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野村胡堂 (のむら・こどう) 1882〜1963。




青い眼鏡  (青空文庫)
短編。「花房一郎? あんな者はもう時世遅れだよ、岡っ引に背広を着せたような探偵に、最新式の知識を応用する、大谷千尋(せんじん)は捕まる筈は無い」。大勢の部下を使って銀行を襲撃している泥棒・大谷千尋を追跡している名探偵・花房一郎。禿頭の文士に変装した彼は、都銀行の地下の食堂の常連を観察するが…。劇場のちらしの仕掛け(青色と赤色のトリック)が読みどころの探偵小説。

江戸の火術  (青空文庫)
短編。砲術の御前試合に勝って、断絶した井上家を再興したいと意気込む江州の浪人・井上半十郎だが、江戸へ行く道中、赤痣の美女・お静に、大事な「井上流砲術の秘巻」を盗まれてしまう。実はお静は、敵同士である稲富喜三郎の妹で、半十郎の許嫁・敏代であった。敏代を追跡する半十郎だが、喜三郎の罠にはまってしまう…。「あッ、兄上、それはあんまり」、「この口は塞ふさがなければならぬ、退(ど)かぬかッ」。兄・喜三郎の大それた野心と、妹・敏代の半十郎への恋心…。火砲の技術を巡る争いを描いて面白い時代小説。

黄金を浴びる女  (青空文庫)
短編。美人で評判の水茶屋の娘・お駒。大恩のある勘定奉行・矢部駿河守の密偵をしている権次から、不正蓄財の疑惑のある金座の役人・後藤三右衛門の総領・三之丞の愛妾になって、後藤の屋敷の蔵を探索するように頼まれる。恋人である勘定奉行の下役・相沢宗三郎のことを吹っ切り、後藤の屋敷に乗り込むお駒だが…。「この焼けるような身体を、山吹色の黄金(こがね)で包んで了(しま)って腹の底から冷え冷えして見たいのです」──。大飢饉で窮乏する人々を救うため、自分の身を捨てる女主人公の姿を描いた悲恋話。

大江戸黄金狂  (青空文庫)
短編。不思議な手紙に誘い出されて、箱根の山中へと向かう素性の異なる男女七人(浪人・山浦丈太郎や、茶屋の女・お滝、僧・空善たち)。実は彼ら七人は、百年前に七万両の大金を遺して死んだ金山奉行・大久保石見守の子孫たちであった。七枚の絵図面が揃うと大金の隠し場所が明らかになると知った彼らは、七万両を独占しようと殺し合いを演じるのだが…。七人を箱根へ集めた張本人は誰か? そして悪魔的な筋書きの恐ろしい結末は? 「いろいろの罪を作って、百年間眠った黄金だ、百年間の眠(ねむり)から醒めるだけでも、もう四人の生命を犠牲にして居る、この先、幾人の血を吸う事か——」。めっぽう面白いエンターテインメント伝奇小説。

踊る美人像  (青空文庫)
短編。帝都劇場の女優・柳糸子がアパートの自室で怪死した。等身大の彫刻「踊る美人像」の手に握られた短銃が発射して、糸子が死んだのだ。人形が人間を射殺するという難事件に挑む警視庁の花房一郎は、糸子の友人たちを集めて、犯罪当夜の出来事を再現させるが…。「美人像は矢張り短銃を撃ったでしょう。併し、今度のは空砲だから、怪我は無い筈だ」。奇抜なトリックが面白い探偵小説。

女記者の役割  (青空文庫)
短編。永田町の外交研究会の事務所に泥棒が入り、外交上重要な機密書類が盗まれた。特種記事が欲しい新聞記者による犯行だと睨んだ警視庁の花房一郎は、前外相で外交研究会の会長・園田敬太郎の娘・花枝と付き合っている東京新報記者・高城鉄也を疑うが…。「此奴(こいつ)が機密書類の犯人ですよ」、「えッ」──。どんでん返しの展開が楽しめる“名探偵・花房一郎もの”探偵小説。

