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第三セクターによる公共交通整備の「成功事例」を分析する

−富山ライトレールから公共交通整備のあり方を考える−



TAKA  2006年11月06日 (11/14一部加筆)




富山ライトレール @富山駅北電停



 ※本記事は「 TAKAの交通論の部屋 」「 交通総合フォーラム 」のシェアコンテンツとさせて頂きます。


 富山市の「富山ライトレール」と言えば、本年8月に私も訪問して「 富山で路面電車の「過去・現在・未来」を見る 」で取り上げましたが本年5月にJR西日本富山港線がLRTに転換して出来たLRTと言う新たなタイプの都市交通であり、私が取り上げた「 富山で路面電車の「過去・現在・未来」を見る 」で"This is revolution !?" と評した様に「日本でも新しいタイプの都市交通」であり、世間でも2006年度「 日本鉄道賞 」受賞を始め「日本初の本格的LRT」として色々な点に渡り色々な所で高い評価を得ています。
 その富山ライトレールですが、実際夏休みのお盆の時期に訪問した時も実際かなり混み合っていた状況の様に、利用者数が目標の3,400人/日を大きく上回る約5,600人/日(目標の約1.6倍)の利用が有るほど好調の様です。その様な富山ライトレールの利用客の目標大幅突破の好調が又新しい驚きをもたらしました。「初年度黒字の可能性」が出て来たと言う事です。
 『 初年度黒字の可能性 富山ライトレール  (10月31日:北日本新聞)』
 元々JR西日本の「放置プレイ」で放置されていた路線であったと言う事も有りますが、JR時代の2,000人/日利用客数から考えると普通に運営していたら鉄道としては経営的には成り立たない路線です。加えて利便性向上の為にLRT化と言う投資を行ったら、利用者は増えても建設費償還・減価償却で苦しめられる事になり余計成り立たなくなる鉄道で有ると言え、基本的には「民間で整備したら経営的には成り立たない路線」であると言う事が出来ます。
 実際「第三セクターでインフラ構築をした鉄道」では、建設費償還・過大な減価償却負担で「債務超過」と言う極めて厳しい経営状況に追い込まれた第三セクター鉄道は「東葉高速鉄道・埼玉高速鉄道」等多々有るのが実情です。その中での富山ライトレールの「利用客数目標大幅増・初年度黒字達成の可能性」と言う成果は極めて素晴しいと言えます。
 今回は富山ライトレールが「何故初年度黒字化達成」が出来そうな程好調なのか?そこから第三セクター鉄道経営に必要な物について考えて見たいと思います。

 ☆ 富山ライトレール「初年度黒字可能性」の内訳は?

 まずは富山ライトレールの「初年度黒字可能性」の状況を分析する事で、「富山ライトレール」が何で「初年度黒字化達成」の可能性が見えるほどの成果を出す事が出来たのか?考えて見たいと思います。
 本文執筆時には未だ黒字化の可能性について示した物が、上記引用の北日本新聞の「『 初年度黒字の可能性 富山ライトレール 」しかない状況ですが、この記事の中で「何故黒字になったのか?」の状況を示す物を抜粋・要約の上引用したいと思います。
 ・「富山ライトレールの九月末の収支が、二千数百万円の黒字となる見通し」
 ・「このままの利用水準が続けば、初年度は黒字になる可能性が出てきた」
 ・「同社は、路線や電停など施設整備を市が行う「公設民営」方式のため、設備投資費の負担がない。」
 ・「開業前利用者を約3,400人/日と想定。南北の路面電車が接続する十年後まで年2,000−3,000万円の赤字が出ると見込む。」
 ・「毎年1月1日が賦課期日となる固定資産税が今年は課税されない。来年度以降は三千万円程度の固定資産税が発生する。」
 ・「一日約五千人が利用。運賃、広告、グッズ販売等の営業収入から運行経費を差し引いた収支は、九月末で二千数百万円」
 ・「今の利用水準なら、広告やグッズ販売等運賃以外の収入で二千万円ほど確保できれば、固定資産税分は大体賄えると予想」
 これらの記事内容から考えると、初年度黒字化の要因は「計画を上回る利用者の大幅増」「固定資産税の税法上のトリックで本年度は固定資産税が掛からない」と言う2点が有ると言えます。これで「年2,000〜3,000万円の赤字→二千数百万円の黒字」と言う収支好転が起きたのですから、この2点で約5,000万円の収支改善効果が有ったということが出来ます。その内「固定資産税は約3,000万円」との事ですから、「固定資産税未課税による改善効果約3,000万円」「利用客増による改善効果2,000万円」と言う事になります。
 この収支改善は「固定資産税未課税」と言う計算外の効果と言う側面が大きい様に見えますが、実際の所やはり「利用者が計画3,400人/日→実際約5,600人/日へ1.6倍に増えた」と言う所が大きいと言えます。当初の収支計算では約2,000〜3,000万円の赤字でしたから、固定資産税未課税メリットが無くても利用客増による収支改善約2,000万円でほぼ収支均等が実現できたと言う事が出来ます。

