このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
芭蕉の句碑
水取や籠りの僧の沓乃音
奈良市雑司町に二月堂がある。
二月堂
奈良二月堂
廻廊や手すりに並ぶ春の山
『寒山落木 巻四』
(明治二十八年 春)
平成17年(2005年)12月、国宝に指定された。
石段の右手、三月堂の築山に芭蕉の句碑があった。
水取や籠りの僧の沓乃音
出典は
『芭蕉翁發句集』
。「
二月堂に籠りて
」と前書きがある。
貞享2年(1685年)2月、二月堂で詠まれた句。
『野ざらし紀行』
には「
氷の僧の
」とある。
『芭蕉句選』
、
『芭蕉句鑑』
には「
水鳥や
」とある。
二月堂に籠りて
水取や氷の僧の沓のおと
此句水鳥と書て冬の部に入たる集あり。二月堂に籠るといふ詞書にかなハす。此行法二月朔日より七日に到る。此日堂前の石井に若狭国遠敷
(おにう)
大明神より観世音へ献せしめたまふ。水涌出る則硯に汲て霊符を印す。これを二月堂の水取といへり
『芭蕉句解』
大正2年(1913年)2月、建立。
奈良二月堂 の修法に祖翁の發句を思出て
けしからね冴返りたる沓の音
『草根發句集』
山口誓子
は二月堂に芭蕉の句碑を訪ねている。
二月堂にあるというに芭蕉の句碑を尋ねて、二月堂の石階を登る。寺務所で聞いて、句碑は下の滝のところにあることを教えられた。また石階を降りる。三月堂の裏にあたるところだ。句碑の位置は三月堂裏と書くべきである。
棕梠や馬酔木の木群の中暗く、大きな自然石の句碑が立っている。
水取や籠りの僧の沓の音
句碑の句はそうなっている。堂に籠ってお水取の行事をする僧の沓——あの歯のない、底の厚い下駄——の音が荒々しく聞える、と云うのだ。
私は、この句の形を
水取や氷の僧の沓の音
とする側に左袒している。それは「野ざらし紀行」にそう書いてあるからだ。芭蕉みずからの書いて置いたのを私は信用する。
「氷の僧」は「氷る僧」である。寒さのために氷らんばかりの僧である。
『句碑をたずねて』
(大和路)
元禄7年(1694年)9月、
榎本其角
は二月堂を訪れている。
二月堂 に七日斷食の行者あり。屏風引廻らして無
二
人聲
一
日の目見ぬ紙帳もてらす紅葉かな
『甲戌紀行』
明和2年(1765年)、蓑笠庵梨一は二月堂を訪れている。
二月堂に若狭の井、良辨杉あり、三月堂、四月堂を廻りて大仏殿に到る。
『大和紀行』
二月堂から見下ろす。
大仏殿の屋根が見える。
昭和2年(1927年)4月、
水原秋桜子
は奈良に遊び、三月堂を訪れた。
三月堂
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり
『葛飾』
昭和9年(1934年)3月9日、
与謝野晶子
は二月堂の水取りの会式を見ている。
昭和10年(1935年)、
水原秋桜子
は三月堂を訪れている。
三月堂
日光佛春あけぼのの香を焚けり
月光佛嫩芽
(わかめ)
の馬酔木供へある
『秋苑』
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