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中里介山 (なかざと・かいざん) 1885〜1944。




※小説「大菩薩峠」に出てくる主な登場人物の紹介は、 こちら


大菩薩峠11・駒井能登守の巻  (青空文庫)
長編。
新しく勤番支配に任命され、甲府に向かう駒井能登守とその一行。

「いや、旅をするとさまざまの面白いものを見るわい、駒木野の関所で見た女、次に小仏を下りて見かけた足の早い男、今またあの奇妙な小男、さてこの次には何を見るか」。

自分よりずっと年下の駒井能登守が、自分の上司になることが、どうにも気に食わない神尾主膳。

「機先を制して駒井能登を圧倒するのじゃ、そうして、甲府勤番には骨があって、彼等如き若年者で支配などとは以てのほかというところを、老中にまでも思い知らせてやるのじゃ、それをせねば後来のためにもならぬ」。

侠客・鳥沢の粂(くめ)によって、猿橋から身体を吊り下げられてしまうがんりきの百蔵…、川越しの人足たちと揉めて、大騒動を起こす宇治山田の米友…、冤罪で牢屋にいる宇津木兵馬を助けてくれるよう駒井能登守にお願いするお松…。

男を弄(もてあそ)ばずにはいられないお絹の男好きの困った性格が面白い。砲術の名手であり、若くて美男で秀才で、優しく思いやりのある(?)駒井能登守、いよいよ登場の巻! 大長編時代小説・第11話。

大菩薩峠12・伯耆の安綱の巻  (青空文庫)
長編。
甲州有野村の馬大尽・藤原家の下働きとなったお君は、火傷で顔が焼け爛(ただ)れた藤原家の娘・お銀様に気に入られる。

「お君や、お前、今日はわたしになってごらん、わたしと同じ髪を結って、わたしと同じ着物を着て、そうしてお前がこの家の娘になるといい」
「お嬢様、何をおっしゃいます、飛んでもないことを」。

神尾主膳にそそのかされて、藤原家の主人・伊太夫が秘蔵する名刀「伯耆の安綱」を持ち出した藤原家の雇人・幸内だが、刀と共に行方不明になってしまう…。

江戸で療養中の愛妻に生き写しであるお君のことを親切に思う駒井能登守…。悪役・神尾主膳の保護を受ける机竜之助…。大長編時代小説・第12話。

「竜之助殿、貴殿ひとつ試してみる気はないか」
「この安綱を?」
「左様」
「よし試して見よう」

しばらく出番のなかった机竜之助、久々登場!

大菩薩峠13・如法闇夜の巻  (青空文庫)
長編。
お銀様と仲違いになってしまったお君は、藤原家を離れて、駒井能登守のもとへ。能登守の寵愛を受けるお君は、能登守のことが好きで好きでたまらなくなる…。

「わたしはお部屋様になりたいから、それでお殿様が好きなのではない、わたしにはもうどうしたってあのお殿様のお側(そば)は離れられない。奥方様には本当に申しわけがないけれども、お殿様をわたしの物にしてしまわなければ、わたしはのけものになってしまう」。

同じ牢屋の囚人(南条と名のる奇異な武士)のお蔭で、破牢した宇津木兵馬…、お銀様との縁談を策略する神尾主膳の悪だくみ…、ムク犬の活躍で、お君と再会を果たす宇治山田の米友…。

「気の毒ながらお化けのような娘、あれを拙者が嫁にしたいと言うのは、抱いて寝たいからではないぞ、いとしい恋しいと思うからではないぞ、恥かしながら拙者はいま手許が不如意じゃ、伊太夫の財産に惚れたのじゃ、娘には恋なし、財産があるから恋ありと言わば言うものよ、ははははは」。

市中を騒がす辻斬りの犯人は机竜之助?! 大長編時代小説・第13話。

 「神尾主膳はおれに向って、駒井能登守とやらを討ってくれという、神尾の頼みを聞いてやらにゃならぬ義理もなければ、駒井能登守を討たにゃならぬ怨みもない、おれは人を斬りたいから斬るのだ、人を斬らねばおれは生きていられないのだ——百人まではきっと斬る、百人斬った上は、また百人斬る、おれは強い人を斬ってみたいのじゃない、弱い奴も斬ってみたいのだ、男も斬ってみたいが、女も斬る、ああ甲府は狭い、江戸へ出たい、江戸へ出て思うさまに人が斬ってみたいわい。ああ、人を斬った心持、その時ばかりが眼のあいたような心持だわい。助けてくれと悲鳴を揚げるのをズンと斬る、ああ胸が透(す)く、たまらぬ」。

大菩薩峠14・お銀様の巻  (青空文庫)
長編。
神尾主膳にかどわかされたお銀様は、へべれけの神尾に殺されかけるが、机竜之助に救われる。火傷で醜い顔のお銀様は、目の見えない竜之助に心惹かれていく…。