 ※11/14加筆
 今日この様な記事が有りました。「 開業半年、2600万円黒字 富山ライトレール中間決算、割引運賃継続論議へ (富山新聞)」
 記事の概要は下記の様になっています。(下記は記事の概要・要約を引用)
 ・「富山ライトレール(富山市)が十三日発表した中間決算で、約二千六百万円の経常利益を出す黒字となった」
 ・「中間期の収入は約一億六千六百万円で、経費の一億四千万円を差し引いた利益が約二千六百万円」
 ・「利用者が当初予想を上回る一日平均五千二百人で推移したほか、電停の広告収入などが利益を押し上げた。」
 ・「(森富山市長が)一年間に限定していた運賃割引について、継続の是非を議論する考えを明らかにした。」
 中間決算黒字化は10/31段階で報道されていたので驚く話ではありませんが、やはり日本初のLRTが運営当初から利用客が予想以上に増えて、上下分離の効果や特殊要因等の条件付でも黒字化したということは、「衰退しつつある都市近郊のローカル線がLRTにリストラクチャリングされると蘇る」と言う成功事例が示せた事であり、今後の事業促進にとって大きなプラスになったと思います。
 同時に「運賃半額の効果が予想以上に大きい」と言うのには驚かされました。一般的に言えば「値下げによる減収<乗客増による増収」と言う関係にならない限り値下げが収益に好影響は与えない筈ですが、その高いハードルを富山ライトレールがクリアしてしまったのは驚かされます。
 今回の黒字化は「LRTの可能性」を示したと言うのと同時に、「運賃値下げの効果」についても可能性を示したと言えます。その点からも富山ライトレールから学ぶ所は少なくないと言えるでしょう。


 ☆ 富山ライトレールは何故成功したのだろうか?

 では何故富山ライトレールは「初年度黒字(の可能性)」と言う輝かしい成果を上げることが出来たのでしょうか?この様な富山ライトレールの「成功の要因」について考えて見たいと思います。私はこの様な富山ライトレールの成功の要因は、「利用者増」と言う「入るを図る」と言う点の成功と「投資負担を運営主体から分離する」と言う「出るを制す」と言う、2つであると思います。

 (1)「利用者増」をもたらした「利便性の良さ」

 先ず一つ目は「富山ライトレールの利便性の良さ」と言う点に有ると思います。本年8月富山訪問時に 富山ライトレールを試乗 しましたが、この事業の旗振り役の富山市の信念と行動により、「増発・駅新設・バリアフリー化・駐輪場新設・フィーダーバス運行」等の利便性向上策を行い、JR西日本時代の富山港線に比べ極めて使いやすい路線に作り変えたと言う点が、利用客が想定の1.6倍の5,600人/日にまで増えて其れが予想外の収支改善に効果を示したと言えると思います。
 しかもこの成果は「 平日9:00〜16:31&休日は半額運賃 」と言う割引運賃を用いての収支均衡です。本来「お試し期間」の宣伝要素の強い割引と言えども割引運賃は収入に対してはマイナス要素です。しかしそのマイナス要素を克服しての収支均衡達成はこれは極めて驚くべき事です。
 少なくとも富山ライトレールの沿線人口は想定より爆発的に増えたと言う事を聞きません。其れなのに想定の1.6倍・富山港線時代から見ると2.5倍の利用客が利用されたと言うことは、それだけ「沿線の人たちが頻繁に利用した」「富山ライトレールが人を引き寄せた」と言う事であると思います。実際私が訪問した日は夏の盆休みのど真ん中の日でしたが、車内は日常利用より観光客や遊びに来た人の利用が多い状況でしたし、富山港線時代は平日:2,266人/日・休日1,045人/日だった利用客が富山ライトレールでは開業日〜6/25平均で平日:4,961人/日・休日:6,901人/日となっており、明らかにこれらの「非日常・観光利用」も想定外の利用客増の大きな効果の一つで有ったと言えます。
 実際富山ライトレールの利用者の評価はかなり高い様で、「 都市と交通第66号 (社団法人日本都市交通協会)」の巻頭言で森富山市長が「多くの市民から新型車両や運行サービスなどに対し良い評価を頂き順調な滑り出しとなりました」と言うコメントが有るように、利用者からは高い評価を得ているようです。又その高い評価が目標を上回る利用客増として繁栄されていると言えます。これこそ正しく「富山ライトレール成功の要因」の一つであるということが出来ます。

