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中里介山 (なかざと・かいざん) 1885〜1944。 |
※小説「大菩薩峠」に出てくる主な登場人物の紹介は、
こちら
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『大菩薩峠1・甲源一刀流の巻』 (青空文庫) |
長編。 「剣を取って向う時は、親もなく子もなく、弟子も師匠もない、入魂(じっこん)の友達とても、試合とあれば不倶戴天の敵と心得て立合う、それがこの竜之助の武道の覚悟でござる」。 時は幕末の世。御岳山の奉納試合で甲源一刀流の師範・宇津木文之丞を「音無しの構え」で打ち殺した剣客・机竜之助。手込めにした文之丞の妻・お浜と駆け落ちし、江戸で所帯を持つが…。 兄・文之丞の仇を討つため、剣豪・島田虎之助の下で修行する少年・宇津木兵馬…、巡礼中、祖父を竜之助に殺された少女・お松…、お松を保護し、親身になって面倒を見る老盗賊・裏宿の七兵衛…、馬鹿正直で馬鹿力の水車番の与八…。新徴組の芹沢鴨らも登場の未完の大長編小説・第1話──。 主人公の机竜之助が罪のない巡礼老人をあっさりと辻斬りしてしまう冒頭の場面にまず度肝を抜かれ、この小説がタダモノではないことをいきなり思い知らされる。しかし、仏教的な見地に立つ作者は、善人であろうと悪人であろうと分け隔てなく、登場人物たちを概して、温かく優しい目線で描いており、“業(カルマ)”をテーマに、実に多彩な顔ぶれが絶妙に絡み合い、賑やかに展開されるストーリーに夢中になること必至だ。悪人でありながら心惹かれる特異なキャラ、悪のヒーロー・机竜之助の活躍を描いたチャンバラ時代小説。 「まあ、何をなさります」 「そんなに驚くことはない、これは竹の子勝負というて、一枚とられたら一枚ぬぐというきまり、それで最初は帯から…」 「どうぞ御免あそばして」。 花の師匠・お絹(神尾家の元妾)の紹介で、旗本・神尾主膳の屋敷へ奉公に出たお松だが、百人一首を使った「竹の子勝負」で大ピンチ(笑)。 |
『大菩薩峠2・鈴鹿山の巻』 (青空文庫) |
長編。 奉公先である旗本・神尾主膳の屋敷を、水車番の与八と共に逃げ出したお松は、伯母・お滝の世話になるが、性根の悪いお滝に騙されてしまう…。一方、机竜之助のもとに宇津木兵馬から果たし状が届く…。 「もし兵馬がお前様を仇(かたき)と覘(ねら)っていたら何となされます」 「仇呼ばわりをしたらば討たれてもやろう——次第によっては斬り捨ててもくれよう」 「それは不憫なこと、兵馬には罪がないものを」。 義弟だった可愛い兵馬を助けたいお浜は、竜之助を殺して自分も死のうと決心するが…。薄幸の少女・お松の波乱万丈ぶり…、お浜似の女・お豊との出会い…。大長編時代小説・第2話。 患者から十八文しか薬礼を受け取らない主義で、いつも酔っ払っているが、腕は確かな貧乏医者・長者町の道庵先生が登場! 与八が道庵先生に薬礼を払う場面は、まるで落語みたようで楽しい。 |
『大菩薩峠3・壬生と島原の巻』 (青空文庫) |
長編。 人の命を取ることと、人の財布を盗ることといずれが重い──人を斬ることをなんとも思わぬ竜之助が、人の金銭をとったことに苦悶するは何故であろう。わけのわからない話であるが、竜之助は、このことを苦にする──。 仇である机竜之助を追って京都へやって来た宇津木兵馬…。色街・島原に売られてしまった少女・お松を身請けするため、新撰組の本営・南部屋敷に盗みに入る裏宿の七兵衛…。新撰組の隊長である芹沢鴨と近藤勇の内紛に絡み、芹沢が企てる近藤暗殺に加担する竜之助だが…。 竜之助とお浜の子である郁太郎を育てる水車番の与八の優しい性格に感動を覚える。大長編時代小説・第3話。 |
