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野村胡堂 (のむら・こどう) 1882〜1963。




奇談クラブ(戦後版)01 第四の場合  (青空文庫)
短編。会長・吉井明子が開く「奇談クラブ」の当夜の話し手である倉繁大一郎は、画家・喜田川志津子と歌手・千束(ちづか)守が南伊豆の別荘の展望台から海に転落死した十年前の事件について、実は情死だったと発表する。しかし磯上伴作なる男は、志津子の夫・三郎による完全犯罪だったと主張する。環(たまき)玉枝なる女は、さらに驚くべき証言をする…。「嘘だ、嘘だ、何んという出鱈目だ」、「いえ皆んな本当です」──。過失死だと思われた事件の意外な真相は? 二転三転の展開が面白い。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)02 左京の恋  (青空文庫)
短編。主君である亀山城主・石川日向守に命じられて、腰元・多与里(たより)をモデルに、彫像「八百屋お七」を制作することになった彫物の名人・六郷左京。芸術のために、多与里の恋心を利用し、彼女を「八百屋お七」的な激情の女に変身させた左京は、その甲斐あって傑作を完成させるが…。「これは矢張り運を天に任せ、縁結びで配偶をきめるのが、一番公平かと存じますが」、「成程それは面白いな」。芸術至上主義の代償を描いて面白い。「奇談クラブ」シリーズの一編。 →芥川龍之介「地獄変」 →菊池寛「藤十郎の恋」

