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人は辛苦の果てに何を見るのか?
万世大路 2006秋編
完結。
ここは本気でカブと一緒に突破はムリだと思ったさ。 数mごとに立ちふさがる倒木。 しかも良い具合の高さで浮いているんだな。 全身を覆う脱力感。 すでに十本近くの倒木を乗り越えており、体力はかなり奪い撮られている。 一番手前の倒木の前で数分間立ち止まっていた。 カブさえ置いてけば、こんな倒木は一跨ぎにできる。 何故こんな労苦をしてまで進む必要があるのか? でも、カブから離れられなかった。 ここまで来てカブと共に来た意味は何だったのか? ここで諦めてしまったら後で後悔してしまうのではないか。 また、現実問題として自分にとってエンジン音が唯一の熊対策である。 それを失くしてしまうはあまりに恐ろしかった。 よって・・・。 カブ前進開始。 | |
で、前進を始めたのは良いけど、案の定倒木突破に泣きが入る。 ウィークポイントを定め一生懸命乗り上げようとするんだが、 体力が落ちてフロントを持ち上げる事自体が億劫。 さらにリアを持ち上げようとするがエンジンの重みが激しく堪えて乗り上げられない。 エンジンを回転させて見るが、こういう所に限って路面が泥ヌタ。 虚しくタイヤが空回る。 しょうがないので、車体が亀の子状態のまま小休止。 体力が少し戻った所で全力で持ち上げ、まるで放り投げるように倒木を乗り越えさせた。 はぁ・・・。 まだまだ倒木は続くぞ・・・。 | |
一本の倒木を越えるのに5〜10分程かけていたろうか。 恐らくこの時、10℃少々と肌寒い気温だったはず。 が、倒木突破の度に激しく体力を使い全身は汗だく。 あまりに暑くてジャケットを脱いだぐらいだ。 毎度の事だがバカな事をやっている。 そう思いつつも前進は止めない。 疲労で混濁した意識の中、ひたすら倒木を乗り越え前へと・・・。 ん・・・? 木々の合間に 何かが 見えた。 | |
きた・・・? きた・・・!? キタ・・・! キタっ! 奴だ! | |
栗 子 隧 道。 やったぁーーーーーー! ついに来たよ、とっつあぁん! 伝説の栗子隧道ですよ! 延長866m、明治の隧道としては日本最長の隧道。 昭和11年に車道隧道として改良 昭和41年に現・栗子バイパスが完成し旧道化。 そして・・・、昭和46年に中央部で大崩落。 永遠に通り抜けることができぬ隧道となった。 ちなみに、隧道の前にチャリでやってきていた人がいた。 突然木々の合間からカブが現れてきたので少しキョトンとしている。 たぶん、自分がR418でジムニーに出会ったときのような気分だったのでは・・・? 山奥で人に出会えた事と、隧道到達の興奮で思わず言葉をまくしたててしまった。 後になって、迷惑じゃなったかな?と軽く後悔。 しばらくしてその人は一足早く山降り、隧道前には自分一人になった。 カブのエンジン音だけが山に鳴り響く・・・。 | |
って、カブ置き去りにしてた。 一つ前の画像通り、隧道前には小川が流れている。 これが最後の難関であった。 画像ではわかりにくいが路面(?)と小川との段差が結構な段差で、 降ろすのは簡単でも再び乗り上げるのが一苦労。 倒木連発地点ですでに体力の限界にきてたのに、またここで肉体労働。 途中まで乗り上げた所で車体がズルズル落下。 小川の上で横倒しになり大慌て。 取りあえずエンジンは動いてくれたので、一速にて一気に駆け上がらせ やはり放り投げるように乗り上げさせる。 ・・・廃道に入る度にレッグガードが削れて行く・・・。 | |
ともかく、カブと栗子隧道とのツーショットに成功。 感無量。 | |
扁額。 『道隧子栗』。 歴史を感じさせる左読み。 | |
隧道横には水が流れ落ちる水路が。 | |
水が流れ落ちる先は小枝が溜まってダム状態に。 かつては道脇の底溝を通って川へと流れていったのかもしれない。 しかし今は小枝ダムによって流れが変えられ、路面を横切る小川を作り出してしまった。 | |
水が溜まっている所を覗き込んでみる。 信じられないぐらい透き通った水面。 思わず、手ですくって飲んでしまいたい衝動にかられるが、やはり病原菌等が怖いのでぐっとこらえる。 | |
では改めて隧道内に目を向けてみよう。 やはり他のサイトさんで言われていたように内部は水没していた。 この水面で生まれ育った羽虫達が大量に飛び交っている。 また、奥を見れば先の見えぬ深き闇。 そもそも、約870mもある長大隧道。 更に内部は閉塞しているわけで最深部は闇に閉ざされているのだ。 | |
かつての路面を見る。 やはり透き通った美しい水面。 隧道と外界の合間には段差があり、どうやらこれが内部の水を塞き止めているようだ。 二ツ小屋隧道のように内部で出水している箇所がある訳では無いようで 時期によって水が溜まっていないこともあるらしい。 で、自分が訪れた時期はどうかと言うと・・・。 水深10cmぐらいか? ただし、その下の泥は更に深さがありそう。 | |
隧道の端のほうに何やら杭のようなモノが。 いったい何に使われていた物だろう? | |
空を見上げる。 標高885m、雲が間近に感じられる高さだ。 その向こう空は青々として気持ちが良い。 | |
隧道の上には黄色がかった木々。 2ヶ月後には全ての葉が落ち、辺りは雪で覆われ人の立ち入れぬ場所となる。 | |
地面に腰を降ろしカブ越しに隧道を眺める。 更にこの先、隧道の奥に入って見たい気持ちはあったが やはり水没している事もありちょっと躊躇われた。 まあ、完全なる闇の世界に入るってのも怖いしね。 閉塞点間際にある ORR の置石をみてみたかったが、 もうここに来れただけで満足である。 軽快なとっとっとっ・・・と言うカブエンジンの音をBGMに 烏龍茶を飲みながら30分近くここに佇んでいた。 | |
休息後、多少体力も戻ってきたのでそろそろ帰る事にした。 正直な所、またあの倒木群と格闘し一本橋築堤を渡るのかと思うと 少々ゲンナリだが、まあしょうがない。 こんな所で夕暮れを迎えるのはカンベンだからな。 帰る前に一度、隧道へ振り向き、 「さらば栗子隧道!」 と心で呟きこの地を後にした・・・。 |
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