通運転を始めたと言うのは、今東京でも流行の「他路線間を直通運転する路線のブレークスルー」の元祖と言える物でしょう。
左:梅田貨物線から大阪環状線に入る「特急くろしお」@西九条 右:大阪環状線⇔関西本線の渡り線@新今宮
左:関西本線⇔阪和線の渡り線@天王寺 右:関空快速と紀州路快速の分割風景@日根野
東京の湘南新宿ラインの「成立のキモ」は山手貨物線の活用・蛇窪信号所の存在・戸塚駅での東海道線〜横須賀線の渡り線の存在と言う3点セットですが、大阪の大阪環状線への直通運転の「成立のキモ」は梅田貨物線の活用・西九条駅配線の上手な活用・新今宮の大阪環状線⇔関西線渡り線・天王寺の関西線⇔阪和線の連絡線の4点で有ると言えます。
この配線の上手な活用により大阪の中心「キタ」(大阪駅)と奈良・泉南・和歌山が近くなり、加えて観光地の南紀を結ぶ特急くろしおが新大阪・京都で新幹線と結びつき対東京で観光的にアクセス改善がプラスとなり非常に大きな効果が上がったという事が出来ます。又JRの経営的には「東側より利用者が少ない大阪環状線西側に乗客を流し込み効率を上げる」「(大阪直通と大和路快速で)半死状態だった関西線を此処まで生き返られた」と言う事から見れば、非常に効果は大きかったということが出来ます。
ましてこれらのインフラが、関西国際空港アクセスのはるか・関空快速にも上手く活用されていて1999年からは関空快速の分割併合で紀州路快速も運行されていて、今の様な「大阪・新大阪を結ぶネットワーク」が形成されています。このネットワークの存在こそJR西日本のアーバンネットワークの大きな武器でしょう。「ブレークスルーによるネットワーク形成」は大和路快速・紀州路快速の盛況を見れば明らかです。アーバンネットワーク成功にはこの様な要素が大きく絡んでいたことも又事実だと思います。
☆ やっぱり「関空」は遠いな〜 (関空快速 天王寺9:53〜日根野10:30・南海ラピート52号 岸和田15:50〜堺16:02)
東京在住の私に取り「大阪」と言うと「新幹線で行くものだ」と言うイメージが強く、過去に「神戸空港初降り」が目的でスカイマーク&神戸空港を利用した事は有りますが、それ以外に関西に行く為に飛行機に乗った事は無く、その為関西国際空港に関しては「
果たして関西三空港は並立できるのであろうか?
」と言う一文を書いた事は有りますが、実際は恥ずかしながら関西国際空港に行くどころか「近くに行く」事すらありませんでした。
確かに国内線では大部分が飛行時間1時間程度ですから飛行時間と同じ程度アクセスに掛かるというのは抵抗が有るのは分かりますが、実際関西国際空港へのアクセスは「難波から45分・新大阪から64分」と言うレベルですから、都心から国際空港の成田まで60分は確実と言う東京に住んでいる私に見れば「そんなに騒ぐほど不便か?」と思っていた事が正直言えば有りました。
しかし今回関西国際空港には寄りませんでしたが、その近くを通りしかも関空快速・ラピートと言う関空アクセス列車に乗りアクセスの状況を少し見る事が出来ました。
左:アクセス特急「はるか」と関空快速@東岸和田 右:スーツケースが多い関空快速車内@東岸和田
左:南海のアクセス特急ラピート@堺 右:ラピート52号車内@岸和田〜堺
一言で言ってしまえば「関空は遠いな〜」と言う事です。「難波から38分・新大阪から48分」と聞けば確かに遠くないと思うのですが、実際行きに関空快速を利用すると大阪〜日根野で55分・天王寺〜日根野で37分ですから、関空と言うと「関空快速では天王寺から40分以上・大阪から1時間以上」掛かる事になります。しかも関空快速は阪和線内では「流して運転」状態ですし、停車駅も「天王寺-堺市-三国ヶ丘-鳳-和泉府中-東岸和田-熊取-日根野」と多く空港アクセス快速としての速達性に問題が有ります。
しかし未だ関空快速はGW初日午前中に空港へ向う列車と言う事もあり、大きなトランクを持った人が結構乗っており「空港アクセス列車」と言う雰囲気がしましたが、もっと悲劇的な状況は南海です。南海は一般車で運行の「空港急行」は普通に「20m4ドアロングシート車」が入りますし加えて車両は車齢30年以上の老兵が轟音を立てて走っています。これで難波〜関西空港間45分近く乗るのでは「拷問」と言えます。それに対してラピートは「(当初の)関空に対する南海の意気込み」が伝わるほど上質で(デザインの善し悪しは別として)金を掛けて造った車両であり世界的にも恥ずかしく無い車両です。しかし今回GW初日の午後の上りと言う利用者が「如何にも少ない」時間帯に岸和田〜堺間で乗りましたが、「閑古鳥が鳴く」というより「殆ど空」と言う状況でした。これは関空にとっても南海にとっても「悲劇」としかいえない状況です。