 (2)「公設民営方式」の考え方を導入した事による大幅インフラ改善投資に対する「運営者負担の極小化」

 もう一つは「出るを制す」と言う点で、「富山港線の再構築」と言えるほどの大規模投資をしながら「公設民営方式」の考え方を導入する事でインフラ設備投資だけでなく、今までのプロジェクトでは運営主体が負担していた車両購入費等も公的セクターの負担として、運営主体の富山ライトレールには「投資負担を背負わさない代わりに、運営補助はしなく運営は自己責任で行う」と言う条件をつけて、施設整備は自治体・運営は富山ライトレールと言う様に責任分担を明白化した点に有ります。
  富山ライトレールの整備資金58.5億円 自体は、富山駅付近連続立体交差事業補償金約33億円と言う「天の恵み」が有りこれに加えて国土交通省の「路面電車走行空間改築事業・LRTシステム整備費補助」と言う国の公的支援を上手く活用し、「上下分離・公設民営」の考え方で運営者の富山ライトレールの負担を無くしつつ整備主体の富山市の補助も13億円で済むと言う「練られたスキーム」で最低限の負担で富山港線と言う一ローカル線を再構築したと言う点に、今回の成功の秘訣が有ると言えます。
 過去には鉄道業界では道路に比べて格段に少ない財源に起因して其れを克服する為に「運営主体による建設費償還」を前提にプロジェクトを構築し、そのために運営費は十分賄えていて営業利益は出ているのに償却費負担と建設費借り入れの金利負担で赤字になり、遂には運営第三セクターが債務超過に陥ってしまい「有用な事業」でありながら「借金まみれ」になってしまう例が多々存在しました。北総鉄道・東葉高速鉄道・埼玉高速鉄道どれもが有用で社会的に効果の有るプロジェクトでありながら、借金まみれで塗炭の苦しみをしている会社(北総は苦しみから脱しつつありますが・・・)です。
 多分今までの「第三セクターに建設費償還まで行わせるスキーム」では、多分富山市負担の13億円が富山ライトレール借り入れ→富山ライトレールの資産として整備されてきたでしょう。そうなると富山ライトレールの経営には13億円の借入金の金利とその分の資産の減価償却費が圧し掛かってくる筈です。それだけで数千万円の負担になり、今回の黒字分が全部吹き飛ぶだけでなく赤字を抱え込む結果になった筈です。こうなったら「過去の第三セクター失敗の繰り返し」になっていたはずです。
 その様な過去の失敗に対し、富山ライトレールはその初期投資の半分以上を「富山駅付近連続立体交差事業補償金」で確保できたと言う「極めて恵まれた条件」が有ったのですが、それ以外にも各種補助を上手く活用し、実質的な「上下分離」を達成し運営主体の富山ライトレールは「運営費だけの収支均衡を目指せば良い」と言う低いハードルで済む様なスキームを富山市が構築した点に今回の「富山ライトレールの成功の第二の要因」が有ると思います。

 この様に富山ライトレールの成功の要素を考えると「利便性を高めて利用を促進して」収入全体の増額(利用客単価の増額でなくても、全体で原価増以上の収入増額になればOK)を計ると同時に収入に見合うレベルまで原価を減らして、有る程度の公的補助とそれ以上の自己努力による経営責任により地域交通を維持すると言うスキームを構築した点に有ると言えます。
 少なくとも此れだけの費用を投じて「富山港線のLRTへの再構築・業態転換」を図らなければ富山ライトレールは此れだけの利用客増と言う支持は受けなかったでしょう。と言うことは「利便性向上への巨額の投資」は必須と言う事を意味します。其処から「巨額の投資を行い、しかも後の事業者の経営に影響を与えないスキーム」を作り出す事、つまり(2)が富山ライトレール成功の大きな要因であると言えるのではないでしょうか?