奇談クラブ(戦後版)03 鍵  (青空文庫)
短編。作曲家・小杉卓二の妻・由紀子が心臓麻痺で急死し、小杉の愛人・夢子が鍵のかかった寝室で刺殺された。事件は迷宮入りし、小杉の前に由紀子そっくりの双子の妹・寿美子が現れる。陰気だった由紀子とは違い、明るく妖艶な寿美子に心を奪われた小杉は、寿美子に結婚を迫るが…。「其処へ掛けるが宜い。その椅子は、由紀子も夢子も掛けた椅子だ。——それから安心のために、鍵はこの通り」、「まア、どうなさる積り、お兄様」。ピアニスト・平賀源一郎が話す、未解決事件の意外な真相! 「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)04 枕の妖異  (青空文庫)
短編。恋焦れていた組頭・伊奈長次郎の娘・お綾が、四十二歳も年上の大旗本・大森摂津守に進んで嫁入ったと知った二人の御家人・妻木右太之進と秋月九十郎。お綾が忘れられない妻木は、歓楽の夢が見れるという不思議な枕で、夜な夜なお綾の夢を見続け、お綾を見返してやりたい秋月は、時の老中・田沼意次の手先となって出世を果たしていくが…。「で、この先をどうする積りだ」、「何んにも考えは無い、——が一つだけ貴公に教え度いことがある」、「?」。教訓めいた話がなかなか面白い。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)05 代作恋文  (青空文庫)
短編。原稿が売れなくなってしまったため、代作業を始めた作家・東野(とうの)南次。若い女客・曾我野幽里子(ゆりこ)からラヴ・レターの代作を頼まれた東野は、熱烈な手紙を何本も書いているうちに、すっかり彼女のことが好きになってしまう。幽里子を自分の物にしたいがために、彼女を殺してしまおうとさえ思った東野は、自己嫌悪に陥り、飛び降り自殺を決意するが…。「幽里子さん、左様(さよう)なら——貴女(あなた)の恋人と幸福に暮して下さい、左様なら」。ロマンティックな恋の冒険が素的。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)06 夢幻の恋  (青空文庫)
短編。男子禁制である女御殿に迷い込んでしまった身分の低い若侍・村松金之助は、将軍・徳川家斉の末の娘で、因州新田藩主・松平淡路守の養子である京姫と出会い、無謀にも恋してしまう。もう一度、京姫に会いたくてたまらなくなった金之助は、修験者・大寿院から買った薬で京姫の夢を見続けるが、次第に衰弱していき、すっかり零落してしまう…。「お前はいつぞやの——」、「姫君様、お許し下さいませ。——もう一度顔を拝し度さ、——命に賭けて参りました」。青侍のプラトニックな恋の行く末。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)07 観音様の頬  (青空文庫)
短編。本所の羅漢寺にある百体の観音像の内の一体である幕末の仏師・天狗長兵衛が彫った観音菩薩の美しさにすっかり魅了された青年・南郷綾麿(あやまろ)。廃仏棄釈(偶像破壊)の運動によって、例の観音様が焼き払われる運命にあると知った綾麿は、恋人・香折(かおり)との祝言の席を飛び出して、観音像の救出に向かうのだが…。「観音様はまさか嫉妬(やきもち)などはお焼きなさるまい」、「まア」──。仏像に恋してしまった青年と、仏像に嫉妬した少女の恋のてん末を描いて面白い。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)08 音盤の詭計  (青空文庫)
短編。実業家・国府金弥が死亡し、多額の遺産を相続した若い妻・鈴子。レコードに吹き込まれた国府老人の意味不明な遺言状の解明を任された青年・望月辛吉は、鈴子が幼友達の森川森之助と再婚することを知るが…。「ウレラソロク」や「オクズス」という謎の言葉の意味は? そして遺言の内容は? 「明日は森川夫人になられる鈴子さんに、国府未亡人の最後の思い出として、金弥老人の吹込み遺した、レコードをお聴かせしようと思います」──。レコード通の青年の活躍を描いた探偵小説。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)09 大名の倅  (青空文庫)
短編。山中で道に迷い、追いはぎに服も刀も取られてしまった濃州郡上の領主・金森兵部少輔の倅(せがれ)・出雲守頼門。曲者に襲われた娘・桂を助けた頼門は、彼女と恋に落ちるが、桂の父・遠藤主膳に結婚を反対されてしまう。かつての領主・遠藤常久の弟である主膳は、兵部少輔を恨んでおり、兵部少輔の暴政・悪政に腹を立てていた…。「親は子のために隠し、子は親のために隠す、直きことその内にあり——と教わりましたが」、「それは私情だ」──。“日本一の親不孝”を描いた時代小説。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)10 暴君の死  (青空文庫)
短編。東北のある大藩の領主・阿武隈大膳正(だいぜんのしょう)は、取換え引換え気に入った美女を妾(めかけ)にしては、飽きると抹殺してしまうというトンでもない暴君であった。家臣・三文字(さんもんじ)紋弥の入れ知恵で、領内から千人の美女が狩り集められ、その中から不幸にも呉服屋の娘・お菊が選ばれてしまう。歌舞伎役者の恋人・中村新八郎と別れて、大膳正の妾になったお菊もまた、同じ運命のもと、この世から消されてしまう…。「来い、可愛がって取らせるぞ」──。胸のすくラスト! 「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)11 運命の釦  (青空文庫)
短編。大学の同級生で会社の同僚でもある笠森仙太郎と丹波丹六。醜男だが偶然の力で人生を切り開く笠森と、努力家で美男子だが冷徹な丹波は、社長令嬢・美奈子を巡って恋の競争を繰り広げる。美奈子に求婚するも拒絶されてしまった笠森は、美奈子と丹波の婚約を知るが…。「君は偶然を支配するといった——俺は努力を蓄積するといった、そして美奈子さんは、あの美と富とを持っていた。それが皆んななんの役にも立たなかったのはどうしたわけだ」。カフスボタンがもたらした成功と挫折と再生…。「奇談クラブ」の一編。