幻術天魔太郎  (青空文庫)
中編。兄・徳川家光と将軍の跡継ぎを争い、無残な死を遂げた忠長──その忠長の子である少年・駿河太郎は、父の仇、将軍・家光を討つべく江戸城に潜入するも捕縛されてしまう。磔(はりつけ)になる寸前に、幻術の達人・心外道人に助けられた太郎は、修行して幻術を習得する。世話になった人々の窮地を救ったり、家光に仕える大久保彦左ヱ門たちを懲らしめたり、妖術使いの少年・猫間犬丸と対決したり、幻術を駆使して活躍する太郎。そしていよいよ、日光参拝に出掛けた家光の命を狙う太郎だが…。「おのれ、家光、おぼえたか! かくもうすは駿河大納言忠長の一子、駿河太郎」。“徳”をテーマに展開される娯楽時代小説。軽快なタッチで楽しく読める。

十字架観音  (青空文庫)
短編。禁制の切支丹(キリシタン)宗徒である許婚(いいなずけ)の鹿の子(かのこ)と一緒に狭い浪宅に住んでいる元・山形藩士・松根余吾之介(よごのすけ)。乳母だったお元の娘で、妖艶な町芸者のお秋に、すっかり焚きつけられてしまった彼は、取り潰しになった主君・最上家の仇である山野辺右衛門の家を襲撃するのだが…。「余吾之介様」、「何んだ」、「これっきりお別れになったらどうしましょう」、「何をつまらぬ」、「こんなに思い込んでいるのに、余吾之介様、それはあんまり情無いというもの」。切支丹弾圧を描いた悲恋話。

礫心中  (青空文庫)
短編。老中・水野忠邦による「天保の改革」のせいで、父親である廻船問屋・増田屋惣兵衛が入牢し、家の財産も没収され、一家が破滅してしまったお豊。姉・お藤を自害に追い込んだ冷酷非道な南町奉行・鳥居甲斐守を恨み、殺害しようとするが、逆に甲斐守にいいように丸め込まれてしまう。腰元として忠邦の屋敷に潜入したお豊は、忠邦を殺害する機会を窺うが…。「お豊」、「要さん」、「死のう」、「え、丁度一年目ね」、「お豊、まだ俺を意気地無しと言うか」、「え、見上げたわ、——私は嬉しい」。凄絶なる感涙のラスト! 上作。

百唇の譜  (青空文庫)
短編。恋人の真弓に若侍・半沢良平という許嫁(いいなずけ)がいるため、彼女と一緒になれない荒井千代之助は、役者に身を落とし、淫蕩な生活を送るようになる。九十九人の女を弄(もてあそ)んだ千代之助は、百人目である美しい尼と出会い、口説くのだが…。「いや、百人の唇は、たしかに集って『百唇の譜』は見事に出来上ったぞ。百人目に血潮で唇を捺したお前は、一生俺とつれ添うのも約束事だ」、「え、汚らわしい、寄るな、寄るな」──。契った女の唇の捺形(キスマーク)を蒐集している妖悪な男の末路を描いた復讐譚。

芳年写生帖  (青空文庫)
短編。死骸やさらし首など、血なまぐさい絵ばかり描いている浮世絵師・月岡芳年。彰義隊の落武者・日下部欽之丞に命を助けられた芳年は、官軍に追われている欽之丞を浅草の家に匿うが…。「天下後世に、俺の芸道を遺すためには、油汗を流し乍ら、歯ぎしりして、無慚絵を描くのだ」。欽之丞に気がある押しかけ女房・およつと、芳年に気がある隣家の娘・お浜の不和が悲劇を生む展開が凄い。

裸身の女仙  (青空文庫)
短編。年頃まで碓氷の山奥で裸で育ち、軽業の一座に拾われた後、三千石の旗本・安城郷太郎の妾(めかけ)となったお鳥。出生の秘密を知っているという浪人・萩江鞍馬に会うため、雑司ヶ谷の鬼子母神へ行くお鳥だが、郷太郎の怒りに触れてしまう…。「さア、成敗して取らせる、それへ直れ」、「殿様、それは、それはあんまりで御座います」。嫉妬に狂う四十男・郷太郎の悪キャラぶりが面白い。



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