『大菩薩峠4・三輪の神杉の巻』 (青空文庫) |
長編。 恋人と心中し、一人生き残ってしまったお豊(お浜似の女)と再会した机竜之助。 「あの、御一緒にお伴(とも)をさせていただきとう存じます」 「一緒につれて行けと申されるか。それもよかろう、強いてお止めは致さぬ」。 惹かれ合う二人は、一緒に江戸へ行く約束をするが…。お豊に付きまとうも、相手にされず、逆恨みする資産家の放蕩息子・金蔵…、宇津木兵馬と勝負するよう竜之助を説得する裏宿の七兵衛…。 「机竜之助は逃げも隠れもせぬ、これより伊勢路へ出て、東海道を下る。宇津木兵馬とやらにそう申せ、敵(かたき)に会いたくば、あとを慕うて東海道を下って参るように。追いついたところでいつなりとも望みのままの勝負」──。 死に損ないのストーカー・金蔵がなかなかのキャラ。大長編時代小説・第4話。 |
『大菩薩峠5・竜神の巻』 (青空文庫) |
長編。 落ち延びた天誅組の連中と共に山小屋に辿り着いた机竜之助だが、討手(うって)に取り囲まれ、小屋を爆破されてしまう…。執念深い金蔵と余儀なく所帯を持ち、温泉宿の若女将となったお豊は、竜神の社(やしろ)で竜之助と再会を果たすが…。 「竜之助様、どうぞ、人のために忍びきれない恥を忍んでいる私をかわいそうだと思って下さいまし、一目、わたしを見てやって下さい、わたしにも、あなたのお面(かお)を見せて下さいまし」 「見えない、見えない。拙者は眼が見えない」 「エエ!」。 安珍・清姫の伝説に由来する「清姫の帯」の災難…。ターニングポイントとなる大長編時代小説・第5話。 「拙者にはこうなるが天罰じゃ、当然の罰で眼が見えなくなったのじゃ、これは憖(なま)じい治さんがよかろうと思う。眼は心の窓じゃという、俺の面から窓をふさいで心を闇にする——いや、最初から俺の心は闇であった」。 |
『大菩薩峠6・間の山の巻』 (青空文庫) |
長編。 花は散りても春は咲く/鳥は古巣へ帰れども/行きて帰らぬ死出の旅──。 伊勢の遊女屋で「間(あい)の山節」を歌っている歌唄いの少女・お玉は、不幸にも泥棒の濡れ衣を着せられてしまう。勇猛な愛犬・ムクや幼なじみ・宇治山田の米友(よねとも)の活躍で捕方(とりかた)から逃れたお玉は、盲目となった机竜之助と会う。遊女に身を落としたお豊が自害したことを知る竜之助だが…。 伊勢参りにやって来た酔っ払いの医者・長者町の道庵先生、大活躍の巻! 大長編時代小説・第6話。 「なにも理窟を言うわけじゃねえ、十八文が十八文で、十八文で暮らしを立てて、その十八文の中からチビチビ貯めて、それで伊勢参りに来たんだ、それを思うと十八文様々だ、有難くって涙が溢(こぼ)れらあ、十八文のおかげでこうして俺は伊勢参りにも来られるし、うまい酒の一杯も飲めようというものだ、その冥利を思えば十八文様に黙っていちゃあ済まねえ、それだから提灯へおうつし申して御一緒に大神宮様を拝ませようという了簡なんだ、それを貴様は情けねえの、あたじけねえの、ケチをつけやがって、承知しねえからそう思え」。 天下が泰平なのは、道庵先生が酒臭い息を吹きかけているからなんだね、納得(笑)。 |
『大菩薩峠7・東海道の巻』 (青空文庫) |