奇談クラブ(戦後版)12 乞食志願  (青空文庫)
短編。振袖火事(明暦の大火)に巻き込まれ、素性の知れない美しい女・芳江に命を助けられた肥前島原四万石の城主・高力左近太夫高長の総領・伊予守忠弘。半蔵門外の上屋敷に戻った忠弘だが、芳江のことが忘れられず、彼女の居所を探すが…。「仲間の者の義理堅さ、青天井の下に援け合う暮しの晴々しさは、権謀ときっ詐(さ)に浮身をやつす、大名高家とは雲泥の違いで御座るぞ。ここには不義もなく不信もなく奸臣も無く、暴君も無い——」。大名の倅(せがれ)の決断を描いて爽やか。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)13 食魔  (青空文庫)
短編。詩人・江守銀二や歌手・松尾葉子ら親しい友人五人を招待して、自慢の料理を振舞った美食主義者の伯爵・海蔵寺三郎。二十年もの間、美味を探求してきた伯爵だが、家の財産を使い切り、遂に今日、破産の宣告を受けてしまったという。そんな伯爵の最後の望みとは一体何か? 「江守さん、そのブローチの裏を見て下さい。私は、——私は今でもそれを持っていたのです」。食魔の狂気を描いたホラーものだが、食にまつわるハートウォーミングなエピソードと、ハッピーエンドなオチが素的。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)14 第四次元の恋  (青空文庫)
短編。同僚の矢留瀬(やるせ)苗子と仲良くなった新聞記者・京極三太郎は、毎日、苗子の夢を見るようになる。夢の中の世界(第四次元の世界)で苗子との恋の遊戯を楽しむ三太郎だが、現実世界では、同僚の横里鯨之進(けいのしん)に苗子を取られてしまう…。「私の考えによれば、夢は第四次元の未知の世界と我々の生活している第三次元の世界との交渉ではあるまいか——いやいや、人間の夢こそは我々がフォース・ディメンションの世界を覗き得る、唯一の窓に違いないと思うのであります」。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)15 お竹大日如来  (青空文庫)
短編。気難しい家の主人・勘解由(かげゆ)や、ケチで嫉妬深い内儀・お杉にこき使われている豪家・佐久間家の下女・お竹。お杉の死体が井戸の中で発見され、奉公人・金助が首を吊って死亡するという不審な事件が起きる中、勘解由は修験者・玄沢坊から、お竹は大日如来の生身の姿だと告げられる。生き仏として祭り上げられたお竹は、江戸中で人気となってしまう…。「私は如来様なんかになりたくはない」、「人間は人間商売に越したものは無いよ」──。迷信を信じる日本人気質を描いて面白い。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)16 結婚ラプソディ  (青空文庫)
短編。名曲「お江戸ファンタジー」や「にっぽんシンフォニー」を作曲した天才作曲家・左近倉平(さこん・くらへい)の助手をしている青年・深沢深(ふかざわ・ふかし)だが、恋の狩人(ラブ・ハンター)である左近に、美しい恋人・三室銀子(みむろ・ぎんこ)を横取りされてしまう。左近と銀子の結婚式で、深沢は自作の曲を演奏するのだが…。「私はこの儘死ぬかも知れない、——ひどい喀血だ、——が、死ぬ前に一言、芸術の神聖のために言って置く」──。天才作曲家のとんでもない秘密を描いて面白い。「奇談クラブ」シリーズの一編。

奇談クラブ(戦後版)17 白髪の恋  (青空文庫)
短編。ブラジルに移住し、コーヒーの栽培で成功を果たした藤波金三郎。三十七年前、初恋の美女・国木田染子と一緒に秋田から上京する途中、宮城県・小牛田(こごた)で不思議な一夜を過ごした思い出を、ずっと忘れられずにいる金三郎は、老女となったお染を尋ねて、久しぶりに日本に帰って来るのだが…。「お染は僕にとっては永久にベアトリーチェだ」、「その婆さん綺麗か」、「綺麗だよ、昔の通り」──。白髪の恋の恐ろしい冒険のてん末、人の心の不思議を描いた「奇談クラブ」シリーズの一編。 →夏目漱石「三四郎」



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