「ああ、あなたはお眼が見えない、お眼が見えないから、わたしは嬉しい」。

駒井能登守のお部屋様となったお君。能登守にぞっこんであるお君の心変わりが、どうにも癪に障る宇治山田の米友は、お君と言い争いになり、甲府を出て行ってしまう…。

「二度でも三度でも言うよ、お前は殿様という人から、うまい物を食わせてもらい、いい着物を着せてもらって、その代りに慰み物になっているんだ、それをお前は出世だと心得ているんだ」
「友さん、よく言ってくれたね、よく言っておくれだ、お前からそこまで言われれば、もうたくさん」
「やいムク州、永々お世話さまになったが、俺(おい)らはこれからおさらばだ、お前も達者でいなよ」。

子供のような年寄のような壮者(わかもの)で、小兵(こひょう)で敏捷、淡路流の槍の使い手であり、気は短いが、正直者で、無邪気なキャラクター・宇治山田の米友。自然と読者の心を朗(ほが)らかにしてしまう彼の特異なキャラは、この小説になくてはならない存在だ──。大長編時代小説・第14話。

大菩薩峠15・慢心和尚の巻  (青空文庫)
長編。
八幡村の小泉家(死んだお浜の実家)に身を隠す机竜之助とお銀様。辻斬の犯人が竜之助だと知ったお銀様は、怖ろしさを感じるが…。

「世間には位を欲しがって生きている奴がある、金を貯めたいから生きている奴がある、おれは人が斬りたいから生きているのだ」
「わたしは怖ろしくてたまりません、けれどもどうしてよいかわかりません、それでもわたしはあなたと離れようとは思いません」。

駒井能登守が身分違いのお君を寵愛していることを勤番の寄合で暴露した神尾主膳。窮地に陥った能登守は、甲府を去る運命に…。
駒井の子を身ごもっているお君を江戸まで送り届ける成り行きとなった宇津木兵馬…。兵馬とお松の恋の行方も何だか気になる大長編時代小説・第15話。

「いっそ、命を的の敵討などはやめにして…お前と一緒に末長く暮そうか」
「それは、本当でございますか」。

兵馬が世話になる恵林寺の師家・慢心和尚が面白い。「慢心してはいけません」が口癖で、顔が丸くて、拳が入るほど口が大きく、何ともしゃあしゃあとした性格でありながら、実は豪傑という凄キャラ。 「どう見ても人間界の代物とは思われないのであります」──。

大菩薩峠16・道庵と鰡八の巻  (青空文庫)
長編。
お君の一件で失脚し、江戸・滝の川の火薬製造所に身を隠す駒井甚三郎(能登守)。宇津木兵馬の保護を受け、江戸へやって来たお君だが、駒井には会えず、絶望的になる…。

「ああ、わたくしの身はどうしたらよいのでございましょう、あの立派な殿様を、世間にお面(かお)の立たぬようにしたのも、わたくしでございます、あなた様にこんな御迷惑をかけるのも、わたくし故でございます、生きていてよいのか、死んでしまってよいのか、わたしにはわかりませぬ」。

お君の愛犬・ムク犬の皮を、生きたまま剥ぐという残忍な遊戯を思いつく悪人・神尾主膳…。甲府から再び舞台を江戸に移して繰り広げられる大長編時代小説・第16話。

「狂犬(やまいぬ)であるか、狂犬でないか、眼つきを見ればすぐわかることじゃ、この犬を狂犬と見る貴様たちの方に、よっぽどヤマしいところがある」。

成金の鰡八(ぼらはち)大尽の妾宅が隣に出来て、プンプン怒っている下谷・長者町の道庵先生。金に物を言わせる鰡八を相手に、「馬鹿囃子」と「水鉄砲」で対抗する貧乏医者・道庵だが…。道庵先生vs鰡八大尽の最高にくだらない対決(笑)は、夏目漱石の長編「吾輩は猫である」における「苦沙弥先生vs実業家の金田」を思い出させ、何とも楽しい。

大菩薩峠17・黒業白業の巻  (青空文庫)
長編。
甲府を離れ、江戸へ戻って来た神尾主膳は、化物屋敷と呼ばれている染井の旗本屋敷に居付く。

「思えばこの屋敷は化物屋敷に違いない、この神尾主膳と、あの藤原の娘のお銀とが落ち合って、睨み合っているのさえ空怖ろしい悪戯であるのに、業(ごう)の尽きない机竜之助という盲目が、あれが難物じゃ。悪因縁の寄り集まりだ、前世の仇(あだ)ならいいが、この世からの餓鬼畜生に落ちた敵同士が、三すくみの体(てい)で、一つ屋敷に睨み合っているというのは、悪魔の悪戯のようなものだ」。

机竜之助を匿っている神尾主膳の居場所を知った宇津木兵馬は、遊郭・吉原に乗り込むが…。

「あの机竜之助と申す者は、拙者のためには敵(かたき)でござりまする、あの者を討ちたいがために多年、拙者は苦心致しておるものでござりまする、どうぞ武士のお情けを以て、その行方をお知らせ下さりませ」
「知らんと申すに、くどい奴じゃ」。