長編。 花の師匠・お絹(神尾家の元妾)と浜松で道行きとなった机竜之助は、剣豪・島田虎之助の毒殺の経緯を知る…。はぐれていた愛犬・ムクと幼なじみ・宇治山田の米友と再会を果たしたお君(お玉の本名)は、生きる希望を取り戻す…。 「ムクや、お前はどうしてここへ来たのだい、どこに今まで何をしていたのだい、よくわたしがここにいることがわかりましたねえ。ほんとにお前は神様のような犬だよ」。 三保の松原へ竜之助を追い込み、決着をつけようと目論む宇津木兵馬と裏宿の七兵衛だが…。 仏眼・神通力で人の心を見抜いてしまう遊行上人(ゆぎょうしょうにん)が授ける名号(みょうごう)の札。私のようなヨコシマな人間じゃ、お札はいただけないだろうなあ…(悲)。大長編時代小説・第7話。 |
『大菩薩峠8・白根山の巻』 (青空文庫) | ||||
長編。 身延へ向かう途中、お絹にちょっかいを出す道連れの盗賊・がんりきの百蔵に、いきなり斬り掛かる机竜之助。片腕を斬り落とされたがんりきの百蔵は、命からがら逃げ去る。他国へ行商に出かける「山の娘」たちの頭(かしら)・お徳の世話になる竜之助は、心安さを感じる…。 | ||||
| がんりきの百蔵を見捨てて、砂金堀りの少年・忠作をそそのかすお絹…、竜之助を追跡する宇津木兵馬と裏宿の七兵衛…。すっかり落ちぶれ、甲府勤番の組頭となった旗本・神尾主膳(あの「竹の子勝負」の人です)…。 机竜之助、正義のヒーローに転身? 大長編時代小説・第8話。 |
『大菩薩峠9・女子と小人の巻』 (青空文庫) |
長編。 親方のお角(かく)が率いる女軽業の一座に加わったお君は、幼なじみの宇治山田の米友と別れて甲州へ旅立つ。 「君ちゃん、君ちゃん」 「なに」 「旅へ出るにもムクはつれて行くんだろうな、ムクをつれて行っても親方は叱言(こごと)を言やしないんだろうね」 「ああ、それはいいんだよ、ムクにはこれから芸を仕込むなんて、親方も大へん可愛がってるから」 「それで安心した、行っておいで、行っておいで」。 江戸に残った米友は、職を転々とする中、正直な性格の夜鷹のお蝶と出会う。砂金堀りの少年・忠作と一緒に金貸しを始めたお絹だが、コマシャクれた性格の忠作に嫌気が差す…。 「喧嘩でございます、あの女軽業の小屋の内へお仲間衆(ちゅうげんしゅ)が押しかけて、いま大騒ぎが持ち上ったのでございます、人死(ひとじに)が出来ました、火事になりました」。 狼藉を働く折助どもに捕まってしまった女軽業の美人連、大ピンチ! お君の身は? 大長編時代小説・第9話。 それにしても「大菩薩峠」に登場する女性たちは、みんな苦難・災難を受けて大変だ〜。主役の机竜之助はしばらくお休み(出番なし)です。個人的に長者町の道庵先生のファンなので、登場してくれると何だかとっても嬉しい(笑)。 |
『大菩薩峠10・市中騒動の巻』 (青空文庫) |
長編。 仇である机竜之助の行方を捜す宇津木兵馬は、甲府の神尾主膳の邸内へ忍び込むが、盗人に間違えられて、牢に入れられてしまう。 「盗賊(どろぼう)! そんなことはありますまい、なんと間違って兵馬さんが盗賊なんぞと……兵馬さんは決してそんな悪いことをなさる人ではないということを、わたしから神尾の殿様によく申し上げて、お願いしてみましょう」。 兵馬に想いを寄せるお松は、裏宿の七兵衛から兵馬の災難を知り、甲府へ行くことを決心するが…。 「未練というわけじゃあねえが、おれもあの女ゆえにこの腕を一本なくして、生まれもつかねえ片輪(かたわ)にされちまったんだ、身から出た錆(さび)だと言えばそれまでだが、どうもこのままじゃあ済まされねえ」。 再びお絹にチョッカイを出そうと企むがんりきの百蔵…、そんながんりきの浮気に激しく嫉妬する女軽業の親方・お角…、いつまで経っても江戸へ戻って来ないお君の身の上を心配する宇治山田の米友…。 貧窮組が出来たり、浪人強盗が流行ったり、幕末の江戸はえらく物騒なり。大長編時代小説・第10話。 |
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