 ☆ 富山ライトレールの成功から公共交通の整備に必要な物を考える

 この様に「初年度からの黒字達成(の可能性)」と言う大きな成功を収めつつある富山ライトレールですが、この成功の要因は上記に示した通りですが上記の富山ライトレール成功の要因は、普遍的な点で見ても既存地方ローカル鉄道の活用による地方公共交通整備に必要な物を如実に示したと言う事が出来ます。

 先ずは「既存鉄道を地域のニーズに合い利用される利便性の高い鉄道」になる様に、大幅なリストラクチャリングが必要であるということです。富山ライトレールも既存のJR西日本富山港線をLRTになる様に完全に作りなおして今の富山ライトレールが出来ていますが、そのリストラクチャリングの前と後では「天と地」程の差が有ると言う事が出来ます。(富山港線時代「 富山港線訪問記 」・富山ライトレール「 "This is revolution !?" 富山ライトレールは路面電車をLRTに昇華させたのか? 」参照)
 実際他にも 9月に訪問した三岐鉄道北勢線 も、ナローゲージ軽便鉄道を約32億円の巨額を投資して現代に時代に対応できる鉄道に変身させた結果、変身前に比べて利用客の増加を引き起こし地域の公共交通として機能するレベルの交通機関になり社会インフラとして耐えられる物になりました。
 富山ライトレールも三岐鉄道北勢線どちらも「地方ローカル鉄道再生の成功例」ですが、その共通項は「既存鉄道を巨額の投資でリストラクチャリングして再生した」「その結果利用客が大幅に増えて地域の公共交通機関として機能する様になった」と言う点です。つまり其処から考えると「地方の公共交通再生には現在のレベルとして十分対応可能な所までインフラ・利便性を改善する」と言う事が地方公共交通整備に必要な物であると示していると言えるのではないでしょうか?

 もう一つの必要な事は「その投資資金のスキームをどのように作るか?」と言う点で有ると思います。投資してリストラクチャリングをする事が成功の条件で有ると言う事が分かっていても、それには巨額に資金が必要です。北勢線の改良には約32億円が投資されていますし、富山ライトレールはLRT化転換に58.5億円を投資しています。この資金をどのようなスキームで調達するかが、地方公共交通整備の成功の必要条件で有ると言えます。
 前にも述べたように「運営主体に投資資金を償還させるスキーム」で苦境に立っている第三セクター鉄道は多々有ります。都市第三セクター鉄道ですら建設資金償還が負担となり苦戦している状況ですから、地方鉄道再生の場合運営主体に負担をさせると言うスキームは収支的に殆ど困難で有る事は明らかです。ですから投資の償還を如何にするか?何処からその資金を調達するか?が地方鉄道再生の為の整備に必要で有るといえます。
 実際三岐鉄道北勢線の場合、「幹線鉄道活性化補助」等の国土交通省の補助を使いながら又三重県から一部補助を受けながらそれ以外の「近鉄からの北勢線鉄道用地取得費の沿線市町負担分+10年間の運営資金(リニューアル費用+赤字補填)として約55億円」を沿線自治体が拠出して設備投資資金と運営事業者の定額赤字補助の財源にしていますし、富山ライトレールの場合「公設民営方式」の考え方を用い運営費補助をしない代わりにLRT化の設備投資58.5億円を富山駅付近連続立体交差事業補償金と国土交通省補助の路面電車走行空間改築事業・LRTシステム整備費補助を活用しそれに加えて不足分の13億円を富山市が投下してインフラを整備し、インフラ投資負担から運営主体を切離したスキームを作っています。
 富山ライトレールの場合森富山市長が「連続立体交差事業の負担金等財源に恵まれたこと」とコメントされている様に、総事業費の5割以上を連続立体交差事業負担金が拠出した為その他の国交省補助を加えて色々な補助を組み合わせることが出来て、富山市は最低限の投資で事業を成立させる事が出来ました。しかしその様な「天の恵み」が無くても北勢線の様に「国交省補助を活用しつつ(補助自体は否定しないが北勢線への「幹線鉄道等活性化補助」適用は少々無理が有る気がする。ナローゲージがなんで「幹線鉄道」なんだろう?)50億円を越える地元負担を沿線自治体で負担をする」と言う政治的決断をして、投資負担や運営費補助負担を自治体が負担をして運営主体から投資負担を切離すスキームを組んでいます。
 多数存在する地方鉄道では、元から採算性の維持が厳しい中で民営鉄道としての存続が危ぶまれる鉄道が多数存在しています。それらの鉄道をリストラクチャリングして新しい地方公共交通として存続させる場合、新たな運営スキームを作るにしても現在のレベルに合う様に投資をする必要性は前にも述べた様に高いですし、その投資コストを運営主体に負担させる事が不可能で有るのもまた事実です。その中で如何にして地方公共交通を維持して行くのか?今や「上下分離・公設民営」と言う考えが段々主流になってきていますが、その様な「地域が投資を負担するスキーム」を考えて行く事が必要であるのではないでしょうか?