浅草で梯子(はしご)芸を披露し、見物客を楽しませる宇治山田の米友だが、いつものパターンで、てんやわんやの大騒動に…。愛犬ムクと再会を果たしたお君。駒井甚三郎(能登守)の一件で、すっかり気が変になってしまう…。

「いいえ、この子は駒井能登守の子ではございませぬ、わたくしの子でございます、それ故にわたくしは、どのようなことがあっても能登守の子としては育てません、わたくしの子として育てて参ります。それよりか、わたくしはいっそ難産で、この子と一緒に死んでしまえば、それに越したことはないと思っているのでございますよ」。

吐血し、体調を崩しながらも、心の渇きを癒すため、毎夜、辻斬りを重ねていく机竜之助…。主要メンバーが江戸に集結してドタバタを繰り広げる大長編時代小説・第17話。勇猛果敢なお君の愛犬・ムク犬の、超人ならぬ“超犬”的な活躍も毎回楽しみだ。

大菩薩峠18・安房の国の巻  (青空文庫)
長編。
暴風雨(あらし)で船が沈没し、奇跡的に礒に打ち上げられた女軽業の親方・お角は、房州・洲崎(すのさき)で無人島同様の生活を送る駒井甚三郎に命を助けられる。

甲府城の乗っ取りを企む奇異な武士・南条力(つとむ)と五十嵐甲子雄(きねお)に協力するがんりきの百蔵と、それを阻止しようとする元新徴組の浪士・山崎譲に加担する裏宿の七兵衛…。悪人には懐かないはずのムク犬が、辻斬りを繰り返す机竜之助に懐いている様子に驚く宇治山田の米友…。

今回の話は、小説全体のテーマになっている“業(ごう)”というものが特にクローズアップされている印象。おしゃべりの盲法師・弁信(小坊主)と、心の優しい夜鷹のお蝶(第9話にも登場)の会話が、純情で素晴らしく心が洗われる。大長編時代小説・第18話。

「こんなに眼の不自由になったのはいつからだとおっしゃるんですか。それは、つい近頃のことですよ。この春あたりからめっきり悪くなりました、今では、すっかり見えなくなりました。へえ、そりゃ随分悲しい思いをしましたよ、心細い思いをしましたよ。けれども泣いたって喚いたって仕方がありませんね、前世の業(ごう)というのが、これなんです、つまり無明長夜(むみょうちょうや)の闇に迷う身なんでございますね。その罪ほろぼしのために、こうやって毎晩、この燈籠を点けさせていただく役目を、わたしが志願を致しました、自分の眼が暗くなった罪ほろぼしに、他様(ひとさま)の眼を明るくして上げたいというわたしの心ばかりの功徳(くどく)のつもりでございますよ」。

大菩薩峠19・小名路の巻  (青空文庫)
長編。
「どうあってもこのままには置けない、よろしい、山崎譲を手にかけよう」──。すっかり吉原通いにハマってしまった宇津木兵馬は、遊女・東雲(しののめ)を自分のものにしたいがために、「山崎譲を暗殺してほしい」という南条力(つとむ)の頼みを引き受けてしまう。

尺八の音色に慰められ、死んだお浜やお豊と邂逅する机竜之助…、おしゃべりの盲法師・弁信を井戸の中へ投げ込んでしまう神尾主膳…、船の建造計画をすすめる駒井甚三郎…。

「お前は浜だな」
「ええ、左様でございます、あなたとお別れしてから、ずいぶん久しいことになりましたね、今日は、あなたがおいでになるということですから、こうして待っておりました。あなたが恋しいのではございません、郁太郎がかわいそうですからね。だんだん寒くなってゆくのに、あの子は、綿の入った着物一つ着られまいかと思うと、それが心配で、眠れません、どうぞ、あなた、これを郁太郎に持って行って上げてくださいまし。あなたとの間のことなんぞは、どうでもよいではございませんか、恨みを言えばおたがいに際限がありませんからね」。

道を過(あやま)ってしまった善玉・宇津木兵馬は、この先、一体どうなってしまうの? 大長編時代小説・第19話。

大菩薩峠20・禹門三級の巻  (青空文庫)
長編。
清澄の茂太郎(房州でお角にスカウトされた子供)の口笛がきっかけで、大勢の人々が踊り、練り歩き始め、あっという間に江戸中で大騒ぎに。おしゃべり小坊主の弁信や、宇治山田の米友、長者町の道庵先生も巻き込まれて…。

お銀様がいる土蔵に火をつける酒乱の神尾主膳…、山の娘の頭(かしら)のお徳と再会(?)する机竜之介…。

「まあ、わたくしは、どんなにあなた様のことを心配しておりましたでしょう、甲府へおいでになってから後も、それとなくお尋ねしてみましたけれど、一向わかりませんでした、お消息(たより)をいただくと、取るものも取りあえずにこうして急いで参りました。お目はいかがでございます、もう、お見えになるようになりましたようでございます、それが何よりでございます」。

不動明王の夢がもとで、とんだ騒動を引き起こす米友がいつもながら楽しい。大長編時代小説・第20話。



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