確かにアクセス時間で見ると「難波から38分・新大阪から48分」と言うのは中部国際空港の「名鉄名古屋から28分」には劣る物の千歳空港の「札幌から36分」とは同レベルですし、成田空港の「日暮里から51分・東京駅から54分」よりかは近いと言えます。実際関空アクセスの所要時間は運輸政策審議会の目標時間(約40分)以下になっており数字的にも「合格」と言えるレベルです。
しかし数字的なイメージはこの通りですが、実際は
中部国際空港のアクセス
は名鉄名古屋が雑然としている以外文句の付けようは無いですし、
千歳空港のアクセス
も15分毎にきっちり来る快速エアポートの効果で非常に便利に見えます。それらと比べてしまうと関西空港の鉄道アクセスは「数字では悪くなくても、何かがイマイチで遠く感じる」と言う世界なのかも知れません。
大阪の場合「伊丹」と言う都心に近い空港の存在が有るので、余計関空が不便に感じるのも有るのかもしれません。しかし関空にはそれだけで説明できない「何か」が空港を遠く感じさせています。そのアクセスの問題点が今回遭遇した「遅い関空快速・500円有料料金を払っては乗らないラピート・旧式通勤車両で騒音の拷問の南海空港急行」なのかもしれません。今の利用率では関空への鉄道アクセスを大幅に改善する追加投資は困難でしょう。しかし最低でもこのアクセスへの良くないイメージと空港自体の「遠い」イメージを変えない限り、幾ら強制的施策を関空利用促進は進まないのかも知れません。
確かに「
果たして関西三空港は並立できるのであろうか?
」で述べた通り「伊丹は過去の事情から勘案して廃止すべき」と言う考えは変りませんが、それには「関空とて遠くない」と言う事を数字だけでなくイメージで植えつける方策が必要なのかもしれません。その点からも継続的なアクセス改善に努力する事が「関空は遠い」イメージからの脱出策になるのかも知れません。
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今回は大阪南部・和歌山方面と言う「限定した範囲」での訪問であり、極めて限定的な範囲でしかJR西日本のアーバンネットワークを見る事が出来ませんでしたが、東京中心で生活をしている私にとって見れば、JR西日本のアーバンネットワークには「東京でも有る事」と「東京には無い物」が混在していると感じさせられました。
けれども東京には京都・大阪・神戸の三都を結ぶJR西日本のアーバンネットワークの象徴とも言える「新快速」の様な「多種な種別でネット状に組まれたネットワーク」は、あそこまで完成度の高い物はJRには存在しないと言えるでしょう。そういう意味では東京人から見れば「物珍しい」と言う事が出来ます。
しかし「利用者に支持を受ける」と言う要素は古今東西変わらないと言う事は改めて感じました。東京でも「湘南新宿ライン」に代表される「
路線のブレークスルー
」は大きな支持を集めていますし、鉄道アクセスで約60分の成田空港は国際線専用で有るにも関わらず「アクセスが不便な空港」と言うイメージが付いています。その様に見れば東京・大阪で有っても利用者が支持する物・嫌う物は大筋においては変わらないと言えます。
有名なJR西日本のアーバンネットワークはJR西日本に取り山陽新幹線と並ぶ「経営の柱」ですが、上述の視点から見れば「確実に利用者に好まれる事をした」からこそ利用者の支持を集めこれだけ成長したのでしょう。そのニーズを吸収して対応した事による成果は大きく、だからこそ「一人勝ち」と言えるほどJR西日本に利用客を集める事が出来たのでしょう。
その様な事から改めて「利用者のニーズは古今東西根本には差が無い」と言う事を感じさせられました。我々は国鉄破たん処理で「高い授業料」を払っていますが、その授業料は無駄にはなっていない、その成果はJR各社の20年間に現れている。JR西日本のアーバンネットワークもその一つだ。と言う事を今回の訪問で改めて感じさせられました。
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