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 前回富山ライトレールを訪問した時に、その訪問記に有るように富山ライトレールを見ての第一印象が"This is revolution !?"でした。県庁所在地の近郊に有る路線では有りますが地方のローカル線が投資によりこんなに蘇るのか?こんなに劇的な変身は正しく「revolution」ではないか?と思いました。
 その訪問から僅か2ヵ月半、富山ライトレールの 「初年度黒字(の可能性)」と言う報道記事を見て正しく驚かされました。利用客が好調であると言うのは色々な所で聞いていましたが、その利用客の好調は「平日9:00〜16:31&休日は半額運賃」と言う割引運賃の効果が大きく収益にはプラス要因よりマイナス要因の方が強いと考えていたので、尚更驚かされました。
 元々「公設民営」方式を用いて運営会社の富山ライトレールから投資負担を取り除いて運営にのみ責任を持つスキームを作ったと言えども、実際問題は「富山市内線との接続が出来る10年後までは毎年3,000〜4,000万円の赤字」と言う収支計算が発表されておりその赤字期間中は「資本金を食いつぶす」と想定されていた会社が、幾ら固定資産税未課税と言う僥倖が有ったからと言えども「初年度黒字(の可能性)」と言う所まで辿り着いたのは「素晴しい」の一言で有ると思います。

 実際問題として、現代のモータリゼイションの流れに付いていけない「過去のスタイル」で依然と運営されていて、その役目が終わりつつあり淘汰されようとしている地方ローカル鉄道は多数あります。地方中核都市近郊と言う恵まれた条件の富山ライトレールは別にして、三岐鉄道北勢線の様なローカル地域を運行している「廃止されても可笑しくない地方ローカル鉄道」は多数あります。
 三岐鉄道北勢線・富山ライトレールこそ「数少ない成功例」ですが、この様な成功例は少なく「廃止」と言う名前で淘汰されていった鉄道も数多く、今でも 鹿島鉄道 が「今月半ばまでに自治体の存廃の最終判断」と言う状況ですし、茨城交通でも「 2008年3月の鉄道線廃止 」と言う動きが出ています。他にも廃止間際の鉄道は多々有りますが、沿線人口の比較的有る関東圏と言う多少は恵まれた環境に有るどちらの鉄道も、残念ながら「近代的な鉄道」とは言えなく淘汰されても仕方ない鉄道と言えます。
 しかし淘汰が進みつつある鉄道は、往々にして今の段階での設備投資が行われて居ません。その鉄道を存続させる運動自体は色々な所で起きていますし、自治体も対策を考えて実行しようとしています。実際民営鉄道の廃止問題に直面し地方自治体が積極的に関与する形の第三セクターとして存続した鉄道は万葉線やえちぜん鉄道など複数存在します。しかしどちらの鉄道も新型車両投入等の色々な投資は行われている物の富山ライトレールや北勢線の様な根本的なリストラクチャリングと言うレベルまでは達せず、えちぜん鉄道は比較的好調と聞きますが万葉線は乗客減少に歯止めが掛からない状況です。

 この様な状況を改めてみると、地方公共交通の維持の為には「民営鉄道におんぶに抱っこ」では困難であり何かしらの形で積極的に地方自治体が関与する事が必要であると同時に、今の前時代的なインフラではこれからの時代を生き残る事は出来ない、その為には「乗客のニーズに答え利便性の高いインフラに再構築する事」が重要でありその資金捻出の為にも民営鉄道と地方公共団体がタッグを組んで地方鉄道存続の為に「上下分離・公設民営」等の地方公共団体のインフラ改善への関与を引き入れつつ、民営鉄道の運営ノウハウと効率性でインフラが改善され利便性の高い鉄道を最大限効率的に運営されるスキームを作り、真の意味での「地方鉄道の恒久的存続の道筋」を付ける必要が有ると言えます。
 その良い例を富山ライトレール・三岐鉄道北勢線は作り出したと言えます。しかしその作り出した前例は「設備のリストラクチャリング」と言う巨額の投資を伴う物であり、「言うは易し行うは難し」と言う物であると言えます。しかしリストラクチャリングで生き残れる鉄道を投資しないで廃止してしまうのは社会的損出であります。その点から考えれば全体的に淘汰されつつある地方鉄道の中で「自治体のリストラクチャリングへの投資」で費用対効果分析等の投資効果判定で社会的に納得の出来る投資効果が有る事が明らかな鉄道は、インフラ投資は公的セクターが行い運営は民間で行うという公設民営方式を視野に入れた方式を含めて総合的に検討をして、インフラの再構築の上で存続を図る事が必要であると改めて感じました。




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